鷺の停車場

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映画「夏ノ日、君ノ声」

映画「夏ノ日、君ノ声」(2015年10月24日(土)公開)をDVDを借りて観ました。 

夏ノ日、君ノ声 [DVD]

夏ノ日、君ノ声 [DVD]

 

仕事から帰宅した哲夫(大口兼悟)の家で、ユカ(松本若菜)が待っているが、哲夫は気が抜けたような感じで、ユカの話も上の空。付き合って5年の記念日であることも覚えていない哲夫に、ユカは実家に帰る、と出ていく。
1人で帰省した哲夫に、母は哲夫の荷物が入った段ボール箱を自分の部屋に持っていけと言う。自分の部屋でその段ボール箱を開けると、音声補助機械が出てくる。それを見付けた哲夫は、高校時代の思い出を回想する・・・

怪我で入院した高校生の哲夫(葉山奨之)は、病院の食堂でサッカーゲームウイニングイレブン」で暇を潰していた。そこに、入院している舞子(荒川ちか)がやってくる。哲夫が声を掛けるが、舞子は全く反応せずに立ち去る。
その夜、廊下の椅子でゲームをしていた哲夫を見掛けた舞子が、哲夫のそばに座ったことをきっかけに、2人は知り合う。舞子は難病で生まれつき耳が聞こえずしゃべることもできないが、入力すると声が出る音声補助機械や口唇の動きなどを使って言葉を交わして親しくなり、互いに恋心を抱くようになる。一方、哲夫に恋心を抱いている学校の友達のユカ(古畑星夏)は、それを快く思わず、舞子に哲夫とは世界が違うときつい言葉を投げかけ、また、舞子の両親は不良の哲夫との交際に強く反対する。

退院する哲夫は、退院後も毎日舞子に会いに来る、と約束する。最初は、敵対する不良グループにからまれて怪我をして会うことができなかったが、その後は毎日病院に通い続ける。それを楽しみにし、哲夫に恋する舞子の姿を見て、舞子の母親(菊池麻衣子)は、次第に哲夫を許すようになる。
誕生日に外出が許可された舞子は、海に連れて行ってほしいと哲夫に頼む。その日、2人は砂浜ではしゃいだり写真を撮ったりして、久しぶりの2人の時間を過ごすが、疲れが出た舞子は、砂浜に倒れてしまう。動転して駆け付けた哲夫は、舞子にキスをする。気付いた舞子は彼を抱きしめ、2人は熱い抱擁を交わす。しかし、夜になって病院に舞子を送り届けた哲夫に、舞子の父親は激怒し、舞子を転院させる。

その後、元の病院の看護婦の好意でこっそり転院先を教えてもらった哲夫は、再びその病院に通うようになる。父親は哲夫が託した手紙を破り捨てるが、母親はその姿に打たれ、ある日、舞子に(病室に)「行っていい」と尋ねた哲夫に「明日来なさい」と伝える。

翌日、哲夫はイアリングなどアクセサリーを外したり、彼なりに身なりを整えて学校に行き、舞子もおめかしをしてその時を心待ちにするが、病院に向かおうとした哲夫は対立する不良グループにからまれ、再び怪我をしてしまう。哲夫は足を引きずって病院に向かうが、着いた頃にはすっかり夜で、舞子に会うことができない。哲夫は病院の駐車場で倒れ込んでしまう。
気付くと、哲夫は病院のベッドで寝ていた。そばに寄り添っていた舞子は、「大丈夫?」と語りかけ、哲夫は「良かった、元気で」と言うと、舞子は哲夫の手のひらに花マルを書く。哲夫が「ありがとう」と言うと、舞子は彼を廊下に誘う。しかし、それは哲夫の幻想だった。廊下に出た哲夫は、舞子の母親から、彼女が死んだことを伝えられる。哲夫は舞子と行った砂浜に行き、彼女との日々を想い出し、泣き崩れる・・・。

回想から現実に戻った哲夫は、思い出の音声補助機械を手に、かつて舞子と行った思い出の海の灯台に向かうと、哲夫の前に舞子が現れる。哲夫は高校生に戻って舞子と抱擁するが、しかし、気付くと舞子の姿は消えており、そばにいたのはユカだった。哲夫はユカと自転車で帰る。実家に戻った後、どこか吹っ切れた哲夫は、音声補助機械を段ボール箱に戻し、上フタに舞子がよく書いていた花マルを書いて梱包し、ユカと一緒に自分の家に帰っていく。

・・・というあらすじ。以下ざっと感想です。

社会人になっても、舞子を亡くした喪失感を抱えている哲夫が、音声補助機械を見付けたことをきっかけに、舞子との想い出を追体験して、心の整理を付け、立ち直っていく、というのが基本テーマのようです。

ただ、現在の哲夫が喪失感を抱えているという部分はあまり描かれず、比較的すぐに回想シーンに入ってしまう感じなので、立ち直りの物語、というよりは、高校時代の切ない恋物語という印象の方が強かった。それでも、難病を抱えた女の子と、不器用な不良の男子高生の淡く切ない恋というストーリーは、違和感なく観ることができましたし、涙腺が緩むシーンもあって、全体的にはいい作品。

主人公の2人も、演技が上手いというタイプではありませんが、逆に2人の不器用さ、ぎこちなさみたいな部分がよく表現されている感じがして、決して悪くなかった。
ただ、肝心な時に限って対立グループにからまれてケンカになる、という逆の意味でうまく行き過ぎな部分とか、細部はあれ?と思うところもありました。

ところで、最後の灯台のシーン、哲夫とユリが帰った後に、灯台に舞子が書いた哲夫との相合傘の落書きが出てくるのですが、この落書き、現在の哲夫の前に現れた舞子(幽霊??)が書いたように見えます。この映画の展開からは、現在の哲夫の前に実際に現れた幽霊が書いたとする設定は、まさかないだろうと思うので、高校時代に本当に2人で海に来たときに書いた落書きと考えるのが順当なのですが、そうだとすれば、インクの色が書いたばかりのように鮮やかなのは、整合しない感じです。高校時代であれば、10年以上前なので、けっこうインクは風化しているはず。この辺はちょっと謎でした。