鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

こうの史代「この世界の片隅に」(中巻)

こうの史代さんの作品「この世界の片隅に」の中巻を図書館で借りてきました。

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この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

 

3月ごろに、上・中・下の3巻を一緒に予約して、その時点でそれぞれ40人前後の予約が入っていたのですが、なぜか中巻だけ進みが早くて一番先に順番が回ってきました。まだ、上巻は20人ほど、下巻も10人以上の順番待ちなのに。

1月ごろに映画を見て初めて知って、原作本も、その後コミックカフェなどで何度か通して読んではいるのですが、改めてじっくり読むことができました。

この巻は、19年7月から20年4月まで、映画でいうと、畑で軍艦を写生して憲兵に見つかるシーンから、畑で遭遇した初空襲のシーンまであたりに相当しますが、リンさんとの交流など、映画ではカットされている部分が他の巻と比べて結構多いです。

原作のすずさんは、リンさんと交流を深める中で、リンさんと周作さんの関係に気付いてしまって悩み、夫との関係もちょっとぎくしゃくしてしまったり、大人の面もちゃんと持った女性として描かれていますが、映画でのすずさんは、こうしたエピソードがカットされることで、大人の女性らしい心の機微といった要素が薄くなり、女の子から大人の女性に成長していくという面が強く感じられるようになっています。

これには、映画の尺や予算的な制約ももちろんあったのでしょうが、それだけではなく、あるいは、その制約にどう対応するかという判断の中で、意図的に選択されたものであることが、(具体的な記事は忘れてしまいましたが)片渕監督のインタビューの中で明らかにされています。

そういう意味で、映画しか観ていない方は、一度原作をお読みになってからまた映画をご覧になると、だいぶ見え方が違ってくるのではないかと思います。

ところで、映画についての以前のブログで書いた、憲兵咎められた後の、小津映画っぽい場面は、この巻の最初の方にある原作のコマではこのようになっていました。

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原作でも、憲兵が帰るシーンでは、映画と同様にほぼ同じ首の傾きになっています。その意味では、映画のシーンも、原作の構図に忠実に描かれているといえそうです。ただ、原作では次のコマでは義母と義姉の首の傾きは少し戻り、夫が帰ってくる場面ではほぼ普通に戻っていて、映画のような相似形とはなっていません。
これはその後に訪れる爆笑シーンとの対照を付ける趣旨で、原作のように少しずつ戻すのではなく、夫が帰ってきて声を掛けられて初めて首を上げる演出にしたのでしょう。

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この巻には、リンさんとの交流を描いた回のほか、このような愛国かるたを描いた回や、新聞などの人生相談コーナーを模して描きながら主要登場人物の気持ちを織り込んだ回があったりします。こうした部分は映画にはなじみにくいマンガならではの表現ですが、これらは、こうの先生が当時の資料などを調べられて、実際にあったものをベースに描かれているようです。片渕監督の時代考証のこだわりは広く紹介されていますが、原作においても相当に調べられていることが随所に伺えます。

なお、原作では、各話の最後にちょっとしたオチが付いている場合が多いのですが、映画にも、場面によっては少しアレンジしながら上手に盛り込んでいて、展開のメリハリを付けるという点で大きなプラスになっていると思います。

と書いていくと、また映画を観たい気持ちが出てきました…。都合が合わなくてしばらく観ていませんが、家でBlu-rayを観る前にもう一度映画館で観られるといいなぁ。

八海山バル@柏

とある夜、柏の梅林堂ビルにある「八海山バル柏本店」に行きました。

梅林堂ビルは柏駅東口のダブルデッキを下りて目の前。ビル最上部には梅の花をあしらった大きなシンボルマークが掲げられ、外壁にも同じ模様が描かれた特徴的なビル。梅林堂とは昔この場所でお店を開いていたお菓子屋さんの名前で、確か10数年前まではこのビルの1階で営業していた気がしますが、今は閉店し全くのテナントビルになっています。
「八海山バル」はその5階にあります。日本酒で有名な八海山酒造の公認のお店とのこと。
最初はビール・・・ですが、ちょっと珍しいフローズン生ビールにしてみます。
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次いで、刺身盛り合わせ。
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注文は2人前からということで、これは2人前。ですが、それぞれ3切れずつあります。
ちょっと目先を変えて、厚切りベーコン。f:id:Reiherbahnhof:20170903205446j:plain
胡椒の効いた、ちょっと大人向きな味でした。
八海山酒造公認のお店ということで、日本酒以外も含め、八海山のお酒がいろいろ揃っています。が、日本酒は90mlでおおむね1000円前後からという、ちょっと高めな値段設定。もう少しお手頃な値段だといいのですが。
その後はハイボールを飲んでました・・・
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これは揚げ出し豆腐。よくある醤油ベースではなく、さっぱりした感じで美味しかった。f:id:Reiherbahnhof:20170903205427j:plain
これは串カツですが、中には豚肉ではなくブリが入っています。ソースではなく脇の塩でいただく形。これも楽しめました。

最後にへぎそばをいただいて店を出ました。
料理はおいしくいただけて、満足しましたが、普通の居酒屋だと思うとちょっと値段は高め。もう少し料理の種類があってもいいかもしれません。

ガイアの夜明け@テレビ東京

テレビ東京の「ガイアの夜明け」を観ました。

新入社員の退職を防止するため、「プチコミファミリー制度」という独自の取組を進めている会社が紹介されていました。

その会社は、山間部にある社員百数十人の企業。立地もあるのでしょう、以前から若手社員の退職が問題になっていたようで、退職した社員の、周りに相談する人がいない、上司は評価をする人なので相談できない、といった声を踏まえて導入したものだそう。

この制度、新入社員を含めて、社員同士が気軽に相談できる環境を作ろうという狙いで、様々な部署や年代の社員を、新入社員を含めて、7~8人の単位で「プチコミファミリー」という一種のチームを構成し、その各メンバーに「長男」「次女」「四男」といった肩書き(役割?)が割り振られます。番組で紹介されたプチコミファミリーは、部長さんが「長男」、それぞれ異なる部署の社員が、年代等に応じて「次女」「三男」などになり、新入社員の女性が「四女」になっているという感じ。

プチコミファミリーの飲み会で交流を深めることから始まり、年に1回、プチコミファミリーの旅行会を行うことができ(年700万円の費用は会社負担だそう!)、目的地やその行程、何を食べるかなど、旅行内容もプチコミファミリーの中で検討して決め、実行していきます。

そういう取り組みの中で、若手社員も、次第に部署や年代が異なる他の「ファミリー」に気軽に話すことができるようになった、という内容でした。なお、取材映像でのファミリーの会話のやり取りをみる限り、プチコミファミリーは年度単位で組み直されるようでした。

立地柄、一人暮らしも多く、また、社員も百数十人と、全員の顔を覚えることも不可能ではない程度の規模であるという会社だから、こうした取り組みがよく機能するという面はあるのかもしれません。もっと規模が大きかったり、業務内容が幅広い会社だったりすると、他のメンバーの業務内容が具体的に分からず、相手の話にあまり共感が持てないといったこともありそうです。お互いが顔を合わせることがある程度の範囲でチームを組む方がうまくいくような気もします。
ただ、部署や年代を超えて社内に気軽に話せる相手を作ることによって、一人で悩まず、相談できる環境を作ろうというのは、確かに面白い取り組みです。若手の早期退職だけでなく、例えば、パワハラといったような、職場で生じるかもしれない様々な問題を抑止するのにも効果があるかもなぁと思いました(パワハラ上司が同じチームのメンバーに入っていたら??ということもあるかもしれませんが……)