鷺の停車場

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テレビアニメ版「響け!ユーフォニアム」を観る③

テレビアニメ版の「響け!ユーフォニアム」、第1期シリーズに続けて、第2期シリーズ、正しくは「響け!ユーフォニアム2」も見てみました。

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吹奏楽コンクールの京都府大会を突破し、関西大会、そして全国大会に挑み、3年生が引退するまでの物語。

こちらは第1話から、希美が主要人物(というかトラブルメーカー)として登場します。1年生の時に不真面目だった当時の3年生と対立して集団退部の一員として吹奏楽部を辞めた希美が、副部長のあすかに復部を認めてほしいとやってくる。

希美を特別な存在と思っているのに、希美から事前に何も聞かされず、いなくなって初めて退部を知ったみぞれは、希美にとっては自分が数多くの友達の1人に過ぎないのだとトラウマに感じ、それ以来、希美と向き合うことができない。それを知るあすかは、貴重なオーボエの戦力であるみぞれに何かあってはいけないと復部を拒むが、事件は起きてしまう。

久美子やみぞれと同じ2年生の優子の努力もあって、希美とみぞれは和解し、希美も復部するのですが、第4話まで描かれるこのトラブルの中には、「リズと青い鳥」の伏線となるような要素がいろいろありました。次に映画を観る際には、これまで気付かなかったことがいろいろ出てきそうです。

みぞれのキャラクターデザインは、リズでのそれよりも可愛い系に振った感じ(時系列的には逆ですが)になっていて、ちょっとした振舞いなども、リズで漂っている孤高な雰囲気と比べれば少し社交的に映ります。「リズと青い鳥」のあの静謐さは、このあたりのアレンジも寄与しているのですね。

そのトラブルが解決した後は、みぞれや希美は他の部員よりはちょっと目立つという程度に背景に退いて、全国大会への道のりを、あすかの退部騒動や、麗奈の滝先生への片想いなどを交えながら描き、高校生の青春ドラマとして気持ちよく見ることができました。第5話の関西大会の本番シーンで初めてちゃんと聴ける自由曲「三日月の舞」もカッコいい出だしから見事な演奏で、耳に残りました。

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映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(実写版)

実写版の映画「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」(1995年8月12日(土)公開)を観ました。

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もともと1993年に製作・放映されたテレビドラマを再構成して劇場公開した、いわば岩井俊二の映画監督としての出世作となった作品で、次のようなあらすじ。

小学生の典道(山崎裕太)と祐介(反田孝幸)は仲のいい友達で、ともに同級生のなずな(奥菜恵)に好意を抱いている。一方、なずなの方は、両親が離婚し、母親(石井苗子)に引き取られて2学期から転校することになる。花火大会の日、プールでクロールで競う典道と佑介を見たなずなは、勝った方を花火大会に誘おうと密かに賭けをする。ちょうどその頃、クラスの男友達の間では打ち上げ花火を横から見たら丸いか平べったいかで議論になる。それを実際に確かめるため、灯台に登ってみることになり、典道と佑介も一緒に行こうと誘われる。その先は、2つのバージョンが並列で示される。

最初のバージョン、プールでの勝負は、典道が先行するも、ターンの時に足をプールサイドにぶつけて怪我をしてしまい、祐介が勝つ。なずなに誘われた佑介だったが、男友達との約束を優先してなずなを置き去りにし、なずなは母親に捕まえられ、連れ去られてしまう。怒りから典道は佑介を殴り、自分が勝っていればと後悔する。ここでこのバージョンは終わり、次のバージョンに移る。

次のバージョン、プールでの勝負は典道が勝ち、なずなに誘われた典道は、男友達と一緒に行こうと家にやって来た佑介を撒いてなずなと走り、バスに乗って駅に向かう。最初は電車に乗って駆け落ちする勢いだったなずなだが、時間が経つと気持ちが変わったのか、再びバスに乗って戻り、学校のプールで典道と水遊びした後、二学期にまた会おうと言って去っていく。その頃、佑介たち男友達は、灯台に向かったが、着いたときには花火大会は終わっていた。典道は花火大会の出店街で偶然に恋人と一緒にいた担任の三浦先生(麻木久仁子)に出会い、横から見た花火の話をすると、2人が知り合いの花火師にかけあってくれて、余りの花火を一発打ち上げてもらえることになる。典道は下から、佑介たちは横から、それぞれ打ち上げ花火を見るのだった。(ここまで)

小学生の一夏の淡い恋模様、そして、ちょっとした疑問を確かめるために無茶とは思わず行動に移す、小学生の真っ直ぐさが心にしみる良作でした。撮影当時は10代前半だったはずの奥菜恵のどことなくミステリアスな雰囲気も魅力的。成長の激しいこの年代、典道役の山崎裕太や佑介役の反田孝幸は実年齢もほぼ設定どおりだったようですが、なずな役の奥菜恵はその2歳ほど上で、いかにも小学生という感じの2人と比べるとかなり大人びて映りましたが、この辺はご愛嬌でしょうか。

2つのバージョンが並べられているのは、本作が製作されたテレビドラマシリーズの企画コンセプトによるものだそうですが、単体の映画として見ると、最初のバージョンは余計なような気がしました。

昨年公開されたアニメ版はまだ観てませんが、機会あれば見比べてみたいと思いました。

映画「あいあい傘」

平日の夜、TOHOシネマズ流山おおたかの森に行きました。 

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夜の21時ごろ、ほとんどお客さんはいません。

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(以前もらったチラシ)

この日観たのは「あいあい傘」(10月26日(金)公開)。宅間孝行監督が、自身が主宰する劇団でかつて上演した舞台作品を映画化したものだそうです。

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この日の上映は58席の「プレミアスクリーン」。映画館自体は何度も来ていますが、このスクリーンで観るのは初めて。

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スクリーンに入る手前には、このような専用ロビーまであります。過剰な設備なような気がしますが・・・

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シートはカップル向けの仕様。座面の幅や前の列との間隔もゆったりしていて、いつも以上に快適な鑑賞環境です。

お客さんは5人ほど。郊外の映画館の平日レイトショーだとこのくらいなのかもしれません。

大まかなあらすじは、かつて母と自分を捨てて姿を消した父の六郎(立川談春)を探しにとある田舎町にやってきたさつき(倉科カナ)は、たまたま六郎と電話していたテキ屋の清太郎(市原隼人)と出会い、声を掛ける。さつきに一目惚れした清太郎を通じて、六郎が玉枝(原田知世)とその娘の麻衣子(入山杏奈)と家族として暮らしていることを知るさつき。初めは自分たちを犠牲にして幸せに暮らす父とその家族を憎く思うさつきだったが、麻衣子、玉枝、六郎それぞれの思いを知っていくにつれ、その気持ちが変化していく・・・というもの。

前半は、清太郎とテキ屋の仲間のデフォルメされたドタバタ劇(これは演劇作品由来のものなのでしょう)のウェイトが大きくて、そういうタイプの映画は好みでないので、これはセレクトを失敗したか、と思いながら観ていきましたが、終盤には、さつきや六郎たちの心情を描きしっとり泣かせるドラマとなっていました。

さつきと清太郎たち、六郎とその家族の現在を描くメインストーリーの合間に、六郎の回想シーンが織り込まれ、六郎がさつきたちを捨てて姿を消した理由が次第に分かってくる、序盤に何気なく織り込まれたシーンが、実は伏線となっていて終盤にその意味が明らかになる、といったあたり、構成もよく練られた作品だと思いました。

俳優陣では、立川談春は好みではなかったですが、特に原田知世の玉枝の穏やかに受け入れる人柄がにじみ出るような演技は素晴らしいと思いました。