鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

谷口ジロー「神々の山嶺」

アニメ映画「神々の山嶺(いただき)」を観てけっこう良かったので、原作の谷口ジローさんのマンガも読んでみました。

ビジネスジャンプ」平成12(2000)年5号~平成15(2003)年7号に連載された作品。平成12年12月~平成15年5月に全5巻の単行本として刊行された後、平成18年10月~平成19年1月にはコミックス文庫が、平成28年2月には上中下3巻の愛蔵版が刊行されています。

主な登場人物は、

  • 深町 誠(ふかまち まこと):本作の主人公のクライマー兼カメラマン。

  • 羽生 丈二(はぶ じょうじ):岩壁登攀に天賦の才を持つクライマーだったが、参加したエベレスト登山隊で第1次アタック隊に参加できないことを不満に下山し、そのまま姿を消していた。

  • アン・ツェリン:エベレスト登頂2回の経験を持つベテランのシェルパで、羽生に命を救われて以来、ネパールで羽生を支援してきた。

  • 長谷 常雄(はせ つねお):羽生より3歳若い天才クライマー。羽生のライバルだったが、1985年のK2無酸素単独登山中、雪崩に巻き込まれて死亡した。

  • 岸 涼子(きし りょうこ):岸文太郎の妹。兄の死をきっかけに羽生に会うようになり、姿を消すまでの間、羽生と付き合っていた。

  • 岸 文太郎(きし ぶんたろう):羽生を慕って山岳会に入会した青年で、羽生と良い関係を築いていたが、初めて羽生のザイルパートナーとなったクライミング中に墜落死した。

  • 宮川(みやかわ):アウトドア雑誌の副編集長を務める編集者で、深町の協力者。

  • ジョージ・マロリー:実在の人物。1924年のイギリス第3次エベレスト遠征隊でアンドリュー・アーヴィンと頂上にアタックしたが、登頂の成否を謎に残したまま遭難した。

  • ナラダール・ラゼンドラ:カトマンドゥの商人で、カメラをきっかけに深町や羽生と深く関わるようになる。

  • マニ・クマール:登山用品店「サガルマータ」の店主。

  • 井上 真紀夫(いのうえ まきお):羽生と同じく、実力はありながら経済的に恵まれていなかったクライマー。

  • 伊藤 浩一郎(いとう こういちろう):初心者で山岳会に入会した羽生を鍛えた青風山岳会の顧問。

  • 多田 勝彦(ただ かつひこ):羽生とアドバイザリー契約を結んでいた登山用品メーカー「グランドジョラス」の営業本部長。

など。

第1話 未踏峰

1924年6月8日。エヴェレスト初登頂に挑む遠征隊に参加したノエル・オデルは、標高7,950m地点で地質調査に熱中するが、エヴェレストの頂を自分の足で踏みたかったという思いをかみしめる。突然雲が晴れてエヴェレストの頂が姿を現すと、頂に向かうマロニーとアーヴィンの姿が目に入る。それを最後に、2人はエヴェレスト初登頂の謎を残したまま消息を絶った。
1993年6月、ネパールの首都カトマンドゥで、エヴェレスト登頂隊のカメラマンとして日本からやって来ていた深町誠は、何気なく入った登山用品店「サガルマータ」で、コダック社製の旧式のカメラを手に入れる。

第2話 幻覚の街

登頂に失敗し、日本に戻る遠征隊と別れ、カトマンドゥに残った深町は、日本にいる宮川に問い合わせ、入手したカメラが、1924年にエヴェレストに挑んだマロリーが持って行ったカメラと同機種、ヴェストポケット・オートグラフィック・コダックスペシャルであることを確認する。
翌日、深町は、サガルマータに行き、店主から誰が持ち込んだのかを聞き出そうとするが、数時間後にホテルの部屋に戻ると、そのカメラは盗まれていた。深町は、サガルマータの店主マニ・クマールがやらせたのだろうと考えるが、クマールからの情報で、カメラを持ち込ませた日本人のピカール・サンと出会う。深町は、その男が羽生丈二だと確信する。

第3話 餓狼

日本に戻った深町は、今は49歳になっているはずの羽生丈二について調査を始め、かつて羽生と交流のあった人たちに会うことにする。まず、羽生が所属していた青風山岳会の会長をしていた伊藤浩一郎から当時の話を聞く。

第4話 鬼スラ

深町は、青風山岳会で羽生と何度もザイルパートナーを組んだ井上真紀夫と会う。井上は、金を用意できず、ヒマラヤ遠征に参加できなかった時、同じく参加できなかった羽生から、谷川岳の一ノ倉にある難所中の難所の鬼殺しのスラブ、略称鬼スラの冬季初登攀に誘われたことを話す。

第5話 初登攀

羽生と井上は鬼スラの冬季初登攀に成功するが、羽生が狙っていたスポンサーの獲得はならず、登山を最優先する当時30歳の羽生は、徐々に孤立していった。

第6話 孤高の人

1974年、当時18歳だった岸文太郎が羽生に憧れて青風山岳会に入会してくる。羽生と良い関係を築いていた文太郎は、貴重なザイルパートナーを失った羽生に、自分を一緒に連れていってほしいと懇願し、12月の北アルプスの屏風岩に挑むが、文太郎は足を滑らせて30mの距離を落下し、宙づりになってしまう。羽生は救出しようともがくが、ザイルが岩にこすれて切れてしまい、文太郎は落下・死亡する。羽生は屏風岩を登り切った後、文太郎の遺体を背負って戻ってくるが、この事故の後、羽生は山岳会を去る。その頃、羽生より3歳若い天才クライマー・長谷常雄が頭角を現してきていた。

第7話 岩稜の風

深町は、井上の紹介で、登山用具メーカー「グランドジョラス」の多田勝彦と会い、山岳会を辞めた後の羽生について話を聞く。羽生と一緒にヨーロッパの山に登った多田は、その時のエピソードを話し、羽生がパートナーをなくした原因が理解できたと話す。

第8話 単独登攀

その頃、頭角を現した長谷常雄は、マッターホルンに続き、世界初のアイガー北壁単独登攀を果たし、一躍世界の登山界の寵児となっていた。羽生は、長谷より先にグランドジョラスの単独初登攀を果たそうと、務めていたグランドジョラスのテスターを辞めて日本を発つ。

第9話 グランドジョラス

深町は、羽生が販売アドバイザーを務めていた登山用品店「岳水館」の店長の水野治を訪ね、当時の話を聞く。羽生は、グランドジョラスで50mも落下して重傷を負うが、片腕だけの脱出行を成し遂げていた。水野は当時の手記があるが、それを持っている人の名を言うことはできないと話す。深町は、それをぜひ読みたいと伝言を託すと、その日の夜、岸文太郎の妹の岸涼子から電話が入る。涼子に会うと、涼子は本人から預かったと羽生が書いた手記を差し出す。

第10話 羽生丈二の手記

手記には、グランドジョラスに挑んだ羽生の、登山、落下、そして文太郎の幻覚に襲われながら成し遂げた脱出行の一部始終が記録されていた。

第11話 過去

手記を読んだ深町は、鬼気迫る文章に背筋に震えが疾りそうになる。再び会った涼子は、羽生との関係を深町に話す。深町は、恋人だった瀬川加代子との関係について答えを見つけ出そうと、加代子と会う。

第12話 幻想の山

深町は、自分から加代子を奪った加倉典明のことを回想する。アウトドアライターだった加倉は、深町の友人となったが、いつしか加代子と付き合うようになり、加倉は加代子との結婚を決意したが、深町がエヴェレストに向かう半年前に雪崩で亡くなっていた。深町は、加代子と会っても、自分の気持ちに整理が付けられないでいた。

第13話 サガルマータ

1985年、東京山岳協会が計画したエヴェレスト遠征隊に、羽生は伊藤の推薦で、長谷たちとともに隊員として参加するが、南西壁の第1次アタック隊に選ばれなかったことに納得できず、下山して姿を消す。

第14話 K2

一方、エベレスト登頂を果たした長谷は、2年前、無酸素単独登頂に挑んだ標高8,611mのK2で、雪崩に巻き込まれて命を落とす。

第15話 山になった男

長谷の遺稿集を読み、K2に挑む直前に長谷が記した一節が引っかかった深町は、遺稿集を出版した渓流社の出版部の岩原久弥に会いに行く。深町は、K2の前に長谷がカトマンドゥで羽生に会い、無酸素単独登頂を考えたのではないかと考える。

第16話 岸壁の王

自身もクライマーであった岩原は深町に、初登頂にこだわる長谷とのエピソードを語る。

第17話 タイガー

深町は、長谷がK2の無酸素単独登頂に挑んだときに記録用の映像を撮るために同行したカメラマンの北浜秋介に会う。北浜は、1985年のエベレスト遠征時の、名誉あるタイガーの称号を与えられたシェルパであるアン・ツェリンと羽生とのエピソードを深町に話す。2日後、深町は宮川と会う。宮川は、羽生のパスポートが1991年3月に切れていることを話す。2人は、長谷がK2の無酸素単独登頂に挑んだのは、羽生がエヴェレストの無酸素単独登頂を考えていたからではないかと考える。

第18話 独りの山

羽生に会うためカトマンドゥ行きを決めた深町は、仕事を片付けつつ高地順応のトレーニングを進め、岸涼子と会う。羽生に会いに行きたいが仕事がある涼子に、深町は現地の旅行代理店の連絡先を伝える。

第19話 エヴェレスト初登頂の謎

1924年、イギリスの第3次エヴェレスト遠征隊の一員としてヒマラヤにやってきたマロリー。酸素呼吸システムを使用しなければ登頂は無理だと考えたマロリーは、経験は浅いが酸素器具の扱いに長けたアーヴィンをパートナーに指名し、登頂に挑む。オデルが頂上から200mほど手前の地点を登る2人を目撃したのを最後に、2人は消息を絶つ。9年後、再びエヴェレストに挑んだイギリス第4次遠征隊は、再び登頂に失敗するが、アーヴィンのピッケルを発見する。しかし、謎は残されたままだった。マロリーが持っていたカメラは、その疑問に答えを出せる唯一の方法だった。

第20話 毒蛇の街

カトマンドゥに到着した深町は、羽生を探そうと聞き込みを始め、サガルマータの店主マニ・クレールにも情報提供を依頼する。北浜がアン・ツェリンを見たという外国人専門の登山用具店の前で、登山用具を運んでいくアン・ツェリンを見つけた深町は、その行く先に羽生がいるかもしれないと考え、その後を追う。

第21話 ダサイン祭

深町はアン・ツェリンの後を追うが、雑踏の中で見失ってしまう。深町は、聞き込みをした住民からの紹介で会った商人のナラダール・ラゼンドラは、深町が探しているカメラがマロリーが持っていたカメラだと突き止め、協力しようと深町に提案する。深町はシェルパの村をめぐって自分の足で羽生を捜すことを決意し、アン・ツェリンに案内を頼もうと登山用品店で店員に聞いてみるが、親しい人の紹介がなければまず無理だと聞かされ、店員に伝言を託す。そこに仕事を片付けた涼子がやってくる。涼子は、羽生に会って自分の気持ちにふんぎりをつけたいと話す。

第22話 ターコイス

深町が再び登山用品店を訪れると、店員から、アン・ツェリンもピカール・サンも深町と会うつもりはない、「あの件」の情報を提供するつもりもないとの伝言を伝えられるが、店員は、涼子がきれいなターコイスのネックレスをしているのに気がつく。その夜、ホテルに戻ると、アン・ツェリンが待っていた。アン・ツェリンは、涼子のターコイスを見せてもらい、その石を大事にしてくれ、そして、日本に帰り、羽生という男がいたことは忘れなさいと話し、去っていく。翌日、2人は羽生から涼子への最後の手紙が送られた古都パタンに向かう。

第23話 山岳鬼

カトマンドゥに戻った2人だったが、ホテルの近くで分かれた涼子が戻ってこない。そこに羽生が姿を現し、涼子が誘拐されたことを伝える。そこに犯人と思われる男から電話がかかってきて、涼子と引き換えに例のカメラとフィルムを要求する。翌日、再び犯人から電話がかかってきて、要求をカメラから現金に変える。アン・ツェリンの調べで、犯人を突き止めた羽生は、動き出す。

第24話 グルカ

羽生は、犯人の居場所を突き止めるため、ナラダール・ラゼンドラに会いに行く。自分の立場のため外国人の誘拐事件で騒がれたくないナラダール・ラゼンドラは、犯人の1人を確保して、残りの2人の居場所を突き止め、羽生たちとともに向かう。犯人たちは涼子を乗せて車で逃走しようとするが、険しい山道で運転を誤り、崖から転落してしまう。羽生はロープを使って崖を降り、涼子を救出する。その底力に、深町は大きな衝撃を受ける。

第25話 回想

ナラダール・ラゼンドラの計らいで、羽生はその日深町と涼子がホテルに泊まることになる。涼子は羽生の部屋で一晩を過ごすが、羽生は涼子には手を出さず、その話をずっと聞き、そして涼子が目を覚ますと、「ありがとう」とのメッセージだけを残して姿を消していた。翌日、2人はナラダール・ラゼンドラにお願いして羽生がいる場所に連れていってもらう。羽生は、エヴェレスト南西壁冬季無酸素単独登頂を狙っていることを話し、アン・ツェリンの娘が妻で子どももいることを明かす。

第26話 シェルパの里

深町は、一度は涼子と一緒に東京に帰ろうと考えるが、涼子の勧めも受けて一人残り、登山用品を買い揃えてカトマンドゥを出発する。高地順応をしながらピカール・サンのことを聞き回る深町は、伝説のシェルパの生き残りのダワ・ザンブーを訪ねる。これまでの経緯を語ると、ダワ・ザンブーは、ベースキャンプに行けばピカール・サンに会えるだろうと言い、冬季単独登頂を目指す羽生のこれまでの経緯を語る。

第27話 母の首飾り

ダワ・ザンブーからピカール・サンがアン・ツェリンの娘ドゥマと夫婦同然の暮らしをしていること、現在はシェルパの村ドボチェに住んでいると聞いた深町は、その町を訪ねる。初めは深町を警戒するドゥマだったが、深町が涼子に託された羽生から贈られたターコイスの首飾りを見せると、それは母の形見だと話し、深町を家に迎い入れる。

第28話 ベースキャンプ

家に帰ったドゥマが異変を感じ取る。あのカメラを狙う男が侵入していたが、その男を追っていたナラダール・ラゼンドラによって捕らえられる。深町は羽生に返してほしいとターコイスをドゥマに渡し、ベースキャンプに向けて出発する。

第29話 山の狼

ベースキャンプに着いた深町は羽生を待つ。着いて5日目の11月28日、アン・ツェリンを連れた羽生がベースキャンプにやってくる。羽生はカメラを深町に渡し、この山が済んだら好きにしていいと話す。キャンプを設営した後、深町がカメラを見つけた経緯を尋ねると、羽生は、1924年にマロリーがアタックした北東稜の8,100m地点で見つけたとその時の経緯を語り、写真を撮りたかったら好きにすればいいと話す。

第30話 登攀計画

ベースキャンプでエヴェレスト南西壁の単独無酸素登攀に向けた出発の準備を進める羽生は、3泊4日は不可能じゃないと言い、具体的な登攀計画を深町に話す。

第31話 氷河へ

一度帰ったアン・ツェリンがベースキャンプに戻ってきて、冬季登山が解禁される12月1日を迎えるが、天候が思わしくなく、羽生は出発を見合わせる。雪と風は数日続き、天候が回復した12月12日、ようやく羽生は出発、その写真を撮るために行けるところまで付いていくことにした深町も続き、羽生の踏み跡を追って進んでいく。

第32話 アイスフォール

深町は、先に進む羽生の後を追って、クレバスを飛び越え、氷壁を登って広大な雪原を進む。さらに進み、エヴェレスト南西壁の全貌を見た深町は、夕方、ベースキャンプ出発から9時間かかって、先にテントを張った羽生に追いつき、写真を撮る。翌朝、羽生は7時半に出発する。

第33話 軍艦岩

羽生を追って進む深町は、自分は無酸素では8,000メートルには届かない、どこかの地点で引き返さなければならないと思いながら氷壁を登っていく。反応速度の鈍化と体力の消耗を感じる深町だったが、まだいけると自分を奮い立たせて上り続ける。

第34話 氷壁

深町は、羽生に追いつこうと氷壁を登り続け、標高おそよ7,200メートルに達するが、羽生の姿は見えなくなり、疲労と寒さで動けなる。このままでは死ぬと思った深町は、もっと足場のよいところに移って筋肉を休ませようと考える。

第35話 灰色のツルム

登ることができない深町は、幻覚に苦しめられながら、5メートルほど下の少し休める場所に移動するが、上から落ちてきた石に当たった衝撃で意識を失ってしまう。意識が戻ると、上から下りてきた羽生が深町の身体を揺すっていた。深町は助けを拒むが、羽生は深町を背負って氷壁を登り、休める場所まで救出する。

第36話 真相

なぜ自分を助けたか深町が尋ねると、あんたを助けたのは岸(文太郎)だと話し、北アルプスの屏風岩で文太郎が亡くなったとき、ザイルは確かに切られていたが、切ったのは岸だと真相を話す。時間が過ぎ、深町がこれからどうするのか聞くと、羽生は南西壁を登るルートを説明する。

第37話 頂へ(その1)

夜が明けて、限界を感じた深町は、さらに登っていく羽生と別れ下山することにし、出発する羽生をカメラで撮って後、氷壁を下り始める。その日の夜、700メートル下りた軍艦岩でテントを張ると、幻覚は消えていた。雪と強風で動けず、そこで3日を過ごした深町は、風が止み、晴れた夜空の星の海に魅入られる。翌朝、6,700メートル地点まで下りた深町は、運が良ければ羽生の姿を撮影できるとテントを張る。そして、ファインダーを覗いて羽生を探す深町は、ついにその姿を捉える。

第38話 頂へ(その2)

8,500メートルを超えるエヴェレスト南西壁でも最大級の危険地帯を登っていく羽生。しかし、雲がかかってきて羽生の姿は見えなくなってしまう。一方の羽生は、少しずつ登っていくが、酸素が薄くなってあたりが暗く見えるようになる。自身を励ましながらさらに登る羽生は、ついにその頂に立つ。

第39話 頂の夢

ベースキャンプにたどり着いた深町は、アン・ツェリンに羽生の状況を尋ねると、前日の朝に交信をしたのが最後だと話す。深町とアン・ツェリンはそこで5日待つが、羽生は下りてこない。どう考えても、羽生の食糧は尽き、生きていることはあり得ない状況だが、待つことを止めることができない。8日目、ようやく二人はベースキャンプを下りる決心をするが、深町は無許可登山が見つかり100万円を払うことになる。深町はアン・ツェリンにマロリーのカメラを渡され、帰国の途につく。

第40話 東京

日本に戻った深町は、宮川から羽生が無許可でエヴェレストに挑んだことが大きな話題になっており、それに同行した自分も話題になっていると聞かされ、マスコミを避けるため宮川が用意した新橋のホテルにこもる。羽生のニュースに接しでみんなでたらめだと憤る深町に、宮川は真実を自分の雑誌に書くことを勧める。深町はそれに同意するが、疲れから高熱を出して入院することになる。

第41話 山狼伝

退院の前日、深町を見舞った涼子に、深町は羽生とのことを話す。これでふっきれそうな気がすると話す涼子に、深町は涼子が好きだという自分の本当の気持ちを伝える。退院後、深町は羽生について記事を書き、マロリーのカメラについても明らかにする。それが話題となって深町を救う。その波が過ぎ、深町には穏やかな日常が戻り、涼子と付き合うようになっていたが、深町は、羽生とのエヴェレストが焦燥として燻っていた。

第42話 山の根

深町の思いに気づいていた涼子は、山に行ってもいいのよ、と優しく声を掛け、深町は涼子を抱きしめる。

第43話 北東稜

アン・ツェリンの協力を得て、かつてマロリーが上ったであろうチベット側からのルートで無酸素単独登山を行うことにした深町。涼子も6,500メートル地点の前進ベースキャンプまで同行し、深町は単独で出発するが、悪天候に足止めをくらい、予定が大きく遅れる。

第44話 神々の座

天候が回復して2日、頂上を目指して登る深町は、1995年11月9日15時21分、ついにエヴェレストの山頂に立つ。

第45話 生きる

天候が優れない中、下山を続ける深町。休むために岩陰に回り込むと、そこに凍った羽生の遺体があった。

第46話 伝説の登攀者

そして、羽生のの隣にはマロリーらしき遺体もあった。羽生のリュックの中に残っていたノートを読む深町は、羽生が南西壁を登りきったが、酸素不足でルートを間違えたと考える。ノートの記載から、マロリーのリュックを探すと、そこからカメラフィルムが1つ出てくる。深町は心の中で、必ず生きて帰って、再び山に戻ってくると羽生に誓って、歩き出す。

最終話 未踏峰

東京に戻った深町が、自宅で持ち帰ったフィルムを現像すると、そこには山頂でのマロリーの姿があった。

 

(ここまで)

以前に見たアニメ映画版では、全体の尺の都合もあってか、ストーリーの中心部分に絞って展開させている感じで、結末も、観客の想像に委ねる部分をあえて残していた印象でしたが、マンガの原作では、それぞれのディテールが詳細に描かれており、結末もかなり明確に示されています。もっとも、この結末は、さらに原作となる夢枕獏の小説から変更を加えているようです。

写真はもちろん参照されたのだろうと思いますが、エヴェレストをはじめとする山岳や氷壁の描写は見事で、見ごたえ十分。マンガならではの迫力を感じました。

中華 一番

しばらく前になりますが、柏駅西口の中華料理店「中華 一番」でお昼を食べました。


お店は、柏駅西口を出る手前、右手にある階段を下りてすぐのところ、キネマ旬報シアターの向かい側にあります。2012年に柏駅西口の別の場所にオープン、2017年2月にこの場所に移転したお店のようです。キネマ旬報シアターに映画を観に行くたびに気になっていたので、一度入ってみることにしました。

店内は、カウンター4席ほどと、4人掛けテーブルが2卓、2人掛けテーブルが1卓。13時半ごろの時間帯、店内には余裕がありましたが、間断なくお客さんが入ってくる感じでした。


カウンター上の麺類・炒め物・御飯のメニュー。デフォルトのラーメンは700円です。


ドリンクメニュー。


壁に貼られていた定食などのメニュー。各種麺メニューに+200円で半チャーハンが付けられるようです。


注文して5分ほどで、半チャーハンラーメン(900円)が到着。


ラーメン(700円)は、昔ながらの中華そばというビジュアル。その期待を裏切らないあっさり目のスープ、ほどよいコシの麺で、飛び抜けた印象はありませんが、安心して食べられる味でした。


半チャーハン(+200円)。ちょっと味が濃すぎる感じがしましたが、食感は良かったです。

◎中華料理 一番
千葉県柏市末広町2-2 角田ビル 1F(Tel:04-7115-3569)
営業時間:11:30~15:00/17:00~21:00(ラストオーダー各30分前)
定休日:水曜日

映画「サバカン」

休日の夕方、TOHOシネマズ柏に行きました。


休日とはいえ、夕方16時ごろの時間帯だからなのか、お客さんはまばらでした。


この日の上映スケジュール。夕方なので残りの上映回は少ないです。既に上映が終わったものも含めると、この日は16作品・27種類の上映でした。

この日観るのは「サバカン」(8月19日(金)公開)。全国157館と中規模での公開。映画情報サイトなどの口コミ評価もおおむね高いようだったので、行ってみることにしました。


上映は265+2席のスクリーン9。お客さんは15人ほどの入りでした。


チラシの表裏。

1980年代の少年のひと夏を描いたオリジナル作品のようで、監督は、大ヒットしたドラマ「半沢直樹」の脚本などを務め、本作が長編映画初監督となる金沢知樹、脚本は金沢知樹・萩森淳。

 

公式サイトのストーリーによれば、

 


1986年の長崎。夫婦喧嘩は多いが愛情深い両親と弟と暮らす久田は、斉藤由貴キン肉マン消しゴムが大好きな小学5年生。そんな久田は、家が貧しくクラスメートから避けられている竹本と、ひょんなことから“イルカを見るため”にブーメラン島を目指すことに。海で溺れかけ、ヤンキーに絡まれ、散々な目に遭う。この冒険をきっかけに二人の友情が深まる中、別れを予感させる悲しい事件が起こってしまう・・・。

 

・・・というあらすじ。

 

公式サイトで紹介されているキャストは、

  • 久田 孝明(ひさだ たかあき)【番家 一路/草彅 剛】:小学5年生の主人公。弟がいる。大人になった現在は作家で、一人暮らし。

  • 竹本 健次(たけもと けんじ)【原田 琥之佑】:孝明のクラスメイト。漁師だった父を亡くし、妹2人・弟2人の5人兄弟の家は貧しい。

  • 久田 良子(ひさだ よしこ)【尾野 真千子】:孝明の母。怒らせると怖い肝っ玉母ちゃん。

  • 久田 広重(ひさだ ひろしげ)【竹原ピストル】:孝明の父。

  • 竹本 雅代(たけもと まさよ)【貫地谷 しほり】:健次の母。女手ひとつで子供たちを育てている。

  • 内田のじじい【岩松 了】:健次がみかんを盗みに入るみかん農家。
  • 弥生(やよい)【村川 絵梨】:孝明と離婚した元妻。孝明との間に生まれた娘と暮らしている。

  • 亜子(あこ)【福地 桃子】:孝明の父の姉の娘に当たる従姉。よく孝明の家に遊びに来ている。

  • 大内田 健夫(おおうちだ たけお)【ゴリけん】:健次の叔父。不慮の事故で雅代が亡くなった後、健次を引き取る。

  • 金山(かなやま)【八村 倫太郎】:ヤンキーに絡まれた健次たちを助けてくれた青年。

  • 由香(ゆか)【茅島 みずき】:金山の彼女。溺れかけた孝明を助けるなど、ふたりに優しく接する。

  • 宮田 学(みやた まなぶ)【篠原 篤】:孝明の担任教師。

  • 市川(いちかわ)【泉澤 祐希】:若い編集者。現在の孝明に文学系はもうからないとゴーストライターを勧める。

というもの。草彅剛は大人になった久田の回想という形で、劇中のナレーションも務めています。

 

ネタばれになりますが、もう少し詳しくあらすじを記すと、

 

売れない作家の久田は、弥生からお金(たぶん娘の養育費)の振り込みがないことに督促の電話が入り、言い訳をする。久しぶりに小学生の娘と会い、水族館でイルカショーを見た久田は、長崎の海を思い出す。編集者の市川にゴーストライターの話を持ちかけられた久田は、家にあった鯖の缶詰が目に入ると、小学生時代の思い出が鮮やかに蘇り、パソコンに向かい小説を書き始める。

小学5年生の夏、作文が得意で、斉藤由貴キン肉マン消しゴムが大好きな久田は、両親と弟と暮らしていた。あることがきっかけで、家が貧しくクラスメートから疎んじられていた竹本に誘われ、ヤンキーがイルカを見たというブーメラン島を目指すことになる。両親には内緒で、自転車の二人乗りで向かおうと朝早く待ち合わせて家を出ようとする二人は、久田の父親に見つかってしまうが、父親は温かく送り出す。しかし、下り坂で転んで自転車は壊れてしまい、さらにヤンキーに絡まれるが、軽トラックで通りかかった金山が助けてくれる。ブーメラン島の対岸までやってきた二人は、ブーメラン島に向け泳ぎ始めるが、たどり着く直前、久田の足が攣って、溺れそうになる。そこに助けに飛び込んでくれたのは由香だった。ブーメラン島でイルカを探す二人だったが、発見することができず、そのまま泳いで戻る。戻った二人は再び由香に会うと、由香は貝を焼いて二人にふるまい、自転車が壊れているのを見て、金山を呼び、軽トラックの荷台に自転車と二人を乗せて家の近くまで送り届ける。

これをきっかけに、夏休みの間、二人は一緒に毎日を過ごすようになり、友情が深まっていく。寿司が食べたいという久田に、竹本は久田を家に招き、漁師だった亡き父親がよく作ってくれたという鯖缶の握りをふるまう。

しかし、夏休みが明けてすぐ、竹山の母親が交通事故で突然亡くなってしまう。竹山たち5人の兄弟姉妹は、3人の親戚にバラバラに引き取られることになり、久田は学校で竹山がお別れする間もなく転校することになったことを知らされる。久田は望遠鏡を買うために貯金箱に貯めていたお金で、たくさんの鯖缶を買い、竹山が旅立つ駅に走ってそれを手渡す。竹山を見送った久田は、駅に待っていた父親に号泣して抱きつく。父親の自転車に乗って家に帰ると、母親も優しく抱きしめる。

舞台は再び現在に戻り、竹山との思い出を書いた本は出版されて、弥生からは読んだと電話がかかってくる。竹本は長崎で夢だった寿司屋を営み、「サバカン」も出しているらしい。久田は久しぶりに故郷を訪ね、竹本と会う。

 

・・・というもの。

懐かしさと切なさを感じさせるなかなかいい映画でした。ブーメラン島への冒険から徐々に友情を深めていく二人の描写と、デフォルメが入ったユーモラスな描写で家族漫才のような久田の家族シーンとの対照もよく、テンポよく最後まで観させられました。

1986年に小学5年生ということは、現在は40代半ばとなった久田が、約35年前の小学生時代を回想するという設定。あまり年代が変わらないかもしれません。私自身はこうした劇的な冒険や別れはありませんでしたが、同世代の頃ちょっとした冒険をしたことを思い出しました。