鷺の停車場

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映画「夜のまにまに」

週末の昼間、新宿駅前のシネマカリテに行きました。


新宿に来るのはおよそ半年ぶり、シネマカリテは昨夏に「17歳は止まらない」のトークショー付き上映を観に来て以来です。


この日の上映スケジュール。


観に来たのは「夜のまにまに」(11月22日(金)公開)。先行上映もあったようですが、この映画館のみの公開。今後全国8館で順次上映されることが決まっているようですが、この映画館での上映は、12月5日(木)までの予定となっています。


この日は「映画の日」で通常よりも安い値段で観られることもあって、「夜のまにまに」は満席となっていました。あらかじめネットで席を予約しておいて良かったです。


地下1階のロビーには、主演の2人と監督がサインしたポスターが掲示されていました。


展示もありました。


上映は96席のスクリーン1。スクリーンがやや真ん中からズレているちょっと珍しい形です。

大阪を舞台に、映画館で出会った男女が再会をきっかけに徐々に惹かれあっていく様を描いたラブストーリーで、監督は磯部鉄平、脚本は永井和男。

主な登場人物・キャストは、次の2人。

  • 新平【加部 亜門】:大学を出てフリーターをしている若い男性。

  • 佳純【山本 奈衣瑠】:新平が映画館で出会った若い女性。

公式サイトで役名付きで紹介されているのは、以上の2人だけですが、公式SNSを含めネット上の情報で確認できた登場人物・キャストとして、次のような人がいます。

  • 咲【永瀬 未瑠】:新平の幼なじみで元彼女。大学生。

  • 新平の姉【辻 凪子】:新平の姉。母と同居しているが、神戸への転勤が決まっている。

  • 新平の母【日永 貴子】:新平の母。

  • カフェの店長【川本 三吉】:新平がバイトしているカフェの店長。

  • 警官【木原 勝利】:新平の実家の団地周辺をよくパトロールしている交番の警官。

  • 村山【黒住 尚生】:新平の親友。

  • 由紀恵【岬 ミレホ】:新平が映画館で出会った老婦人。

  • 団地のおばさん【辰寿 広美】:双眼鏡を手に張り込む佳純を見とがめた団地の住人のおばさん。

そのほか、役柄は確認できませんでしたが、緒方ちか、時光陸、大宅聖奈といった方々も出演されているそうです。

 

公式サイトのストーリーによれば、


どこか人任せなフリーターの新平加部亜門は、幼馴染で彼女の咲と別れた日、訪れた映画館で佳純(山本奈衣瑠)と出会う。
意気投合し、夜の街で一緒に過ごす二人。
しばらくすると、新平のバイト先のカフェで佳純が働き始める。
再会に驚く新平だったが、佳純から“彼氏の浮気調査を手伝ってほしい”と頼まれ、探偵の真似ごとをする羽目に。
強引な佳純に振り回されながらも、新平は少しずつ彼女に惹かれていくが……

 

というもの。

 

何とも言えないいい空気感で、それぞれ不器用さを持った登場人物が個性的で、ストーリーがはっきりしない感じもありましたが、関西らしいオチを織り混ぜで観客を笑わせつつ、観終わった後もじんわり余韻が残る作品でした。公式サイトでは「真面目だがどこか物憂げな青年と、破天荒なほど行動的な女性が織りなす、少し変な二人のラブストーリー」と紹介されていますが、ラブストーリーというよりは、真面目だが優柔不断で流されやすい主人公の青年が、型破りで行動的な女性と出会い、その行動に振り回されていく中で、少しずつ地に足を付け、自分自身の選択ができるようになる、成長を描いた作品という印象をより強く感じました。

 

ここから先は、ネタバレになりますが、自分の備忘を兼ねて、記憶の範囲でより詳しいあらすじを記してみます。(多少の記憶違いはあるだろうと思います。)

 

舞台は大阪。フリーターの新平が交通量調査のバイトから自宅アパートに帰ると、幼なじみで恋人だった大学生・咲が別れて出ていくため荷物を運び出しているところだった。引っ越しを手伝う大学生の男から咲にアタックしていいか尋ねられ、困惑する新平。

十三(じゅうそう。阪急線で大阪梅田駅から2駅目、大阪駅がある梅田の北の淀川を渡った先にあるエリア)の映画館に行った新平は、客席に他に誰もいないことに戸惑うが、その後に入ってきたシニアの婦人・由紀恵に、30年ぶりに映画館に来たので一緒に観てほしいとお願いされ、その隣に座ると、その後に入ってきた若い女性・佳純も加わり、一緒に映画を観ることになる。

モノクロのアメリカ映画フランク・キャプラ監督の「或る夜の出来事」)を一緒に観た3人は、意気投合して焼肉店で一緒に飲む。由紀恵は、最近夫が同窓会で久しぶりに再会した女性と映画館でデートしていると疑い、夫が帰ってきた際にしていた香水の香りを頼りにその相手を探していることを明かす。

由紀恵、佳純と別れた新平が、駐輪していた自転車を取りに行き、家に向かうと、中之島の橋を渡っているところで、スマホで電話しながら歩いている佳純を見かけて声をかける。気が合って、一緒に外で過ごし、中之島の川沿いのベンチで夜を明かした2人。佳純は不意に新平にキスをして、バイバイ、と言って去っていく。

しばらくして、新平のバイト先のカフェに、佳純が新人のアルバイトとして入ってくる。初めは新平のことを覚えていない風だったが、やがて、一緒に映画を観たことを覚えていたことが分かる。

新平は、あの日以来、新平は、由紀恵に付き合って時々その映画館で映画を観るようになる。一方、部屋を出ていったが、合鍵を持ったままの咲は、時折勝手に新平の部屋に遊びに来るようになっていた。

そんなある日、新平はそう遠くない実家の団地に帰ってくると、佳純がそのゴミ捨て場で、何やらゴミ袋を漁っているのを目撃するが、新平に気づいた佳純は走って逃げていってしまう。

次にバイト先のカフェで会った佳純は、新平に声をかけ、バイトの後、その団地の一室に住んでいる彼氏の浮気調査の手伝いを頼み、新平は強引な佳純に押し切られて手伝うことになる。書店でバイトしている彼氏が帰宅するところを確認しようと、団地の一角で双眼鏡を手に張り込む佳純に付き合い、見張りをする新平は、パトロールする警官に不審に思われ、職務質問されてしまうが、ある時は佳純とカップルを装い、双眼鏡を手にしているのを見つかった時にはちょうど帰宅してきた姉に助け船を出されたりして、何とか難を逃れる。

そうして張り込みを続けていた新平は、佳純の彼氏が若い女性を連れて帰宅するのを目撃するようになる。そして、彼氏が出かけていくところに遭遇した新平が、その後を尾行していくと、彼氏のバイト先である梅田のジュンク堂で、張り込んでいた佳純とばったり会う。新平が本を探す客のふりをして児童書コーナーにいたところで、彼氏から何かお探しですか、と声を掛けられてしまう。新平は、その場をごまかそうと、おススメの本はありますか、と尋ねると、彼氏は、そうだ!と手を叩いて、サン=テグジュペリ「星の王子様」を書棚の一角から引っ張り出し、大人になってから読んでもいい本だと言って差し出す。

そんなある日、咲から部屋に行くと連絡があり、新平は浮気調査を断って家に帰ろうとするが、佳純に強引に迫られ、1時間後に手伝うことになってしまう。帰宅した新平は、咲を早く追い返そうと、彼女がいると嘘をつくが、咲は逆にお祝いだと冷蔵庫に入っていたワインを持ってきて乾杯する。そうしているうちに、浮気調査に連れて行こうと佳純が部屋を訪ねてくる。最初は咲を隠して家を出ることに成功するが、新平の部屋に双眼鏡が置きっぱなしになっているのに気づいた佳純が部屋に戻ったことで、咲が見つかり、ちょっとした修羅場になり、新平は混乱してしまう。その様子を見た咲は、新平が落ち着くまでは時間がかかると、佳純に声をかけてその場を離れ、互いに謝って別れる。

一方、新平と一緒に映画を観るため映画館に来た由紀恵は、ついに探していた女性を見つける。その女性に声を掛けようと思ったその時、遅れて映画館にやってきた新平に声を掛けられ、時機を逸する。買ってきたたこ焼きを隣の席で食べる新平と話すうちに、気持ちが変わった由紀恵は、失敗して良かった、と佳純に伝えるよう新平に話す。

またある日、彼氏が住む団地に張り込みにやってきた佳純に、通りかかった咲が声をかける。咲は買ってきた肉まんを半分咲に分けてあげ、話をする。すっかり気の合った2人は、咲が持っている合鍵で新平の部屋に行き、新平のベッドで仲良く眠る。後になって帰宅してきた新平はベッドが2人に占領されているのを見て、諦めて床で毛布をかぶって寝る。翌朝、新平が目覚めると、既に佳純は帰っていて、自分の手の指の爪には、佳純によってマニュキュアが塗られていた。咲は笑いながらスマホでそれを撮った写真を見せた後、新平にずっと持っていた合鍵を返し、大学の授業が1限からあるからと言って帰っていく。

そして、ついに佳純が彼氏が女性を連れて帰宅するところを目の当たりにする。足早に立ち去っていく佳純。新平は一瞬逡巡するが、親友に背中を押され、その後を追いかける。佳純は追いつかれまいと足を速め、ついには走り出す。新平もそれを追って走り出し、いつしか2人は楽し気に大阪の街を走るのだった。翌朝、初めて一夜を明かした場所と同じ中之島の川沿いのベンチで夜を明かした2人だったが、佳純に頼まれた新平が自販機で水を買って戻ってくると、佳純はいなくなっていた。新平が橋の方を見上げると、初めて会った時と同じように、佳純はバイバイと言って去っていく。

帰宅した新平がアパートの部屋の窓を開けて佳純が残していった双眼鏡で外を見ると、親友の姿が目に入り、親友は新平を励ますように手を振って去っていくのだった。

しばらくが経ち、新平のもとに、佳純から東京でネイルサロンを開店したことを知らせるハガキが届く。それを見た新平は、数日旅に出ると言ってカフェの店長の原付を借り、新御堂筋(梅田から北に延びる幹線道路)を走らせるのだった。

 

(ここまで)


上のあらすじでは省略しましたが、しばしば新平の前に現れる親友は、新平にしか見えないという設定で、幼いころの父親の葬儀の時に現れ、遊びに行こうと言って新平を連れ出して以来、新平がずっとそばにいると感じている人間です。張り込んでいたところを警官に職務質問された佳純を、通りかかった新平の母と姉が機転をきかせて助け舟を出し、トイレを借りるために新平の実家の部屋を訪れた佳純に、佳純が新平の彼女だと早合点した母が、幼いころの新平の写真を見せてあげようと当時のアルバムを引っ張り出してきた際に、挟まっていた幼いころの新平がクレヨンで描いた絵にも、母、姉と並んで新平にしか見えない親友の姿が描かれているシーンが出てきていました。