鷺の停車場

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映画「ミッドナイトスワン」

映画「ミッドナイトスワン」(9月25日(金)公開)を観ました。

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来たのはアリオ柏にあるTOHOシネマズ柏。週末の朝早くの時間帯、ロビーにはそこそこのお客さんがいました。

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この日の上映スケジュール。残席が少なくなっている上映回もありました。

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スクリーンの入口では、7月に来た時と同様、スタッフがサーモグラフィで入場者の体温をチェックしていました。

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上映は308+2席のこの映画館最大のスクリーン6。MOVIXではイベントの人数制限の緩和を受けて、一時期全席販売に戻りましたが、TOHOシネマズでは引き続き1席ずつ間隔を開けての販売。お客さんは2~30人くらいでした。

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身体的には男性だが、トランスジェンダーとして生きる凪沙(なぎさ)が、育児放棄にあっていた親戚の娘の中学生・一果(いちか)を預かることになり、一緒に生活する間に、二人の間に芽生えていく特別な関係を描く作品。脚本・監督は内田英治。「下衆の愛」、「全裸監督」などで監督を務めた方だそうですが、私は初めてです。

 

公式サイトのストーリーによれば、

『新宿のニューハーフクラブ<スイートピー>では、メイクしステージ衣装に身を包み働くトランスジェンダーの凪沙(草彅剛)。洋子ママ(田中トモロヲ)が白鳥に扮した凪沙、瑞貴、キャンディ、アキナをステージに呼びこみ、今夜もホールは煌びやかだ。
「何みとんじゃ!ぶちまわすど!」
広島のアパートでは、泥酔した母・早織(水川あさみ)が住民に因縁をつけていた。
「何生意気言うとるんなあ!あんたのために働いとるんで!」
なだめようとする一果(服部樹咲)を激しく殴る早織。
心身の葛藤を抱え生きてきたある日、凪沙の元に、故郷の広島から親戚の娘・一果が預けられる。
「好きであんた預かるんじゃないから。言っとくけど、わたし子供嫌いなの」
叔父だと思い訪ねてきた一果は凪沙の姿を見て戸惑うが、二人の奇妙な生活が始まる。
凪沙を中傷したクラスの男子に一果がイスを投げつけ、凪沙は学校から呼び出しを受ける。
「言っとくけどあんたが学校でなにをしようと、グレようとどうでもいいんだけどさ、私に迷惑かけないでください。学校とか、謝りにとか絶対行かないって先生に言っといて」
バレエ教室の前を通りかかった一果はバレエの先生・実花(真飛聖)に呼び止められ、後日バレエレッスンに参加することになる。
バレエの月謝を払うために凪沙に内緒で、友人の薦めで違法なバイトをし、警察に保護される一果。
「うちらみたいなんは、ずっとひとりで生きて行かなきゃいけんけえ…強うならんといかんで」
凪沙は、家庭環境を中傷され傷つく一果を優しく慰める。
やがて、バレリーナとしての一果の才能を知らされた凪沙は一果の為に生きようとする。
そこには「母になりたい」という思いが芽生えていた—。』

 

というあらすじ。

広島の親には内緒で新宿でトランスジェンダーとして生きる凪沙(本名:武田健二)を草彅剛が、凪沙と一緒に暮らすことになる桜田一果を新人の服部樹咲が演じています。

そのほか、一果の母・桜田早織:水川あさみ、凪沙が働くお店の洋子ママ:田口トモロヲ、凪沙がステージで一緒に踊る瑞貴・キャンディ・アキナ:田中俊介吉村界人・真田怜臣、一果のバレリーナとしての才能を見い出すバレエ教室の先生・片平実花:真飛聖、同じバレエ教室に通う同級生で親友になる桑田りん:上野鈴華、りんの両親の桑田真祐美・正二:佐藤江梨子・平山祐介、凪沙の母・武田和子:根岸季衣といった主要キャスト。

 

切なく、余韻の深い物語でした。

社会的なマイノリティである凪沙は、周囲との間に、ある種のバリケードを築いて生きていて、一果に対しても最初はそのように接するのですが、違法なバイトをしてまで熱心にバレエに打ち込む一果を見るうちに、少しずつ一果のために生きようとするようになっていき、孤独に育ってきた一果も、トランスジェンダーであるが故の苦しみを味わいながら、自分を思って接する凪沙に、特別な思いを抱くようになっていきます。その過程、そしてその後に直面することになる厳しい現実に、心を鷲掴みにされるような痛み、そして切なさを感じました。

説明的なセリフがなく、行間の含みを残すようにシーンを積み重ねていく展開は、この監督さんのスタイルなのでしょう。細部には?と思うシーンもありましたが、それは些細な問題で、作品の世界にグッと引き込まれ、心に迫りました。重たいテーマで、ハッピーエンドでもありませんが、救いを感じさせるエンディングも良かった。

草彅剛と新人の服部樹咲の演技もとても素晴らしかった。草彅剛は、ジャニーズを離れたとはいえ、こんな役をよく引き受けたと思いましたが、トランスジェンダーに苦しむ凪沙の姿を巧みに演じていましたし、服部樹咲は、何よりバレエを踊るシーンが見事で、日常のシーンでの陰のある一果の表情や空気感もとても良かったと思います。