鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「サイレントラブ」

週末の朝、MOVIX柏の葉に行きました。


9時ちょっと前の時間帯、ロビーにはたくさんのお客さんがいました。


この日の上映スケジュールの一部。この日は、25作品・27種類の上映が行われていました。


観るのは「サイレントラブ」(1月26日(金)公開)。全国342館と大規模での公開です。


上映は103+2席のシアター6。お客さんは15人くらいでした。


声を捨てた青年と視力を失った音大生が静かに思いを紡いでいくラブストーリー。公式サイトでは、「ピアノとガムランボールの音色に導かれ、声を捨てた青年と、光を失った音大生の密やかな情熱が交差する、世界でいちばん静かなラブストーリー」と紹介されています。主要スタッフは、原案・監督: 内田英治、脚本:まなべゆきこ内田英治、音楽:久石譲 など。

 

声を捨て、毎日をただ生きているだけの蒼。ある日、不慮の事故で視力を失い絶望の中でもがく音大生・美夏と出会う。何があってもピアニストになるという夢を諦めない美夏に心を奪われた蒼は、彼女をすべてから護ろうとする。だが、美夏に想いを伝える方法は、そっと触れる人差し指とガムランボールの音色だけ。蒼の不器用すぎる優しさが、ようやく美夏の傷ついた心に届き始めた時、運命がふたりを飲み込んでいく──。
「夢を叶えて欲しい。俺にはないから」

 

・・・というあらすじ。

 

主な登場人物とキャストは、

  • 沢田 蒼【山田 涼介】:声を発しない不器用な青年。校務員として働く音大で、美夏と出会う。

  • 甚内 美夏【浜辺 美波】:事故で目が不自由になり、絶望の中でもがく音大生。ピアニストになるという夢を持っている。

  • 北村 悠真【野村 周平】:美夏の通う音楽大学の非常勤講師。蒼から自分のふりをして美夏にピアノを弾いてほしいと頼まれる。

  • 中野 圭介【吉村 界人】:蒼の友人。蒼と北村の関係を誤解して、横道にある依頼をする。

  • 横道【SWAY】:裏カジノのスタッフ。圭介の依頼で北村たちを誘拐する。

  • 鼓動【中島 歩】:裏カジノの支配人。

  • 桐野 弥生【円井 わん】:圭介の彼女。

  • 柞田 一平【古田 新太】:蒼の同僚である大学の校務員。

など。辰巳琢郎も出演しているようですが、どの役柄で出ているのかはわかりませんでした。

 

「ミッドナイトスワン」の内田監督の作品ということで、個人的には期待して観たのですが、結果的には期待外れでした。

主人公の蒼は、ある重たい過去から声を失い、夢を持つことができず今は校務員として働く青年。蒼が不器用ながらも善性を持つ人間であることは、圭介たちと町中華で食事しているときに、近くのテーブルにいた男性がやってきた男たちに突然外に連れ出され殴られたときに止めに入ったり、美夏の夢を叶えてやりたいと一途に手助けする姿に描かれていますが、美夏は、自身が「ばあや」と呼ぶ使用人もいるお金持ちの家に育ち、ピアニストになる夢を諦めずに懸命にもがくお嬢様で、劇中で圭介が言っていたように、2人の住む世界は違います。ある意味で身分差のある2人が、偶然のきっかけで交わり、愛を育んでいく、というテーマは魅力的に思えましたが、その魅力が十分に伝わってこない感じでした。

また、最後は一応ハッピーエンドで終わるのですが、先に書いたような「身分差」のある2人が、その後どのようにその関係を深めていくのか、不安を感じてしまうところもありました。

「世界でいちばん静かなラブストーリー」という宣伝文句に、北野武監督の「あの夏、いちばん静かな海。」(1991年10月19日(土)公開)のような静謐な作品を期待したのが、最初のボタンの掛け違いだったのだろうと思いますが、個人的にヴァイオレンスものは嫌いということもあり、(ちょっとネタバレになりますが)蒼の過去の回想シーンや、終盤の廃屋?でのシーンなど、ヴァイオレンスなシーンは耐え難いものがあって、その刺激が強すぎて、メインであるラブストーリーが薄まってしまった印象がありました。

北村が足を突っ込んでいる裏社会的な要素もそうですが、「静かなラブストーリー」を描こうとするのであれば、こうした要素はむしろ邪魔(少なくとも私には)だと思いました。

 

ここから先は、ネタバレになりますが、備忘を兼ねて、記憶の範囲でもう少し詳しいあらすじを記してみます。(多少の記憶違いはあるだろうと思います。)

 

音大の校務員として働く青年・蒼(あおい)は、校舎の屋上で校章に色を塗りなおすため脚立に上ってペンキを塗っていると、杖を持った若い女性が屋上にやってきて、柵を乗り越えて飛び降りようとする。蒼は飛び降りようとする女性を捕まえて引きずりおろし、女性は駆け付けた教員と使用人の女性に保護されて連れていかれる。3人が去った後、蒼はキーホルダーのガムランボールが落ちているのを見つける。

その女性・美夏(みか)は、ピアノ科の学生だったが、交通事故に遭って網膜剥離となり、目が見えなくなっていた。医師からはだんだん回復するが、その期間には個人差があり何ともいえない、と言われていた。

同僚の柞田から木の剪定を頼まれた蒼が旧講堂だった旧校舎の脇にある木の剪定をしていると、美夏が杖をつきながらやってきて、学生立入禁止と書かれている旧校舎に入っていく。美夏に興味を持った蒼が窓から中を覗く。美夏はそこに置かれていたグランドピアノの蓋を開けて弾きだすが、事故の後遺症の手の痺れのために思うように弾けず、苛立ちを露わにする。弾き終えて外に出ようとした美夏は転んでしまうが、それを見た蒼は中に入り、杖を取って美夏に渡す。

美夏は、目が見えなくなったことを案じたピアノ科の教師たちから、作曲科への転科を勧められるが、先生たちのようになるつもりはない、私はピアノを諦めない、と頑なに拒絶する。

何日か経ち、蒼は自転車に乗って出勤する途中、美夏が母親と言い争っているのを見かける。目が見えないのに大学へ通うのは危険だと実家に戻るよう説得しようとする母親に、美夏は、ピアノの練習を1日も休みたくない、夢を諦めたくない、と言い、1人で大丈夫だからと、大学へ向かって歩き出す。気になった蒼は、美夏を守るように数メートル後ろで付いて歩き、美夏に分からないように障害物をよけたり、通行人を誘導して道を開けたりして、音大まで見届ける。

またある日、蒼が旧校舎の近くで仕事をしていると、再び美夏が旧校舎にやってくるが、その鍵は閉まっていた。それを見た蒼は、校務員の控室まで走り、合鍵がまとめて保管されているボックスを開けて旧校舎の合鍵を取り、走って戻る。旧校舎の鍵を開けて、中に入った蒼は、あの日拾っていたガムランボールを揺らして鳴らして美夏に中に入れることを知らせる。

そうして旧校舎でピアノを弾く美夏を窓から覗いていた蒼だが、ピアノを弾き終えて出てきた美夏に、いつもここの鍵開けてくれるのはあなたですよね?と話しかけられ、同じピアノ科の学生かと尋ねる。声を発しない蒼に、YESなら1回、NOなら2回叩いてと言って手を差し出した美夏に、蒼は自分が校務員であるとは言い出せずにYESと答え、美夏の掌に指で平仮名を書いて自分の名前が蒼であることを教える。ガムランボールが自分が屋上から飛び降りようとしたときに落としたものであることに気づいた美夏は、毎週土曜日のこの時間に鍵を開けてほしい、いつかあなたのピアノも聴かせてね、とお願いする。

その頃、ピアノ科の非常勤講師の北村は、学生のレッスンの時間が1時間開いてしまい、時間を持て余して旧校舎のそばに来て煙草を吸う。その中を覗いてピアノがあることに気づいた北村は、中に入り、1曲ピアノを弾く。それを近くで聞いていた蒼は、弾き終えた北村に拍手し、スマホの読上げ機能を使って、ピアノを弾いてほしいとお願いするが、北村は俺の演奏は高いよと相手にせずに去っていく。

しかし、音楽一家に育ち、生きがいを見いだせないでいた北村は、裏カジノに入り浸っており、その態度の悪さから、支配人に呼び出され、ツケにしていた300万円の支払いを求められてしまう。そこに、諦められずに後を付けていた蒼が、再びピアノを弾いてほしいと依頼し、北村は1回10万円だ、とふっかけるが、金が欲しい北村は、1回5万円で弾くことを了承する。

そして、蒼は北村に、旧校舎のピアノで、自分の代わりに美夏にピアノを弾いてもらい、5万円を渡す。また聞かせてほしい、と言う美夏に、蒼はその金を稼ぐため、夜もスクラップ工場でバイトするようになる。

一方の美夏は、行き交う人の多さにパニックになった時にガムランボールの音で誘導されるなど、学内で美夏を助けてくれる蒼を意識するようになる。

そうした中、蒼は北村から、なぜそこまで美夏を気に掛けるのか尋ねられ、夢をかなえてほしい、自分には何もないから、と答える。北村は、一途に美夏を思う蒼に、次第に表情が柔らかくなっていき、自分が弾くピアノに聞きほれる美夏に惹かれるようになっていく。

一方、蒼は、北村と美夏が旧校舎のピアノで楽しそうに連弾するのを窓の外から眺め、複雑な思いを抱く。

美夏と蒼は少しずつ距離を縮め、やがて、美夏は帰り道に蒼の肩に手を添え蒼のサポートを受けて歩くようになる。道端で蒼と並んで腰かけた美夏は、蒼の手をそっと触れ、私にとってあなたの手は神の手、いつもこの手が助けてくれたと話す。それを聞いた蒼は、高校時代、不良との争いでナイフで喉を刺され、その相手を刺殺した過去を思い出し、本当の俺の手はずっと前から汚れていて、その汚れが取れることはない、と心の中で思うのだった。

学内の清掃をする蒼は、レッスンで使う部屋に置かれているピアノに興味を抱き、人がいないのを確かめてその蓋を開け、音を出してみる。そこにやってきた北村は、ピアノを弾いてみたらいい、俺が教えてやるよ、と声を掛ける。

その頃、蒼が夜のバイトを週5日に増やしたと聞いた圭介は、弥生との映画の約束をすっぽかして、乗っていた原付で蒼が働く音大に向かう。学内で窓拭きをしていた柞田に蒼がどこにいるか尋ね、今ごろお楽しみ中だ、と言われて旧校舎に向かった圭介は、美夏にピアノを弾いた後の北村に蒼がお金を渡しているところを目撃し、蒼が北村に強請られていると勘違いしてしまう。

そんな中、蒼は、気分転換に、と北村に誘われ、美夏とともに北村の車でドライブに行く。富士五湖までやってきた3人は、急に雨に降られ、近くのカフェに入ろうとするが、お店は開いているものの、人はいなかった。入口には、裏の家いるので呼んでほしいと案内があり、蒼はお店の人を呼びに行き、美夏は北村とお店の中で待つことになる。

北村が、店内に置かれていたアップライトピアノを開け、美夏が口ずさんでいたメロディを弾いたのを聞いて、美夏は、ピアノを弾いてくれていたのが北村であることを確信し、それを指摘する。いつから分かっていたのか、との北村の問に、最初から何となく分かっていた、でも、傷つくから蒼には分かっていたことを言わないでほしいと話す。北村は、あいつがどんな奴か分かっているのか?と言うが、美夏は、彼がどんな人で構わない、蒼は何度も自分を救ってくれたと話す。美夏に惹かれるようになっていた北村は、美夏に顔を近づけてキスをするが、美夏はそれを拒むように北村を押し返す。
しかし、戻ってきてそれを目撃した蒼は、美夏と北村の仲を誤解して、本降りの雨の中、外に飛び出していってしまい、その際、付けていたガムランボールは地面に落ちる。美夏は、違う、と呼び止めようとするが、蒼の耳には届かず、蒼は雨の中、道の真ん中で崩れ落ちる。

日が変わって、音大に行った美夏の耳に、ガムランボールの音が聞こえてくる。蒼だと思って近づくと、それはあの日ガムランボールを拾った北村だった。北村はドライブの時のことを謝罪するが、そこに、突然黒いワゴン車がやってきて停まると、出てきた男たちに北村と美夏は捕らえられ、車に乗せられてしまう。

一方の蒼のもとには、圭介がボーリングに行こうと原付でやってくる。圭介が、蒼が北村にお金を渡しているのを目撃して知り合いに北村を懲らしめるよう頼んだことを得意げに話すと、顔色を一変させた蒼は、中野が乗ってきた原付に乗って飛び出していく。
ちょうど学内では、盗撮騒ぎが発覚し、警察が捜査に入っていた。柞田が犯人だと疑われ、蒼の原付も警官に停められるが、蒼はそれを振り切って走り去る。

拉致された北村と美夏は、闇カジノでの北村の態度に敵意を抱いていた横道とその仲間によって監禁され、北村は痛めつけられていた、北村は美夏は無関係だとかばうが、北村がピアニストだと知る横道は、止めて!と叫ぶ美夏の訴えには耳を貸さず、北村の右手を刺し貫く。

そこに駆けつけた蒼は、横道の仲間たちと格闘になり、次々と倒していくが、人数の差は覆せない。その光景に耐えられなくなった美夏は、近くにあった鉄パイプを振り上げ、止めて!と横道に振り下ろすが、それは横道ではなく北村に当たり、それを見た横道たちは車で逃げていく。残った蒼は、その鉄パイプを服で拭いて美夏の指紋を消し、北村の前で振り上げて自分が殴ったように装い、そこに駆けつけた警察によって逮捕される。

現場検証に連れてこられた蒼は、犯行時の様子などを再現させられ、検証写真を撮られる。なぜ友人だった北村をやったのか聞かれた蒼は、筆談を求め、全てを持っていて嫌いだった、と書く。

美夏は蒼に面会に行き、自分が北村を傷つけたのに蒼がその罪を背負うのかと尋ねるが、蒼は何も話さず、面会終了の時間が来て、教えて、と泣き叫ぶ美夏を残して蒼は面会室を出ていく。

その後、美夏のもとに圭介がやってきて、自分のことは忘れて幸せになってほしい、との蒼の直筆のメッセージを伝える。それを読み上げた中野は、二度と蒼には会うな、住む世界が違うんだ、俺が許さない、と言い捨てて去っていく。

しばらく経ち、療養中の北村のもとに美夏が訪ねてくる。ぼんやりだが視力が回復し、1人で歩けるようになった美夏に車椅子を押してもらう北村は、これからは美夏のために生きる、と話す。

2年が経ち、北村の尽力で、美夏は初めてとなるピアノリサイタルを行う。リサイタルは成功裡に終わり、北村は美夏を労い、その前途を祝うが、美夏は、自分にはこのような資格があるのだろうか、北村はピアノを失い、蒼は人生を失ったのに、自分だけがいいのだろうかと躊躇いを見せる。それを聞いた北村は、蒼の出所後の居場所を知っていたことを明かし、居場所を教える。

出所した蒼は、船の清掃の仕事をしていた。蒼が食堂で同僚と食事をしていると、テレビのニュースでは、交際相手の依頼で盗撮した音大のピアノ科教員が盗撮事件の犯人として逮捕されたことを伝えていた。

そんなある日、蒼が働く作業場に、蒼の居場所を知った美夏がやってくる。現場に似つかわしくないドレス・ヒール姿で、蒼さんはいますか?と叫んで探し回る美夏に気づいた蒼は、姿を隠そうとする。その様子に気づいた同僚もフォローし、美夏は諦めて帰ろうとし、集まっていた作業員たちは仕事を再開しはじめる。しかし、蒼が身につけていたガムランボールが落ち、その音を聞いた美夏は蒼のもとに駆け寄る。ちょうどその時、2人が立っていた道をダンプカーが走って近づいてくるが、蒼が美夏を捕まえて道端によけ、水たまりの上に倒れてしまう。ダンプカーが通り過ぎた後、蒼と2人きりとなった美夏は蒼に顔を寄せ、蒼もそれに応じて、2人はキスをする。

(ここまで)


なお、入場者プレゼントをいただきました。特製カレンダーカードで、公開初日からの週末3日間の限定で、全国の上映劇場で配布されたようです。