鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

スクリーンで観た映画を振り返る 2019(実写映画)

今年は、7月の京都アニメーション京アニ)の放火事件が起きた影響も多少はあったのだと思いますが、特に夏以降はアニメ映画を観る方が増えました。実写映画を観に行った数は昨年よりかなり減ったような気がしていましたが、改めて数えてみると、それでも20本の映画をスクリーンで観ていました。

今年は、昨年ほど響く作品はなかった印象で、順位付けするのは難しいところはありますが、これまで観た作品を、多少強引に、ベスト5までランキングしてみます。 

①洗骨

洗骨 [Blu-ray]

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  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: Blu-ray
 

それぞれ問題を抱えた家族が、風葬でした母の骨を洗う洗骨の儀式に向かうまでの日々を通して、和解し、家族の絆を取り戻していく過程を、時折コメディ的なシーンも織り交ぜつつも、全体としては穏やかな語り口で描いた物語。コメディシーンの挟み方など、個人的にはしっくりこないところもありましたが、洗骨の描写をはじめ終盤のシーンはとても印象深く、最後に余韻が深く残る、心にしみるいい映画でした。(2月9日(土)公開)

②小さな恋のうた

小さな恋のうた [DVD]

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  • 発売日: 2019/11/13
  • メディア: DVD
 

バンドを組むメンバーを不慮の事故で失った高校生たちが、米軍基地で暮らす少女との交流を通じて喪失を乗り越えバンドが再生していく、涙なしには観れない青春物語でした。演出にしっくりこないところが局所的にはいろいろありましたが、物語・展開の良さがそれを上回って、心に響く作品になっていました。(5月24日(金)公開)

③いなくなれ、群青

いなくなれ、群青 Blu-ray豪華版

いなくなれ、群青 Blu-ray豪華版

  • 発売日: 2020/03/20
  • メディア: Blu-ray
 

失くしたものを見つけなければ出ていくことができない「階段島」にまつわる謎を解き明かそうとする女子高生とそれに巻き込まれた男子高生が残酷な真相に突き当たる物語。美しい映像で紡がれる静かな雰囲気の中にドラマが進んでいく空気感は個人的にはとても好み。映像美を狙いすぎ?と思うシーンもあり、感動するというまでには至りませんでしたが、映像の空気感・雰囲気、それぞれが抱える影を写し出すような描写などが印象的で、観て良かったと思いました。(9月6日(金)公開)

④駅までの道をおしえて

犬の死を受け入れられない少女と、息子の死を受け入れられない老人が、ある犬をきっかけに知り合い、引き寄せられるように打ち解けていくが、それもわずかの間のことで、少女は老人も失うことになる・・・という物語。犬を失った事実を受け入れることができない少女の心象を、回想シーンをはさみながら表現していく描写は、とても良かった。一部ちょっと演出過剰に感じる部分もありましたが、音楽も効果的で、心にしみました。(10月18日(金)公開)

⑤わたしは光をにぎっている

わたしは光をにぎっている [Blu-ray]

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  • 発売日: 2020/08/05
  • メディア: Blu-ray
 

長野から東京に出てきて、居候する銭湯で働き始めるが、再開発事業で閉めることになったその銭湯を最後までちゃんとやり切る女性の姿を描いた作品。主人公の内心の転機の描写は今一つでしたが、再開発でなくなってしまう古くからの商店街などの街並みをはじめ、抒情的な映像が美しく、主演の松本穂香の雰囲気も良かった。(11月15日(金)公開)

 

これ以上はランキングを付けるのは難しいので、私の主観的なカテゴリーに分けて、それぞれ印象が良い順に。

<自分探し系>

○愛がなんだ

愛がなんだ (特装限定版) [Blu-ray]

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  • 発売日: 2019/10/25
  • メディア: Blu-ray
 

ある男性を一途に愛する女性だが、その男性は彼女を都合よく扱うだけという不思議な男女関係を描いた作品。私にはあまり腑に落ちない人間関係でしたが、愛されない切なさ、みたいな感情が全体に漂っていました。前半は、少し退屈めでしたが、後半物語が動き始め、最後の30分くらいは感情が直接ぶつかるシーンもあって、グッと心に迫るところもありました。(4月19日(金)公開)

○まく子

まく子 Blu-ray豪華版

まく子 Blu-ray豪華版

  • 発売日: 2019/09/25
  • メディア: Blu-ray
 

第二次性徴を迎え、自分の体に起こる変化に違和感を覚え、父親のように醜い大人になっていくことに恐れおののく少年が、ほかの星から来たという不思議な少女との交流を通じて、大人に変化していく自分や父親を受け入れるようになっていく物語。思春期の入口のちょっと不安定な心を切り取った描写は、ちょっと心に刺さる、新鮮な感覚でした。(3月15日(金)公開)。

○夜明け

夜明け (特装限定版) [Blu-ray]

夜明け (特装限定版) [Blu-ray]

  • 発売日: 2019/09/04
  • メディア: Blu-ray
 

生きることに意味を見い出せず、また、過去の秘密がトラウマになって葛藤するシンイチの心の痛み。亡き息子に対して十分な父親になれなかったことを悔いている涌井。お互いの欠損感を埋め合わせるかのように、ほのかに親子のような関係になっていくのですが、その関係は薄皮一枚で繋がっているかのように儚い。そして、最後は、観ながら抱いていた不安が的中して、その関係は壊れてしまう。不安を残す着地は、やりきれない気持ちになりました。(1月18日(金)公開)

○旅のおわり世界のはじまり

旅のおわり世界のはじまり [Blu-ray]

旅のおわり世界のはじまり [Blu-ray]

  • 発売日: 2020/03/11
  • メディア: Blu-ray
 

テレビ番組のリポーターとしてウズベキスタンを訪れた主人公が、現地の人たちの温かさに触れる中で、自分がもともと目指していた歌手への道を進もうと決意するまでを描いた作品。自分探しの物語としては、展開にやや引っ掛かりを感じる部分もありました。(6月14日(金)公開)

<家族・青春系>

○今日も嫌がらせ弁当

今日も嫌がらせ弁当 Blu-ray通常版

今日も嫌がらせ弁当 Blu-ray通常版

  • 発売日: 2019/12/18
  • メディア: Blu-ray
 

毎日のお弁当を通じ、シングルマザーと反抗期を迎えた次女との対立と和解を描いた作品。親子のウザい関係のオーバーな演技など、演出に遊び要素が盛り込まれているのは、評価が分かれるところかもしれませんが、コメディ的な要素も盛り込みながら、うまくまとめた作品になっていました。(6月28日(金)公開)

○さよならくちびる

さよならくちびる [Blu-ray]

さよならくちびる [Blu-ray]

  • 発売日: 2019/10/25
  • メディア: Blu-ray
 

デュオで活動する2人が、解散ツアーで全国を巡る中での人間模様を描いた物語。最後の落とし方はやや安易な感じがしましたが、各都市を巡っていくメインストーリーの合間に、2人が出会ってからすれ違っていくまでの過程が回想シーンとして挿入されて謎が解けていき、ラストライブのシーンは胸が熱くなりました。(5月31日(金)公開)

アイネクライネナハトムジーク

いろいろな人の物語が、ある一点に結節していく展開は、現実にはないことでしょうけど、映画としてはいい構成。前半はちょっと退屈な展開でしたが、後半は、冷ややかに見ればクサい演出もあったものの、前半の伏線をうまく生かし、最後のハッピーエンドに導く展開は、なかなか良かったと思います。(9月20日(金)公開)

<恋愛系>

○フォルトゥナの瞳

フォルトゥナの瞳 Blu-ray豪華版

フォルトゥナの瞳 Blu-ray豪華版

  • 発売日: 2019/08/21
  • メディア: Blu-ray
 

死の危険に晒されて生還し、死を目前にした人が分かってしまう特殊な能力を持った主人公が、ある女性を好きになり、危機を救うためその運命を変えようとする物語。運命を変えてしまうのは、いわば人間の法を超える行い。それをした人間は、相応の報いを受け、それを繰り返せば、いつか自分の命を失うことになる。それを知らされて悩む主人公、出した答は・・・という展開に、引き込まれました。外面的なクライマックスの後に、心理的というか心情的な山をもう一度持ってくる構成も良く、涙腺が緩みました。(2月15日(金)公開)

君は月夜に光り輝く

君は月夜に光り輝く Blu-ray豪華版

君は月夜に光り輝く Blu-ray豪華版

  • 発売日: 2019/09/18
  • メディア: Blu-ray
 

冴えない男子高校生が難病で死が目前にしたクラスメイトの女の子に好かれ、振り回されるうちに惹かれていき、その死後に彼女からのメッセージを受け取るという物語。監督や主役が共通する「君の膵臓をたべたい」の二番煎じ感がどこか拭えず、感銘もそのぶん割り引かれてしまった印象でしたが、泣かせる展開で、作品としてのまとまりは本作の方が優れているように思いました。(3月15日(金)公開)

○九月の恋と出会うまで

九月の恋と出会うまで (通常版) [Blu-ray]
 

未来の人間が過去を変えた時点でその人が置かれていた状況と、自分が変えた過去に従って時が流れた結果として同じ時点に至ったときにその人が置かれる状況との間に相違が生じる矛盾「タイムパラドックス」を解決しようとする2人の間に芽生える恋の物語。全体の雰囲気はそこそこ良かったのですが、設定に今一つ説得力が感じられず、ちょっともったいない感じのする映画でした。(3月1日(金)公開)

雪の華

事実上の余命宣告を受けた女性が偶然に出会った男性に惹かれ、思い切って期間限定で恋人になってもらう契約をするが、そのうちに互いにひかれていくという物語。最後のクライマックスのシーンの演出は盛り上げようという意図が裏目に出た印象を受けたものの、意外にコミカルなシーンもところどころに織り交ぜられていて、感動のラブストーリーという感じではないですが、観た後は、不思議と爽やかな気分になりました。(2月1日(金)公開)

町田くんの世界

町田くんの世界[Blu-ray]

町田くんの世界[Blu-ray]

  • 発売日: 2019/11/06
  • メディア: Blu-ray
 

人が大好きな町田くんが、人嫌いな同級生の女子高生と出会い、恋していく過程を描いたラブコメディ。原作とのあまりのテイストの違いはかなり戸惑いましたが、ラブコメディとしては、それなりによくできた作品のように思いました。(6月7日(金)公開)

<社会派系など>

○あの日のオルガン

あの日のオルガン [DVD]

あの日のオルガン [DVD]

  • 発売日: 2020/04/03
  • メディア: DVD
 

第二次世界大戦の末期、空襲を避けるために東京から埼玉に集団疎開した保育園で、様々な問題に直面しながら、子どもを守り育てようと苦闘する保母たちの姿を描いた物語。反戦を声高に訴えることもなく、保母たちの頑張りに、何度も涙した映画でした。(2月22日(金)公開)

○こどもしょくどう

こどもしょくどう [DVD]

こどもしょくどう [DVD]

  • 発売日: 2020/03/25
  • メディア: DVD
 

無料~安価で子どもたちに食事を提供する「こども食堂」が生まれる過程を描いた映画。光が当てられることが少ない現代日本に確かにある厳しい現実を意識させられる一方、かすかな希望を感じさせる心温まる作品になっていました。冷たい現実を描く辛いシーンはあるものの、それを和らげるファンタジー的な要素もあって、心打たれる、予想以上にいい映画でした。(3月23日(土)公開)

○ある町の高い煙突

今の日立市、全国有数の銅山として栄えた日立鉱山で、大正初期、亜硫酸ガスによる煙害を解決するために約150mを超える当時世界一の高さの大煙突を建築するまでを描いた作品。地味なテーマですが、感動的な物語としてよくまとまっていました。(6月22日(土)公開)

○グリーン・ブック

グリーンブック [Blu-ray]

グリーンブック [Blu-ray]

  • 発売日: 2019/10/02
  • メディア: Blu-ray
 

黒人のピアニストとその運転手として雇われた白人男性が、演奏ツアーを通じて生まれる絆を描いた物語。心温まるいい話でしたが、どこか白人→黒人の「上から目線」的な構図が感じられて、私には思ったほどには刺さりませんでした。この構図に違和感を感じなければ、だいぶ印象が違って感銘が深かったと思うのですが・・・。(3月1日(金)公開)

 

 

このほかにも、「劇場版ファイナルファンタジーⅩⅣ 光のお父さん」(6月21日(金)公開)、「蜜蜂と遠雷」(10月4日(金)公開)など、いくつか気になった作品はありましたが、迷って観に行く決心が付かないまま、機会を逸してしまいました。特に、「殺さない彼と死なない彼女」(11月15日(金)公開)はぜひ観たかったのですが、上映館・回数が少なく、他の予定で機会が作れないうちに、比較的行きやすい映画館での上映が終わってしまったのは残念でした。まだ上映は続いているので、できれば機会を作ってスクリーンで観たいと思います。

冒頭に書いたように、今年は昨年ほど響く作品は少なかったですが、来年はまたいい作品に出会えるといいなあと思っています。