鷺の停車場

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映画「種をまく人」を観る

年末年始の映画漬けの1日、シネマカリテを出て、次に向かったのは、池袋のシネマ・ロサ

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この週の上映作品とスケジュール。

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2階に上がり、178席のシネマ・ロサ1で、「種をまく人」(2019年11月30日(土)公開)を観ます。

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監督・脚本の竹内洋介の初長編映画。オランダの画家、フィンセント・ファン・ゴッホの苦難に満ちた人生と、被災地に咲いていた一輪のひまわりから着想を得て制作され、第57回テッサロニキ国際映画祭で日本人では史上3人目の最優秀監督賞、ロサンゼルス・アジアン・パシフィック映画祭ではグランプリ・最優秀脚本賞などを獲得しているのだそう。

 

公式サイトのストーリーから引用すると、

 

3年ぶりに病院から戻った高梨光雄は、弟・裕太の家を訪れる。 再会を喜ぶ姪の知恵、その妹でダウン症の一希に迎えられ束の間の幸せを味わう光雄。
その夜、知恵にせがまれた光雄は被災地で見たひまわりについて語る。 知恵はその美しい景色を思い浮かべながら、太陽に向かって咲くひまわりと、時折ふと空を見ている愛しい一希の姿とを重ね会わせるのだった。
明くる日、知恵は光雄と遊園地に行きたい嘆願する。裕太と妻・葉子はそれを快く受け入れ、娘たちを光雄に預けるが・・・幸福な時間も束の間、遊園地で突然の不幸が訪れる。

 

というあらすじ。

 

ネタバレになってしまいますが、精神病院を退院した高梨光雄【岸健太朗】が、弟・裕太【足立智充】の家を訪れた翌日、裕太の娘の知恵【竹中涼乃】を、その妹でダウン症の一希に迎えられ束の間の幸せを味わう光雄10歳の知恵が、遊園地で、弟の一希を池に落として死なせてしまいます。知恵、裕太、その妻・葉子【中島亜梨沙】を含めた家族のその後の姿が物語の中心となります。映像では、その瞬間の画面はないので、過失か故意かは明示されませんが、画面に映ったその後の反応からすると、衝動的な故意だったはずです。ただ、一希がダウン症であることは、後になって思えば、どこか普通の幼児とは様子が違ったような気もしますが、作品中では明示的には示されてなかったと思います。

どうして知恵がそのような行動をとってしまったのかについては、十分な情報がなくて、そこに引っかかってしまう部分もあり、その後の描写も、冗長に感じてしまう部分もあった、という感想。行間の余白を残すようにして、語り過ぎないように、という意図があるだろうことはよく感じ取れましたが、謎が多すぎて、ダウン症や精神病について大した知識のない人間にとっては、説得力が乏しかっていた部分もあったように思います。

もう少し時間を縮めてより緊密な構成にすると、もっと求心力のある展開になったような気がして、ちょっと残念な感じもしましたが、一人の少女が犯した罪とそれを取り巻く大人たちの姿、家族の苦悩と葛藤を描いて、観客に大きな問題を提起し考えさせるような作品でした。