鷺の停車場

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カルロ・ゼン「幼女戦記」第6巻 "Nil admirari"

カルロ・ゼン著の小説「幼女戦記」、第6巻に進みました。

幼女戦記 6 Nil admirari

幼女戦記 6 Nil admirari

 

第5巻に続いて、あらすじ紹介を兼ねて、時期が明示されている場面を列挙してみます。

(以下は統一暦。小説の登場順)

第一章:冬季作戦『限定攻勢プラン』

1926年11月末 帝国軍東部前線地帯 サラマンダー戦闘団駐屯地:冬季用の装備が不足する戦闘団の現状に、連邦軍から装備を調達する接収作戦を決める。

同時期 連邦首都モスコー 特別地下会議室:ロリヤが帝国軍の反応をみるために限定的な反攻作戦を指示。

1926年12月上旬 連邦領内 多国籍合同軍司令部付近:連邦軍の依頼に最大限協力されたし、との命を受け多国籍軍を率いるドレイク中佐は、連邦軍魔導部隊を率いるミケル大佐と意見を交わす。

第二章:矛盾

1926年12月クリスマス数日前 連邦領内 多国籍合同軍司令部付近:帝国軍の限定攻勢の命を受けるミケル大佐。作戦に疑問を感じるドレイク中佐だが、ミケル大佐の求めに支援に当たることを決める。

1926年12月クリスマス数日前 帝国軍東部前線地帯 サラマンダー戦闘団駐屯地:連邦軍魔導部隊来襲の報告を受けたターニャは敵の狙いが何か計りかねるが、迎撃に向かう。

同日 多国籍合同部隊:迎撃する帝国軍に「ラインの悪魔」ことターニャがいることを知り、予想外の帝国軍の反応の速さに戸惑うドレイクとミケル。思うような戦果を上げることができないが、ドレイクの機転でパルチザンの一部を捕虜とすることに成功。

同時代者のモスコー:ロリヤはナショナリズムを前面に打ち出すことで、党に忠誠心のない将官や魔導士も祖国のための戦争の戦力として前線で戦わせることを何のためらいもなく選ぶ。

1926年12月クリスマス 連邦領内 多国籍合同軍駐屯地:クリスマスパーティーの場、メアリーが捕虜を独断で連邦軍に引き渡したことで、ドレイク中佐とミケル大佐の間でいさかいが起きる。

第三章:小康状態

1927年01月中旬 イルドア王国:陸軍総司令部、講和の仲介を目論むガスマン大将は、帝国との国境近くでの大規模演習を敢行。

同時期 帝国軍参謀本部作戦会議室:同盟国であるイルドア王国の不穏な動きに動揺するゼートゥーアたち。レルゲン大佐を演習の観戦武官に送る。

1927年01月下旬 サラマンダー戦闘団駐屯地:ターニャは帝都への再配置命令を受ける。

第四章:外交取引

1927年02月上旬 イルドア王国北部:演習の観戦に訪れたレルゲン大佐はイルドア王国のカランドロ大佐と互いの腹の底を探り合う。

同時期 連合王国本土某所 情報機関本部:帝国とイルドア王国の関係を訝しむハーバーグラム少将。首相官邸会議室での閣議で、チャーブル首相は連邦の提案に応じ、帝国軍への陽動作戦を決める。ハーバーグラム少将は、帝国軍に関するウルトラ情報など各種情報を取捨選択して、帝国軍西方海岸に脅威を与える「ティー・パーティー作戦」をまとめる。

同時期 帝都ベルン郊外:待機命令中のターニャとその将官たちがウーガ中佐に紹介されたカフェで夕食。一見勇ましい新聞記事から透けて見える帝国軍の苦戦に、戦力の限界を感じるターニャ。イルドア王国を通じての講和に進むべきではないかと考え始める。

同日 夕刻:何やら思い付いたターニャはヴァイス小佐を連れて軍大学同期のウーガ中佐を訪問し、戦局について語り合う。状況は手詰まりで原状回復の講和を提案する以外にないと言うターニャに、理屈は分かるが、これまでの損害を無為にするのは感情では割り切れない、世論は犠牲に対する大量の見返りを求めていると語るウーガ。煽られた戦意を抑え込むのは困難とようやく理解したターニャだが、ゼートゥーアへの進言をウーガに依頼する。

第五章:前兆

1927年03月末 連邦領内:ティー・パーティー作戦などでの連邦・連合王国の散々な結果に、ドレイク中佐とミケル大佐が提出し了解された東部の圧力軽減のための侵攻作戦が発動。連邦軍魔導大隊、連合王国海兵隊、協商連合出身の義勇魔導中隊の三個魔導大隊が潜水艦で出撃し、オースフィヨルドに向かう。

1927年04月上旬:攻撃を受ける帝国軍は情報が錯綜し混乱する。情報を分析するターニャだったが、参謀本部から掃討支援の命令が下る。

1927年04月上旬 旧協商連合領 オースフィヨルド近郊:父アンソンの国の地に立ち、決意を新たにするメアリー。ドレイクとミケルたちは現地パルチザンと合流し、作戦を協議するが、メアリーは帝国軍と正面から戦うべきとの自分の主張を一蹴し、自分たちを厄介者扱いするパルチザンを理解できない。

第六章:構造的問題

1927年04月 旧協商連合領 帝国軍サラマンダー戦闘団駐屯地:対応が遅れる帝国軍。正規軍が「戦わない」パルチザンと無益な鬼ごっこを続ける「構造的課題」に、打開策の必要性を痛感するターニャ。

同時期 帝都ベルン 参謀本部作戦会議室:連邦軍の反攻の動きに頭を抱え、対応策を協議するルーデルドルフ、ゼートゥーアたち。

1927年04月18日 帝国軍北方軍管区 サラマンダー戦闘団駐屯地:ターニャは連邦軍の全面攻勢の知らせを受ける。意図が理解できない連邦の動きに「もう、何事にも驚くまいよ。」とつぶやくターニャだった。

 

副題の"Nil admirari"(ニル・アドミラリ)とは、「何事にも驚かない」といった意味のラテン語だそうです。上記のとおり、ターニャが最後につぶやくセリフであり、その前の参謀本部の場面でもゼートゥーアが同じ言葉を発しています。

手詰まり感が漂い、想定外の動きも起こる中、ターニャやゼートゥーアは講和の道を考え始めますが、犠牲に見合う報酬を要求する自然な感情、そして強い世論を無視することはできません。普通に行けば壊滅に向かいそうな展開ですが、どう進むのか。