鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「夜のピクニック」

映画「夜のピクニック」(2006年9月30日(土)公開)を借りて観ました。

夜のピクニック 通常版 [DVD]

夜のピクニック 通常版 [DVD]

 

第2回本屋大賞を受賞した恩田陸の同名小説を映画化した作品で、監督は長澤雅彦。原作は以前に読んだことがあって、映画も気になっていたのですが、観る機会なく、ようやくの観賞。

夜のピクニック (新潮文庫)

夜のピクニック (新潮文庫)

 

全校生徒が2日にわたり80kmを歩く北高の伝統行事の「歩行祭」。3年生の甲田貴子(多部未華子)は、最後の歩行祭に1つの賭けをする。それは、一度も話したことがなかったクラスメイトの西脇融(石田卓也)に声を掛けることだった。親友にも秘密にしているが、融は同じ父親を持つ異母兄妹なのだった。2人の不自然な様子に、友人たちは2人をくっつけようとおせっかいを焼き、アメリカへ渡った親友・杏奈(加藤ローサ)の弟順弥(池松壮亮)の飛び入りもあったりして、ゴールが近づいた2日目の朝、ついに貴子は融に声を掛け、秘密を明かす。歩きながら話をするうちに、2人がそれぞれ抱いていたわだかまりは消えていくのだった・・・というあらすじ。

もはや数十年前ですが、私も高校時代に類似の行事があったので、懐かしい思いも抱きながら観ました。

私自身が実際に昔参加した行事は、この映画ほどキラキラした印象はありませんが、長い距離をクラスメイトたちと一緒に歩く中で、非日常の高揚もあって、あまり話する機会がなかった人と思いがけず親しく話をして、教室などで一緒に過ごすだけではわからない一面が見えてきたり、確かに「特別」な体験だったように思います。

この映画では、貴子と融をめぐる秘密、すれ違い交錯する片思いの恋愛感情などが描かれますが、それ自体の展開というより、その過程で交わされる会話、振舞いににじみ出る青春のきらめきや熱量に、かつて自分にもあった高校時代が思い起こされて、懐かしい、甘酸っぱいような気持ちになりました。

歩いて、休憩して、また歩いて、を繰り返してゴールするまでの間の高校生の心の揺れ動きを描いた小説なので、表面的な変化に乏しく、映画には向かないタイプのように思われるところ、カメラを切り替えたり、回想・空想のシーン(コメディ風に過ぎる部分もありましたが)を織り交ぜたりして、単調にならないよう工夫されていました。

多部未華子のどこか陰のある、ちょっとミステリアスな雰囲気は貴子のキャラクターとよく合っていたと思います。少し前にスクリーンで観た「日日是好日」にも出演されていましたが、この映画はその12年前、かなり印象が違いました。

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その他の俳優陣も、個人的には池松壮亮は(演技の良し悪しではなく)原作を読んで抱いていた順弥のイメージと掛け離れていてがっかりでしたが、気になったのはそのくらいで、殊更にうまいということではありませんが、普通の高校生の物語として違和感なく観ることができました。