鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

スクリーンで観た映画を振り返る2023(アニメ映画)

2023年もあと3日になりました。

今年1年間にスクリーンで観たアニメ映画を、印象に残った順に振り返ってみます。

◎アリスとテレスのまぼろし工場


さよならの朝に約束の花をかざろう」に続く岡田麿里の脚本・監督によるオリジナル長編アニメーション。最後まで引きつけられる展開の作品でした。ファンタジー要素を取り込んだ世界観ですが、見事な美術・丁寧で躍動感ある作画は圧倒的で、物語にリアリティを感じさせていましたし、生々しい感情を描く脚本も巧みで、登場人物の心の動きなど心に刺さり、涙腺が緩むシーンもいくつかありました。エンドロールに流れる中島みゆきの「心音」も、歌詞に注意を向けながら聴くと、この作品の内容によく寄り添っていて、改めて涙がこぼれました。(09月15日(金)公開)

BLUE GIANT

2013年から2016年まで「ビッグコミック」連載された石塚真一さんの漫画「BLUE GIANT」を原作にアニメ映画化した作品で、ジャズに魅了されテナーサックスを始めた青年が、バンドを結成してジャズ界にのし上がっていく姿を描いた作品。いい意味でアツい映画でした。トントン拍子で順調に進んでしまう感じもありましたが、とにかく音楽が素晴らしく、曲の雰囲気を映像で見せる演奏シーンも迫力があって、すっかり圧倒されました。特に、最後のライブシーンは感動的でした。(2月17日(金)公開)

火の鳥 エデンの花


手塚治虫の漫画「火の鳥」(望郷編)をアニメ映画化された作品で、地球に一度帰りたいと願う女王とそれを叶えようとする少年が地球に向かう物語。大昔に読んだ「火の鳥 望郷編」のストーリーの記憶はもはや曖昧ですが、その大きな物語の骨格は維持しながら、鮮やかな映像美で描き出し、心に響く作品でした。冒頭のシーンから涙腺が緩みましたし、劇中でもいくつかの印象的なシーンでは涙がこぼれました。(11月3日(金)公開)

◎駒田蒸留所へようこそ


父親の急死で経営が苦しいウイスキー蒸留所を継いだ若い女性が、困難に立ち向かい、ウイスキー復活を目指す姿を描いたオリジナル作品。一途に打ち込む主人公の姿に、心温まる物語でした。主人公がBL好きで、その登場人物の絵でウイスキーの味を表現する、というところは、観客をクスっとさせようと狙った小ネタ設定だと思いますが、ユーモラスな描写を交えずに真っすぐに物語を描いているところは、とても好感が持てました。強いていえば、主要人物の心情の掘り下げがやや表面的にとどまった印象があったのは少し残念で、その描き方にもっと深みがあれば、より感銘を受ける作品になったのだろうという気はしました。(11月10日(金)公開)

◎大雪海のカイナ ほしのけんじゃ

2023年1月から3月までの2023年冬クールに放送されたテレビアニメ「大雪海のカイナ」の劇場版で、文明が衰退し雪海(ゆきうみ)に沈んだ世界を舞台に、文字が読める少年、小国の王女たちが滅びゆく世界の謎に迫っていくオリジナルファンタジー。映像の美しさと迫力、弛みのない展開に引き付けられ、最後まで面白く観ることができました。ラストはほとんどの謎が解明されて大団円を迎えるので、消化不良感も残らず、満足できる仕上がりでした。作品のテーマ的には、自然との共生という点で、「風の谷のナウシカ」などと共通するところを感じました。ただ、内容的にテレビアニメ版の続編で、初めて観る人向けの説明は全くないので、テレビアニメ版を見ていない人だと楽しめないかもしれません。(10月13日(金)公開)

◎金の国 水の国

岩本ナオの同名マンガを劇場アニメ化した作品で、水以外は何でも手に入る商業国家「金の国」のおっとりした王女と、水と緑は豊かだが貧しい「水の国」の建築士ナランバヤルは、それぞれの国の思惑で偽りの夫婦を演じることになったことをきっかけに両国の未来を変えていく物語。シンプルな展開ですが、ジワっと心に響く作品でした。意外性はありませんが、安心して観ることができ、ちょっと涙腺が緩み、そして、とても良い余韻が残りました。個人的には、ところどころコメディータッチになる部分はしっくりきませんでしたが、全体としてはとても良かったと思います。(1月27日(金)公開)

君たちはどう生きるか


風立ちぬ」(2013年)以来10年ぶりの宮崎駿監督の長編アニメーションで、原作・脚本も手掛けたオリジナルストーリー。不思議な作品でした。劇中では不思議なことがいろいろ起こるのですが、その意味するところが明らかにならないまま進んで終わるので、悪く言えば回収されない伏線ばかりで、通常なら消化不良感が多く残りそうなものですが、そういったところを気にさせずに物語の展開に引っぱり込まれた感じでした。躍動感に満ちた動き、有無を言わさず作品の世界に引き込む魅力は、宮崎駿ワールド全開という印象を受けました。(7月14日(金)公開)

◎北極百貨店のコンセルジュさん

西村ツチカさんの同名コミックを原作にアニメ映画化した作品で、動物がお客さんの「北極百貨店」で新人コンシェルジュとして働き始めたの成長を描いた物語。主人公に注意するため現れるフロアマネージャーの登場の仕方をはじめ、コメディタッチの描写も多く、ユーモラスな雰囲気で進んでいきますが、主人公の成長ぶり、百貨店を訪れるお客さんの反応などほっこりと心が温まる物語で、観終わった後に心地よい余韻の残る作品でした。本編70分と、もともと長編映画としてみれば短めの作品ですが、あっという間に時間が過ぎていったような感じがしました。(10月20日(金)公開)

青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない


鴨志田一さんのライトノベル青春ブタ野郎」シリーズの第9巻「青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない」を原作にアニメ化した作品で、主人公の男子高校生が、精神を病んでしまった母親との関係を回復していく姿を描いた作品。原作小説を読んだときには、それほどには響かなかった印象があったので、あまり期待しないで観始めたのですが、こうやってアニメとして観ると、その予想とは違って、心に刺さる部分もあり、前作よりも感動的な物語になっていました。ただ、前作と同様、登場人物や背景事情の改めての説明は特にないので、原作小説かアニメでこれまでの展開を把握していないと楽しめない作品だろうと思います。(12月1日(金)公開)

青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない

鴨志田一さんのライトノベル青春ブタ野郎」シリーズの第8巻「青春ブタ野郎はおでかけシスターの夢を見ない」を原作にアニメ化した作品で、主人公の男子高校生の不登校になっていた中学生の妹が進路選択を通じて自分の道を見つけていく姿を描いた作品。前作の「青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない」ほどの感動的な展開はありませんが、解離性障害で別人格として2年間を生きてきたもう1人の自分の願いを叶えようと努力し、そして自分の道を見つけていく一生懸命な思いが心に響きました。ただ、登場人物や背景事情の改めての説明は特にないので、原作かアニメでここまでの展開を把握してないと楽しめない作品だろうと思います。(6月23日(金)公開)

◎特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~

武田綾乃さんの小説「響け! ユーフォニアム」シリーズの2冊目の短編集「響け! ユーフォニアム宇治高等学校吹奏楽部のホントの話」に12番目の短編として収載されている「アンサンブルコンテスト」を原作に、1時間弱の中編アニメとして映画化した作品で、劇的な出来事が起こるわけではないので、本作単独で独立した作品としてとらえると、それほど感銘を受ける作品ではないと思いますが、アンサンブルコンテストに向けた校内予選というちょっとしたイベントを舞台に、主人公やそれぞれの部員の成長が描かれて、来年4月から始まる3年生編のテレビアニメへの橋渡しとしては、うまく作られた作品だと思いました。(8月4日(金)公開)

ガールズ&パンツァー 最終章 第4話

戦車道の大学選抜チームとの対戦に勝利して廃校の危機を免れた大洗女子学園が、生徒会広報の河嶋桃の大学進学危機を戦車道によるAO入試で救おうと、20年ぶりに復活した冬季無限軌道杯に桃を隊長として参加する、という設定の「ガールズ&パンツァー 最終章」の第4話で、大洗女子学園と継続高校との対戦をメインに、準決勝のもう1試合の黒森峰女学園と聖グロリアーナ女学院の対戦を描いた作品。大洗女子学園継続高校に勝つのは全くの予想どおりの展開なので、勝つまでの過程の描写をどう見るかが本作の評価を左右するのだろうと思います。冒頭に、事実上の隊長である主人公・西住みほが早々に戦線を離脱したこともあって、これまでの戦いと比べると、やや面白さに欠ける感じはありましたが、スリルとスピード感のある映像、迫力ある音響でうまくカバーしていた印象です。(10月6日(金)公開)

◎劇場版 乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…


2020年4月からの2020年春クールに第1期、2021年7月からの2021年夏クールに第2期が放送されたテレビアニメシリーズ「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」の劇場版。テレビアニメシリーズからの、裏表がない主人公の人を惹きつける人たらしっぷりが全開の物語。テレビアニメの主要サブキャラが好きな人にとっては不満が残ったかもしれませんが、ファンの人の多くには受け入れられる内容だったのではないかと思います。なお、本編の前に、とてもざっくりしたテレビシリーズのあらすじの紹介がありましたが、一見さん向けには紹介が不足気味な感じで、主要サブキャラの紹介くらいはあった方が良かったのではと思いました。(12月8日(金)公開)

◎屋根裏のラジャー


少女の想像によって生まれたイマジナリーフレンドを主人公に、現実と想像が交錯する世界で起こる冒険を描いたファンタジーアドベンチャー。話自体はいい話だと思いますし、悪くはなかったのですが、私にはいまひとつ響きませんでした。(12月15日(金)公開)

グリッドマン ユニバース

1990年代に放送された特撮ドラマ「電光超人グリッドマン」を原点とするアニメシリーズ「SSSS.GRIDMAN」と「SSSS.DYNAZENON」がクロスオーバーするオリジナル劇場版アニメ。悪くない映画なんだろうと思いますが、初見の人にとっては、基本的な世界観の設定がよくわからないまま物語が進んでいくので、物語が盛り上がっていくにつれ、わからない部分が増えて逆に面白みが薄れていくような感覚がありました。これは、「SSSS.GRIDMAN」と「SSSS.DYNAZENON」を楽しんだ人のための映画でしたね。(3月24日(金)公開)

 

このほか、再上映の機会に今年再び観た作品もありました。

さよならの朝に約束の花をかざろう

あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」、「心が叫びたがってるんだ。」などで脚本を務めた岡田麿里が初めて監督(&脚本)を務めたオリジナル作品。改めて観ても、やはり感動的な作品で、すっかり涙してしまいました。上映終了後、スクリーンの照明が付くと、涙を拭っている人が数多くいらっしゃいました。中には、誇張ではなく本当にタオルで涙を拭いている方もいました。再びスクリーンで観ることができて、本当に良かったです。(2018年2月24日(土)公開) 

ガールズ&パンツァー劇場版

キネマ旬報シアターで、通常よりも音量を上げた「音感上映」で鑑賞。2012年10月~12月と2013年3月にTOKYO MXなどで放送されたテレビアニメの劇場版のオリジナル作品で、架空の武道「戦車道」で大学選抜チームと対戦した女子高生チームが、劣勢を覆して勝利し、廃校の危機から救うまでを描く物語、ちょこちょことユーモラスなシーンをはさみつつ、ホロっとくるシーンもあり、再び観ても、観終わった後に心地よい余韻の残るいい作品でした。楽しみのひとつだった音響も、やや高音の抜けは悪かったですが、なかなかの大迫力で良かったです。(2015年11月21日(土)公開)

銀河鉄道999

キネマ旬報シアターで、通常よりも少し音量を上げた「大人の音感上映」で鑑賞。松本零士の同名マンガを原作に、1978年9月14日から1981年3月26日にかけて、全113話とテレビスペシャル3話が放映されたテレビアニメの劇場版。子ども時代にテレビで見たことがあったはずですが、ほぼ初見のような感じで観ました。原作やテレビアニメ版がまだ継続中に作られた作品で、テレビアニメ版では10歳くらいのまだ幼さの残る少年だったと思いますが、本作では15歳と、設定も多少アレンジされています。あらすじも原作やテレビアニメとは相違があるようですが、少年がメーテルとの旅を経験して自立していく姿を描いた作品として、うまくまとまっていると思いました。(1979年8月4日(土)公開)

サマーウォーズ

7月28日(金)から2週間限定で行われた再上映で鑑賞しました。以前に本編ノーカットでテレビ放送された際の録画では何度も観ていた作品ですが、初めてスクリーンで観ると、物語の展開が鮮やかで、時に挿入される上田の美しい印象的な風景もあり、これまで以上に物語の世界に引き込まれ、心に響くものがありました。一度スクリーンで観ることができて本当に良かったです。(2009年8月1日(土)公開)

 

今年は、新作15本、旧作4本の計19作品を観たことになります。

2024年も、12月22日(金)から公開が始まっている「劇場版 SPY×FAMILY CODE: White」をはじめ、気になっている作品もあるので、機会をみて順次観ていこうと思います。