鷺の停車場

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ルロイ・アンダーソン名曲集/スラットキン

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〇トランペット吹きの休日~ルロイ・アンダーソン・ベスト
1.舞踏会の美女[1951]
2.ファントム・レジメント[1951]
3.春が来た[1954]
4.そり滑り[1948]
5.プリンク、プレンク、プランク[1951]
6.ブルー・タンゴ[1951]
7.忘れられた夢[1954]
8.トランペット吹きの休日[1954]
9.ペニー・ウィッスル・ソング[1951]
10.クラリネット・キャンディ[1962]
11.馬と馬車[1954]
12.トランペット吹きの子守歌[1949]
13.フィドル・ファドル[1947]
14.ジャズ・ピチカート[1938]
15.ジャズ・レガート[1938]
16.シンコペイテッド・クロック[1945]
17.サンドペーパー・バレエ[1954]
18.タイプライター[1950]
19.ワルツィング・キャット[1950]
20.プロムナード[1945]
21.サラバンド[1948]
22.セレナータ[1947]
23.小さなバラード[1962]
24.アリエッタ[1962]
25.ホーム・ストレッチ[1962]
レナード・スラットキン指揮セントルイス交響楽団
(録音:1993年9月28日、1994年4月24日、11月27日、12月2日、1995年2月18日、セントルイス、パウエル・シンフォニー・ホール)

現役盤はこちら。

トランペット吹きの休日~ルロイ・アンダーソン・ベスト

トランペット吹きの休日~ルロイ・アンダーソン・ベスト

 

ポップス系クラシックの古典?であるルロイ・アンダーソン(1908~1975)の名曲を集めたCD。「トランペット吹きの休日」や「そり滑り」など、誰しも一度は聞いたことがある曲が少なくありません。

アンダーソンは、かつてボストン・ポップス・オーケストラを率いていたアーサー・フィードラーに見いだされ、作品が広く知られるようになったそうです。同コンビによる作品集の録音なども出ていますが、デジタル録音(1980年ごろ以降)になってからの録音はあまり見ませんし、このような一流の指揮者とオケによる録音も珍しいのでは?

レナード・スラットキンは、ロサンゼルス生まれの生粋の?アメリカ人指揮者。1979年から1996年までの長い間セントルイス交響楽団音楽監督を務め、RCAレーベルに多くの録音を残しています。現在はデトロイト交響楽団音楽監督(2008年から)、リヨン国立管弦楽団音楽監督(2011年から)を務めているそうです。
その経歴もあって、コープランド、バーバーなどアメリカ音楽の録音も多いようで、アンダーソンについても、本盤の後、BBCコンサート・オーケストラ(イギリスBBC傘下のポップス・オーケストラのようです)を振って、NAXOSレーベルに計5枚の管弦楽作品集(全作品を網羅?)を録音しています。

ルロイ・アンダーソン:管弦楽作品集 第1集

ルロイ・アンダーソン:管弦楽作品集 第1集

 

 本盤は、そのアンダーソンの作品の中でも、比較的有名な曲をまとめた1枚。かいつまんで紹介すると、

1.舞踏会の美女
原題は"Belle of the Ball"で、belleとballを洒落て引っ掛けたのでしょうか。美女が舞踏会で踊っている姿をイメージしたであろうワルツで、個人的には特に好きな1曲。

4.そり滑り
冬、クリスマス商戦などの時期に店頭で流れることも多いので、タイトルは知らなくても、多くの人がどこかで聞いたことがある曲だと思います。
「シャン シャン シャン…」とテンポを刻む鈴の音に乗って、ヴァイオリンが軽快なメロディを奏でます。曲の最後では、トランペットのヴァルブ(ピストン)を半押しにして吹き込む特殊奏法でウマの「ヒヒーン」という鳴き声が表現されます。

5.プリンク・プレンク・プランク
弦楽器のピッツィカートのみで演奏されます。タイトル"Plink,Plank,Plunk”の意味には諸説あるようですが、"plink"は(楽器などを)ポロンと弾く、"plank"は物を勢いよく置く、"plunk"は弦をかき鳴らす、といった意味の動詞。普通のピッツィカートだけでなく、弦を指板に当てる「バチッ」という音や、楽器の胴体を手で擦る「ヒュッ」という音も入ったりして、なかなか楽しい曲です。

6.ブルー・タンゴ
長音階の3度(ミ)と5度(ソ)と7度(シ)の音が半音下がる、ブルース・ジャズに特徴的な音の使い方である「ブルーノート」が用いられていることが題名の由来のようです。4/4拍子の4拍目の裏にシンコペーションで入る伴奏のアクセントが印象的な曲。

8.トランペット吹きの休日
冒頭から最後まで、3人のトランペットパートが大活躍する軽快なギャロップで、カバレフスキー「道化師」のギャロップオッフェンバック「天国と地獄」などと並んで運動会のBGMの定番。おそらくアンダーソンの曲の中では最も知られているのではないでしょうか。
原題は"Bugler's Holiday”で、"Bugle"(ビューグル)は軍隊で使われるラッパ(ヴァルブがないナチュラル・トランペットが一般的)のことなので、「ラッパ吹きの休日」という方が原題に近いのかもしれません。いずれにしても、実際にはヴァルブ付きのトランペットで演奏されます。

10.クラリネット・キャンディ
クラリネットによる16分音符の細かいパッセージが、キャンディの入った箱をひっくり返したような感じで、ウキウキする曲。演奏する方はとても大変そうですが・・・

13.フィドル・ファドル
"fiddle"とはヴァイオリンの一種 で、"faddle"は「ふざける、だらだらする」という意味で、「プリンク・プレンク・プランク」などと同様に、語呂に引っ掛けて付けたタイトルなのでしょう。ヴァイオリンが目まぐるしく駆け回るノリのいい曲。

18.タイプライター
短い前奏のあと、カタカタカタカタ…チーン!とタイプライターのキーを打つ音、改行を促すベルの音が主役として出てくる遊び心満点の曲。今となっては、この曲で模倣されている手動式タイプライターは使われなくなっていますから、だんだんとこの曲の面白みは理解されなくなってしまうかもしれません・・・

19.ワルツィング・キャット
メロディにも伴奏にも、猫の鳴き声を模した音の動きが出てくるゆったりとしたワルツ。個人的にはあくびをする猫のけだるい雰囲気を感じます。最後は、犬に吠えられ、慌てて逃げていく、というオチがついています。

25.ホーム・ストレッチ
ホームストレッチとは競馬の最終コーナーからゴールまでのこと。騎手たちの最後の追い込み、疾走する馬たちのラストスパート、そしてゴールまでがコミカルに描かれています。

長らく音楽監督を務めたセントルイス響との最後期の録音、ちょっと真面目な感じもするので、さらにノリが良いとなお楽しい演奏になったかもしれませんが、演奏のレベルも高く、丁寧に演奏されていて、十分に楽しめます。冒頭に書いたように、いい録音で、一流の指揮者・オーケストラによる演奏という点で、貴重な1枚だと思います。