鷺の停車場

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スクリーンで観た映画を振り返る 2020(アニメ映画)

新型コロナウイルス感染症で様々な影響が出た1年、今年のアニメ映画といえば、公開当初は1日40回を超える上映館も出るなどこれまでにない大ブームとなり、興行収入で過去最高だった「千と千尋の神隠し」の316億円という記録を、わずか公開11週目、72日という短期間で塗り替えた「鬼滅の刃 無限列車編」(10月16日(金)公開)が代表作であることは間違いありません。

私の家族も観に行って、すっかりはまったのですが、私自身は、家族が見るテレビアニメシリーズやテレビで放送された特別編集版を眺め見た感じ、自分向きの作品ではなさそうです。結果、興味がないわけではないのですが、観に行かないままになっています。

ということで、「鬼滅の刃」は入っていませんが、昨年中に公開が始まった作品も含めて、昨年の年末以降にスクリーンで観たアニメ映画を、自分の印象に残った順に挙げてみます。

◎この世界の(さらにいくつもの)片隅に

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2016年に公開され、高い評価を受けた「この世界の片隅に」に、新たに40分近いシーンを追加して再編集したリメイク版。従来版では、すずが周作と結婚し、周作の家族たちと生活していく中で、夫婦の絆を深め、大人に成長していく姿に焦点を当てた物語でしたが、本作では、リンと周作との関係など、従来版ではカットされていた人間関係が織り込まれることで、一人の女性の姿が、より陰影を帯びて描かれて、より奥行きを感じました。(2019年12月20日(金)公開)

◎劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

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少年兵として育てられ、戦争で両腕を失って義手となり、戦後、手紙を代筆する「自動手記人形」となった少女、ヴァイオレット・エヴァーガーデンの、自分を導いてくれた愛するギルベルト少佐への思いの行方を、病気で入院する少年の依頼で死後に家族に渡すための手紙を代筆するエピソードなどを交えて描いた作品。依頼者たちとの交流や手紙を通して依頼者や手紙の受取人の心を融かしていく、テレビアニメ版の美点も盛り込みながら、最後にはハッピーエンドに導き、個人的には昨年の「外伝」ほどのインパクトはありませんでしたが、完結編にふさわしい作品になっていました。京都アニメーション京アニ)ならではの、美しく繊細な作画にも圧倒されました。(9月18日(金)公開)

◎幸福路のチー

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親の期待に応えようと勉強に励んで大学を卒業し、従兄を頼ってアメリカに渡り、国際結婚をした40代の台湾人女性の、自分探しの物語。途中までは普通に観ていたのですが、終盤のあるシーンをきっかけに、自分でも不思議だったのですが、ボロボロと涙がこぼれて、深く余韻が残りました。(2019年11月29日(金)公開)

◎ウルフウォーカー

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17世紀のアイルランドで、オオカミ退治にやってきたハンターの娘が、ウルフウォーカーの少女と知り合い、彼女の母を助けるために行動するようになっていく、という物語、アイルランド版「もののけ姫」ともいうべき、自然と人間の相剋をテーマとした作品で、心を打つシーンもあり、期待どおりのいい映画でした。(10月30日(金)公開)

ジョゼと虎と魚たち

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夢を追ってバイトに励む男子大学生と幼い頃から車椅子で外の世界に強い憧れを抱く女の子との出会いから始まる恋愛と成長を描いた作品。青春恋愛物語として綺麗にまとめられたストーリー展開で、主人公の声を務めた中川大志・清原果菜の俳優2人も好演。原作小説とは異なる部分も多いようですが、涙腺が緩むシーンもあって、個人的には響きました。(12月25日(金)公開)

◎アニメーション映画 思い、思われ、ふり、ふられ

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親同士の再婚で姉弟となった明るく社交的な同学年の女子高生に明かせない恋心を抱えるクールな男の子、その彼に憧れる内向的な同学年の女の子、彼女の幼なじみの爽やかな男の子、4人の男女のすれ違い、絡み合う片想いの行方を描いた作品。原作コミックを基に並行で制作・公開された実写版とは、細部のエピソードやウェイトの置き方など違いがあって、興味深いところがありました。全体としてはシリアスな物語ながら、コミカルなシーンも交え、途中は切なく、最後はハッピーエンドに終わり、青春恋愛物語としてよくまとまった作品になっていました。(9月18日(金)公開)

◎フラグタイム

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2人の女子高生が互いを好きになる、いわゆる百合系の作品なのですが、人付き合いが苦手な一人と、周りとうまく付き合っているもう一人が、それぞれ互いの心の痛みを理解していく物語として、強く印象に残りました。(2019年11月22日(金)公開)

日本沈没2020 劇場編集版―シズマヌキボウ―

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小松左京の小説を原作に、舞台を現代に移してアニメ化したネット配信アニメを劇場公開用に再構築した作品。劇場版の作品としてはやや冗長な感じもありましたし、ラップで本音を語らせるシーンなど随所にあった湯浅監督らしい(と個人的に思う)演出も、かえって全体の求心力を削いでいる感じがしてやや残念でしたが、全体としてはそれなりに良かったと思います。(11月13日(金)公開)

 

これらの新作のほかに、今年は新型コロナの影響もあって、再上映で観る作品が多くありました。これらも、スクリーンで初めて観た作品を印象に残った順に。

風の谷のナウシカ

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言うまでもない名作、テレビでは何度も観ていましたが、新型コロナウイルスによる臨時休業からの再開後、全国の映画館で行われたジブリ4作品の再上映で初めてスクリーンで観ました。言うまでもない名作。デジタルリマスターで、30年以上前の作品とは思えない画質で観ることができたのも良かった。(1984年3月11日(日)公開)

銀河鉄道の夜

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これもテレビでは観たことがありますが、キネマ旬報シアターの再上映で初めてスクリーンで観ました。宮澤賢治の童話を杉山ギサブロー監督でアニメ映画化した作品。冒頭から、独特の世界観に引き込まれる描写で、細野晴臣による音楽もとても印象的。やはり感動の名作です。(1985年7月13日(土)公開)

○劇場版 響け!ユーフォニアム~届けたいメロディ~

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新型コロナウイルスによる臨時休業からの再開後、イオンシネマで行われた再上映で観ました。テレビアニメ「響け!ユーフォニアム2」(第2シリーズ)の総集編的な立ち位置の作品ですが、ユーフォニアム1年生の主人公・黄前久美子と、同じパートの3年生で副部長の田中あすかとの関係に焦点を当てて、劇場版オリジナルのシーンも多く盛り込みながら再構成していて、テレビアニメとはまた違う味わいの作品になっていました。コンクール本番の演奏シーンなど、映画館の大画面・音響で観るのはかなり圧倒感がありました。(2017年9月30日(土)公開)

たまこラブストーリー

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立川のシネマシティでの京アニ特集上映の一環の極上音響上映で観ました。こと恋愛になると不器用な女子高生が、幼なじみからの告白をきっかけに、自分の気持ちと向き合い、一皮むけて少し大人になっていく展開は、爽やかな青春ラブストーリーとして良かったです。山田尚子監督ならではの演出も印象的でした。(2014年4月26日(土)公開)

○劇場版 響け!ユーフォニアム~北宇治高校吹奏楽部へようこそ~

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これもイオンシネマの再上映で観た作品。テレビアニメ「響け!ユーフォニアム」(第1シリーズ)の総集編的な作品で、こちらは「届けたいメロディ」のようにオリジナルシーンが多いという印象はありませんでしたが、映画館の大画面・音響で観ると、テレビで見るのとはまた違う新鮮な印象がありました。(2016年4月23日(土)公開)

 

このほか、以前にスクリーンで観ていて、今年再び観た作品もありました。

ガールズ&パンツァー 劇場版

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ガールズ&パンツァー 劇場版 [Blu-ray]

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ユナイテッドシネマ アクアシティお台場で開かれた爆音映画祭で観ました。音響は期待ほどではありませんでしたが、十分に楽しめました。(2015年11月21日(土)公開) 

○劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~

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これもイオンシネマでの再上映で観ました。昨年には何度も観た作品、久しぶりに観ても終盤のコンクールのシーンは圧倒されました。(2019年4月19日(金)公開)

 

この1年は、日本のアニメだけでなく、(ディズニーなどアメリカ以外の)海外のアニメでもいい作品があることを実感した年でした。私が観ただけでも、上記のように、台湾の「幸福路のチー」、アイルランドの「ウルフウォーカー」はどちらいもいい作品でしたし、自分向きではなさそうで結局観なかったものの、中国の「羅小黒戦記 ぼくの選ぶ未来」も、観た方の評価は総じて高かったようです。また、上映館が少なくてまだ観られていませんが、12月に公開が始まったラトビア作品の「Away」、フランス作品の「Funan」も気になっています。ともに、年明けに機会があればぜひ観てみたい作品です。

今年は、新作のアニメ映画を観る本数はあまり多くありませんでした。上に挙げた作品のうち、昨年末公開の作品を含め、2020年に観た新作アニメ映画は、6本(11回)、それ以外の旧作が6本でした。2020年に観た実写映画は34本だったので、実写版をかなり観た一年になりました。来年はいろいろな作品に出会えるといいなと思います。