鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

「この世界の片隅に」&「アリーテ姫」@土浦セントラルシネマズ

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お盆の連休に、土浦セントラルシネマズに、再び行ってきました。

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この世界の片隅に」をもう900日以上も上映し続けて、今や「聖地」の1つとなっているこの映画館。ここがなければ連続上映1000日というとてつもない記録は生まれていませんでした。8/8(木)から8/18(日)の11日間は、「夏の特別上映 片渕監督名作劇場」と題して、片渕監督の前作「マイマイ新子と千年の魔法」と「アリーテ姫」を同時上映しています。

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マイマイ新子と千年の魔法」は家でもスクリーンでも観たことがありますが、「アリーテ姫」は観たことがなくて、近くのレンタルDVD店にも置いていないので、「この世界の片隅に」と併せて観てみることにしました。

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この日の上映時間。

この前日には、片渕監督が来訪されて、「この世界の片隅に」の上映後に舞台挨拶&サイン会、「アリーテ姫」と「マイマイ新子と千年の魔法」の上映前にそれぞれ舞台挨拶と、お祭りのような1日だったようですが、この日は至って静かです。

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券売機前の廊下に並ぶ各作品のポスターには、前日に書かれたのでしょう。すべて片渕監督のサインがありました。

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廊下やロビーの展示は、前回、4月末に来た時よりもさらに充実した印象です。

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ロビーの壁には、前日に書かれた片渕監督のサイン&イラストも。

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上映時間の5分ちょっと前にスクリーンに入ると、誰もいません。このスクリーンで「この世界の片隅に」を観るのは5回目ですが、これまで来た時には、少ない時でも5人くらいはお客さんがいたので、お盆とはいえ世間的には休日のこんな日に他に誰もいないとは全く予想してませんでした。前日は200人くらい入ったようですので、その反動もあったのでしょうか。休日ですらこんな日があるのですから、900日を超える上映の中には、お客さんが1人もいない上映も少なからずあったのかもしれません。

貸切り状態のまま、上映時間に。塚本晋也監督のビデオメッセージ、「野火」予告編、「斬、」予告編、「この世界の片隅に」予告編、映画泥棒を経て、本編が始まります。

約300席の大きいスクリーンを1人で独占して観るのは変な気分で、途中何度か、本当に誰もいないのだろうかと周囲を見回してしまいましたが、やっぱり一人きり。冷房がよく効いて寒いくらいでしたが、周りを全く気にすることなく、この大画面で観ることができたのは得難い体験でした。これまでよりもとてもたくさん泣きました。

本編の後、「すずさんのありがとう」、「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が流れて上映が終了したときには、もう12時20分を過ぎていました。一回外に出てチケットを買い直し、12時30分からの「アリーテ姫」の上映に臨みます。こちらは私を含め4人のお客さん。こちらの方は、時間になると、予告編も映画泥棒もなく、すぐに本編上映が始まりました。

アリーテ姫」は、2001年7月21日(土)公開の作品。ダイアナ・コールスの童話「アリーテ姫の冒険」を原作に、片渕監督の脚本でアニメ化したもので、アニメーション制作はSTUDIO 4℃。最近観た映画でいうと「海獣の子供」を制作した会社ですね。

作品の公式サイトがまだ閲覧可能なのですが(これは凄いかも)、そこで紹介されているストーリーによれば、

 

 時は中世。
 姫君【桑島法子】は、城の高い塔のてっぺんの小部屋に閉じこもり、その顔を人々の前に見せることはない。やがて婿となる男性の現れる日まで、無垢な身でいつづけることがその使命なのだ。
 だが、彼女——アリーテ姫は、塔の窓から見下ろす城下の町に生きる人々の姿を見ては、生きることの意味を考えていた。ある日、古文書を読み解いて秘密の抜け穴を探り当てた彼女は、城を抜け出し町へ出る。城下町は職人たちの世界。そのひとつひとつの手が意味ある物を生み出して行くさまは、まるで魔法を見るかのよう。人の手にはこれ程の可能性がある。だったら、わたしの手にだって出来る何かが……。
 この世には、一千年も昔に滅び去った魔法使いたちの残した遺物が散在する。そのひとつを探し出して持ち帰り、王に捧げることが、アリーテ姫の婿となる条件であった。今日はその期限の日。不思議に光る玉を携えた騎士が城下への帰還を果たす。だが成功したのはひとりではない。四本足で歩く金の小箱を、透明な林檎の浮かび上がる水時計を、いつまでも動き続ける永久動輪の輪などを、それぞれの騎士たちが持ち帰り、王に献上する。姫の婿選びは紛糾する。だが、それらはすべてアリーテ姫のあずかり知らぬ場所で行われた話。魔法の宝の数々も、アリーテ姫の目に触れさせられることはない。アリーテ姫は、秘密の抜け穴を使い、騎士たちの宝を納めた地下蔵を訪れる。ひとつひとつの宝のすばらしさにも増して、彼女の目を引いたのは、表紙を金で覆われた一冊の本。それは滅び去った魔法使いたちの国のことが記された知識の書物だった。その挿絵に、アリーテは目を輝かせる。魔法使いたちは、自由に空を飛ぶ乗り物を造り、雲を貫いて天まで届く高い塔をそびえさせ、星の世界へ飛び立っていったらしいのだ。アリーテは、人間が持つ力の大きさを知り胸を高鳴らす。
 姫の婿選びは再試合となった。二回戦に望む戦士たちは己の気持ちを伝えようと、それぞれひそかに塔のてっぺんの小部屋に姫君を訪れる。彼らが初めて見たアリーテ姫は、背も低く、庶民じみた顔をした、物おじ気味な女の子に過ぎない。一方で騎士たちも、魔法使いの宝の真の意味も理解せぬ蛮勇の持ち主、アリーテの内側に思いのあることを、彼らが気づくはずもない。騎士のひとりは宝を手に入れるために蛮族を叩き切ったことを語り、アリーテ姫の心をさらに閉ざす。次に訪れた騎士は、アリーテの見目麗しさを褒めたたえ、その言葉が上面だけのものであることを露呈してしまう。
 三人目に塔を訪れたのは、まるで四歳の幼女にしか見えぬ魔女【こおろぎさとみ】。滅んだはずの魔法使いの生き残りだった。
 魔女は魔法の力の源である水晶玉を盗まれ失っており、魔法の宝が集まるというこの城を訪れたのだった。
「水晶玉が無ければ、一千年永らえた永遠の命もこれまでなのさ。わしは齢を重ねやがて死ぬ」
「でも、それまでに出来る何かだってきっとまだ……」
「おやおや……人生には何か意味があると、まだ信じているのかい?」
「あたりまえじゃない」
アリーテ姫はそう答え、自分自身の人生を捜し求める旅に出ることを心に決める。
 翌朝、城内の騒動が持ち上がる。魔法使いの生き残りと称する男が訪れたのだ。男の名はボックス【小山剛志】。言葉巧みなボックスに翻弄された城の重臣たちは、姫を彼の嫁に与えることを決めてしまう。
 姫君の塔の封印が解かれ、花嫁衣裳が運び込まれる。だが、そこにアリーテの姿は無い。アリーテは、金表紙の本を持ったまま城下を出ようとして、衛兵たちに捕らえられていたのである。重臣たちには、理解出来ない姫君の行動は、何かの呪いにかけられたもののようにしか思えない。「ではその呪い、このボックスが解きほどいて進ぜましょう」
 ボックスが先に水晶玉のついた杖を振ると、アリーテの体が白い煙に包まれ、次の瞬間にはたおやかな姫君が…。まさに皆が思い望むような気高さ。実は、ボックスが魔法を使って、アリーテを変身させてしまったのである。
 そうとも知らぬ一同はボックスの功績を認め、婚礼が執り行われる。
 ボックスは、空飛ぶからくりに妻となった姫君を乗せ、故国へと飛び立つ。アリーテがあれほど望んでいた外界への旅。だが、美しい姫君の姿に変えられたアリーテの本当の心は、ボックスの魔法によって封印されている。
 魔法使いの城の地下牢に幽閉された彼女は、自分自身を取り返すことができるのだろうか……。
 アリーテ姫を助けに来る者など誰もない。
 アリーテは、自らの力で自分自身を救い出さなくてはならない。
 だがその魂は、ボックスの魔法に閉ざされたまま。
 今はまだ…。

 

という物語。(【 】内のキャストは私の補足です)

DVDでの上映だったようで、「この世界の片隅に」と比べると、画像の粗さがけっこう気になりました。制作年代からして、ハイビジョンではなく地上アナログ時代のテレビを想定したDVDでしょうから、本来のフィルム上映で観るとまた違うのかもしれませんが。

童話が原作だからか、感動で涙する、というタイプの物語ではありませんが、周囲の声に惑わされず自分の目指す道をしっかり歩んでいくことの大切さ、といったものが伝わる良作でした。興行的にはあまり成功しなかった作品のようで、それも何となく分かる気がしましたが、観て良かったです。