鷺の停車場

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映画「コットンテール」

週末の朝、MOVIX柏の葉に行きました。


9時すぎの時間帯、ロビーにはぽつぽつとお客さんがいました。


この日の上映スケジュールの一部。この日は、23作品・24種類の上映が行われていました。


観るのは「コットンテール」(3月1日(金)公開)。全国102館と中規模での公開です。


上映は103+2席のシアター5。お客さんは6~7人という感じでした。

日英合作の作品、イギリスを舞台に、家族の再生を描いたロードムービー仕立てのヒューマン・ドラマで、監督・脚本はイギリスのパトリック・ディキンソン。第18回ローマ国際映画祭で最優秀初長編作品賞を受賞した作品だそうです。

 

主な登場人物・キャストは、次のようなもの。

  • 大島 兼三郎(ケンサブロウ)【リリー・フランキー/工藤孝生(若年期)】:主人公。60代の作家。かつては生活のために英語教師をしていた。

  • 大島 慧(トシ)【錦戸 亮】:兼三郎と明子の一人息子。

  • 大島 明子(アキコ)【木村 多江/恒松祐里(若年期)】:兼三郎の妻。病気で亡くなった。

  • 大島 さつき【高梨 臨】:慧の妻。

  • ジョン【キアラン・ハインズ】:イギリスで道に迷った兼三郎を手助けした農場主。前年に妻を亡くした。

  • メアリー【イーファ・ハインズ】:ジョンの娘。

  • 大島 エミ【橋本 羽仁衣】:慧とさつきの4歳の娘。兼三郎の孫。

 

公式サイトで紹介されているストーリーによれば、

 

東京からイギリスの湖水地方へ、亡き妻の願いを叶えるための旅

60代の作家、大島兼三郎の最愛の妻、明子が、闘病生活の末に息を引き取った。埋めようのない喪失感に打ちひしがれた兼三郎は、生前の明子が寺の住職に託した一通の手紙を受け取る。そこには明子が愛したイギリスのウィンダミア湖に、遺灰をまいてほしいという最後の願いが記されていた。兼三郎は遺言を叶えるために、長らく疎遠だった息子の慧とその妻さつき、4歳の孫エミとともにイギリスへ旅立つ。しかし互いにわだかまりを抱えた兼三郎と慧は事あるごとに衝突し、単身ロンドンから湖水地方に向かった兼三郎は、その途中で道標を失ってしまい……。

 

・・・というあらすじ。

 

若年性認知症となり、闘病の末に亡くなった妻が残した最後の願いをかなえるためにイギリスを訪れた主人公とその息子。自分の世界に閉じこもり、息子と距離を置いていた父と、父に認められたい思いを抱えてきた息子が、妻が願った地を探して旅する中で、不器用ながらも互いの思いを明かし、新たな一歩を踏み出していく、和解、あるいは再生の物語。リリー・フランキーは独特の味のあるいい役者さんだと思いますが、個人的にはあまり好きではないタイプで、その部分の引っ掛かりはありましたが、切ない展開、認知症の妻を介護する描写も身に迫るものがあり、最初のとげとげしい関係が和らいていく展開も心に響きました。

 

ここから先は、ネタバレになりますが、備忘を兼ねて、記憶の範囲でもう少し詳しいあらすじを記してみます。(多少の記憶違いはあるだろうと思います。)

 

兼三郎は都内の自宅を出て、電車に乗って港町に向かう。鮮魚店をのぞいて行きつけの寿司屋に入った兼三郎は、瓶ビールを注文し、買ってきたタコを握ってもらうが、コップをもう1つもらい、自分の席の隣に置いて、まるで誰かが座っているかのようにそのコップにビールを注ぎ、乾杯する。兼三郎は、結婚前に妻の明子とその寿司屋に初めて一緒に入ったときのことを思い出す。

酔って自宅に帰ってきた兼三郎に、息子の慧は、もう時間だと準備を急がせ、寺で妻・明子の葬儀が行われる。寺の住職は、生前の明子から預かっていた兼三郎宛ての手紙を差し出す。そこには、家族を思う言葉とともに、イギリスのウィンダミア湖に遺灰をまいてほしいという最後の願いが記されていた。

明子の遺体を火葬に付した後、自宅に戻った兼三郎が明子が思い出の品をしまっていた木箱を取り出して開けると、英語のピーターラビットの絵本の間に、明子が子どもの頃に家族とどこかの湖畔で撮った写真が挟まっており、その裏にはウィンダミア湖で撮ったことが記されていた。兼三郎は1人でウィンダミア湖で行くと言い出すが、慧は一緒に行くと言い張り、兼三郎は勝手にしろ、と言い捨てる。

結局、兼三郎は、慧とその妻・さつき、娘・エマと一緒にイギリスにやってくる。ホテルに入った兼三郎は、列車の時刻表を開き、ウィンダミア行きの列車が午後にある、乗ろうと言い出すが、慧とさつきは、翌日朝の列車を予約してあると取り合わず、ホテルでエマを見ているよう兼三郎に頼んでお昼を買いに近くのカフェに出かけるが、その間に兼三郎はエマを連れてホテルを抜け出し、エマにはアイスクリーム、自分には缶ビールを買って、公園のベンチに座って缶ビールを飲み、煙草をふかす。兼三郎は、生前の明子と公園のベンチに座って話した日のことを思い出す。

兼三郎がホテルに戻ってきたのは3時間後で、エマの身体はすっかり冷え切ってしまっていた。自分勝手に行動する兼三郎に我慢できなくなった慧は、1人で行けば、と厳しい言葉を投げる。

兼三郎は、病院で認知症の検査を受けた後、明子と喫茶店に入ったときのことを思い出す。明子は、認知症になって、家族に迷惑をかけるようになってまで生きなければならないのかと不安に苛まれていた。兼三郎は大丈夫だと安心させようとするが、自分に何かあったら慧をちゃんと見ててね、と言う明子は、1人先に席を立って店を出ていく。

1人でホテルを出た兼三郎は、駅の電光掲示板で列車を探し、ある列車に乗るが、その途中で、結婚のお祝いでにぎやかにしている女性たちから、乗っている列車はヨーク行きで、ウィンダミアとは反対方向だと知らされる。

ある駅で列車を下りた兼三郎だが、その日の列車の運行は終了していた。ちょうどそこに慧から携帯電話に電話が入るが、携帯電話はもう電池切れだった。駅を閉めるとアナウンスが入り、兼三郎は衝動的に駅に停められていた1台の自転車を盗んで走り出すが、夜になって雨が降り出し、木の下で雨宿りする破目になる。兼三郎は、認知症になった明子が夜に姿を消して徘徊してしまい、慧にも手伝ってもらい探し回ったときのことを思い出す。

翌朝、ウィンダミアに行く手がかりを失った兼三郎は、近くにあった農場を訪ねる。そこで農場主のジョンに地図をもらって歩き出した兼三郎だったが、追いかけてきたメアリーが、ウィンダミアまでは何百キロもあり、この近くには鉄道の駅もないことを知らせる。困り果てた兼三郎はメアリーに助けを求める。

ジョンの家で風呂に入らせてもらい、着替えを借りた兼三郎。兼三郎が妻を亡くしウィンダミアに向かっていることを知ったジョンは、自分も前年に妻を亡くしてとても辛かったが娘がいて助かったと話し、慧に連絡を取るよう促す。兼三郎は、息子は自分が邪魔なんだと話すが、ジョンは本人に聞いたのか?と尋ね、兼三郎は言葉に詰まる。

兼三郎はジョンとメアリーの好意で車でウィンダミア湖まで送ってもらえることになる。ウィンダミア湖に着いてみると、その景色は明子が残した写真のものとは違っていた。違う場所を探すのは場合によってはかなり日数がかかるとジョンから聞かされ、兼三郎は公衆電話からあらかじめ慧からメモを渡されていた慧の連絡先の電話番号に電話をかける。

慧たち一家と合流した兼三郎は、慧たちが手配していた車に乗り、ジョンとメアリに別れを告げて写真の場所を探し始める。現地の人に聞き込みをしながら探しているうちに、ウィンダミア湖の近くの別の湖らしいことが分かるが、その近くにやってきたころには、すっかり夜になり、雨も降り出していた。兼三郎は遺灰をまこうと1人車を下りて雨の中を歩き出すが、ここで合っているかもわからないと慧がそれを止め、言い争いになってしまう。

ホテルでの夕食で、ワインを何杯も飲む慧。兼三郎が飲み過ぎじゃないかと注意すると、慧はトイレに行くと言って席を立ち、居心地の悪いさつきもエマを乗せたベビーカーを押して席を立ってしまう。兼三郎がトイレに行ってみると、慧は手洗い場の壁に寄りかかっていた。兼三郎は、慧に謝り、慧が幼い頃に命も危ういほどの重度の肺炎になったときに明子が一睡もせずに慧に付き添っていたことを明かし、自分にはそんなことはできないと話す。慧は明子が兼三郎は自分だけの世界に入ってしまうと言っていたことを話し、俺も父さんの世界に入れてほしかった、と言ってその場を立ち去る。

兼三郎は、明子の誕生日、慧一家がお祝いにやってきたときのことを思い出す。慧たちがやってくる前にベッドに寝ていた明子を着替えさせようとすると、明子はオムツを脱いでしまって布団や足が汚物で汚れてしまっていた。兼三郎は明子を風呂場に連れて行き、シャワーで足を流すと、明子は怖がって泣き出してしまう。そこに慧が訪ねてきて、兼三郎は自分だけで何とかしようと手伝おうとする慧を拒むが、明子は慧の胸に頭を預けて嗚咽するのだった。

翌日、目的地の湖のそばにやってきた兼三郎たち、兼三郎は、1人で行ってくる、すぐ帰ってくる、もうどこかには行かない、と言って遺灰が入った骨壺を持って車を降り、慧やさつきもそれを見送る。

湖畔の近くまで歩いてきた兼三郎は、明子が亡くなる直前のことを思い出す。病院のベッドで全身の痛みに苦しむ明子に付き添う兼三郎は、その手を握り、顔をさする。しかし、その直後、明美の容態は急変する。駆け付けた慧は兼三郎にどうしたのか問い質すが、兼三郎は呆然としていた。

そこに、慧もやってくる。兼三郎は、何かあったら自分が助けると明子と約束していたのに、全身に痛みが回って、医者が鎮痛剤を増やしても痛みが消えない明子を守ってやれなかった、と悔やむが、慧は、どうしようもなくなったら父さんが助けてくれるかも、と明子が言っていたと話す。そして2人は湖畔に着くと、そこは明子が残した写真の場所だった。2人は少し水辺に歩を進め、明子の遺言のとおり遺灰をそこにまく。

兼三郎と慧が車のところまで戻ってくると、待っているはずのさつきのエマがいなかった。すると、エマを連れてすぐそばにいたさつきが、景色がいいから上がってきてと声をかける。2人がさつきのところまで行くと、そこに茶色いウサギが姿を見せ、最初はさつきとエマが、そして全員がウサギを探すのだった。

(ここまで)