シリーズ?最後はマゼール/ウィーンのハルサイです。
〇ストラヴインスキー/舞踊音楽「春の祭典」
ロリン・マゼール指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(録音:1974年・ゾフィエンザール)
現役盤はこれでしょうか。
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」/R.シュトラウス:町人貴族
- アーティスト: マゼール(ロリン)&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,ストラヴィンスキー,R.シュトラウス,マゼール(ロリン),ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,グルダ(フリードリヒ),ボスコフスキー(ヴィリー),ブラベック(エマヌエル)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2013/05/15
- メディア: CD
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ハルサイと言えば現代音楽の入門編的なイメージもありますが、作曲・初演されたのは1913年ともう100年以上前。
大正2年と聞くと一気に古典のような気がしてくるのが不思議です。
さて、演奏の方は、オケのアンサンブルは一応整っているものの、お世辞にも鮮やかとはいいにくい。録音も40年以上前、ウィーン・フィルもこの手の曲への苦手感は今と比べても相当強かったのだろうと想像します。
しかし、本盤が面白いのは、マゼールがまるでそれを逆手に取ったかのような粘っこい表現を採り、それが一般的なウィーン・フィルのイメージとは対極の一種野性的な雰囲気を醸し出していること。
例えば・・・
春のロンドの盛り上がった部分(トラック1の10:11・スコア練習番号53以降)で金管のグリッサンドをテヌートで強調してみたり、
賢者(長老)の行進の少し前に始まるテノール&バステューバの旋律(トラック1の13:36付近・スコア練習番号64以降)で四分音符で動く分散和音を強調してみたり、
選ばれし生贄(乙女)への賛美の1小節前、打楽器&弦楽器の11連打(トラック2の7:34以降)で、テンポを一般的な演奏の倍くらいグッと落としてみたり、
祖先の霊への呼びかけ(トラック2の9:22以降・スコア練習番号121)、リズミカルに演奏するのが多いところをレガート気味にしてみたり、
祖先の儀式(トラック2の10:18以降・スコア練習番号129)、ホルンの頭打ちの四分音符、弦のピッチカートに合わせ短めが多いところを、わざわざ長め(といっても8分音符テヌートくらいだが、他の演奏と比べると相当長め)にテヌートしていたり、
最後の生贄の踊り(トラック2の13:50以降・スコア練習番号142)で、8分音符の部分を音価いっぱいテヌートして16分音符との差を極端に付けてみたり、
といったことが、何ともいいがたい効果を挙げています。
全くの余談になりますが、生贄の踊り、スコア練習番号177(16:42)付近からのホルン1,3,5,7番のグリッサンド対決は、1番の優勢勝ちに終わっています。
と、いろいろ書きましたが、本盤の一番の聴き所は、第2部の冒頭、序奏~選ばれし生贄への賛美の静かで落ち着いた部分です。ここではウィーン・フィルの通常言われる魅力が十二分に発揮されていて、さすがと思わせるものがあります。
因みに、マゼールは、その後、クリーヴランド管と再度録音しています。
私もかなり昔に聴いた記憶がありますが、本盤の印象が大きすぎて、オケは極めて上手だったという印象しか残っていません。