テレビアニメ「パーティーから追放されたその治癒師、実は最強につき」、第4話までに続いて、11月2日(土)から11月23日(土)にかけて放送された中盤の第5話から第8話までを紹介します。
繰り返しになりますが、2018年5月から小説投稿サイト「小説家になろう」に連載され、2019年1月から双葉社の「Mノベルス」で単行本化されている影茸の同名ライトノベルを原作にテレビアニメ化した作品で、監督:大西景介、シリーズ構成:砂山蔵澄、キャラクターデザイン:水野友美子、アニメーションプロデューサー:釋迦郡卓、アニメーション制作:スタジオエル など。
公式サイトでキャストが紹介されている主要キャラクター・キャストのうち、第5話から第8話までのエンドクレジットに名前が出ているのは、次のとおりです。<>内はその人物が登場(声優が出演)する放送回です。
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ラウスト【小野 賢章】:迷宮都市マータットに住む治癒師。初級治癒魔法である「ヒール」しか使えないために〝無能〟の烙印を押されているが、実際には様々な知識や技を身につけた一流の冒険者である。かつて出会った少女の言葉に勇気づけられ、冒険者を続けている。<第5~8話>
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ナルセーナ【前田 佳織里】:駆け出しの冒険者。武闘家としての実力は高く、魔獣を素手で倒す猛者である。パーティーから追放されたラウストに声をかけるが、実は以前からの因縁があるらしく……。<第5~8話>
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アーミア【立花 日菜】:「稲妻の剣」に所属する魔法使いの少女。どうしてマルグルスなんかと行動を共にしているのか分からない普通の子。ただ、やや精神的に弱く、周囲の意見に流されてしまうことがある。<第5~8話>
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ライラ【朝井 彩加】:ラウストが抜けた穴を埋めるため「稲妻の剣」に加入した治癒師。治癒師としての腕はラウストより上で、集団治癒や遠隔治癒を施すことができる。これまたどうしてマルグルスの口車なんかに乗ってしまったのか分からないくらいの常識人。<第5~8話>
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ジーク【梅原 裕一郎】:王都のギルドに所属する冒険者。剣の腕はマルグルスをも凌駕する。ライラとは旧知の仲だが、何かしらわだかまりがあるようだ。ギルドの命を受け、何かを探るためにマータットに来たようだが――。<第5~8話>
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マルグルス【土岐 隼一】:パーティー「稲妻の剣」を率いている剣士。短気、単細胞、欲深と良いところの見当たらない男だが、剣の腕前だけは一流である。どういうわけかパーティーのメンバーを次々に見つけてくるので、その意味でも有能なのかもしれない。<第話>
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サーベリア【橋本 鞠衣】:「稲妻の剣」に所属する女盗賊。マルグルスとは恋仲である。マルグルスに比べれば常識をわきまえているが、盗賊だけ に一般人の常識からはかけ離れている。<第話>
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アマースト【引坂 理絵】:冒険者ギルド、マータット支部の職員。絵に描いたような守銭奴で、金に縁のない人間には目もくれない。一方で、金さえ払えばギルドの枠を越えた仕事も請け負ってくれる頼もしい存在でもある。<第5~8話>
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ハンザム【宮田 俊哉】:ミストの右腕として支部を仕切る切れ者。仕事ができない者を容赦なく叱責するため、支部で恐れられている。その矛先はラウストに向かうこともあるが、どうやら両者の間には過去に関わりがあるようで――。<第5・6・8話>
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ラルマ【田村 ゆかり】:〝炎神〟の異名を持つ超一流の魔術師にして、ラウストの師匠。もっとも、ラウストには魔術師としての素養がなく、「馬鹿弟子」呼ばわりしている。ナルセーナとも面識があり、マータットにやって来たのには何か理由がありそうなのだが――。<第5・6話>
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ロナウド【三木 眞一郎】:超一流の剣の使い手であり、ジークの師匠。ラウストにも手ほどきをした過去があり、その意味ではラウストの師匠でもある。ラルマとは長い付き合いであり、彼女のためなら命すらなげうつ覚悟を持っている。<第話>
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シーラ【小坂井 祐莉絵】:メアリーの娘。子供ながらに宿や食堂の手伝いをするしっかり者。口数は少ないが、時にするどい一言を発する。<第5~8話>
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メアリー【ちふゆ】:マータットの街で宿屋兼酒場を切り盛りしている肝っ玉母さん。迷宮都市につきものの迷宮孤児を心に掛ける優しい一面もある。<第5・7・8話>
以上のほかに、第5話から第8話までのエンドクレジットに名前が出ているキャラクター・キャストとして、次の人たちがいます。<>内はその人物が登場(声優が出演)する放送回です。
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キース【小倉 唯】:冒険者になったマータットの迷宮孤児で、シーラの幼なじみ。<第8話>
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冒険者【高橋 伸也/野津山 幸弘/喜屋武 和輝/黒木 紳太郎】:ラウストとナルセーナが向かった冒険者ギルドのマータット支部にいた冒険者たち。<第5話>
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冒険者【高橋 伸也/野津山 幸弘/喜屋武 和輝/林 瑞貴/黒木 紳太郎/紗原 イオ】:キースを囮にしてオークから逃げ出した冒険者、冒険者ギルドでハンザムに文句を言った冒険者、そしてかつてラウストやハンザムを囮にしようとした冒険者たち。<第8話>
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男【野津山 幸宏】:かつて王都でライラがジークとパーティーを組んでいたときにライラを襲った同じパーティーの男。<第7話>
各話のあらすじは、次のとおりで、< >内が公式サイトで紹介されている内容になります。
第5話 そのおせっかい、実は不安の種につき
<マータットの街や迷宮で魔獣関連の異変が頻発するのを危惧したラウストは、冒険者ギルドに対策を講じるように要請する。応対したギルドの上級職員、ハンザムはラウストを相手にしない。それどころか、「怖いのならこの街から出ていけ」と言い放つのだった。>
ラウストとナルセーナは、ジーク、ライラ、アーミアから3人でパーティを組んだことを知らされる。
その後、ラウストは、ヒュドラを倒して得た魔石を売り、ナルセーナにクエストを経験させようとナルセーナと冒険者ギルドに向かうが、ギルドに着くと、そこにいた冒険者たちの雰囲気に違和感を感じる。ラウストがヒュドラを倒したことが噂になっていたのだ。ラウストは、魔石を盗もうとする輩がいると警戒するが、そこに冒険者のマーネルが声を掛け、マルグルスの酷い仕打ちから助けようとせず、無能と罵っていたことを謝罪する。ラウストを軽んじていたことに憤りを感じるナルセーナは楯突くが、ラウストはそれを止め、マーネルと和解する。
魔石を差し出されたアマーストは、貴重な魔石に目を輝かせるが、巨大なマナが必要な変異は普通迷宮の奥深くでなければ起きないが、沼地で変異が起こるのは通常は考えにくいと話す。ラウストは、迷宮で何かが起きているのでは、探索隊を送って原因を探るべきではないかと言うと、そこにやってきたハンザムは、この程度の問題にいちいち対処するほど暇ではない、怖いならこの街から出て行ったらどうだ、と相手にしない。
アマーストは、支部長のミストは高齢すぎて支部長室にこもり切りで、代わりにハンザムが支部を取り仕切っている、仕事はできるが、ちょっとしたミスも見逃さないので職員から怖がられていると話す。
アマーストに尋ねてラウストと募集中のクエストを品定めするナルセーナは、迷宮の中層階の転移陣の近くに住みついたフェニックスの討伐クエストに目を付けるが、アマーストから戦士と魔法使いと治癒師が必要だと言われ、ジークたちのパーティーに協力を持ちかける。ジークとライラは、ラウストを監視するなら一緒に行動できるのは好都合だと賛成し、過去のいきさつから躊躇するアーミアも、ラウストに背中を押され、それを受け入れる。
討伐に向けて買い出しに出たラウストとナルセーナ。そこに、ラルマが姿を現し突然ナルセーナに抱きつく。娘が家出同然で家を飛び出したことを心配したナルセーナの父から様子を見てきてほしいと頼まれたと説明するラルマ。ラウストも、かつての師匠だったラルマの登場に驚く。ナルセーナはラルマは父の古い知り合いだと話し、ラルマに家を出た事情を説明するが、実は、家の者を使ってずっとラウストを監視し、「稲妻の剣」を追放されたと知って、このチャンスは逃せないと家を飛び出したことは、言い出すことができない。ラウストは、冒険者になるのには親の同意が必要、一度家に帰った方がいいのではないか、とナルセーナに勧め、ナルセーナはそうすると二度とこの街に帰ってこられなくなるかもと不安になるが、ラルマは、父は冒険者になること自体は反対していない、あまりにも危険なら連れ戻すよう言われているが、そこはうまく報告しておく、と言い、ラウストに酒を奢らせる。ラウストが酒を買いに席を外した隙に、ラルマはナルセーナから、ラウストの一番凄いのはいつも人のことを考えて、自分のことより優先してしまうこと、自分がラウストを救うためにこの街に来たのに、逆にラウストに救ってもらっていると涙しながら話すのを聞いて、ラウストはだいぶ変わった、いい男になった、それはナルセーナのせい、もう少し一緒にいてみては、と助言する。
2人が去った後、ラルマは、それじゃ本命の仕事に取り掛かるとするか、と呟き、何を企んでいるのか、とミストに会いに向かう。
翌朝、ラウスト、ナルセーナとジークたちのパーティーの5人は、フェニックスの討伐に出発する。
第6話 そのクエスト、実は再起の糸口につき
<ラウストたちは、ギルドから請け負ったフェニックス討伐のために迷宮に入る。計画通りフェニックスに遭遇、戦いが始まる。準備は万端で、次第にフェニックスを追いこむラウストたち。その時、フェニックスが変異してしまい――。>
迷宮にやってきたラウスト、ナルセーナとジークたちのパーティー5人は、フェニックスを探して、最近発見され、まだ誰も探索していない新しい通路にやってくる。そこにフェニックスが住みついて、探索どころではなくなり、冒険者ギルドが懸賞金を掛けたのだ。ラウストがその空間に石を投げると、縄張り意識の強いフェニックスが姿を現す。
そのころ、冒険者ギルドのマータット支部にやってきたラルマは、受付にいたアマーストに支部長に会いたいと言うが、ラルマの正体を知らないアマーストは取り合おうとしない。業を煮やしたラルマは力づくで会わせようとするが、そこに姿を現したハンザムが、本気を出されると建物ごと消し炭にされるぞ、話なら自分が聞くと間に入る。
ラルマは、迷宮で何かが起こっていると指摘し、街のあちこちにある白い塔のような建物は何か尋ねるが、ハンザムはギルドとは無関係だと答える。ラルマは、迷宮都市にとって冒険者ギルドは絶対の権力を持つ組織で、支部長はさながらこの街の王様、なのに街で何が起きているのか分からないのか、と迫るが、ハンザムは、私はただの腰巾着、不満があるのならこの街から出ていったらどうか、と相手にしない。ラルマは、その言葉をとらえて、ガラの悪い冒険者を呼び集める一方で、ギルドのやり方に疑問を持つ全うな冒険者にはまるでこの街にいてもらっては困るかのように出て行けと言う、近いうちにいなくなっても痛くもかゆくもない冒険者が大量に必要になることが起きようとしている、この街で起こっている異変は暴走の予兆だと思うと筋が通る、特に気になるのは魔獣の変異、今この街と迷宮の周りにはどれほどのマナが充満しているのか、とさらに迫るが、ハンザムは知らないフリで押し通し、言質を与えない。
そのころ、迷宮でフェニックスに倒そうとするラウストたちだが、フェニックスは高い場所を旋回して攻撃することができない。火球を放って攻撃するフェニックスに、ジークは、アーミヤに水属性の長距離魔法で翼を撃つよう求め、魔法を撃つには時間がかかるが、自分が守る、手出しはさせない、と告げる。ジークやラウスト、ナルセーナがフェニックスを引きつけ、アーミヤが水属性魔法のウォーターアローを放つと、翼に命中し、フェニックスはダメージを受けるが、充満するマナを吸収して、変異してしまう。ヒュドラに続いて魔獣の変異に遭遇したアーミヤは恐怖で立ちすくんでしまい、ライラは、アーミヤが恐怖に呑まれるとより魔獣を強くしてしまう、そして、恐怖を克服しなければアーミヤの成長はない、と心配するが、どうすればいいか分からない。しかし、アーミヤに向けて放たれる火球をジークの剣が斬り割き、手出しはさせない、この戦いに勝つにはお前の力が必要だ、とジークが呼びかけると、アーミヤは自分の力で立ち上がる。
冒険者ギルドを後にしたラルマは、街のいたるところにある白い塔のような建物に向かい、炎属性の魔法を放つと、この感じは絶対に普通じゃない、一体何なのだと思う。
一方のラウストたち、ナルセーナやラウストが時間を稼ぎ、ライラは治癒魔法でアーミヤを回復させ、アーミヤは氷の魔法・アイスアローを放つ。それが命中してダメージを受けても剣が届く位置までフェニックスは落ちてこないが、ナルセーナが柱を飛び移って高いところまで登り、フェニックスの上から足で攻撃し、墜落したフェニックスをラウストが仕留める。ラウストたちはアーミヤの魔法攻撃のおかげだと感謝し、恐怖を克服したアーミヤは嬉しさで涙を流す。ジークとライラは、今回はラウストが変異しなかったことに、この間は一体何だったのか、もうしばらく様子を見る必要があると話す。
ラウストたちがメアリーの宿に戻ってくると、酒場で強くもない酒を飲んでいたラルマは、アマーストに小銭をやると、ラウストたちがフェニックスを討伐したことなどをペラペラ喋ったと言って、ラウストに食事をおごらせる。そして、酔った勢いで、ナルセーナがアナレストリア伯爵家のお嬢様だと暴露する。それを聞いたラウストは、ナルセーナがかつて自分が助けた女の子だったことに初めて気づく。
そのころ、ハンザムから再び魔獣の変異が起こったこと、炎神ラルマがこの街に現れたことの報告を受けた支部長のミストは、来たか、役立ってもらう時は近い、我が弟子よ、と呟くのだった。
第7話 そのすれ違い、実は巡り逢いにつき
<これまで多くの魔獣を倒してきたことでラウストたちには蓄えができていた。ナルセーナはふたりで一軒家を借りようと提案する。パーティーのメンバーが同じ家に住むことのメリットを口実にしてはいるが、実質はナルセーナによる愛の告白だ。しかし、ラウストの返答は色よいものではなく――。>
冒険者ギルド支部でフェニックスの魔石を売った代金を受け取るナルセーナは、これだけなのかと文句を言うが、アマーストに言われて袋の中身を確認すると、全て金貨だった。ラウストはあまり他人に見せない方がいいと忠告するが、どこかよそよそしい態度だった。
マータットの街角では、人形遣いが子どもたちを前に、迷宮の奥底に潜む邪悪な邪竜に勇者が立ち向かうという人形劇を見せていた。
街中でラウストと食事をするナルセーナは、もらったお金で2人で一軒家を借りようと提案する。かつて、アマーストがお金に余裕があるなら宿屋よりも便利でお得だと勧めていたとナルセーナは話すが、その実、ナルセーナは静かな環境でラウストと語り合いたい、そして愛が芽生えることを夢見ていたのだった。しかし、ラウストは、まだ早いと答え、さらに、ジークから正式にパーティーを組まないかと誘いがあった、ジークは掛け値なしに強い、迷宮の奥深くに行くならぜひとも仲間になってほしいと思っている、パーティーを組むなら勝手に決めるわけにはいかない、とつれない返事をする。
その夜、メアリーの宿の酒場で、ジークたちとパーティー結成のお祝いを開く。眠くなったアーミアを2階の部屋に連れて行こうとするライラに、ナルセーナは相談したいことがあると付いていく。そして、アーミア、ライラと泊まる部屋で、アーミアをベッドに寝かせた後、ナルセーナは家を借りる提案を断られたことを話し、ラウストに嫌われているのでは、と悩みを打ち明けるが、ライラは、そんなことはない、少しずつ距離を縮めたいタイプなのではと否定する。ナルセーナはライラは恋愛経験が豊富そうだと目を輝かせるが、ライラは、本当にそうならいいんだけど・・・と否定する。
そのころ、酒場に残ったラウストも、ジークにナルセーナからの提案について話していた。ジークは慕われているのだから無下にするのも気の毒、嫌いなのか、と話すが、ラウストは、酷い目に遭って将来に絶望していた自分に冒険者を続ける勇気をくれた人と、自信を失いかけていた時にパーティーを組んでくれた人が同一人物だった、嫌いになんてなれるはずがないと話す。ジークが、ナルセーナのことが好きなのでは、と聞くと、ラウストは顔を真っ赤にして照れる。
一方、2階では、ライラが、ジークは感情を表に出さず何を考えているのか分からないと言い、ジークとはずいぶん前に王都で同じパーティーに所属していたが、私目当てでパーティーに入ってくる人間もいて、私を狙っていた男がジークたちが出払っているタイミングを狙って襲ってきた、私がその男を殴り倒し、何事もなかったから、私はさして気にしなかったが、ジークはあんな男をパーティーに迎え入れてしまった自分が許せず、その男を追放した後、私たちの前から姿を消した、とジークとの過去を話す。その話を聞いて眠気が吹き飛んでしまったアーミアも話に加わる。
1階では、ジークが、どんな顔をしてライラに会えばいいのか分からなかった、とライラたちの前から姿を消した理由を話していた。そしてジークは、それなのに、王都のギルドの依頼でやってきたこの町で再会し、自分の頼みを聞いて協力してくれるとは、自分自身では許せなかったが、彼女は許してくれたんだと語る。
2階では、ライラが、私は最初から怒ってなかったのに、勝手に消えてしまった、何であいつは私の気持ちを全然分かってくれないの、と嘆く。そこにやってきたシーラは、好きなんだ、と言い、突然の登場に3人は驚く。
1階の酒場では、アマーストがラウストに依頼を受けていた調査結果を報告にやってくる。
一方、人形劇では、勇者が力尽きようとしていたとき、邪竜を静め眠りにつかせる不思議な力を持つ眠り姫が姿を現す。
1階の酒場では、アマーストが、ナルセーナはアナレストリア伯爵夫妻の一人娘で間違いない、順当にいけば彼女かその配偶者が爵位を継承することになっていたが、ある日突然冒険者になると言い出した、両親も最初は反対していたが、大事件が起きた、と報告を始める。
2階では、ナルセーナが、青い髪は生まれつきではなく、子どものころは両親と同じ金髪だったが、ある朝目が覚めたら青色に変わっていたと話す。
1階では、ラウストが、ナルセーナに気づけなかったのは、成長したのもあったが、何より髪の色が違っていたたからだ、と言うと、アマーストは、原因は不明、ただ、その日を境に伯爵は娘が冒険者になることに反対しなくなった、と話す。ジークが、長生きは望めないからせめて好きなことをやらせてやりたいというのが良くある話、と言うが、アマーストは、死期が迫っているようには見えないが、ちゃんと両親の許しを得て冒険者をやっていると報告し、ラウストから調査料を受け取って去っていく。それを聞いたラウストは、ナルセーナを疑いたくはないが、本人や師匠の話だけでは心もとなかったと言う。
2階では、伯爵令嬢なのに好きな人のために修行して、冒険者になってパーティーを組んで、一緒に同じ家に暮らそうと提案するなんて積極的、自分も見習わないといけないのかな、とライラがこぼすと、ナルセーナ、アーミア、シーラは目を輝かせ、ライラをジークのもとに連れてくる。そして、ライラに思いを告白するよう背中を押す。
ジークに2人きりになったライラは、ジークに人生のパートナーになってほしい、と告白し、その意味に気づいたジークは動揺し、考えておくと答えるが、ライラは、これまで考えたこともなかったのだから、一歩前進、と言う。ドアの外から心配そうに見守っていたナルセーナ、アーミア、シーラの3人も、その様子を見て安心する。そして、ラウストも、明日どこかで時間がほしい、大切な話があるとナルセーナに言い、ナルセーナも、はい、とそれを受け入れる。
一方の人形劇、邪竜を眠らせるためには、眠り姫が身を捧げる必要があった。眠り姫は、勇者が再び世界を救うのを信じて邪竜の前に進み出て、世界は眠り姫の犠牲によってしばしの平穏を手にする。その眠り姫の髪は、ナルセーナと同じ青色だった。
第8話 その男、実は昔なじみにつき
<マータットの迷宮では異変が続いていた。今日も新たな犠牲者が生まれ、それを目の当たりにしたラウストは再度ギルドに対策を要請する。しかし、今回もハンザムに拒絶される。食い下がるラウストに対し、「俺のことを忘れたか?」と問うハンザム。ラウストの記憶が蘇っていく――。>
迷宮でオークに遭遇した冒険者のパーティー。逃げようとすると別のオークも現れ、パーティーのリーダーは、こんな時のために雇ったヤツがいるだろ、と言ってキースを呼び、他のメンバーたちとともにキースをオークの前に引きずり出して囮にし、その隙に逃走していく。
メアリーの宿での朝食で、ナルセーナは、前日にラウストに大切な話があると言われ、いつその話をされるのか気になって、心ここにあらずという感じになっていた。それを見かねたジークとライラは、ラウストに早く終わらせるよう急がせ、ラウストは仕方なく、照れながらその話を切り出そうとするが、そこに、傷だらけになって何とかたどり着いたキースが、助けて、と倒れ込み、話はうやむやになってしまう。
ライラとシーラが付きっきりで看病し、メアリーはラウストたちに、キースは迷宮孤児でシーラの幼なじみであること、最近どこかのパーティーに入れてもらえて喜んでいたことなどを話す。それを聞いて、かつての自分と同じように囮にされたのだと勘付いたラウストはさっきの話の続きは後にするとナルセーナに告げて、冒険者ギルド支部に向かう。
冒険者ギルドでは、ラウストの頼みを受けたマーネルたちが、キースを囮にした冒険者たちを縄で縛り上げていた。ラウストは、これ以上手荒な真似はしなくていい、と話し、二度とこの町に来るなと言って縄を切り、町から追放する。アマーストは、冒険者同士のいざこざを勝手に解決するのはいい加減にしてほしい、見てみぬフリをするのは限界があると注意するが、マーネルはギルドが仕事をさぼっているからだ、と文句を言うが、そこに現れたハンザムは、トラブルをギルドに申告せず、私刑とも言える処分を下すなど言語道断、追放されるべきはお前たちの方ではないか、と厳しい言葉を投げる。いきり立つ冒険者たちを抑えて、ラウストは自分が話をつけると言ってハンザムの部屋に向かう。
ラウストはハンザムに、トラブルの内容を報告し、どうして他のギルドのように対策を取らないのかと責めるが、ハンザムは、結果が望めない対策に貴重な資金や人材を投入するわけにはいかない、と拒否し、嫌ならこの町から出て行けばいい、と改めて告げる。そして、俺のことを忘れたか、と言って怪我の痕が残る左腕を見せる。
それを見たラウストは、ハンザムがかつて同じパーティにいたノグゼムであることに気づき、当時の記憶が蘇る。
当時はノグゼムという名だったハンザムは、金に釣られて入った冒険者パーティーでラウストとともに荷物運びや見張りをさせられていた。
森で野営した夜、ラウストがゴブリンの大群が近づいてきているのに気づき、ハンザムに他のメンバーを起こすよう頼むが、パーティーのメンバーは、ラウストとハンザムを崖から突き落とし、2人を囮にして逃げていく。ラウストは、生きて帰って文句を言ってやろう、とハンザムを元気づけてともに戦い、負傷しながらも大きな木の幹の中に隠れる。
ハンザムは、結局俺たちはあいつらの言うとおり無能だったのか、と嘆くが、ラウストは、あの人たちは逃げきれない、あまり知られていないが、ゴブリンが群れで狩りをするときには数の多い集団を狙う習性がある、隠れていればそのうち僕たちのいたパーティーを見つけてそっちを追うはずだと語る。間もなく、その言葉どおり、パーティーを見つけたゴブリンの集団はラウストたちの周りから移動してパーティーを襲う。
ハンザムは、今じゃあいつらが俺たちが逃げるための囮ってわけか、ざまあみろ、と言うが、ラウストは、ハンザムの腕の負傷が思いのほか重いことに気づき、回復魔法をかける。ハンザムは、ゴブリンが戻ってくる、お前だけでも逃げろ、無能な奴は死んで当然、そんなの最初から覚悟の上、無能に生きていく権利はない、世界はそんなふうにできているんだ、と言ってラウストを逃がそうとするが、ラウストは、そんなことはない、確かに世界は無能に厳しいが救いはある、と聞かず、回復魔法をかけ続ける。どうしてそう言い切れるのかと問うハンザムにラウストは、自分が一度救われているからだ、と言い、その後、2人で協力してゴブリンの包囲を突破したのだった。
ハンザムは、無能だった俺にお前は救いをもたらした、あの後俺たちはそれきりになったが、俺はあるときから1人の老人の世話になるようになり、その人からいろいろなことを学んだ俺は、いつしかいっぱしの人間になっていた、その老人とはこの支部の支部長ミストだと話す。ラウストは、今じゃ支部長の右腕、凄い出世じゃないか、良かったな、と褒めるが、ハンザムは、まだ思い違いをしているようだ、昔話をしたのは思い出を語り合いたいわけじゃない、あのときの借りを返すためだ、と言い、一刻も早くこの町を出ろ、ナルセーナも連れて行け、これが俺ができる最大の救い、最後の忠告だ、と告げる。
ハンザムの部屋を出てマーネルたちのもとに戻ったラウストに、アマーストが声をかけ、このギルドの中にも支部長やハンザムのやり方に反発する人は少なくないと言い、ハンザムが対策を講じようとしない街道近くの魔獣退治や冒険者同士のトラブルの対応について相談し、話がまとまる。
宿に戻ったラウストは、それをナルセーナに報告し、明日からは街道近くの魔獣退治をすることを伝える。
一方、宿では、ジークが回復したキースや近所の子どもたちに剣を押して、ナルセーナも拳を教える。ラウストの話は打ちかけのままうやむやになっていたが、ナルセーナの様子はすっかり普段どおりに戻っていた。
そのころ、支部長室では、ハンザムがミストに王都の宰相からの手紙を渡す。その内容は、アナレストリアの娘から目を離すな、という念押しだった。ハンザムは、眠り姫は一国の宰相が執着するような存在なのか、と尋ねると、ミストは、邪竜と眠り姫の話では眠り姫は自らを犠牲にして世界に平和をもたらす、それはおとぎ話でも作り話でもない、青い髪は神に選ばれし証、今この世界において邪竜を鎮めることのできる唯一にして絶対の存在、と語るのだった。
続きはまた改めて。