鷺の停車場

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石塚真一「BLUE GIANT」第1巻~第4巻

アニメ映画「BLUE GIANT」がかなり良かったので、原作も読んでみたいと思い、石塚真一さんのマンガも読み始めてみました。

単行本は全10巻、まずは最初の第1巻~第4巻を読みました。アニメ映画で描かれた上京後の大の物語の前に当たる、高校時代の大の姿が描かれた部分。

 

ここまでに出てきた主な登場人物を紹介すると、

  • 宮本 大:主人公。仙台市に住み、青葉第二高校に通う高校3年生。10歳のときに母を亡くしている。バスケットボール部に入っているが、ジャズに魅せられ独学でテナーサックスの練習に打ち込む。

  • 宮本 雅之:大の3歳上の兄。高校を出て仙丸化学工業の向上で働いており、一人暮らしをしている。大のためにローンでセルマー製のテナーサックスをプレゼントした。

  • 宮本 彩花:大の妹でダンスに夢中な小学5年生。

  • 父:スーパー「グレート」の店長を務める大の父。ジャズプレーヤーを目指す大を後押しする。

  • 近藤 周平:大の中学時代の同級生。中学卒業時に大をジャズライブに誘い、大がジャズに目覚めるきっかけを作る。大とは違う進学校に進み、医学部進学を目指している。

  • 小熊:大がサックスのリードを買いに通う「ひろせ楽器」の店長。地元のジャズバー「バード」での大の初ステージをお膳立てしてくれる。

  • 川西:仙台のジャズバー「バード」のマスター。大に由井を紹介する。

  • 三輪 舞:大の同級生。水泳部所属の長身の女の子。大が密かに想いを寄せる。

  • 由井:仙台で個人スタジオで音楽教室を開く男性。大の才能を見出し、サックスを無償で教える。

 

各話のあらすじを、ごくごく簡潔に紹介すると、次のような感じです。

 

まず、単行本の第1巻。

第1話 THE CHALLENGE

高校3年生の宮本大は、バスケ部の最後の大会となる県大会で敗退した夜、中学卒業以来久しぶりに周平の家を訪ね、部活の後に毎日練習してきたサックスを周平に聴かせる。その音に衝撃を受けた周平は、ジャズプレーヤーになりたいと語る大に、オレは世界一の医者になる、と思いを伝える。

第2話 がまん坂

雨の日、リードを買いに通うひろせ楽器の主人から雨でも練習できる場所を教えてもらった大は、自転車では登れないと生徒たちに噂のオニ坂を上り、トンネルの中で楽器を吹く。

第3話 BLUE SUNSET

友だちと飯を食べに行った餃子店で、軽音部の入江に挑発されて胸糞悪くなった大だったが、美しい夕日を見て気を取り直し、練習に向かう。

第4話 LIKE FATHER, LIKE SON

仕事仲間とスナックで息抜きをして帰宅した父は、遅れて帰ってきた大に高校を出たらどうするのか聞く。ジャズプレーヤーになりたいと言う大に父は、思い切りやれよ、と背中を押す。

第5話 さよなら GOOD BYE

中学時代からバスケ部で一緒だった光明が、父親の仕事の失敗で急に転校が決まり、大は送別会だ、と光明と二人で1日を共に過ごす。最後に行ったカラオケボックスで、大は思いを込めてサックスを吹く。

第6話 GIANT STEPS

ひろせ楽器の主人・小熊の頼みで、大は「バード」でのライブに出演することになる。ライブが始まり、出番が近づき、大の気持ちは高まる。

第7話 HOW HIGH THE MOON

ライブでいよいよステージに上がった大は、気持ちを入れて吹くが、客の一人・佐藤はうるさいと激昂し、大は一曲で舞台から降ろされてしまう。落ち込む大だったが、気持ちを入れ替えて前を向く。

第8話 SLOW HOT WIND

気を取り直して炎天下の河原で練習する大に、犬の散歩をする初老の男性が声を掛ける。君の音が好きだと言われ、大は意気に感じる。
なお、その後には、その初老の男性、初ライブでヴォーカルを担当した桜京子とピアニスト、妹の彩花、バスケ部の友人の光明の回想が挿入されています。

なお、単行本の末尾には、「OMAKE of Blue」と題したおまけの短編が3編収められています。

 

続いて、単行本の第2巻。

第9話 夏祭り

夏祭りの夜、友だちと打ち上げ花火を見に来ていた三輪は、ひとり別れて広瀬川の川原に向かい、サックスを練習している大を見つけ、声をかける。大の演奏録音を聴かせてもらった三輪は、いいね、と褒め、ふたりは打ち解ける。2年の時の修学旅行で大に海に誘われてから、三輪は大を意識していたのだった。

第10話 OCEAN OF DIAMONDS

サックスを吹こうと川原にやってきた大に、「バード」の店長の川西が、君の音を聞いてほしい人がいると声をかける。「バード」に連れてこられた大は、そこに待っていた男のピアノでサックスを吹く。理論を超える大の演奏におもしろいと感じたその男は、俺がサックスを教えると言い、大はその男にサックスを教わることになる。

第11話 EVERY TIME WE SAY GOODBYE

サックスを教わるために「バード」で会った男・由井の家に行った大。由井は、君に必要なのは音を操作する技術だと言い、大に教え始める。

第12話 ROUND ABOUT MIDNIGHT

由井のレッスンで口の両脇から空気が漏れていることを指摘され、正しいマウスピースの加え方(アンブシュア)を教わった大は、すぐに楽器を吹きたいと自転車を走らせて港に行き、楽器を吹く。

第13話 CONFIRMATION

大の家に、夏季講習を終えた玉田たち友人が押しかけてくる。盛り上がり、好みの女の子、それぞれの進路などについても話をする友人たちに、大は世界一のジャズプレーヤーになると宣言する。

第14話 ALONE TOGETHER

由井の指導で、高速タンギングの練習に励む大。見本を吹いてみせた由井に、うますぎると感激する大だったが、由井は、上手いのはゴマンといるが、お前の音は人を圧倒できると語る。大は三輪を誘い、定禅寺ストリートジャズフェスティバルに行く。いろんなグループの演奏を楽しむ大は、自分も吹こうと、道端で楽器を取り出す。

第15話 I KNOW

大が楽器を吹き出すと、周囲の人はその音に魅かれて集まり、大の演奏に聴き入るが、ジャズフェスティバルのスタッフに咎められ、三輪に手を引かれてその場を去る。突然吹いたことにビックリした三輪は、いっぱいの人が聴いてた、本物なんだね、と言うが、怒って去っていく。

第16話 STRONG MAN

2年半前、大が兄の雅之からセルマー製のテナーサックスを贈られるまでを描いたエピソード。その36回ローンが終わった雅之は、久しぶりに実家に帰り、大の楽器を見る。

その後には、大が一時期バイトしていたガソリンスタンドの所長と兄・雅之の回想が挿入されています。

なお、単行本の末尾には、「OMAKE of Blue」と題して、作者が定禅寺ジャズフェスティバルに行ったときのことを描いた短編が収められています。

 

次に、単行本の第3巻。

第17話 THINK OF ONE

依頼されたCMソングの仕事、音楽教室、大のレッスンを終えた由井は、仙台にライブにやってきた、かつてともにバークリーで一流ジャズプレーヤーを目指した親友・片山を会う。そのチケットをもらった大は三輪を誘ってライブを聴きに行く。その感想を聞いた由井は、大笑いする。

第18話 ARE YOU READY?

青葉二高の文化祭「青秋祭」が始まる。その様子を眺める音楽の黒木先生は、2年半前にサックスを始めたばかりで自分が運指表をあげた大のことを思い出す。文化祭のバンド会で、大はソニー・ロリンズの髪型を真似て、「ソニー大」というグループ名で出場する。

第19話 COUNT DOWN

体育館のステージに上がった大は、一人でジョン・コルトレーンの「カウントダウン」を吹き、喝采を浴びる。大は黒木先生をステージに招き、もう一曲の演奏を始める。それは校歌で、黒木先生のピアノ伴奏に、観客の生徒たちは歌い始めるが、大のサックスの演奏でジャズになっていき、黒木先生のピアノもノリノリになり、再び大喝采を浴びる。

第20話 EVOLUTION

文化祭の後でレッスンに行った大が喝采を浴びたことを話すと、由井は、ジャズの世界は厳しい、限られた狭い世界での勝負、時には調子に乗ってもいいが酔うな、酔って勝てるような世界じゃない、と忠告する。その背景には自身の過去の経験があった。三輪を誘って自転車に乗ってデートする大は、オレはどこまでも行ける、仙台を離れる、と三輪に明かす。

第21話 GONE GONE GONE

大は、川原に犬を連れて散歩に来ることで知り合いになった初老の男性・本村が出張に行くと聞いて、その愛犬・バーナムを3日預かる。大は18歳の記念に何か曲を作ろうと思い立つが、まったくメロディが浮かばない。そんな中、再び出会った本村は、バーナムが車にひかれてペット墓地に行くところだと話す。バーナムのことを回想する大には「バーナム・ラブ」と題した曲を作り、本村に聴かせる。

第22話 HIGH STEP

大がレッスンに行っているのに、レッスン代を払っていないことを知った父は、お土産と月謝を持って由井の家の訪ねるが、由井は、息子さんは面白い、だから月謝は取らないと言い、大が、世界一輝くジャズプレーヤー・ブルージャイアントになってくれたら、と語る。

第23話 11:49PM

晦日、寒さに凍えなが、川原でサックスを吹く大。その頃、黒木先生の家には、音大を出たが会社員となり結婚した娘・ミオが帰省してきていた。文化祭で大とジャムしたことを話し、あの子はプロになれると思う、今日も川原で練習しているだろうと話す。日付が変わり年が明けたころ、黒木先生とミオが雪の降る川原に行くと、黒木先生の言うとおり、大が練習していた。

第24話 MORE THAN YOU KNOW

めきめきと上達してきた大に、由井はいいかげん誰かと合わさせなければと考え、「バード」の飛び入りOKの「マイクオープン」の日に大を連れていく。大はバードでやるなら呼んでほしい人がいると、初ライブの時にうるさいと激昂した佐藤を呼んでもらう。

その後には、文化祭のライブでトリを務める予定だったバンドのリーダーで今は鮨屋を構え板前をしている入江と黒木先生の回想が挿入されています。

なお、単行本の末尾には、「OMAKE of Blue」と題して、ジャズピアニスト・上原ひろみについて描かれたおまけの短編が2編収められています。

 

さらに、単行本の第4巻。

第25話 CHEROKEE

聞いてほしいと頭を下げる大、佐藤は1曲な、とカウンターに座り、大たちは「チェロキー」を演奏する。最初は他のメンバーとハマらないが、カウンターに座る由井が「きけ」とメッセージを送るのに気付いた大が、みんなの演奏を聴きながら吹くと、演奏すがバチっとはまり、佐藤も啞然とする。

第26話 DON'T EXPLAIN

その演奏に、一緒に演奏するピアニスト、ドラムの渡部も撃ち抜かれ、演奏を終える。大は佐藤の前で再び頭を下げ、仙台を離れてジャズプレーヤーになることを宣言する。その帰り、演奏の感想を尋ねる大に、由井は、最高だ、と言う。

第27話 ONE TEAR

練習に打ちこむ大は、センター試験も終わり、二次試験に向けて勉強する三輪のことを思う。そんな中、彩花が熱を出してしまい、大は彩花をおんぶして病院に連れていく。インフルエンザだった彩花をおんぶして帰る途中、大は喫茶店で勉強する三輪を見かける。三輪は大と話そうと店を出ようとするが、インフルエンザをうつしてはいけないと思う大はそれを止めて立ち去る。わけが分からない三輪はムッとする。

第28話 MOVE

自分が仙台を離れることで、彩花を心配する大は、雅之を訪ねて相談する。雅之は、次の日曜日に家族全員で話すことにする。家族会議で、大はジャズプレーヤーになるために東京に行きたいと打ち明け、家族の前でサックスを吹く。それを聞いた彩花は、大がもう帰ってこないんだと実感する。

第29話 ACT NATURAL

大は卒業式の次の日に旅立つことを決める。友人の小野泰三は受験に失敗し、友人たちは集まって飲む。その頃、大は由井と居酒屋にいた。由井は一流のプレーヤーを目指して打ち込んだが、あるポイントから前に進まなくなって、咲かずに枯れた自分の過去を話し、大は小さいが咲いていると励ます。

第30話 RIVERWIDE

東京に出た大は、友人の玉田のもとに転がり込んでいた。住む家を探すが、家賃の高さに手が出ず、練習できるいい場所もなかなか見つからない。そんな大は、三輪と最後に会ったときのこと、卒業式で黒木先生にせがまれて色紙にサインを書いたことを回想する。やっと橋の下に格好の練習場所を見つけた大は、サックスを吹く。

第31話 MONEY

金に困った大は、アルバイトを探し、なんとか働き口を見つける。夜、海辺で練習する大に、屋形船が近づいてくる。酔ったサラリーマンから曲をリクエストされた大がそれを吹くと、サラリーマンはチップを投げて渡し、大は生まれて初めてのギャラを手にする。

第32話 PIANO MAN

ジャズのためにバイトに精を出す大だったが、楽器が不調になり、オーバーホールに出すはめになる。楽器が吹けない大は、ジャズを聞こうと、雨の中、たまたま見つけたジャズバー「TAKE TWO」 に入ってみる。他に客のいない店内で、ママはライブはないと言い、レコードをかける。喜んで聞く大に、ママはライブをやっている「JAZZ SPOT 二五一」を紹介する。そのお店を訪れた大は、演奏するピアニストに目を奪われる。

単行本の巻末には、BONUS TRACK 1として、ジャズバー「バード」マスターの川西、高校時代の友人の小野泰三の回想を収めた短編と、BONUS TRACK 2として、「OMAKE of BLUE」と題した短編が収められています。

(ここまで)

 

劇場版アニメは、大が新幹線で仙台から東京へ旅立つシーンで始まり、東京で世界一のジャズプレーヤーを目指して奮闘する大の姿が描かれていたので、この原作コミックで言えば、第4巻に収載されている第30話「RIVERWIDE」からが、それに対応する部分になるのだろうと思います(なお、原作では、新幹線で旅立つシーンは描かれていません)。いよいよ劇場版アニメで観たストーリーに入ってきた、と思うと同時に、その前には、こうした前史があったんだと興味深く読みました。