鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

スクリーンで観た映画を振り返る2021(アニメ映画)

2020年に引き続いて新型コロナウイルス感染症で様々な影響が出た1年でした。

この1年でスクリーンで観た新作アニメ映画は、合計11本。昨年よりは増えましたが、あまり多くなかった印象です。アニメ映画は数多く公開されましたが、テレビアニメやゲームなどからのシリーズものが多かったように思います。初見では消化不良になりそうで、そうしたシリーズものは敬遠した結果だろうと思います。

今年観たアニメ映画を、印象に残った順に振り返ってみます。

◎映画大好きポンポさん

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映画プロデューサーのポンポさんに見込まれ監督に抜擢されたアシスタントのジーンが、新人女優のナタリーを主役に映画を撮ることになり、いくつもの壁を乗り越えて映画は完成し、ポンポさんの予感どおり、高い評価を獲得するまでを描く物語。映画制作の裏側を描いた物語ですが、小気味いい展開に、演出も巧みで、グッと引き込まれる作品でした。ポップな雰囲気の中にも、ところどころ刺さるセリフが埋め込まれていて、心に響くシーンもあり、観終わった後に心地よい余韻が残りました。(6月4日(金)公開)

◎竜とそばかすの姫

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幼いころの母親の死で心に大きな傷を抱えた女子高生が、インターネット上の仮想世界で大切な存在を見つけ、葛藤しながらも勇気と希望を見出していく物語。インターネットの仮想空間を舞台にアバター(分身)が活躍するという設定は、「サマーウォーズ」と共通ですが、そこで描かれる物語は、ガールズミーツボーイともいうべきもの。期待を裏切らない良作。何より映像の迫力に圧倒されました。(7月16日(金)公開)

◎Away

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当時25歳のギンツ・ジルバロディスが1人で作り上げた作品で、少年が「黒い影」から逃げてバイクで走って街を目指す物語。ポスタービジュアルとなっている「鏡の湖」の景色をはじめ、背景の景色はとても美しい作画で、とても1人で作り上げたとは思えない素晴らしいものでした。状況を説明するセリフや字幕などは全くなく、個々の描写の解釈は観客に委ねられているので、監督がこの作品にどのようなメッセージを込めたのか、よく理解が及ばないところもありましたが、魅力的な作品でした。(2020年12月11日(金)公開)

◎アイの歌声を聴かせて

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テストのため高校の転校生として送り込まれたAIロボットの試作品が奮闘する中で、周囲の高校生たちを変えていく物語。人間に献身的に仕えるロボット、という基本的な骨格は、吉澤監督の前作「イヴの時間」とも共通するところで、ちょっとハチャメチャな展開もありますが、心を打つシーンもあり、予想を裏切らないいい作品でした。(10月29日(金)公開)

◎FUNAN(フナン)

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1975年から約4年間続いたクメール・ルージュ支配下で、幼い息子と生き別れになった母親が苦難を乗り越えて息子に再会するまでを描いた作品。メインは主人公たちが直面する苛酷な現実ですが、その背景に描かれるのはカンボジアの風景の美しい映像、人が死ぬシーンも直接の描写は避けられ、一筋の光を感じさせる終わり方など、重い空気になり過ぎないよう配慮されており、重たいテーマですが、心に刺さる物語でした。(2020年12月25日(金)公開)

◎フラ・フラダンス

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スパリゾートハワイアンズのダンシングチーム、通称「フラガール」を仕事に選んだ新入社員と同期の仲間たち、そして彼女たちを取り巻く人々との絆を描いたオリジナルアニメ映画。もう少し物語の中核に絞って描けば、より刺さる映画になったのでは、ともったいない印象もありましたが、新人フラガールの成長、ダンシングチームのソロダンサーだったが震災で亡くなった姉からの自立と別れを描いたいい作品でした。(12月3日(金)公開)

◎サイダーのように言葉が湧き上がる

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人とのコミュニケーションが苦手な俳句少年と、出っ歯にコンプレックスを感じマスクで隠す少女が、ショッピングモールで出会い、次第に距離を縮めていく物語。ややシンプルな画調で、色使いもちょっとポップな感じです。クライマックスの盆踊りのシーンは、私にはちょっと肩透かしで、後味は今一つでしたが、全体にテンポのいい展開で、フジヤマさんの思い出のレコードを探すあたりからの雰囲気は良く、新鮮な印象が残りました。(7月22日(木)公開)

◎岬のマヨイガ

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柏葉幸子の同名の児童文学を原作にしたアニメで、居場所のない2人の少女と不思議な老女が古民家「マヨイガ」で一緒に暮らしていく物語。しみじみほのぼのした話なのかと思って観はじめましたが、次第に妖怪色が強くなってきて、最後は人の思いを食べて巨大化した妖怪?とのバトルと、意外な展開でした。ストーリーは比較的平板ですが、吉田玲子さんの脚本ということもあって、涙腺が緩むシーンもあり、飽きずに観ることができました。(8月27日(金)公開)

◎映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチ

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サッカー部で人一倍練習に打ち込むが、男子とのフィジカルの違いに体を壊すことを心配して公式戦に出してもらえない女子中学生が、ある奇策を使って無理やり新人戦に出場し、男子の厳しいコンタクトに苦しみつつも、その高い技術と創造的なプレーで観客たちを魅了する姿を描いた物語。 サッカーの試合の描写も丁寧に描かれ、爽やかな後味が残るいい作品でしたが、物語の起伏などからすると、劇場公開作品としては盛り上がりが今一つだったかもしれません。(6月11日(金)公開)

◎映画 すみっコぐらし 青い月夜のひみつのコ

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人気キャラクター「すみっコぐらし」の映画第2弾。夢の大切さ、というのが作品のテーマ。いいお話ではあるのですが、前作のような大人も涙するようなお話ではなく、子ども向きの内容でした。(11月5日(金)公開)

ガールズ&パンツァー 最終章 第3話

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本編48分、途中から始まって途中で終わる全体の一部分を描いた作品で、他の作品と比較するのは適当でないと思うので、一番最後に。本作までの展開を知っている人向けですが、戦闘シーンの画像&音響の迫力もあって、十分に楽しめました。(3月26日(金)公開)

 

このほか、以前にスクリーンで観ていて、今年再び観た作品もありました。

ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝―永遠と自動手記人形―

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一昨年7月に起きてしまった京都アニメーションの放火殺人事件の直前にほぼ完成し、同社制作のアニメとして事件後初めて公開された作品。繊細で美しい作画はもちろんですが、張り詰めた雰囲気の前半など、展開もよく、個人的にはその後公開された「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」より好み。改めて見返しても涙するいい作品でした。(2019年9月6日(金)公開)