鷺の停車場

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テレビアニメ「葬送のフリーレン」⑦第22話~第26話

2023年秋クールで日本テレビで放送が始まった「葬送のフリーレン」、今回は、2月2日(金)から始まった、一級魔法使い選抜試験の第一次試験が終了後を描いた第2クールの第6回となる第22話から第二次試験が終わるまでを描いた第26話までの5話を紹介します。

frieren-anime.jp

繰り返しになりますが、2020年4月から「週刊少年サンデー」に連載されている原作:山田鐘人・作画:アベツカサによる同名マンガを原作とした作品で、主要スタッフは、監督:斎藤圭一郎、シリーズ構成:鈴木智尋、キャラクターデザイン・総作画監督:長澤礼子、音楽:Evan Call、アニメーション制作:マッドハウス など。


この5話分で登場する、名前が付けられている登場人物とキャストは、次のとおりです。< >内がそれぞれのキャラクターが登場(声優が出演)する放送回です。

  • フリーレン【種﨑 敦美】:千年以上生きるエルフで、勇者パーティーとして魔王を倒した魔法使い。魔法であればどんなものでも興味を持つ魔法オタク。性格はずぼらでドライ。仲間たちとの旅を経て、知らず知らずのうちにその心にも変化が現れる。<第22~26話>

  • フェルン【市ノ瀬 加那】:フリーレンの弟子として共に旅をすることになる魔法使い。ハイターに育てられた戦災孤児。冷静な少女で、生活面でずぼらなフリーレンのお母さん役。<第22~26話>

  • シュタルク【小林 千晃】:フリーレンとフェルンと共に旅をすることになる戦士で、アイゼンの弟子。子どものような性格。臆病ながら高い戦闘力を持ち、前衛を務める。<第22話>

  • ヒンメル【岡本 信彦】:魔王を倒した勇者パーティーの勇者で、自称イケメンのナルシスト。仲間思いで、困っている人を助けずにはいられない。10年間共に冒険をしたフリーレンに大きな影響を与える。<第22・23・25話>

  • ハイター【東地 宏樹】:魔王を倒した勇者パーティーの僧侶。ヒンメルの幼馴染で、高度な回復魔法を操る優秀な僧侶だが、酒好き。戦災孤児だったフェルンの育ての親。<第22・23話>

  • アイゼン【上田 燿司】:魔王を倒した勇者パーティーの戦士。頑強なドワーフ族でパーティーの前衛を務める。寡黙だが、パーティーの中ではツッコミ役。シュタルクの師匠。<第23・25話>

  • カンネ【和氣 あず未】:一級魔法使い試験の受験者の三級魔法使い。臆病で抜けているところがあるが、隠れた努力家で、気遣いのできる性格。同じく受験者のラヴィーネとは幼馴染で同じ魔法学校の出身。水を自由自在に操る「水を操る魔法(リームシュトローア)」を使う。<第22・25話>

  • ラヴィーネ【鈴代 紗弓】:一級魔法使い試験の受験者の三級魔法使い。口調は荒いが面倒見がよい。同じく受験者のカンネとは幼馴染で同じ魔法学校の出身。水を凍らせる魔法や、鋭く尖った形の氷を複数生み出して相手に放つ「氷の矢を放つ魔法(ネフティーア)」を使う。<第22・23・25・26話>

  • ヴィアベル【谷山 紀章】:一級魔法使い試験の受験者で、魔王軍の残党と戦ってきた北部魔法隊隊長でもある二級魔法使い。時に人を殺すことも厭わない冷酷さの一方で、根は優しく仲間想いな一面もある。<第22~24・26話>

  • ユーベル【長谷川 育美】:一級魔法使い試験の受験者で、三級魔法使い。饒舌で常にうっすらとした笑みを浮かべている。人を殺すことへの抵抗が無い。<第22・24・26話>

  • デンケン【斉藤 次郎】:一級魔法使い試験の受験者で、二級魔法使い。権力争いの末に宮廷魔法使いの座に。一級魔法使いと遜色がない実力の持ち主。<第22~26話>

  • リヒター【花輪 英司】:一級魔法使い試験の受験者で、二級魔法使い。魔法への知識も豊富な実力者だが、目的のためには殺しもいとわない。<第22~26話>

  • ラント【小松 昌平】:一級魔法使い試験の受験者で、二級魔法使い。クールな性格で、他人を信用せず打ち解けようとしない不愛想な青年。<第22・24・26話>

  • ラオフェン【石上 静香】:一級魔法使い試験の受験者で、三級魔法使い。魔法使いとしては未熟ではあるが、素直で優しい性格でデンケンに目をかけられている。<第22・23・25・26話>

  • エーレ【伊藤 かな恵】:一級魔法使い試験の受験者の三級魔法使い。魔法学校を首席で卒業した実力を持つ。<第23・26話>

  • シャルフ【村井 雄治】:一級魔法使い試験の受験者の三級魔法使い。無数の花弁を自由自在に操る「花弁を鋼鉄に変える魔法(ジュベラード)」を使う。<第22・23・26話>

  • メトーデ【上田 麗奈】:一級魔法使い試験の受験者で、多彩な魔法を操る。常に冷静で落ち着いた性格だが、小さい女の子に目がない。<第23~26話>

  • エーデル【黒澤 ともよ】:一級魔法使い試験の受験者で、二級魔法使い。一人称は「儂」で、老人のような口調をしている。<第24・26話>

  • ブライ【高橋 伸也】:一級魔法使い試験の受験者の1人で、一次試験でエーデルと同じ第17パーティーたった。スキンヘッドが特徴。<第23~25話>

  • ドゥンスト【こばたけ まさふみ】:一級魔法使い試験の受験者の1人で、一次試験でエーデルと同じ第17パーティーだった。<第24・25話>

  • トーン【坂 泰斗】:一級魔法使い試験の受験者の1人。二次試験では受験者たちで協力するデンケンの作戦を拒否して1人でダンジョンに入っていく。<第23話>

  • ゼーリエ【伊瀬茉莉也】:エルフの大魔法使い。知識量やその強さは圧倒的で、ほぼすべての魔法を網羅している。「大陸魔法協会」の創始者。フランメの師匠であり、フリーレンは孫弟子にあたる。<第22・25話>

  • ゼンゼ【照井 春佳】:一級魔法使い試験の試験官を務める一級魔法使い。少女のような見た目で自称「平和主義者」だが、表情は乏しく口調は厳しい。<第22・24~26話>

  • ゲナウ【新垣 樽助】:一級魔法使い試験の試験官を務める一級魔法使い。常に冷静で表情がほとんど崩れない。<第22・24話>

  • ファルシュ【白石 兼斗】:男性の一級魔法使い。<第24話>

  • フランメ【田中 敦子】:1000年以上前に生きた、歴史において英雄と称される人間の大魔法使いで、フリーレンの師匠(せんせい)<第22話>
  • 武のおじいさん【チョー】:オイサーストでひとり修行するシュタルクに声をかけた老人。<第22話>

  • レッカー【川田 紳司】:オイサーストでフリーレンがヒンメルたちと入った店の料理人。<第22話>

各話ごとのあらすじは、次のとおりです。< >内が公式サイトのストーリーで紹介されている内容になります。

#22 次からは敵同士

<第一次試験は18人が合格し、フリーレンとフェルンも二次試験へ。試験は3日後、合格者たちは解散し、各々でその時を待つ。フリーレンたちも宿へと戻るが、シュタルクがあることでフェルンの機嫌を損ねてしまい、機嫌を直してもらおうと3人はオイサーストの街へと繰り出す。すると偶然受験者たちと顔を合わせて……。>

日没となり、試験官のゲナウは第一次試験の終了を宣告し、合格者は計6パーティー18名、第二次試験は3日後、詳細は追って通達すると告げて解散する。

翌日の夕方、宿のベッドでダラダラと横になっていたシュタルクは、部屋のドアを激しくノックする音にドアを開けると、そこには前日の夜に第一次試験から帰ってきたフェルンとフリーレンが立っていた。シュタルクが怠惰に過ごしていたことを知ったフェルンは機嫌を損ねてしまい、フリーレンはフェルンのご機嫌取りに美味いものでも食べに行くことにし、前にヒンメルたちと来たときにいい店を見つけたとレストランに向かう。

一方、自身の店で老婦人に頼まれた魔法具のランプの修理を終えて引き渡し、店を閉めようとしたリヒターのところに、ラオフェンを連れたデンケンがやってくる。ラオフェンはデンケンに買ってもらったドーナツを食べ、まるでデンケンの孫のようだった。デンケンは、一緒に飯でも食いに行こう、行きたい店があるが土地勘がなくてわからないとリヒターを食事に誘い、俺たちはもうパーティーではないとリヒターは冷ややかに対応するが、デンケンは、魔法使いなら自分の機嫌を取っていて損はない、生前妻と一緒に行った店の味が忘れられないと言い、リヒターはおごってもらう条件で一緒に食事に行くことにする。

そして、オイサーストの路地を歩いていたラントは、ユーベルに街中ではさすがに分身じゃないんだと声を掛けられる。並んで歩きながら、何でヴィアベルを殺さなかったのか、殺すチャンスはあった、とラントが質問すると、ユーベルは、共感しちゃったからかな、私も殺すまでの猶予がほしくなった、と言い、ラントにソルガニール(見たものを拘束する魔法)を掛ける。その人が得意とする魔法は人生や人間性に大きくかかわtっている、私は昔から共感することでその魔法が使えるようになるし、共感できないものは使えない、と言い、ラントに、何を思ってどんな人生を歩んできたのかと尋ねる。ラントは、魔法がどんな原理で動いているかも知らず感覚で魔法を使うタイプのユーベルを拒むが、ユーベルは魔法を解いて、少しわかった気がする、もっと知りたいと言ってつきまとう。

リヒターに連れられ、デンケンとラオフェンは目指す店にたどり着く。リヒターは、目の付け所が良かった、ここはこの街で一番美味い店、自分もよく来ると言う。デンケンは、妻とここを訪れたのは50年も前だが、当時の雰囲気のままだ、と言って店に入る。すると、本当にデザートをいくらでも頼んでいいんですか?と聞くフェルンの声が耳に入り、テーブルにはフリーレン、フェルンとシュタルクがテーブルに座っていた。デンケンは、放っておけ、楽しそうではないか、食事は楽しんでするものだ、と言って別のテーブルに座る。

シュタルクはオムライスを、フリーレンは大量の肉を、フェルンはデザートを注文し、料理が到着すると、フリーレンは、ようし、食い貯めるぞ、と言って食べ始める。フリーレンは、ヒンメルたちと来た80年前のことを思い出す。料理人のレッカーは、家宝の包丁を魔族から取り戻してくれたことを感謝し、最大限のもてなしと可能な限りの報酬を約束する。その時も大量の肉を注文したフリーレンにヒンメルは、一度にそんなに食べなくてもまた来ればいいじゃないか、と言うが、フリーレンはそう思って二度と食べられなくなった味はたくさんあると言って食べ始める。それを聞いたレッカーは、ご安心ください、当店の味は後世まで残すと宣言する。フリーレンは、料理人はみなそう言って、味を変えて爪痕を残そうとすると言う。そのときはもっと美味しい味を探しに行けばいい、と言うヒンメルにレッカーは、私を超える味などこの世にないと宣言し、ヒンメルは、じゃあしっかり未来まで届けるんだ、それが僕が要求する報酬だと言い、レッカーは、今まで料理人が成し遂げられなかった偉業を果たしてみせましょう、と宣言したのだった。

シュタルクとフェルンは料理に舌鼓を打つが、フリーレンは、あれだけ意気込んでおいて味が変わってるじゃん、と思うが、でも、もっと美味しい味を探す手間が省けた、あのときよりもずっと美味しい、とも思うのだった。

デンケンたちのテーブルでは、デンケンがラオフェンに、野菜も食べんといかんぞ、と言い、リヒターは、完全におじいちゃんじゃないか、と呆れる。そして、同じ店に来ていたラントとユーベルのテーブルでは、ユーベルが、意外と小食なんだね、とラントに言うのだった。

店を出たフリーレンたち、フェルンも料理に満足して機嫌を直し、フリーレンは機嫌が直って良かった、とホッとするのだった。

翌日、シュタルクが外で修業をしていると、フリーレンがやってきて、力を借りたい、と頼む。宿に戻ると、フェルンが前日以上に機嫌を損ねていた。フリーレンが買出し当番だったのに寝坊したことが原因だった。フリーレンは、自分だと話してくれない、仲裁してほしいとシュタルクに懇願する。シュタルクが恐る恐るフェルンに話しかけると、フェルンはおやつを食べたいと言い、シュタルクは、この人めんどくさい、と思いながらも、おやつを買いに連れ出す。

一方、カンネが大陸魔法教会の前でラヴィーネと待ち合わせをしていると、街中でヴィアベルとシャルフが戦士を物色しているのが目に入る。そこにやってきたラヴィーネはいつも以上に可愛い恰好をしていた。カンネがそれを褒めると、ラヴィーネは、溜息をつきながら、3人の兄が帝都から帰ってきて、着せ替え人形のように買ってきた服を着せて、母親もノリノリで止めてくれない、優秀な兄貴たちと比べられるのは地獄だ、と愚痴を言う。カンネがふざけて、今日は私がエスコートするね、と跪いて手を取ると、ラヴィーネはいつものようにカンネにまたがってその髪を引っ張る。

おやつを買いに店に入ったフリーレンたちだったが、フェルンの機嫌は直らない。そこに、カンネとラヴィーネが入ってくる。2人はちょうどフリーレンの宿に行こうとしていたところだった。5人で店を出て宿に向かう途中、シュタルクが誰なのか尋ねると、フリーレンは一次試験で同じパーティーだった子だと話し、カンネは、フリーレンにはたくさん助けてもらった、先生みたいだったと話す。シュタルクが女の子ばかりで居心地が悪いと思いながら歩いていると、反対側から歩いてきたヴィアベルとシャルフは、お前戦士だろう?と突然シュタルクに声をかけ、大陸魔法教会から農作物を荒らすフレッサーの討伐の依頼を受けて前衛を探している、こいつを借りて行っていいか、と尋ね、フェルンが、どうぞ、と言うと、シュタルクはヴィアベルたちに連れていかれてしまう。カンネは心配するが、フェルンは、大丈夫でしょう、害意が全くなかったと動じない。

宿に着くと、カンネは、お礼だと言ってお菓子をフリーレンに渡す。ラヴィーネも、フリーレンがいなかったら私たちは第二次試験まで進めなかったと感謝する。

フリーレンは、ヒンメルが魔物を退治して少女から感謝されたときのことを思い出す。何で人助けをするのか尋ねたフリーレンにヒンメルは、誰かに少しでも自分のことを覚えていてもらいたいのかもしれない、生きているということは誰かに知ってもらって覚えていてもらうこと、覚えていてもらうためにはほんの少しでいいから誰かの人生を変えてあげればいい、きっとそれだけで十分だ、と語ったのだった。楽しそうに話すカンネとラヴィーネの姿を見ながらそれを思い出し、感慨にふけるフリーレン。フェルンもカンネとラヴィーネが持ってきたお菓子の美味しさにようやく機嫌を直す。

そんなフリーレンたちのもとに、第二次試験の会場と日時、担当試験官の名前が記された通知が届く。それを見たラヴィーネは、ついてない、ゼンゼの担当した試験は過去4回あるが、いずれも合格者はゼロだ、と落胆する。

その頃、そのほかの第二次試験の受験者にも試験内容の通知が届けられる。ヴィアベルたちに連れ去られて討伐に同行したシュタルクは、お前凄いな、武の神髄を見たぜ、と感心するヴィアベルと討伐した巨大な獣の肉を焼いて食べていた。

一方、第二次試験の試験内容を見たゲナウは、なんてひどい試験内容だ、と文句を言うが、ゼンゼは、私はゲナウとは違って平和主義者だよ、と言うのだった。

#23 迷宮攻略

<一級魔法使い選抜第二次試験、試験官のゼンゼが用意したのはダンジョン攻略。「零落の王墓」の最深部に辿り着いた者は全員合格という。しかしそこは未踏破の難攻不落のダンジョンだった。フリーレンたち受験者はそれぞれ内部へと入っていくが、待ち受けていたのは魔物やトラップ、そして驚きの“魔法”だった。>

第二次試験の当日、会場の北側諸国・零落の王墓の前で、試験官のゼンゼは第一次試験に合格した18人を前に、試験は至ってシンプル、一級魔法使いを目指す者ならば難なく切り抜けられるものだ、と言って第二次試験の詳細を説明を始める。

第二次試験はダンジョン攻略、合格条件は零落の王墓の最深部までたどり着くこと、私は平和主義者で争いは好まない、よってたどり着いたは全員合格とする、と説明するゼンゼに、ブライが口を挟み、ここは多くの冒険者が帰らぬ者になった未踏破のダンジョン、また合格者を出さないつもりか、と文句を言うが、ゼンゼは、不可能を可能にするのが一級魔法使い、未踏破だろうが前人未踏だろうがねじ伏せて突き進むんだ、とそれを一蹴し、最深部にたどり着いた者を確認するために自分も最深部まで潜ると言って、受験者全員に、瓶を割るとゴーレムが現れてダンジョンの外まで運び出してくれるレルネンが開発した脱出用ゴーレムを渡す。そして、継続不可能と判断したら迷わず使うように、将来有望な人材が死ぬのは許容できない、明日の夜明けには自動で瓶が割れる、それが第二次試験の期限、と言い、試験開始を告げる。

デンケンは全員で協力して攻略する作戦を提案するが、トーンはそれは無理、いぜという時には捨て石にされるリスクもある、と言って1人でダンジョンに入っていく。それに続いて、第一次試験で同じ第17パーティーだったエーデル、ブライ、ドゥンスト、さらに、第8パーティーだったヴィアベル、エーレ、シャルフもそれぞれ3人でダンジョンに入っていく。デンケンは、莫迦な、協力することの優位性に気づけないとは、と嘆く。フリーレンも、協力はもう成立しない、とフェルンと歩き出すと、試験官のゼンゼが、一番安全に最深部にたどり着けそうだとフリーレンたちについてくる。

フリーレンは、一番安全なルートを選び慎重にマッピングしながら進んでいく。フェルンが、相変わらずダンジョンに詳しいですね、と言うと、フリーレンは、前はそうでもなかったけど、ヒンメルがダンジョンが好きだったから、魔物の討伐依頼でたくさんのダンジョンに潜った、と話す。ダンジョンが好きってどういうことですか?とフェルンがさらに尋ねると、わくわくするんだって、訳がわからないよね、と答える。

フリーレンはヒンメルたちとダンジョンに潜ったときのことを思い出す。次の階層に続く階段を見つけても、ヒンメルは、ダンジョンはひとつの階層をすべて制覇してから次に進むものだ、楽しんで人助けできるのならそれが一番、と言って分かれ道に戻っていく。フリーレンが、いつまでもこうはいかない、旅が進めば命がけのダンジョンも増えてくる、と言い、アイゼンもそれに同意するが、ヒンメルは、最後まで楽しむよ、楽しく冒険して、ダンジョンに潜って魔物を倒して宝を探して、気が付いたら世界を救っていたような、そんな旅がしたい、それに分かれ道の先にあるのは珍しい魔導書かも、と言って進んだのだった。

そのころ、まだ入口に残っていたラヴィーネもカンネを誘って一緒に入っていく。残されたのは、第一次試験で第4パーティーだったデンケン、リヒター、ラオフェンと第1パーティーだったメトーデ、レンゲの5人だった。全員で協力して役割分担すれば攻略の可能性は十分にあった、それだけの実力者が揃っていたはずだ、と残念がるデンケン。リヒターは、より賢い人間が残ったと思えばいい、少なくともこの中にミミックのような単純な罠にかかって足を引っ張る馬鹿はいない、となぐさめ、そんな馬鹿がこの試験にいるものか、と言ってデンケンもダンジョンに入っていく。

一方のフリーレン。途中で見つけた宝箱に、この魔力、魔導書か、と考え込む。フェルンは、判別結果はミミックだと止めるが、フリーレンは、その魔法の精度は99%、残りの1%を見破った偉大な魔法使いたちがいたからこそ歴史的な発見があった、この中身は貴重な魔導書だ、私の魔法使いとしての経験がそう告げている、と言って宝箱に顔を突っ込むが、やはりミミックで、噛まれたフリーレンは、暗いよ、怖いよ、と叫び、フェルンはフリーレンを引っ張り出そうとする。それを見るゼンゼは、付いていく人たちを間違えたと思う。

5人で進むデンケン、部屋らしき場所にたどり着いて扉を開けようとすると、ガーゴイルが動き出し、5人を襲う。5人は応戦して撃退するが、その途中、レンゲは攻撃を受けて跳ね飛ばされ、壁に閉じ込められてしまう。デンケンがレンゲに迫る壁を壊そうとするが叶わず、レンゲは脱出用ゴーレムの瓶を割り、ゴーレムに抱えられてダンジョンの外に運ばれていく。デンケンは、少しの油断が命取りになる、これが零落の王墓か、と呟く。

フリーレンは、ミミックの箱から引っ張り出そうとしていたフェルンに、いったん引っ張るのを止めよう、逆に押し込むとおえっとなって噛むのを止める、と言って救出してもらう。気を取り直して攻略を再開したフリーレンたちは気を付けながら進んでいく。途中、フリーレンは、こっちは正規のコースみたいだから引き返すよ、と言って違うコースを歩いていく。何で?と疑問に思うフェルン。しかし、攻略は順調に進む。未踏破のダンジョンにしてはおかしい、構造的にも最深部は近いはず、油断は禁物、と言うフリーレン。

休憩をとったところで、フリーレンは途中で集めたガラクタのようにしか見えない魔道具を並べ、頬ずりして喜んだりしながら品定めをし、フェルンとゼンゼはその様子を座り込んで眺める。ゼンゼは、その若さで君ほど優秀な魔法使いを見たことがない、相当な修練を積んだはず、なのに情熱も執念も感じない、不思議な子だ、と言う。フェルンは、私はとある人に恩を返すために一人前の魔法使いになった、それは当時の私の人生の目標で、ただただ全力で、その先があるだなんて考えもしなかった、きっとその時に情熱も執念も使い果たしてしまったのでしょう、と話す。ならなぜ魔法の探求を続けているのかとさらに問うゼンゼに、フリーレンは楽しそうでしょう、私が初めてダンジョンに潜ったときも、ガラクタみたいな魔道具を集めて楽しそうに笑い、私もつられて笑ってしまった、きっと私はそんなフリーレンの姿を見るのが好きだから一緒に魔法を追い求めているのだろうと話し、休憩を切り上げる。ゼンゼは、やっぱり君たちについてきて正解だったようだ、きっと君たちならこの過酷なダンジョンも楽しむことができる、と言ってついてくる。

一方、一緒に進んでいたヴィアベル、シャルフ、エーレの3人だったが、最深部に近づいたところで、エーレはソルガニールで拘束されてしまい、魔力を消した魔法使い3人の奇襲だと知らせる。シャルフの魔法で視界を遮ってその拘束を解かせ、先を見たヴィアベルは、零落の王墓が難攻不落だったわけだぜ、と呟く。視線の先には、魔法で作られた3人の複製体がいた。ヴィアベルは、シャルフは自分の複製体、エーレはシャルフの複製体を狙うよう指示し、自分はエーレの複製体と対峙する。

そのころ、デンケンたちも現れた自分たちの複製体と戦い、協力してそれらを倒す。デンケンは、魔族か魔物による複製体だろうが、これほど完璧な複製体は見たことがない、魔力も技量も所作も同等、記憶さえ利用している可能性があると言い、メトーデは、仮に複数の複製体を同時に操れるとしたら恐ろしいほどの脅威になる、と言い、デンケンは、どちらにしても徒党を組んでいて正解だった、対処できる手段も増える、と言って先に進む。そして、デンケンたちが最深部につながる広間に扉を開けて入ると、視線の先にはフリーレンの複製体が待ち構えていた。

あれも対処できるのか、と問うリヒターにデンケンは、ひとつだけ言えるのは、これが試験でなかったらとうに瓶を割っている、と言って身構える。

#24 完璧な複製体

<第二次試験でダンジョン「零落の王墓」に入った受験者たちの前に、彼らの複製体が立ちふさがる。その複製体は魔法によりそれぞれの実力・魔力・技術などを完全にコピーした実体だった。その中で、ユーベルたちは自身の複製体に遭遇してしまう。一方、デンケンたちはフリーレンの複製体を前に足止めを食らい…。>

零落の王墓が難攻不落だったわけだぜ、まさかこんなものがいるとは、と呟くヴィアベル。その視線の先には、魔法で作られたヴィアベル、エーレ、シャルフの複製体がいた。
一方、最深部につながる広間に入ったデンケン、リヒター、ラオフェン、メトーデの前には、視線の先にはフリーレンの複製体が待ち構えていた。あれも対処できるのか、と問うリヒターにデンケンは、ひとつだけ言えるのは、これが試験でなかったらとうに瓶を割っている、と言って身構える。

そのころ、大陸魔法教会では、ゲナウがお茶を飲みながら、私たちはあのダンジョンの主を「水鏡の悪魔」(シュピーゲル)と呼んでいる、賢者エーヴィヒの英雄譚に出てくる神話の時代の魔物、シュピーゲルはダンジョンに入り込んだ人物の記憶を読み取り対象者の複製体を作り出していると考えられている、シュピーゲルが作り出すのは実体を持った実力も魔力も技術さえも模倣した完璧な複製体、零落の王墓が未踏破である所以だ、とファルシュに語る。なぜゼンゼはこのダンジョンを試験会t場にしたのかと問うファルシュに、ゲナウは、複製体は自分と互角の相手、犠牲を出さずに倒すには冷静な自己分析とチームワークが必要になる、実に平和主義者の彼女らしい試験内容だ、と語る。

デンケンたちは、いったんフリーレンの複製体に攻撃をしかけるが、その強力な反撃に、身を隠し、さてどうしたものか、と考える。

そのころ、一緒にダンジョン内を進んでいたユーベルとラントは、ユーベルの複製体に襲撃され、ラントは深い傷を負い、脱出用のゴーレムの瓶も奪われていた。ユーベルはラントに、あの複製体はどの程度まで完璧な私のコピーだと思う?と質問するとラントは、たぶんしゃべれないだけ、こちらに対する知識もある、追い詰めたのに追撃してこないのはソルガニールを警戒しているからだ、と話す。ラントが分身であると勘付いているユーベルは、ちょっと待っていてね、瓶を取り返してくる、と言って自身の複製体と1対1で戦う。実力が互角なら勝ち負けはほぼ運だなと思いながら戦うユーベルは、複製体にソルガニールで拘束されてしまうが、そこに現れたラントに視線を逸らした隙に、複製体を斬り落とす。
ラントは、瀕死の僕が分身だと分かっていたのに死に急ぐような真似をした?と問うと、ユーベルは、来てくれると確信したから、分身は私の瓶を受け取ろうとしなかった、自分のせいで誰かが死ぬのが嫌なんだ、だから自分のせいで私が死んでしまう状況を作った、と答え、ありがとう、またひとつ君のことがわかった気がするような気がすると話す。

そのころ、だいぶ最深部に近いと思うんだけど、と言って歩いていたフリーレン。フェルンはあそこに階段がある、このフロアは探索しつくしたと思いますが、と言うが、フリーレンはこの壁の奥に隠し部屋がある、きっとお宝だと言って、マップを確認し、柱のある部分を触れて回すと、壁が動き、隠し部屋につながる階段が現れる。階段を上がると、埋葬された王の功績を描いた壁画があった。同行するゼンゼは、これほど保存状態のいい統一王朝期の壁画は初めて見た、価値ある発見だ、と言い、フェルンは壮観ですねと感嘆し、それを見るフリーレンは表情を緩める。
そして、フェルンが順調すぎるくらい順調、このまま合格してしまうかも、と言って3人で歩いていると、最奥の間の手前で途方に暮れているデンケンたちに出会う。

フリーレンがどうしたのか尋ねると、デンケンは、構造的にこの先の広間を抜けると最深部だが、フリーレンの複製体が陣取ってもう半日になると話し、フリーレンは、面白くなってきた、ダンジョン攻略はこうでなくちゃ、と呟く。
扉の隙間から複製体を観察したフリーレンは、完璧な複製体、確かに私と同等の力を持っているみたいだ、と話す。何か手立てはあるか、と問うデンケンに、あれがもし私を完全に再現したものだとしたら、弱点は生身の魔法使いと同じ、と答える。
メトーデは、フリーレンの魔法耐性を調べるために抱きつき、これは興味深い、拘束魔法が通用しない、と言い、フリーレンの目をじっと見て、精神操作魔法も無理だ、私にはフリーレンの精神防御を破れない、と言う。それを見て嫉妬心を抱いたフェルンは、フリーレンをメトーデから引き離し、フリーレンの背中に抱きつく。メトーデは、精神防御の構築は複雑で強固だが、だいぶ古い術式のようだ、精神魔法の専門家なら脆弱性を突けるかもしれない、エーデルなら可能かと思うが、戦闘能力は皆無なのでここまで来られるかどうか、大前提として精神操作魔法は相手に心がないと通用しない、複製体がそこまで再現できているかどうか、と話し、デンケンはまだまだ情報が足りないとこぼす。

そのころ、そのエーデルは、同行してきたドゥンスト、ブライとともにゼンゼの複製体から身を隠していた。ブライは、魔力を隠して潜伏するにも限界がある、もう倒すしかないと言うが、エーデルは、自分の見立てではあれには勝てない、我々よりはるかに格上の魔法使いだ、正直ここまで逃げおおせたことが奇跡だ、ここらが潮時だろう、と言う。

しかし、そこに、3人に気づいたゼンゼの複製体が襲い掛かる。エーデルは決死の思いで複製体に精神操作魔法をかけようと試みるが、それは効かず、エーデルは胸を貫かれる。エーデルは、これでわかった、心がない、心の働きを精密に模倣しているだけだ、我々では絶対に勝てない、と言い、ブライとドゥンストに武闘派のところまで全力で逃げろ、と告げ、自らは脱出用ゴーレムの瓶を割り、ゴーレムに運び出されていく。
逃げながら、最深部に無事にたどり着ける人なんているのか、と言うドゥンストにブライは、合格者を出すつもりなんて初めからないんだ、と言ってともに逃げる。

そのころ、ユーベルとラント、カンネとラヴィーネはそれぞれ2人でダンジョンを進み、トーンはひとりうずくまっていた。そして、ヴィアベル、エーレ、シャルフは3人で自分たちの複製体と戦っていた。

一方、最深部につながる広間の前で作戦を考えるフリーレンやデンケンたち。フリーレンは、心がないパターンも考えた方がいい、その場合は力業になるだろうけど、と話す。すると、フェルンが手を挙げ、もしかしたら私、フリーレン様を殺せるかもしれません、と名乗り出る。それを聞いたフリーレンは笑顔で、じゃあ作戦を立てようか、と話す。

#25 致命的な隙

<第二次試験の合格条件であるダンジョン最深部に行くには、フリーレンの複製体を倒さねばならなかった。複製体を前にしたデンケンやラヴィーネたちと合流したフリーレンとフェルンは、魔法使いたちそれぞれが持つ情報や知識で、複製体打倒の作戦を立てる。その中でフリーレンの脳裏に浮かぶ記憶とは…。>

最深部につながる広間の前で作戦を考えるフリーレンやデンケンたち。フリーレンは、心がないパターンも考えた方がいい、その場合は力業になるだろうけど、と話す。すると、フェルンが手を挙げ、もしかしたら私、フリーレン様を殺せるかもしれません、と名乗り出る。それを聞いたフリーレンは笑顔で、じゃあ作戦を立てようか、と話す。

フリーレンたちは、複製体に心がある場合の対応方法について打ち合わせているところに、傷付いたドゥンストが歩いてきて、エーデルがゼンゼの複製体に襲われて脱落したこと、ブライも逃げる途中で脱落したであろうことを知らせ、情報がある、協力しようと申し出る。

メトーデの回復魔法で少し回復したドゥンストは、エーデルの見立てでは、複製体は心の働きを精密に模倣しているだけで心そのものはないそうだ、と話す。それを聞いたフリーレンは、これで楽に倒せる手段はなくなった、それを踏まえた作戦を立てないと、と言うが、デンケンは、まだ不確定要素が多すぎる、一番の問題は複製体とその術者の正体、それが分からないと手が出せない、と反論する。

複製体特有の弱点はないのか、とリヒターが質問を投げかけたところに、カンネとともにやってきたラヴィーネは、そいつに弱点はない、複製体を操っているのはシュピーゲルという神話時代の魔物だ、一番上の兄が大陸魔法教会の零落の王墓攻略の先遣隊の1人だった、と話す。

俺たちと情報を共有して協力すべきだった、と文句を言うリヒターに、ラヴィーネは、フリーレンたちも先に行ってしまったし、ルールがなければ容赦なく仲間を見捨てるタイプ、安易に協力できるか、と反論するが、シュピーゲルは扉の向こう側の宝物庫の内部にいて、本体は攻撃手段を持たない脆弱な魔物、それを倒せば複製体は全部消える、と先遣隊の観測結果を共有する。デンケンは、こちらの魔力探知の結果と一致する、本体は扉の向こう側だが扉には強力な封印が施されている、と言い、フリーレンも、それは私も確認している、私の複製体の仕業だ、命がけで宝物庫の扉を閉じる魔法、民間魔法でもトップクラスの封印魔法だ、あの扉は術者が死ぬまで開くことはない、扉を避けて壁を破る方法もあるがそれも対処済みだろう、と話す。

どちらにしろ、あの複製体は倒さなければいけないということか、と言うデンケンにラヴィーネは、倒すなら急いだ方がいい、シュピーゲルはダンジョンの中にいる者全員の複製体を作り出す、その複製体は時間とともに最深部に集まってくる習性がある、前回の先遣隊は兄の部隊を除いてほとんどが壊滅した、と話す。

一同が暗い顔をする中、フェルンは、複製体が心の働きを精密に模倣しているなら、行動パターンによる弱点は本人と同じ、何とかなるかもしれない、と言う。フリーレンが弱点は何か問うと、フェルンはフリーレンを壁際に立たせ、一般攻撃魔法を打ち込む。フリーレンは防御魔法でそれを防ぐが、それを見たデンケンは、なんということだ、確かにこれはフリーレンの致命的な隙だ、なぜ戦っている時に気が付かなかったのか、手練れという先入観があったから気付けなかった、と漏らし、魔法を使う瞬間に、ほんの一瞬だけ魔力探知が途切れている、と指摘する。カンネは、それって見習い魔法使いがよくするミスだと言うが、フリーレンは昔から苦手なんだよねと言う。自覚があるなら何で言ってくれなかったのか、と問うフェルンに、だって恥ずかしいし、ともじもじするフリーレン。

他の技量があまりにも卓越しすぎている、実際にこの隙を突ける魔法使いはほとんどいないだろう、とリヒターは指摘するが、フェルンは、とにかく作戦会議をしましょう、と打合せを始める。楽しそうな顔で打合せに加わるフリーレンは、ヒンメルたちとダンジョンの魔物を討伐したときのことを思い出し、こうやってダンジョンのボスを倒すためによく話し合ったなと思って、とフェルンに話す。

打合せを終え、フリーレンは、よし、攻略を開始しよう、と声を掛ける。勝てるのか?と不安視するデンケンに、フリーレンは、大丈夫、攻略できないダンジョンは存在しない、私は歴史上で最も多くのダンジョンを攻略したパーティの魔法使いだ、と言い、少人数の方が相手の行動を予測しやすい、確かに全員で戦えばほぼ確実に勝てるだろうけど、大半が死ぬことになる、脱出用ゴーレムを使う暇もない、と自分とフェルンの2人で複製体と戦い、残りのメンバーは最深部に集まってくる他の複製体の足止めを担当する作戦を決める。

広間の扉を開け、フリーレンとフェルンは広間に入り、フリーレンの複製体と対峙する。フリーレンは自身の複製体と戦い、複製体の魔力探知が途切れた隙に潜伏したフェルンがゾルトラークを打ち込む作戦だった。打合せでフリーレンは、完璧に潜伏したフェルンはそう簡単に探知できない、ゾルトラークは最も速射性に優れているし、エルフにとっては比較的新しい魔法で反射神経で無意識に防御できるほどの年月は経っていない、その対応は思考する分だけたった一瞬遅れることになる、でもフェルンは違う、生まれた時からあって当たり前の魔法で、魔法使いの基礎だ、フェルンのゾルトラークなら私を殺せる、ありったけの魔力を叩き込むんだ、とフェルンに話していたのだった。攻撃する隙をうかがっていたフェルンは、複製体を攻撃しようと飛び出す。

フランメの死後、ゼーリエを訪ねたフリーレン。お前は私のことが嫌いだろう、なぜ私のもとに来た、もう二度と会わないものだと思っていた、と言うゼーリエに、フリーレンはフランメの遺言状を渡す。それを開き、まるで報告書だ、と言うゼーリエにフリーレンがその内容を尋ねると、皇帝が国を挙げた魔法の研究に認可を下ろした、人間の文化圏では今まで魔法は魔族の技術だとして表立った研究は禁忌とされてきた、働きかけたのはフランメで、新設された宮廷魔法使いの教育に携わっていた、ゼーリエにそれを引き継いでほしいという内容だ、と説明し、何て贅沢な奴だ、魔法の研究の認可が下りただけで快挙だというのに、それ以上を望むとは、と言う。そして、それは凄いことなのか尋ねるフリーレンに、大陸最大の統一帝国が魔法の研究と軍事転用を始めるということだ、周辺諸国が黙っていない、数十年で魔法は大陸中に普及する、人類の誰もが魔法を使える時代がやってくる、これは遠くない未来に人類が魔王軍に抗う力を手に入れることを意味する、と説明するが、だがそれは私の望むところではない、と言い、フリーレンに、帰れ、こんな遺言は到底聞き入れられない、実に不愉快、魔法は特別であるべき、才ある者以外に教えるつもりはない、こんなものを寄こすとはフランメとは最後まで分かり合えなかった、しょせんは気まぐれで育てた弟子だ、と告げる。フリーレンは、師匠はゼーリエが怒って遺言状を破り捨てるだろうと言っていた、それでも夢が叶ったと伝えておきたかったんだって、と言い、退去しようとするが、ゼーリエは少し歩かないか、と呼び止める。

フリーレンと花が咲く小路を散策しながら、ゼーリエは、誰もが魔法を使える時代はフランメの夢だった、フランメも初めは人類のためとか魔王軍に抗う力とかはどうでも良かったんだ、フランメのお気に入りの魔法を知っているか、花畑を出す魔法だ、何の役にも立たない下らない魔法だ、フランメは本当に魔法が好きだった、世界中の人がそんな魔法を使えるようになってほしいと本気で願っていた、虫酸が走ったよ、女の子のような可愛い夢だ、これはフランメが私よりずっと背の小さな小娘だったころに語った夢物語だ、私はそんな時代はずっと先のことでフランメには実現不可能なことだと思っていた、と話す。
さらに、フランメは私にとっては無にも等しいような短い人生で人類の魔法の開祖にまで上り詰めた、と語ったところで、フリーレンは、師匠はいつも判断がとても早かった、まるで何かに急かされているみたいに、と話す。ゼーリエは、人間には寿命があり私たちより死に近い場所にいる、人生には重大な決断をしなければならないときがいくつもあるがそれを先送りにはできない、私たちはそれを1000年ほったらかしにしても何の支障もない、私たちの時間は永遠に近いのだから、と言い、さらに、人間が文明を築き上げてから長い年月が経った、これから先は時代が加速する、たった1000年で人間の時代がやってくる、私たちは人間に追い抜かれる、鍛錬を怠るな、お前を殺す者がいるとすれば、それは魔王か人間の魔法使いだ、と語り、それを聞いたフリーレンは、楽しみだね、これから先たくさんの魔法使いといろいろな魔法が見られるんだね、と言ったのだった。

それを思い出し、広間で自身の複製体と戦うフリーレン。複製体の魔力探知が途切れる一瞬の隙を突いて、隠れていたフェルンがゾルトラークを打ち込む。

#26 魔法の高み

<零落の王墓に住まう神話の時代の魔物シュピーゲルが作った、王墓に入った者の複製体たち。シュピーゲルを倒すため、フリーレンとフェルンはフリーレンの複製体と戦うが苦戦する。一方、デンケンやラヴィーネたちも複製体と戦うが、試験官である一級魔法使いゼンゼの複製体の魔法が猛威を振るう。>

1000年前、フランメの遺言状を渡すためにやってきたフリーレンに、お前を殺す者がいるとすれば、それは魔王か人間の魔法使いだ、と語ったゼーリエ。

零落の王墓のダンジョンの最深部の手前の広場で、シュピーゲルが作り出したフリーレンの複製体と戦うフリーレンとフェルン。複製体の魔力探知が途切れる一瞬の隙を突いて、隠れていたフェルンがゾルトラークを打ち込むが、複製体はそれを防御し、強力な魔法を放ちフリーレンを攻撃する。フリーレンもそれを防御して攻撃し、隙を見てフェルンもゾルトラークを打ち込むが、複製体には効かない。フリーレンは、想定の範囲内だ、ここから先は消耗戦だ、と呟く。

一方、デンケンたちは、次第に最深部に近づいてくる他の複製体が集まる前に足止めを図ろうと、メトーデが観測して複製体の位置を割り出し、自身の苦手な相手を教え合い、それぞれが相性のいい複製体を選択し、分担して立ち向かう。ラヴィーネとリヒターはカンネとラヴィーネの複製体と、ラオフェンはメトーデの複製体と、カンネとドゥンケルはリヒターの複製体と戦う。一方、デンケンは、メトーデが感知できなかったゼンゼの複製体を探していた。

フリーレンとフェルンが広間に突入する直前、メトーデは、感知できている複製体の総数が受験者よりも少ない、特に、一番の脅威であるゼンゼの複製体の反応が見つからない、と懸念を伝えていた。フリーレンも、確かに感知できない、ゼンゼの複製体はさすがに看過できない、挟撃される形になったらフェルンを守りきれないし、最悪2人とも死ぬかも、と話す。メトーデはさらに、フェルンとデンケンの複製体の位置も把握できていないし、精度の高い近距離探知で探すしかないと話す。リヒターは、お前がこの場にいなければこんな懸念も要らなかった、とゼンゼに文句を言うが、ゼンゼは、一級魔法使いは理不尽なほどの逆境でも覆せるような存在でなければならない、この程度は逆境ですらない、それに仲間の背中を守るだけで合格できる、実に易しい平和な試験だ、と言うのだった。

ラヴィーネとリヒターはカンネとラヴィーネの複製体を倒す。しかし、いい気分じゃない、とラヴィーネが漏らしたところに、全く気配のなかったゼンゼの複製体が奇襲し、ラヴィーネとリヒターはゼンゼの複製体の魔法で身体を貫かれてしまう。それを感知したデンケンが駆け付けるが、脱出用ゴーレムの瓶を割った2人がダンジョンの外に運び出されていくところだった。デンケンは、間に合わなかった、だが自分が加勢したところで結果は同じだっただろう、背中を見せているのにまるで隙を感じない、どちらにせよ時間稼ぎくらいはしなければ、と複製体の様子を伺う。

そこにユーベルとラントがやってくる。ユーベルは、ゼンゼの複製体を一瞥し、デンケンに、あれと戦うつもり?勝てないと思うよ、と言う。承知の上だ、というデンケンにユーベルは、それってダンジョン攻略のために必要なことなの?と問う。そうだ、とデンケンが答えると、ユーベルは、なら私が倒す、と言って出て行こうとする。
ラントは、何を言っている、この中で一番強いのはデンケン、お前はヴィアベルにも勝てなかっただろう、とそれを止めようとするが、ユーベルは、そういうことじゃないんだ、確かに私は未熟な三級魔法使い、デンケンやヴィアベルよりはるかに弱い、けれどもゼンゼ相手なら勝てると思うよ、私の得意魔法は大体何でも切る魔法(レイルザイデン)、私が切れると思ったものは何でも切れるし、切れないと思ったものは全く切れない、と言う。ラントは、それが何だって言うんだ、防御魔法で簡単に防げる魔法だ、ゼンゼには通用しない、あの髪には観測できるだけでも防御魔法に匹敵するような魔法が何重にもかけられている、と反論するが、ユーベルは、そんな理屈はどうでもいい、これはイメージの話なのだから、と一顧だにせず、ゼンゼの複製体の前に歩み出て、レイルザイデンを放つ。

そのとき、広間の入口の前に座っていた本物のゼンゼは、やはり私の複製体の相手はユーベルか、勝敗は既に分かっている、おそらく戦いにすらならない、と思う。そしてゼンゼは、2年前の二級魔法使い選抜試験のときのことを思い出す。

その第二次試験の試験官は、一級魔法使いになってから一度も手傷を負ったことがないほど守りに特化した魔法使いであるブルグだった。ブルグが魔法で作り出す外套は、あらゆる攻撃魔法も通さないほどの防御術式が組み込まれていた。第二次試験の内容は、ブルグに攻撃魔法を放ち一歩でも後ろに下がらせたら合格という単純なもので、殺害行為は失格とするルールだったが、それは攻撃魔法の最低限の制御を促し、他の受験者を守るための措置で、誰もブルグの心配などしていなかった。しかし、当時三級魔法使いになったばかりユーベルは、レイルザイデンでブルグの身体をあっさりと真っ二つに切断して殺し、切り過ぎちゃった、とこぼすのだった。ゼンゼは、自分の部屋に呼んだユーベルに、ブルグの外套をどうやって打ち破ったか尋ねると、ユーベルは、自分はしないが姉が裁縫をするのを見ていた、布を裁断するときは鋏を開いて入れてシャーっと切る、とてもいい音がする、私はあの音が好きだった、と話す。ゼンゼが、話が見えない、と言うと、ユーベルは、イメージの話だ、布は切れるもの、切れて当たり前のものだ、と言う。
それを聞いたゼンゼは、こいつはいかれている、確かに布を切るイメージは誰にでもできる、だが魔法の世界はそんなに甘いものじゃない、完璧にイメージできないものは魔法では実現できない、鉄壁の防御術式で守られたブルグの外套を切るイメージができる魔法使いなどほぼ存在しない、実際にあの外套がいかなる攻撃魔法も通さないことは魔法使いなら一目見て分かるからだ、人が知性を持った生命体である限り、そのしがらみからは決して逃れられない、それでもユーベルは自らの感覚に従った、これは切れないものだと知性では分かっていながら、感覚のままに外套を切り裂くイメージを構築した、もはや人として成立している精神状態とは思えない、これは才覚の領域だ、と思ったのだった。

それを思い出したゼンゼは、もしかしたら私はあの時点でもう負けていたのかもしれない、ユーベルには勝てるイメージが湧かない、相性が悪すぎる、と思う。そして、案の定、ユーベルはゼンゼの複製体を倒し、みんな頭を使いすぎなんだ、髪は切るものでしょ、と呟く。

そのころ、メトーデは、ヴィアベル、エーレ、シャルフに協力を求めていた。メトーデはユーベルがゼンゼの複製体を倒したのを感知し、それを3人に伝えると、ヴィアベルは、ゼンゼは結構相性悪めだと言い、メトーデは、魔法使い同士の戦いはじゃんけんのようなもの、ただし手数が無数にあり複雑で難解なじゃんけん、と言う。ヴィアベルは、複製体の足止めを手伝ってやる、俺は他人を信じるような質じゃないが、勝ち馬を逃すほどバカじゃない、と言って、メトーデの要請を受け入れる。メトーデは、現時点で、必ず足止めしなければならない危険な複製体は2体、そのうちの1体、デンケンの複製体の場所は特定したのでそれをお願いしたい、もう1体のフェルンの複製体は自分に任せてほしい、あの子は特に魔力を消すのが上手、さすがに見つけ出さないと奇襲で死者が出かねないと話す。本当に1人で何とかなるの?とエーレは心配するが、1人の方が魔力探知に集中できる、私は多才なので足止めだけは得意、拘束魔法が通じることは本人の身体を使って確かめた、とメトーデは話す。

一方、デンケン、ユーベル、ラントが一緒に歩いていると、ラントがソルガニールで拘束されてしまう。目の前には、一度倒したはずのユーベルとラントの複製体が再び現れていた。そして背後には、ラオフェン、カンネ、ラヴィーネの複製体も現れる。ユーベルは、これってシュピーゲルを倒すまで続くのか、消耗戦だ、楽しくなってきた、と言い、デンケンは、全くだ、と応じる。

リヒターの複製体と戦うカンネとドゥンケル、メトーデの複製体と戦うラオフェンの戦闘は続いたいた。一方、メトーデの背後にはフェルンの複製体が迫り、ヴィアベル、エーレ、シャルフの3人はデンケンの複製体と戦い、トーンは脱出用ゴーレムに運び出されていく。

そして、広間で自身の複製体と戦うフリーレン。複製体に隙ができてもフェルンは気が付けない状況に、やはりやるしかない、と心に決める。
打ち合わせのとき、魔力探知の隙だけでは殺し切れるほどのものにはならないね、とフリーレンが言うと、フェルンは、もっと大きな隙があれば勝てるのですが、と言う。それを聞いたフリーレンは、じゃあ隙を作ろう、私が隙を見せれば、相手はもっと大きな隙を見せる、防御に集中すれば致命傷にはならない、と言って作戦を立てたのだった。そして、フェルンが勝てると思っているのなら勝てる、だって私はフェルンのことをなめているから、とフリーレンが言うと、フェルンは、フッと口元を緩め、それは良かったです、なら十分勝機はありますね、と言っていたのだった。
そして、フリーレンが隙を見せて複製体が間近に迫ってきたところで、フェルンがありったけの魔力でゾルトラークを打ち込む。フェルンは、複製体はまだ立っている、でも致命傷だ、とどめを、と思った瞬間、複製体の魔力でフェルンは突き飛ばされ、広間の壁に打ち付けられ、魔法の杖も砕け散ってしまう。何が起こった、と目を開くフェルンは、攻撃された、だが魔力を全く感じない、この攻撃を私は魔法として認識できていない、凄いですフリーレン様、これが魔法の高みなんですね、と感嘆するが、でもらしくない、隙だらけです、と思うと、本物のフリーレンがとどめの一撃を加え、複製体を倒す。

フリーレンは、よくやった、あれを見せるほど追い詰められたのは80年ぶりだ、とフェルンに労いの言葉を掛け、手を差し伸べてフェルンを立ち上がらせ、一緒に最深部の宝物庫に入り、シュピーゲルを倒す。

すると、ダンジョン内にいた複製体は全て消滅し、フェルンの複製体と戦っていたメトーデは、終わりましたか、と呟く。デンケンの複製体と戦っていたエーレは、もう動けない、と言い、倒れていたシャルフも、ヴィアベルにおんぶしてくれ、と言う。第一次試験と同じような状況に、ヴィアベルは、お前らいつも倒れてるな、と呆れる。

そして、デンケン、ラオフェン、ユーベル、ラント、ヴィアベル、エーレ、シャルフ、ドゥンスト、メトーデ、カンネの10人がゼンゼが待つ宝物庫にたどり着き、デンケンは、ここが零落の王墓の最深部か、と口にする。
ゼンゼは、君たちは零落の王墓を攻略した、一級魔法使いに十分匹敵する、歴史に名を残すほどの偉業だ、と一同を称え、約束どおり最深部にたどり着いた全員を第二次試験合格とすると告げる。デンケンが、一番の功労者はどこに行った?と尋ねると、ゼンゼは視線を横に逸らす。すると、金が山のように積まれた一角で、宝箱のミミックに噛まれたフリーレンが、暗いよー怖いよー、と悲鳴を上げ、その脇でフェルンが呆れた様子でそれを眺めていた。呆れた様子のデンケンだったが、ラオフェンは、まあ気持ちは分かるかな、と言うのだった。そして、ゼンゼは、それでは第二次試験は終了とする、と試験の終了を告げる。

そのころ、ダンジョンの入口では、レンゲとラヴィーネが座り込み、ブライが空を眺める脇で、ゴーレムに運び出されていたエーデルが、運び出されてゴーレムに治療を受けるリヒターに、何と回復魔法まで使えるのじゃ、凄いじゃろ、と自慢げに話していた。そこに、ゴーレムに抱えられたトーンが運び出されてくるのだった。

(ここまで)

 

原作コミックでは、動きの少ない画だったようですが、戦闘シーンでは、これまでのエピソードに増して激しいバトルシーンで、その迫力に圧倒されました。

3月末まで休みなく続くとすれば、残りはあと3話、続く第三次試験が描かれて、一級魔法使い選抜試験が終了した切りのいいところでこの第2クールを終えることになるのでしょう。続きはまた改めて。