鷺の停車場

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映画「破戒」

ある日の午後、柏駅西口にある「キネマ旬報シアター」に行きました。


この映画館は、先日「この世界の片隅に」を観たばかり。


この週の上映スケジュール。先日観た「この世界の片隅に」は、この週までの上映です。

この日観たのは「破戒」(7月8日(金)公開)。


上映は、148席のスクリーン2。この映画館では、まだ1席ずつ間隔を開けての販売が継続されています。世間的には平日ですが、8割方埋まっていたので、60人くらいは入っていたと思います。


島崎藤村の名作「破戒」を原作に実写映画化した作品で、監督:前田和男、脚本:加藤正人木田紀生。全国水平社(1922年(大正11年)に結成された戦前の部落解放運動団体)の創立100周年制作作品のようです。

ちなみに、私自身は観たことがありませんが、1948年には木下恵介監督が、1962年には市川崑監督が映画化しているそうで、本作で3回目の映画化となるそうです。

公式サイトのストーリーによれば、

 

瀬川丑松(間宮祥太朗)は、自分が被差別部落出身ということを隠して、地元を離れ、ある小学校の教員として奉職する。彼は、その出自を隠し通すよう、亡くなった父からの強い戒めを受けていた。
彼は生徒に慕われる良い教師だったが、出自を隠していることに悩み、また、差別の現状を体験することで心を乱しつつも、下宿先の士族出身の女性・志保(石井杏奈)との恋に心を焦がしていた。
友人の同僚教師・銀之助(矢本悠馬)の支えはあったが、学校では丑松の出自についての疑念も抱かれ始め、丑松の立場は危ういものになっていく。苦しみのなか丑松は、被差別部落出身の思想家・猪子蓮太郎(眞島秀和)に傾倒していく。
猪子宛に手紙を書いたところ、思いがけず猪子と対面する機会を得るが、丑松は猪子にすら、自分の出自を告白することができなかった。そんな中、猪子の演説会が開かれる。
丑松は、「人間はみな等しく尊厳をもつものだ」という猪子の言葉に強い感動を覚えるが、猪子は演説後、政敵の放った暴漢に襲われる。
この事件がきっかけとなり、丑松はある決意を胸に、教え子たちが待つ最後の教壇へ立とうとする。

 

・・・というあらすじ。

 

主な登場人物は、

  • 瀬川丑松【間宮祥太朗】:部落民であることを固く隠し、地元の師範学校を出て飯山尋常小学校に勤める青年教師。子どもたちから慕われている。

  • 志保【石井杏奈】:風間敬之進と前妻の間の娘。口減らしのため、蓮華寺の娘となった。蓮華寺に下宿することになった丑松に恋慕の情を抱く。

  • 土屋銀之助【矢本悠馬】:丑松と同じ小学校に勤める青年教師。丑松とは師範学校の同窓で親友。

  • 猪子蓮太郎【眞島秀和】:穢多だが、それを公言し、丑松が尊敬する思想家。

  • 風間敬之進【高橋和也】:士族出身の老教師。丑松と同じ小学校に務めていたが、休みがちのため恩給が受けられる半年前に学校を追われる。死別した前妻との間に3人、後妻との間に5人の子をもうけ、生活は苦しい。

  • 勝野文平【七瀬公】:上田出身で東京の大学を出て飯山尋常小学校の教師となった青年。郡視学の伯父を持つことから校長とは親しい。

  • 蓮華寺の住職【竹中直人】:檀家の信頼が厚く見識高いが、秘かに性欲が強く、志保にも手を出そうとする。

  • 丸山千代【小林綾子】:蓮華寺住職の妻。

  • 校長【本田博太郎】:飯山尋常小学校の校長。金牌を授与された地元の名士だが、新しい教育観を持つ丑松たちを煙たがる。

  • 丑松の父【田中要次】:丑松を送り出す際、丑松の将来を思って素性を隠すよう厳命する。

  • 大江仙太【石田星空】:丑松が担任する部落民の小学生。勉強は優秀で、丑松は上の学校に進むよう励ます。

  • 風間省吾【斎藤汰鷹】:丑松が担任する小学生で、志保と同じく風間敬之進と前妻の間の息子。
  • 大日向【石橋蓮司】:部落民だが、その生業で財をなし、資産家となった老人。仙太の祖父。

  • 高柳利三郎【大東駿介】:飯山を地元にする衆議院議員。政治資金のため、資産家となった部落出身者の娘を妻とした。

  • 庄太【ウーイェイよしたか】:蓮華寺の住職の息子。

など。

 

原作の島崎藤村の小説は、かなり昔に読んだことがあります。細部のディテールはほとんど忘れているものの、作品の骨格は覚えているので、最初から重い気持ちで観始めましたが、物語を衒いなく正面から描いて、良い作品に仕上がっていました。全国水平社100周年制作作品とあって、教科書的なところも感じられましたが、理不尽な差別に苦しむ丑松の心情は、心に迫るものがありました。

この映画館での上映は、いったん終了しましたが、好評を受けて、8/27(土)〜9/9(金)の2週間、再上映されるそうです。関心ある方はぜひ観ていただければと思います。