鷺の停車場

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映画「七人の侍」

久しぶりに「七人の侍」(1954年4月26日公開)を観ました。 

七人の侍(2枚組)[東宝DVD名作セレクション]

七人の侍(2枚組)[東宝DVD名作セレクション]

  • 発売日: 2015/02/18
  • メディア: DVD
 

言わずと知れた黒澤明監督の代表作。当時、ヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞していますが、その後も多くの映画作家に影響を与え、今も、世界的に最も評価の高い日本映画の一つとなっているようです。

本作は、だいぶ昔の学生のころ、名画座的なミニシアターで一度観たことがあります。昨年NHK-BSで放映された時に録画して、録ったきりずっと観ていなかったのですが、ほとんど家にこもっていたGW中に観てみました。

改めて紹介するまでもありませんが、一応書いてみると、大まかなあらすじは、

戦国時代の山あいの農村では、毎年のように来襲する盗賊となった野武士集団に悩まされていた。村では長老・儀作【高堂国典】の決断で侍を雇って村を守ることを決め、4人の村人【土屋嘉男、小杉義男、藤原釜足左卜全】が侍を見つけに町に出る。稼ぎも名誉も得られない仕事を引き受ける侍はなかなか見つからないが、浪人・島田勘兵衛【志村喬】は、最初は難色を示したものの、村の苦難を慮って引き受ける。勘兵衛は一緒に戦ってくれる侍を探し、5人の侍【木村功稲葉義男、加東大介千秋実宮口精二】を連れて村に赴き、勘兵衛に興味を持ちついてきた菊千代【三船敏郎】を加えた7人で村を守ることになる。
7人の侍は、手分けして、農民たちに竹槍を持たせて戦い方を指導し、村を巡って防御方法を考え、柵や堀で防衛線を構築し、来るべき戦いに向けて準備を進めていく。
そして、麦刈りが終わったころ、ついに野武士が偵察にやってくる。勘兵衛たちはそれを捕らえて先手を取って野武士集団の本拠を襲い、野武士たちとの戦いが始まる。勘兵衛の作戦が功を奏し、村を襲う約40騎の野武士たちを次々と倒していくが、多くの村人たちも犠牲になっていく。菊千代ら4人の侍も犠牲となるが、ついには野武士たちを壊滅すことに成功し、村には平和が訪れる・・・というもの。

 

昔スクリーンで観たときは、まだデジタル形式がない時代で、当然フィルム上映だったわけですが、デジタル化に当たり修復されたのでしょう、スクリーンで観たときよりも画像がかなり良くなっている気がします。モノクロではありますが、かなり解像度が高い部分もあり、約65年前の映画とは思えません。

疾走する騎馬や戦いの場面など、動きのあるシーンの演出・撮影は今見ても引き込まれる見事なもの。当時としては、かなりの費用をかけて撮影されたようですが、それも頷けます。終盤の最後の合戦の場面は大雨ですが、光の具合や背景の映像から察するに、自然の雨ではなく、スタッフが降らせた雨のはず。

およそ3時間半という長丁場の作品、構成的にも、ちょうど勘兵衛たちが戦いに向けた準備を進めるまでの部分と、麦刈りの後、野武士集団との戦いに入ってからの部分でちょうど時間的に半々くらいになっているので、現在であれば、前編・後編に分けて公開するのがむしろ通常だろうと思いますが、一気に一作品として公開しているのは、まだテレビが各家庭に普及していなかった、映画の全盛時代の勢いを感じます。

その真ん中くらい、勘兵衛たちが戦いに向けた準備を進める部分の後に、5分ほどのインターミッション(休憩)が入ります。その間は、背景にBGMが流れる中、真っ黒の画面の中央に大きく白抜きで「休憩」という字が表示された画面がずっと続きます。昔スクリーンで観たときには、ずっとその画面をぼんやり眺めていた記憶がありますが、NHKの放送では、最初のしばらくの間「休憩」の画面を表示した後、もとのBGMが流れる中、映画中のシーンをスライドショー的に挿入する形になっていました。確かに、5分ほど画面がずっと変わらないので、映像トラブルと勘違いした苦情や問い合わせもありそうですが、個人的にはオリジナルのままにしてほしかった気がします。

ところで、今や日本映画の代表作の一つともいえる本作ですが、公開された1954年当時、キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画第3位、その他の国内の映画賞でも作品賞は受賞おらず、この年の映画賞を総なめにしたのは、木下惠介監督の「二十四の瞳」でした。同作も名作の一つとされているのですが(私は未見)、60年以上経っても色あせない演出や撮影のダイナミックさが、今の国際的な評価につながっているのだろうと思います。


お題「#おうち時間