今年は、実写映画も観に行くことが増えました。先日のアニメ映画に続いて、振り返ってみます。
スクリーンで観た新作映画の中から、特に印象深かった作品をランキングしてみます。
①四月の永い夢
今年観た実写映画で最も印象に残った作品。劇的に振れることなく淡々と運びながら心を打つ展開、抑制された叙情的な映像の美しさ、主演の朝倉あきの凛としたたたずまいなど、余韻が深く、とても良かった。一般的な評価としては、ベストというほどの作品ではないのかもしれませんが、アニメ映画の「リズと青い鳥」と同様、激しない(表面上は)静かな展開が私の好みにぴったりはまったのだろうと思います。(5月12日(土)公開)
②ボヘミアン・ラプソディ
日頃は観ないジャンルの映画で、あまり期待しないで観たのですが、フレディの栄光と挫折、そして和解という生涯、そして音楽に強烈な印象を受けました。最後のライヴシーンは圧倒的で、涙なしに見れませんでした。(11月9日(金)公開)
③教誨師
ほとんどの場面が教誨室という密室での死刑囚との会話という独特の舞台設定もあって、強烈な印象を受けた作品。ほぼ出ずっぱりの大杉漣も素晴らしかった。(10月6日(土)公開)
④名前
家族や安定した仕事を失った男と女子高生の不思議な交流、迷いながら生きている2人の姿に引き込まれました。駒井蓮の清真な演技も良かった。(6月30日(土)公開)
⑤万引き家族
見ているのが辛い場面もありましたが、血のつながりではない家族の絆を描き、家族のあり方について考えさせられる、心に刺さる映画でした。(6月8日(金)公開)
これ以上はランキングを付けるのは難しいので、私の主観的なカテゴリーに分けて、それぞれ印象が良い順に。
<自分探し(じんわり系)>
○日日是好日
お茶を初めた若い女性が、茶道を通じて、人生の大切なことに気付いていく。穏やかな淡々とした展開の中にじんわり心にしみていく映画でした。(10月13日(土)公開)
○きらきら眼鏡
彼女を事故で亡くしたショックを引きずる若い男性と、死が近い恋人がいる女性、つらい境遇にある2人が出会い、交流していく中で、少しずつ再生していく。切なく、でも最後は少し前向きになる映画でした。(9月15日(土)公開)
○ここは退屈迎えに来て
東京から地元の地方都市に戻って働く女性が、高校時代の憧れの男性に会いに行く。彼にかかわる様々な人の人間模様がオムニバスに描かれ、やや散漫な感じもありましたが、青春の思い出とやるせない現実の対比に切ない気持ちになりました。(10月19日(金)公開)
○羊と鋼の森
ピアノ調律師の世界に飛び込んだ若者が、悩みながらも一人前の調律師に成長していく物語。演出などでもったいないと思う部分もちょこちょこありましたが、ピアニストを目指す姉妹役を演じた上白石姉妹は印象的でした。(6月8日(金)公開)
<自分探し(刺さる系)>
○寝ても覚めても
穏やかで優しい性格の恋人と同棲し、ささやかだけど幸せな日々を送る女性が、突然姿を消していたかつての恋人と再会し、衝動的な行動に走ってしまう。振り回される恋人たちだけでなく、そうした行動に走ってしまう本人にも胸の痛みを感じる、余韻の深い映画でした。(9月1日(土)公開)
○志乃ちゃんは自分の名前が言えない
吃音がコンプレックスで自分の殻に閉じこもっている女子高生と、音痴にコンプレックスを抱きながらミュージシャンを目指すクラスメイトと交流する中で、少しずつ前向きになっていく。不器用で切なく、残酷でもあるけど、繊細で鮮やかな青春のきらめきを切り取ったような映画でした。(7月14日(金)公開)
○生きてるだけで、愛。
鬱による過眠症で引きこもり生活を送る女性の葛藤を描いた作品。観るのが辛い部分もありましたが、彼女の「いきづらさ」、心の痛みが刺さるような映画でした。(11月9日(金)公開)
<家族系>
○ミッドナイト・バス
バラバラになっていた家族が再び交錯し、衝突しながらも、わだかまりが氷解していき、再出発していく。 しみじみと考えされられる作品でした。(1月27日(土)公開)
○コーヒーが冷めないうちに
最初のエピソードは男女の恋の話ですが、夫婦、姉妹、親子の絆を描き、涙を誘う展開、演出など、うまく作られていて、泣かされる作品でした。(9月21日(金)公開)
○あいあい傘
とある事情から母と自分を捨てて新たな家族と暮らす父を探しに来た女性が、憎んでいた父とその家族を赦していくまでを描いた作品。よく練られた構成でしっとり泣かせる映画でした。(10月26日(金)公開)
○かぞくいろーRAILWAYS わたしたちの出発ー
夫を亡くした25歳の女性が、夫の前妻との子である息子とともに田舎に暮らすの夫の父と暮らすことになり、電車好きの息子のために地元のローカル鉄道の運転士を目指す物語。3人のそれぞれの思いをていねいに描き、途中涙しつつ最後は心暖まる佳作でした。(11月30日(金)公開)
○母さんがどんなに僕を嫌いでも
幼い頃から大好きな母に虐待され愛されることなく育てられてきた男性が、周囲の人たちの温かい励ましを受け、母と向き合っていき、最後には和解する、という物語。最後は明るく終わるいい映画なのですが、重たく心にのしかかる展開で、正視できなかったシーンもあり、ちょっと観るのが辛かった。(11月16日(金)公開)
<青春・恋愛系>
○恋のしずく
不本意ながら西条の酒蔵で実習することになったワインのために醸造学を学ぶ女子大生が、日本酒造りにかかわり、その奥深さを知っていく中で、恋が芽生えていく、という展開で、爽やかに感動できる作品でした。(10月20日(土)公開)
○恋は雨上がりのように
ケガで打ち込んでいた陸上から離れて挫折感を抱いている女子高生が、想いを寄せるバイト先のファミレスの店長との交流の中で、少しずつ前向きになっていき、再び陸上に向き合う、という展開で、青春の清々しさを感じました。(5月25日(金)公開)
○パーフェクトワールド 君といる奇跡
社会人になって、高校時代に片想いしていた憧れの先輩に再会するが、彼は事故で下半身不随となっていた。想いを断ち切れない女性の、その恋を成就させるまでの道のりを描いた純愛ラブストーリー。なかなかよくできた映画でしたが、個人的にはしっくりこないところがありました。(10月5日(金)公開)
<その他>
○空飛ぶタイヤ
トラックの脱輪事故を起こした小さな運送会社の社長が、整備不良ではなくトラックの構造的な問題であることを明らかにしていくまでの苦闘を描く。乱暴に一言でいえば勧善懲悪ものですが、複雑な人間模様も織り込まれ、最後はスカッとする、よく作り込まれた作品だと思いました。(6月15日(金)公開)
○わがチーム、墜落事故からの復活
南米クラブカップの決勝に初めて進んだクラブチームが飛行機の墜落事故で壊滅状態となるが、そこから復活していくまでの道のりを描いたドキュメンタリー。単なる美談ではなく、様々な葛藤を抱えながら前に進んでいく姿を描き、涙なしには見られませんでした。(7月6日(金)公開)
○旅猫リポート
病気で余命わずかとなった若者とその飼い猫を描いた物語。彼の様々な過去、家族をめぐる秘密なども織り交ぜながら、飼い猫との絆が印象に残りました。(10月26日(金)公開)
<再上映作品>
○夜空はいつでも最高密度の青色だ
不器用な男女が偶然に知り合い、ひかれ合い、一緒に生きていくことを決意するまでを描く。時代の暗部も描きつつも、明るい未来をつかむことはできるというようなメッセージを感じる作品でした。(2017年5月27日(土)公開)
○ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
キューバの老ミュージシャンたちが結集して行ったレコーディングやライヴの様子、それぞれのミュージシャンのインタビューを織り交ぜたドキュメンタリー。最後のカーネギー・ホールでのライヴは感涙でした。(2000年1月15日(土)公開)
○パリ、テキサス
かつて突然姿を消した男性が、実の息子や元妻と出会い、再び去っていく。引っ掛かるところもありましたが、心の傷を負った男の回復、家族との絆の再生の物語として、心を打つ映画でした。(1985年9月7日(土)公開)
○晩春(4K修復版)
妻を亡くした大学教授の一人娘が嫁いでいくまでの父娘の人間模様を描いた名作。久しぶりに観ましたが、やはりいい。(1949年9月13日(火)公開)
今年観た実写映画は以上の27本。アニメと合わせると40本以上観たことになります。
こんなに映画を観たのは、社会人になって初めてですが、アニメと同様、映画情報サイトなども見て、そこそこ評価が高く、自分の好みからも問題なさそうな作品をセレクトして観ることが多かったので、後悔するほどのハズレ作品はありませんでした。テレビやネットニュースでは話題にならない作品でも、結構いい映画は少なくないことを知ることができました。