テレビアニメ「転生貴族、鑑定スキルで成り上がる」第2期、序盤の第16話(第2期の第4話)までに続いて、11月3日(日)から11月24日(日)にかけて放送された(なお、10月27日(日)は、衆議院議員総選挙の開票速報の番組編成上の都合で放送がありませんでした)、中盤の第17話から第20話まで(第2期の第5話から第8話まで)を紹介します。
繰り返しになりますが、小説投稿サイト「小説家になろう」に2019年10月から連載され、2020年7月から講談社のKラノベブックスから単行本が刊行されている未来人Aのライトノベル「転生貴族、鑑定スキルで成り上がる〜弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた〜」を原作にテレビアニメ化された作品で、第2期は2024年10月から12月までの2024秋クール(初回は1週前倒しの9月29日(日))に同じくTBSテレビなどで放送されています。
主要スタッフは、監督:加戸誉夫、シリーズ構成:中西やすひろ、キャラクターデザイン:八尋裕子、サブキャラクターデザイン:坂﨑忠・堀たえ子・山岡信一、アニメーション制作:studio MOTHERなど。
公式サイトで紹介されている主要キャラクター・キャストのうち、第17話から第20話までのエンドクレジットに名前が出ているのは、次のとおりです。<>内はその人物が登場(声優が出演)する放送回です。
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アルス・ローベント【藤原 夏海】:異世界に転生し“鑑定スキル”を手に入れた、弱小貴族・ローベント家の長男。そのスキルを活かして世に埋もれる「逸材」を家臣にスカウトし、乱世の中で誰にも負けない最強の領地作りを目指していく。<第17~20話>
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リーツ・ミューセス【坂 泰斗】:差別を受けているマルカ人の少年。誰の助けも得られず路頭に迷っていたところで、アルスとの運命的な出会いを果たす。<第17~20話>
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シャーロット・レイス【佳穂 成美】:城郭都市カナレで身寄りもなく暮らしていた孤児の少女。とある事情で奴隷商人から逃げていたところを、アルスたちに助けられる。<第17~20話>
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ロセル・キーシャ【岡咲 美保】:狩りで生計を立てるキーシャ家に、末っ子として生まれた少年。他の兄弟とは違って体が弱く臆病だったため、家族からは才能がないと思われている。<第17~20話>
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リシア・プレイド(第14話以降はリシア・ローベント)【花澤 香菜】:カナレ郡トルベキスタの領主・ハマンドの娘でアルスの許嫁。愛嬌があり、文句のつけどころがない可憐な少女だが…!?<第18~20話>
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ミレーユ・グランジオン【生天目 仁美】:諸国を旅しながら、うまい酒を飲み歩いている謎の女。超絶マイペースな性格のせいで周囲とのトラブルが絶えない。<第17~20話>
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ファム【戸松 遥】:情報収集が得意な傭兵団「シャドー」の団長。気に入った依頼しか受けないが、“鑑定スキル”を持つアルスには興味があるよう。<第17・19・20話>
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ルメイル・パイレス【てらそま まさき】:ミーシアン州カナレ郡長。まだ若いながらも優秀な家臣を率いるアルスに期待を寄せている。<第17~20話>
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メナス・レナード【玉井 勇輝】:カナレ郡長ルメイルの家臣。ルメイルに足りない部分を補う形でカナレの統治を補佐している。<第17・19話>
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クラン・サレマキア【井上 和彦】:ミーシアン州総督の長男で貿易都市センプラーを治めている。弟バサマークとの戦に勝利し「ミーシアン国」を創るという野望を持つ。<第17・18話>
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トーマス・グランジオン【間宮 康弘】:バサマークの家臣でミレーユの弟。バサマークに忠誠を誓っており、勝利のためなら自らの犠牲も厭わない。<第17話>
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セレナ・バンドル【田中 有紀】:サムク郡長長女。責任感が強く、領主として領地を守るために命を懸けて戦うべきだと考えている。<第17話>
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シン・セイマーロ【加藤 渉】:サムク郡でアルスが出会った香具師。高度な技術を持っており、人が空を飛べるようになることを夢みている。<第18話>
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リューパ・ルーズトン【前野 智昭】:バサマークから任命された、バルドセン砦の指揮官。クランからもその実力が認められているほどの名将。<第18~20話>
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クラマント・メイトロー三世【中村 悠一】:戦闘専門の傭兵団メイトロー傭兵団団長。「メイトローの戦鬼」の異名を持ち、圧倒的な武勇を誇る。<第19・20話>
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ダン・アレースト【山根 雅史/廣原 ふう(幼少期)】:ロルト城主ジャンの異母兄弟で騎兵隊隊長。リーツに匹敵するほどの戦闘能力を持つ。<第18~20話>※幼少期は第19話のみ
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ジャン・テンドリー【梅原 裕一郎/首藤 志奈(幼少期)】:ロルト城主でダンの異母兄弟。常に冷静な策略家で、田舎の騎馬民族から貴族へと成り上がった実力者。<第18~20話>※幼少期は第19話のみ
以上のほかに、第17話から第20話までのエンドクレジットに名前が出ているキャラクター・キャストとして、次の人たちがいます。<>内はその人物が登場(声優が出演)する放送回です。
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フレードル・バンドル【菊池 康弘】:バサマーク側に付くサムク郡長で、セレナの父。<第17話>
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アン【佐々木 未来】:ローベント家のメイド。<第18話>
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マリア【千本木 彩花】:ロルト城で人質となっていたリューパの妻。<第19・20話>
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ビリー【降旗 雄司】:アルスたちとともにロルト城の戦いに向かったランベルク兵。<第19話>
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ヘンリー【佐久間 元輝】:アルスたちとともにロルト城の戦いに向かったランベルク兵。<第19話>
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グレン【宮田 忠吉】:アルスたちとともにロルト城の戦いに向かったランベルク兵。<第19話>
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ドーソン【今川 柊稀】:アルスたちとともにロルト城の戦いに向かったランベルク兵。<第20話>
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クラン特攻隊長【山本 彬】:クラン軍の戦闘で兵士に突撃を命じた特攻隊長。<第17話>
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サムク隊長【藤井 隼】:サムク城の上に装備されていた大砲を担当していた隊長。<第17話>
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サムク兵【降旗 雄司】:サムク城の上に装備された大砲を担当していた砲兵。<第17話>
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トーマスの部下【中山 祥徳】:フレードルがトーマスの命に従わないことが許せず斬りかかったトーマスの部下。<第17話>
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サムク町人【こばたけ まさふみ/佐々木 奈緒】:アルスとリーツが出かけたサムクの町にいた町人たち。<第18話>
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バルドセン砦兵士【中山 祥徳/杉林 晟人】:リューパが死守を命ぜられたバルドセン砦の兵士。<第18話>
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ロルト城兵士【富士渕 将行】:ジャンにリューパからの書状を報告した兵士。<第19話>
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ロルト城兵士【中山 祥徳】:マリアたち人質に戦が始まったこと告げたロルト城の兵士。<第19話>
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ロルト城兵士【高橋 伸也】:用水路が壊されたことを告げたロルト城の兵士。<第20話>
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騎兵隊【真野 拓実】:ダンの部下のロルト軍の騎兵。<第19・20話>
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騎兵隊【富士渕 将行】:アルスたちを追って森の中に追撃したロルト軍の騎兵。<第20話>
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ロルト軍兵士【降旗 雄司/杉林 晟人】:アルスたちを追って森の中に追撃したロルト軍の兵士。<第20話>
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ランベルク軍兵士【中山 祥徳】:ミレーユとともにロルト軍を攪乱したランベルク軍兵士。<第20話>
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メイトロー傭兵【山本 彬】:ジャンを倒そうとした傭兵。<第20話>
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軍医【菊池 康弘】:倒れたリューパを手当てした軍医。<第20話>
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ナレーション【東地 宏樹】<第17話>
各話のあらすじは、次のとおりで、< >内が公式サイトで紹介されている内容になります。
第17話 サムク城攻略
<ワクマクロ砦を陥落させたアルスたちは、いよいよサムク城の攻略へと動き出す。 しかし、サムク城ではバサマークの右腕と称されるトーマスが指揮を執っていたのだった。>
戦争の意義
サムク城で、ワクマクロ砦が落ちたとの知らせを聞いたトーマス・グランジオンは驚き、フレードル・バンドルは娘・セレナの身を案じる。
ワクマクロ砦では、指揮官のセレナをはじめとする降伏したサムク軍の兵士の処遇について、クランは、戦が終わるまで捕虜にするのは負担が大きい、全員処刑すると言い、セレナも死ぬ覚悟はできている、すぐに殺せと言うが、アルスは、殺す方がリスクがある、もとは同じミーシアンの民、殺せば遺恨が残り国をひとつにすることができない、とそれに反対し。その意を酌んだロセルは、鑑定して優秀な人はスカウトし、その他の者は武装解除して捕虜交換することを提案する。クランはその提案を採用し、アルスはセレナに、領民がいる限り領主としての責任を放棄してはいけない、領地の再建も領主の仕事、戦争が終わったら一緒にいい国を作っていこうと呼びかける。セレナは恥ずべき生より名誉ある死をという自分の考えは変わらないと言うが、シャーロットはセレナの防御魔法を誰も傷つけない領主らしい魔法だと賞賛する。クランは、サムク城に帰ったら、このままバサマークの下にいるか今後は自分に従うか、答えは明朝まで待つ、これは最後のチャンスだとフレードルに伝えるようセレナに告げる。
サムク兵たちの鑑定を終えてアルスが部屋に戻ると、ファムが訪ねてきていた。ファムは、サムク城は鉄壁の門と呼ばれる城門を突破しないと中に攻め入るのは難しく、籠城して戦う可能性が高いこと、そして、トーマスが指揮を執っていることを伝える。それを聞いたロセルは何かいい策がないか考える。
そのころ、捕虜の交換でサムク城に戻ったセレナは、ワクマクロ砦を死守できなかったことを謝罪するが、娘の生還を喜ぶフレードルに忸怩たる思いを抱き、私を咎めてください、どうして変わってしまったのかと訴える。
翌日、サムク城に兵を進めたクランは、全軍突撃を命じる。大砲を担当していたサムク隊長は馬鹿な奴らだ、鉄壁の門を破った奴は誰もいない、と余裕だったが、鉄壁の門が開かれ、クラン軍は城の中に攻め入る。正面突破は難しいと考えたロセルの発案で、捕虜交換に紛れてファムが忍び込み、内側から門を開けたのだ。
その知らせを聞いたセレナは抵抗を決意するが、フレードルは全軍降伏を命令する。自分が13歳の頃には、戦場では何よりも勇気が大事だと語っていたフレードルが、この地が戦場になると知って弱気になったことで、裏切られたと感じていたセレナは、ここで戦うとフレードルに詰め寄る。そこにやってきたトーマスは、この城はもう駄目だ、しかし、お前たちが負けようとも必ず勝てる策があると言う。
トーマスの策
そしてトーマスは、フレードルに爆破魔法の触媒器を手渡し、クラン軍を道連れに城を爆破するよう命ずる。しかし、フレードルは、その触媒器を踏みつぶし、領地のためと思いこれまで従ってきたが、これでは本末転倒、我が民が傷つくのは断じて容認できない、と拒否する。トーマスは、これだから弱者は嫌いだと言い捨てて出て行く。
入城したクランに、フレードルは全面降伏を告げ、兵士たちの命だけは助けてほしいと懇願するが、クランは、我が軍に参加してほしいと呼びかけ、フレードルはそれを受け入れる。セレナはアルスに、我々の負けだが、まだ終わりではない、これからもっと強い領地を作ると語る。
そのころ、城を見下ろす高台にいたトーマスは、呑気に和平を結ぶとは馬鹿な奴らだ、ともう1つ持っていた触媒器を作動させるが、爆発したのは城でなかった。
終戦と未来
ワクマクロ砦の戦いで時間を稼ごうとしたトーマスの作戦から、城を爆破しようとしていると気づいたロセルが、城内に仕掛けられた爆破装置をファムに頼んで城の外に移動してもらったのだ。アルスはなぜ自分にも黙っていたのかと漏らすが、ミレーユは、黙っていたのは確証のない仮説で進軍の邪魔をさせないため、自分なら思いつきたくもない策に気づくとは短期間で成長した、とフォローする。
その光景を眺めるセレナに、フレードルは、我が軍の立場を少しでも良くしようと迎合してがっかりさせたことを詫びる。セレナは、これまで頭を下げる父は見たくなかったが、ただの命知らずは勇気とは呼ばない、剣を収めることも勇気なのだとアルスから教えられたと話し、父娘は和解する。
サムク郡でのクラン陣営勝利の知らせはまたたく間に広まり、アルスは初陣にもかかわらず最も成果を上げたとミーシアン中に伝えられたのだった。
第18話 進化
<サムク郡攻略後、サムクの街を散策していると、アルスの“鑑定スキル”に異変が起きる。 そんな中、クラン陣営は大都市ベルツドへの侵攻を開始することに ――>
ランベルク領のローベントの屋敷では、リシアがアンからアルスの大勝利の知らせを聞く。リシアは、アンの前では、領主の妻たるもの1つの戦に一喜一憂してはいけない、と落ち着いている風を装い、アンが部屋を出た後、ひとり小躍りして喜ぶが、その様子を再びドアを開けたアンに目撃されてしまう。
そのころ、サムク城では、クランが兵士たちに補給も兼ねて3日間の休暇を与える。ミレーユとシャルロットは酒場に行って思う存分飲み食いし、ロセルは図書館に籠って本に目を輝かせる。
サムクの少年
アルスは、同伴するリーツとともにサムクの街を見に出かける。戦争があったばかりなのに生き生きしている街の人たちを見て、心から安心できるよう早く戦争を終わらせたいと思うアルス。そんな中、街中で的屋に人だかりができているのを見かけたアルスたちがそれを覗いてみると、1人の少年が魔力石で動くからくりを見せていた。空飛ぶ船は墜落して壊れてしまうが、風の魔力石で動く鳥のからくりを見て、ちゃんと設計してかなり精巧に作られていることに目を輝かせたアルスは、小麦が1年分買える金貨3枚という高額にもかかわらず、それを買う。凄い技術者かもと思って鑑定スキルを発動させようとするが、ステータスなどを読み取ることができない。
休暇が終わり、サムク城でセンプラー、アルカンテスと並ぶ3大都市の1つであるベルツド攻略の作戦を練るクランは、豪雪地帯にあるベルツドを冬になる前に落とすため、舞台を二分して、一方はベルツドを守る最大の城であるスターツ城、もう一方はその北西にあるロルト城を攻め、その2つを押さえた後にベルツドに攻め入ることを決め、ロルト城の侵攻をルメイルとアルスに任せる。
調略
アルスたちはロルト城攻略の作戦を考える。ロルト城の周りにはいくつもの砦があるが、ロセルは、調略できることに越したことはないと、まずは会談の機会を設ける作戦を考えるが、砦を守る相手方からは断りの返事ばかりが届く。ルメイルは攻め入るしかないと考えるが、そこに、それなりの地位の者が使者として来ることを条件に会談を受け入れる返事が届く。それは、クランが最後まで敵から引き抜こうとしていた名将リューパ・ルーズトンが指揮しているバルドセン砦からの返事だった。ルメイルも、もし協力が得られれば非常に頼りになる、と話し、アルスに交渉役を任せる。
リーツ、ミレーユたちを連れてバルセドン砦に赴いたアルスは、砦の入口で守る兵士たちと一触即発の空気になり、一旦は出直そうと考えるが、ミレーユは、我々に一番近い場所にあるのに書状が届いたのは一番後、すぐには決断できない理由があるはず、相手の真意がつかめれば最高の交渉材料になる、と助言し、覚悟を決めたアルスは、剣を置いて砦の中に向けて呼びかけると、門が開き、リューパはアルスたちを砦の中に引き入れ、応接室まで案内する。
リューパを鑑定しようとするアルスは、一度はうまくいかないが、再び試みると、これまで見えていたステータスなどに加えて、プロフィールも見えるように進化していた。リューパに妻がいることを読み取ったアルスは、砦には女性がいるようには見えないことに、考えを巡らせる。そして、待合室として案内された部屋に、子ども用の品物があるを見て何かに思い当たったアルスは、この交渉はうまく行く気がするとリーツたちに行って応接室に向かう。
推理
応接室で交渉のテーブルにつくと、最初にこちらが不利になる要求は一切呑めないと言うリューパに、アルスは、ロルト城にいる奥様はお元気ですか、もうすぐお子さんも生まれるになるのですよね、出産はいつ頃の予定ですか?と想定外の質問をリューパに投げかける。憤ったリューパがテーブルを叩いて立ち上がり、周囲の兵士は槍をアルスに向けるが、アルスは動じずに、会談は建前で最初から自分たちを殺すつもりだったのではないか、砦を死守させるため奥様は人質としてロルト城に囚われているのではないか、寝返れば奥様は殺されるから戦うしかないが、戦えば死んで子どもに会うことができない、すぐに自分たちを殺さなかったのは迷っているからだ、と更に続ける。
それを聞いたリューパは、この砦は見捨てられている、死ぬ覚悟はできているが、一度いいから父として子どもを抱いてみたいと悩む心の内を明かす。アルスは、クランも実力を認めた名将、貴方の力を借りたい、自分たちがロルト城に潜入して奥様を救出する、自分たちにチャンスをいただきたい、と提案し、リューパは、頼む、妻を救ってくれ、と頭を下げる。
そのころ、ロルト城では、将軍のダン・アレーストが城主のジャン・テンドリーに、女たちを人質にとるのは本当に必要だったのか、と尋ねるが、ジャンは、砦の連中がやる気になるように効率的な方法を採っただけだ、と語るのだった。
第19話 ロルト城の脅威
<アルスは進化した“鑑定スキル”を駆使し見事にリューパの真の目的を見抜いた。 そんな時、ロルト城攻略に向け、クランから「最強の援軍」が送られてきて――>
サムク城では、アルスがルメイルたちに交渉の結果を報告し、新しくなった鑑定スキルでリューパの迷いに気づくことができたと話す。そこに、クランから送られてきたクラマント・メイトロー三世が姿を現し、アルスはその圧倒的な武勇スキルに驚く。クラマントは、戦闘専門の傭兵団であるメイトロー傭兵団の団長で、我々は報酬の対価として働くだけ、お前たちの仲間になるつもりはない、と言い放ち、ミーシアンの兵について、戦闘に対する意識が甘い、死ぬ覚悟を持っている者がいないと指摘し、危険な仕事は我々に回せ、報酬以上の働きは見せよう、と豪語する。
ルメイルは、クラマントを宥め、人質救出についての軍議を始める。ロルト城には1万の兵がおり、ファムたちシャドーが潜入して救出するのは困難とみて、ロルト城の兵全員が外に出ざるを得ない状況を作り、人質救出と同時に速攻でロルト城を制圧できないかと考え、ロセルはある作戦を立てる。
そのころ、ロルト城では、バルドセン砦にルメイルが使者を送ったが、リューパは降伏に応じず、包囲するカナレ軍とにらみ合いになっていると報告される。ジャンは、そのまま冬になってくれれば我々の勝ちだ、とほくそ笑むが、そこに血の付いたリューパからの書状が届く。そこには、カナレ軍は凄腕の魔法兵の力を使い、残りの5,000の兵でロルト城に攻め入ろうとしていると書かれていた。籠城しても破られる可能性があると考えたジャンは、野戦に出て接近戦に持ち込む判断を下し、ダンにその指揮を任せる。
一方、バルドセン砦では、リューパがアルスに、ロルト城に書状を送らせたこと、周りの砦には作戦を伝えてカナレ軍に手を出さないよう指示したことを伝える。自分も出陣しようとするリューパにアルスは、出陣すれば裏切ったことが分かってしまうと、作戦が終わるまで待機するよう伝える。
ロセルが立てた作戦は、先行した5,000の部隊で敵をおびき出し、負けそうなふりをして偽装退却、後方の森で待機している残り5,000と合流して一気に敵を叩き、ロルト城に兵士がいなくなった隙にシャドーが城に潜入して人質を救出するというものだった。ただ、敵の攻撃をかわしながら逃げる偽装退却は想像以上に困難で、逃げきれず崩壊する危険もあった。しかも、敵をおびき出すためには、アルスやルメイルが出陣し、別動隊ではなく本部隊だと信じ込ませる必要があった。
野戦
アルスとルメイル率いる先行隊は、ダン率いる騎兵隊が待ち構えるロルト城への侵攻を開始する。アルスはダンを始めとする騎兵の高い武勇スキルに驚く。
一方、ロルト城で人質となっているリューパの妻たちのもとに兵士がやってきて、クラン軍との戦の開始を伝えて移動を命じるが、そこに潜入してきたファム率いるシャドーが兵士を倒す。女性たちは恐怖で混乱するが、ファムは、お前たちを家族のもとに返す任務でここに来たと告げる。
そのころ、ルメイルは先行部隊に撤退を命じる。騎兵隊の機動力に自信を持つダンは、それを追おうとするが、ジャンは退却が偽装であることを見抜き、ダンに回り込んで敵の部隊を2つに分断するよう命ずる。騎兵の1人は、ジャンの実力に疑問を呈するが、ダンは、ジャンは自分よりもよほど恐ろしい人だ、かつて、懸賞金の掛かっていた父を殺してその首を献上することで貴族に取り立てられたのだと話す。
騎兵隊
偽装退却を続けるアルスたち先行軍は、森までもう少しというところで、ダン率いる騎兵隊に追いつかれ、部隊を分断される。そして、ジャンは逃れるカナレ兵を次々と殺していき、部隊の3分の1は戦闘不能となり、崩壊寸前に追い込まれる。ルメイルは、クラマントへの応援要請を持ち掛けるが、アルスはそれを拒み、作戦を続行する。
思わぬ援軍
退却を続ける中、ロセルは敵の姿はいなくなったことに気づく。すると、ダンが崖の上から斧を持ってアルスに斬りかかる。しかし、追いついたリーツがそれを防ぎ、カナレ軍の士気は上がるが、前から敵の援軍が向かってくる。これで終わりかと思ったアルスだったが、その援軍はリューパ率いる一軍で、アルスたちの応援に駆け付けたのだ。思わぬ援軍に形勢は逆転し、ダンは退却を命ずる。アルスは、どうして来てしまったのか、助かったが、裏切りがバレてしまう、自ら退路を断ってしまった、と責めるが、リューパは、そういうところに打たれたのだと言い、ミーシアンは危機にある、危機は人々の視野を狭め、他人を思う余裕をなくしてしてしまう、だが、アルスは命がけで我が妻を救おうとしている、その姿を見せられて。動かずにいられない、後悔はない、能ある将に仕えることは何にも代えがたい名誉、其方に私の命を預けると語る。
一方、ロルト城では、ファムたちが人質となっていた女性たちを逃がしていたが、最後の1人となったリューパの妻・マリアを脱出させようとしたその時、ダンからの連絡で人質が逃げたことに気づいた城内で、人質は見つけ次第殺すよう指示が下りる。
第20話 家族
<ファムたちの人質救出作戦のために、命がけの偽装退却をやってのけたアルスたち。 それを見た「メイトロー傭兵団」のクラマントたちはアルスを認め、遂に戦闘を開始する。>
森に向かうアルスたちランベルク軍は、リューパの加勢で危機を脱するが、リューパは退却するダンが放った矢を背中に受けて負傷していた。
その頃、ロルト城では、脱出した人質の妻たちを探す兵士に見つからないよう物陰に姿を隠すファムとマリアだったが、マリアが産気づいてしまう。服を噛んで声を出さないよう耐えるマリアとファムの隠れ場所に兵士が近づいてくるが、東塔の用水路が壊されている、人質はその先だ、との知らせに、兵士たちは駆け出していき、一難を逃れる。
一方のアルスたちは、森まで偽装退却することに成功し、ルメイルはアルスの功績を称える。リーツは敵は偽装退却に気づいた様子だと報告するが、ロセルは、敵は追いかけてくる、そろそろ僕とミレーユの作戦が発動されるはずだと言う。
偽装退却に気づいていたジャンは、森に入れば敵の思う壺だと城まで撤退するよう命ずるが、戦果を焦る騎士たちはジャンの命令を無視して森に進んでいく。リーツの首を取ると意気込むダンも森に入っていき、慌てたジャンもやむなく森に進む。実は、最初に森に進んでいった騎士は、ロルト軍騎士に扮したミレーユだった。ロセルとミレーユが戦いの前に、勝ち戦を収めた兵にとって足を止めることはとても難しい、と立てた作戦だったのだ。
メイトロー傭兵団
アルスたちがメイトロー傭兵団が待つ場所までたどり着くと、クラマント率いる傭兵団が追撃してくるロルト軍の兵士たちを倒していく。その強さに、アルスは、凄い人が味方に付いていた、と思う。
決闘
そして、追撃するダンは傭兵団を突破してアルスに斬りかかろうとするが、リーツがそれを守り、リーツと1対1の決闘になる。ダンはリーツを追い詰めるが、斬りかかったダンの斧が木の幹に刺さった隙にリーツはダンを倒す。武勇のステータスはほぼ互角だったが、知略で勝ったのだ。
そこに、ジャンが本部隊を率いて攻め込んでくる。ダンが捕らえられているのを見て怒ったジャンはクラマントに斬りかかるが、クラマントの一撃で投げ飛ばされ、捕らえられてしまう。ジャンまで捕らえられたことで、ロルト軍の兵士たちは戦意を喪失し、投降する。
生き残ったロルト軍の兵士たちを捕虜にし、アルスは、味方の兵士たちを前に、厳しい戦いだったが、勝利をつかんだ、と宣言し、兵士たちは勝どきを上げる。負けたのは自分のせいだと悔やむダンは短剣で自害しようとするが、それをジャンが止め、ダンが森に進んだ時、見捨てる選択肢もあったが、そのとき、幼い頃にダンがくれたスープの味を思い出した、たぶん俺はお前が生きていてくれてほっとしているんだ、と語り、自害を思いとどまったダンは、この戦いが終わったら一緒に故郷に帰ろう、と言い、捕虜としてセンプラーに送られることになる。
アルスはリューパに改めて感謝の思いを伝えるが、リューパは背中の負傷のせいで倒れてしまう。軍医が止血するが、血をだいぶ失って意識を失うと危険な状態だった。リュウーパは、自分には夢がある、いつか戦争が終わってこの国が平和になったら、妻や子と小さな家に住むのだ、そのために戦ったのだから悔いはない、と語り、薄れていく意識の中で、マリアの姿が浮かぶと、マリアが必死に声をかけ、意識を取り戻したリューパはマリアを抱きしめる。そして、マリアが生んだ子を取り上げたファムが、生まれたばかりの子をリューパに渡し、リューパとマリアは我が子を見て涙を流す。
弔い
戦いが終わり、命を失った味方と敵の兵士を埋葬したルメイルたち。アルスは、今回の戦いはこれまでにない激しい戦いだった、窮地の中でも諦めずに戦ったことで、僕たちは以前にも増して強くなれた、しかし、あまりにも多くの兵士が戦死した。犠牲は仕方のないことだが、犠牲者にも僕たちと同じように大切な家族や守るべきものがあったはず、犠牲を無駄にしないためにも、僕たちは必ず良い未来を作らなければならない、全員が納得する未来が来るまで勝利し続けよう、と語り、花を手向ける。
その夜、野営するテントの中で、アルスは戦死した兵士の家族に向けた手紙を書いていた。リーツが何をしているか尋ねると、帰りを待っている人がいるが叶わなかった、せめて彼らがどんな活躍をし、どんな最期を遂げたのか伝えたいと話し、涙する。こんなところを見せたら父上に呆れられるだろう、と言うアルスに、リーツはその肩を叩き、僕たちには見せてくれていいのですよ、と声をかけ、手紙を書くのを手伝うのだった。
続きはまた改めて。