鷺の停車場

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劇場アニメ「果てしなきスカーレット」

休日の午後、MOVIX柏の葉に行きました。


時間は15時半過ぎ、ロビーのお客さんはそれほど多くはありませんでしたが、少しすると、この週末の観客動員ランキングで1位となった「ズートピア2」の上映がちょうど終わったらしく、多くのお客さんがスクリーンからロビーに出てきました。


この日の上映スケジュールの一部。既に上映回が終了したものも含めて、この日は31作品・34種類の上映が行われていました。

この日観るのは、「果てしなきスカーレット」(11月21日(金)公開)。全国388館とかなり大規模での公開ですが、ネットでの評価は総じてあま高くなく、興行的にはうまくいっていないようです。この映画館でも、公開3週目で、1番小さいスクリーンでの1日2回の上映と、かなり上映規模が縮小していました。3週目でこの状況だと、公開4週での上映打ち切りもあり得そうな感じがします。


上映は、先に書いたとおり、この映画館で一番小さい93+2席のシアター7。お客さんは15人ほどでした。


(チラシの表裏)


(チラシの中見開き)


(その前に配布されていた別バージョンのチラシ)


細田守の監督・脚本・原作によるオリジナル劇場アニメーションで、シェイクスピアハムレット」を下敷きに、死者の国を旅する男女が「生きる」ことを見つける物語。その他の主要スタッフは、アニメーション制作:スタジオ地図作画監督山下高明、キャラクターデザイン:Jin Kim・上杉忠弘、CGディレクター:堀部亮・下澤洋平・川村泰など。

 

公式サイトのイントロダクションでは、

 

物語への圧倒的没入体験、未だかつてないアニメーション映画の境地。

青春、家族の絆、親子愛、種族を超えた友情、命の連鎖、現実と仮想の世界…。様々な作品テーマで日本のみならず世界中の観客を魅了し続ける、アニメーション映画監督・細田守。最新作『果てしなきスカーレット』では、ストーリー・映像表現共にこれまでにない全く新しい境地へ。本作の主人公は、国王である父を殺した敵への復讐を心に誓う王女・スカーレット。“死者の国”で目覚め、それでも復讐の戦いに身を委ねながら旅を続け、現代からやってきた看護師の青年・聖と時を超えた出会いを果たし、彼への信頼と愛情に、心動かされ変化してゆく感涙の物語。「生きるとは?」という現代を生きる全ての人に突きつける問いが、本作のテーマになっている。そして本作は、日本および全世界で東宝ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの共同配給が決定しました。日本から世界へ、細田守監督の想いと『果てしなきスカーレット』は放たれてゆく。

本作に命を吹き込むキャスト陣。中世の王女という細田守監督作品史上初の主人公・スカーレットを演じるのは芦田愛菜。「彼女くらいの演技力・表現力がないと、このスカーレットという役を表現できない」と細田監督が大抜擢。19歳という設定の王女・スカーレットを、当時19歳の彼女が豊かな声色で演じ分けている。現代の日本からやってきた看護師の青年・聖を演じるのは岡田将生。「復讐に燃えるスカーレットの鞘のような存在となれるよう、キャラクター像を作っていった」と、穏やかで優しくスカーレットを包む、バディとしての存在を演じる。二人は共に細田守監督作品初出演となる。そんな彼らを取り巻くキャストには、役所広司吉田鋼太郎松重豊斉藤由貴山路和弘柄本時生染谷将太青木崇高白石加代子市村正親と、超豪華俳優陣が本作に重厚感と強いエンターテインメント性を与える。更には宮野真守津田健次郎といった日本を代表する声優陣の参加も決定。

また本作は「2D」や「3D」という枠に収まらず、日本のアニメーション表現を大幅にアップデート。未だかつてないエンターテインメント作品として、狂気の世界やスリル溢れる戦闘のアクションシーンなど、作品全体を通して壮大かつ鮮明に描かれる。更に、『アナと雪の女王』をはじめ、前作『竜とそばかすの姫』で〈U〉の世界の歌姫・ベルのキャラクターデザインを担当したJin Kimが本作にも参加。日本×世界の才能が本作にも集結し、“誰も見たことのない世界”を更に押し上げる。『時をかける少女』から19年。細田守監督が描き続けてきた壮大なテーマと内面世界。根底に流れる精神は今も変わらず、観る者全ての心を掴み、大きく揺さぶる―。

この冬世界は、果てしない感涙に包まれる―

 

・・・と紹介されています。

 

公式サイトで紹介されている主なキャラクター・キャストは、次のとおりです。

  • スカーレット【芦田 愛菜】:とある国の国王である父を殺された王女。宿敵に復讐を果たすため“死者の国”を旅する。

  • 聖【岡田 将生】:現代の日本から“死者の国”に来て、スカーレットと共に旅をする心優しい看護師。

  • クローディアス【役所 広司】:権力を求め、スカーレットの父であり自身の兄であるアムレット王を殺して王位に就いた、冷酷非道な国王。何らかの理由で≪死者の国≫におちて、スカーレットの命を狙う。

  • アムレット【市村 正親】:スカーレットの父で、とある国の心優しい国王だったが、クローディアスに嵌められて処刑される。

  • ヴォルティマンド【吉田 鋼太郎】:騎士たちを従えるクローディアスの側近。≪死者の国≫でスカーレットの命を狙う。

  • ガートルード【斉藤 由貴】:スカーレットの母。弱腰な夫・アムレットを見限り、野心家のクローディアスの陰謀に加担する。

  • コーネリウス【松重 豊】:腕っぷしの強いクローディアスの側近。≪死者の国≫でスカーレットの命を狙う。

  • ポローニアス【山路 和弘】:クローディアスの側近。レアティーズと共に≪死者の国≫でスカーレットたちの動向を監視している。

  • レアティーズ【柄本 時生】:クローディアスの側近。ポローニアスと共に≪死者の国≫でスカーレットたちの動向を監視している。

  • ローゼンクランツ【青木 崇高】:クローディアスの家来。ギルデンスターンと共に≪死者の国≫でスカーレットの命を狙う。

  • ギルデンスターン【染谷 将太】:クローディアスの家来。ローゼンクランツと共に≪死者の国≫でスカーレットの命を狙う。

  • 少女【白山 乃愛】:≪死者の国≫でスカーレットが出会う、少女。

  • 老婆【白石 加代子】:≪死者の国≫でスカーレットが出会う、謎の老婆。

  • 墓掘り人【宮野 真守/津田 健次郎】:スカーレットが出会う、瘦せこけた墓掘り人

  • 年寄りの長【羽佐間 道夫】:スカーレットと聖が≪死者の国≫で出会う、懐の広いキャラバンのリーダー

  • 宿の主人【古川 登志夫】:スカーレットと聖が≪死者の国≫で出会う、“見果てぬ場所”を知る宿の主人。

 

公式サイトのストーリーによれば、

 

“生きる意味”を見つけていく――

父の敵への復讐に失敗した王女・スカーレットは、《死者の国》で目を覚ます。
ここは、人々が略奪と暴力に明け暮れ、力のない者や傷ついた者は〈虚無〉となり、その存在が消えてしまうという狂気の世界。
敵である、父を殺して王位を奪った叔父・クローディアスもまたこの世界に居ることを知り、スカーレットは改めて復讐を強く胸に誓う。

そんな中彼女は、現代の日本からやってきた看護師・聖と出会う。
時を超えて出会った二人は、最初は衝突しながらも、《死者の国》を共に旅することに。

戦うことでしか生きられないスカーレットと、戦うことを望まない聖。

傷ついた自分の身体を治療し、敵・味方に関わらず優しく接する聖の温かい人柄に触れ、凍り付いていたスカーレットの心は、徐々に溶かされていく―。

一方でクローディアスは、《死者の国》で誰もが夢見る“見果てぬ場所”を見つけ出し、我がものにしようと民衆を扇動し、支配していた。
またスカーレットが復讐を果たすために自身を探していると聞きつけ、彼女を〈虚無〉とするために容赦なく刺客を差し向ける。

スカーレットと聖もまた、次々と現れる刺客と闘いながら、クローディアスを見つけ出すために、“見果てぬ場所”を目指してゆく…。

そして訪れる運命の刻。
果てしない旅路の先に、スカーレットがたどり着く、ある〈決断〉とは――
切り拓く。新しい自分を――

 

・・・というあらすじ。

 

ネットでは酷評も散見されますが、それほど悪い作品ではない、というのが率直な感想。

説明されない設定(回収されない伏線)が少なからずあるのは事実で、謎の老婆、ピンチになると現れる巨大なドラゴンなど、ご都合主義的に思える部分もありましたが、そうしたところをあまり気にしないようにして観ていけば、憎しみに囚われずに自分らしく生きる、意識を変えて歴史を積み重ねることで未来を良い方向に変えられる、といった作品のテーマはクリアで、心に響く部分もありましたし、未だ戦争や侵略が終わることのない現代に対する細田守監督のメッセージも感じられました。冒頭からの、緻密でダイナミックな映像にも圧倒されました。

とはいえ、これまでの細田守作品と比べてどうかと考えると、先に書いた伏線の回収なども含めたストーリーの練り上げの面などで、説得力が十分でない部分は確かに感じられ、全体に漂う重苦しい雰囲気もあり、これまでの作品から期待値を高くして観てがっかりする人がいるのも、分かるような気がしました。

 

 

ここから先は、ネタバレになりますが、自身の備忘を兼ねて、記憶の範囲で、より詳しいあらすじを記してみます。(多少の記憶違いはあるだろうと思います。)

 

荒廃した大地が広がり、薄暗い空には巨大なドラゴンが飛んでいる世界。一方、天上のような澄み切った空間に一人立つスカーレット。そこに、老婆のような声が、ここは時代も場所も、生と死も超えてすべてがひとつになる場所だと語る。そして、スカーレットが振り返ると、遠くから一人の人影が近づいてくる。

映像は再び荒廃した大地に戻り、薄汚れた服を身にまとって彷徨うスカーレットは、水たまりを見つけて駆け寄り、その水を飲んで喉の渇きを潤すが、少し歩くと、水に当たったのか、うずくまり嘔吐する。そこに再び老婆の声が聞こえる。

16世紀末のデンマーク王国。国王のアムレットは民衆から厚く信頼を得ており、その愛娘であるスカーレットは父を慕って暮らしていた。
アムレットは、隣国との戦争を求める弟・クローディアスの主張を退け、対話を積み重ねて信頼を得ていく姿勢を貫くが、権力欲に燃えるクローディアスは、兄・アムレットを失脚させて自らが王になろうと企て、王妃のガートルードも、「私はいつでも、王になる男のもの」と言い、クローディアスの側に付く。

そして、2人は、国を裏切った反逆者との罪を着せ、アムレットを捕らえて処刑する。
処刑台で、剣を持ったクローディアスの側近のヴォルティマンド、コーネリウス、ポローニアス、レアティーズに囲まれたアムレットは、2階のバルコニーのスカーレットに向かって何かを叫んで訴えるが、王の反逆を信じられない群衆の声にかき消され、スカーレットには何を言っているのか聞き取れない。スカーレットはその言葉を確認しようと、2階から駆け下りるが、処刑台につながる玄関から外に出たときには、既にアムレットは処刑され息絶えていた。

それから、クローディアスへの復讐を誓ったスカーレットは、クローディアスの暴政ぶりに怒りを覚えながら、剣や武術の鍛錬に打ち込みながら、成長していく。
そして、飢饉が発生しても何も手を打とうとしないクローディアスを、スカーレットは、王宮で開かれるパーティーで飲み物に毒を盛ってクローディアスを殺そうと企て、毒を盛った杯を飲んだクローディアスは眠気に襲われて眠ってしまう。
パーティーが終わった後、スカーレットは会場でひとり座って眠っているクローディアスを剣で殺そうとするが、クローディアスはスカーレットの飲み物に毒を盛っていた、その毒に苦しむスカーレットは、クローディアスが嘲笑する前で意識を失う。

死んだと思ったスカーレットが目覚めると、そこは《死者の国》で、赤い池に浮かぶスカーレットを、たくさんのゾンビのような手が池の中に引きずり込もうとしていた。復讐という目的がなければ違う人生もあったのだろうか自問するスカーレットだが、そこに姿を現した謎の老婆は、ここは時代も場所も、生と死も超えてすべてがひとつになる場所だが、ここで死ぬと「虚無」に還り永遠の死を迎えること、「虚無」を恐れて逃れようとする人々は「見果てぬ場所」を目指すこと、クローディアスがこの世界にいることを教える。クローディアスへの復讐のチャンスがあることを知ったスカーレットは、クローディアスへの憎悪を募らせて叫び、引きずり込もうとするゾンビのような手を振り切る。

荒野のような土地に埋もれる衣服と武器を引きずり出し、それを身に着けたスカーレットは、クローディアスへの復讐を果たすため、クローディアスを探す旅を始める。

その途中、古戦場の跡のような場所で、スカーレットは、現代の日本の救急看護師である聖(ひじり)と出会う。聖は、自分は死んでないと言い、スカーレットがここは死者の世界だと告げても納得せず、元の世界に戻ろうと出口を探し始める。

そこに、武装した男たち(おそらくクローディアスが送り込んだ刺客)がスカーレットを襲う。スカーレットは鍛錬した武術で立ち向かい、男たちを倒していくが、聖は、応戦するスカーレットを「殺すな」「傷つけるな」と止めようとする。スカーレットが男たちを倒すと、さらに、アムレットを処刑したクローディアスの側近の1人であるコーネリウスが襲ってくる。その腕っぷしの強さに、スカーレットは追い詰められるが、聖が近くに落ちていた鏑矢を放つ。その音にコーネリウスが注意を逸らした隙に、スカーレットは反撃し、コーネリウスは抵抗できなくなる。しかし、聖は負傷したコーネリウスに応急処置を施し、助ける。スカーレットは2人を置いて歩き出すが、このままではスカーレットが多くの人を傷つけると考えた聖は、負傷者を治療するためにスカーレットに一緒に付いてくる。聖を「いい子ちゃん」だと言い捨てるスカーレットだったが、付いてくることまでは止めず、2人の旅路が始まる。

そうして、砂漠を歩く2人は、近くでキャラバンがラクダに荷物を積んで移動しているのを目にする。そこに、馬に乗った盗賊が現れてキャラバンを襲う。聖は、盗賊の略奪を止めようと駆け寄って訴えるが、盗賊は聖を相手にせず、聖は馬にぶつかり倒れ、背中に背負っていた救命用具まで奪われてしまう。さらに、銃を持った盗賊が現れ、キャラバンを襲った盗賊をさらに襲い、その奪った荷物を奪っていくが、空に現れた巨大なドラゴンが雷を落とし、雷に打たれたその盗賊たちは「虚無」に還っていく。

2人は再び旅を始めようとするが、聖が自分たちを助けようとしてくれたことに感謝して、キャラバンの年寄りの長が、一緒に旅をしないかと声を掛け、2人はキャラバンと一緒に旅をすることになる。キャラバンの人々は、最初は異質な2人を警戒し、なぜ同行させるのか年寄りの長に抗議するが、聖はキャラバンの人々に積極的に話し掛けて身体のケアを施し、少しずつ信頼を得て人々に溶け込んでいく。その姿を見るスカーレットは、こんな状況だからこそ何かを信じたいと願うのだと語る年寄りの長の言葉に、自分が人を信じる気持ちを失っていたことに気付かされる。

スカーレットと聖は、クローディアがいるという、天に近い山の山頂に存在するという「見果てぬ場所」の麓を目指し、キャラバンと別れて旅を続ける。

一方、クローディアは、スカーレットがこの世界で自分を探していることを知り、妻・ガートルードがこの世界に来る前に「虚無」に還ってしまうことを恐れ、さらなる刺客を送り込む。
そして、アムレットを処刑したクローディアスの側近の1人であるヴォルティマンドが部下を引き連れ2人の前に現れる。スカーレットはヴォルティマンドの部下たちを蹴散らしていくが、ヴォルティマンドが聖を狙って銃を撃ち、それに気づいたスカーレットはとっさに聖をかばい、左腕を負傷してしまう。しかし、そこにドラゴンが姿を現し、ヴォルティマンドたちは雷を落とされるのを恐れて攻撃を中断し、その間に聖はスカーレットの腕を止血する応急処置を施す。
そして、剣を手にしたスカーレットはヴォルティマンドを追い詰め、「虚無」に還りたくないヴォルティマンドは、アムレットの最期の言葉を教える取引を持ち掛け、父の最期の言葉を知りたいスカーレットは、その取引に応じる。すると、ヴォルティマンドは、アムレットの最期の言葉が「許せ」だったと明かす。その真意が何か理解できないスカーレットにヴォルティマンドは、自分はクローディアスを「許せ」という意味としか思えなかったと話すが、スカーレットはそれを受け入れることができない。

ヴォルティマンドたちが去り、さらに旅を続ける2人。その途中、スカーレットは、2人の墓掘り人が棺桶を開く場面を夢に見る。墓堀り人は、棺桶にお前の知りたがっている人が入っている、と言い、スカーレットは父が入っていて「許せ」の意味を教えてくれるのではないかと期待するが、棺桶の中は空っぽで、墓掘り人たちはスカーレットを棺桶に押し込め、お前が知りたいのはお前自身だ、と言って棺桶の蓋を閉めてしまう。
そこで目が覚めたスカーレットは、まだ眠らず焚火のそばに座っていた聖のところにやってきて、近くに腰を下ろす。すると、聖は、キャラバンと別れたときに贈られたリュートのような絃楽器を奏でながら、自分がいた未来で流行っていた曲だと、「祝祭の歌」を歌い始める。それを聞くスカーレットは、意識が飛び、未来(2030年代?)の渋谷駅前でダンスをする人々の姿を見る。その中心には、聖の姿があり、ショートヘアで真っ青なワンピースを着た自分が聖と並んで一緒にダンスしていた。その光景を見て、自分にも違う未来があったのではないかと感じたスカーレットは涙を流す。そして、翌日、スカーレットは意識の中で見た自分の姿のように、髪を切り落とす。

そのころ、クローディアスは、「見果てぬ場所」に続く山の麓にある城に軍を結集させ、「見果てぬ場所」を目指す群衆を入れさせないよう、壁を構築していた。

スカーレットと聖は、その壁の近くにある市場までたどり着く。そこで、スカーレットは、かつての自分と同じように長い髪を編んだ貧しそうな少女に出会う。少女は、スカーレットに「お姫様なの?」と尋ね、スカーレットはそれを否定するが、少女は「私がお姫様なら、私みたいな子どもが死なない世界を作る」と言います。その言葉を聞いたスカーレットは、持っていた金貨を渡して抱き締める。
そして、「見果てぬ場所」を目指す群衆は、クローディアスが構築した壁に押し寄せ、それを破壊して大群衆が壁の内部に侵入していく。クローディアス軍も大砲や銃などで応戦し、撃たれた群衆は次々と「虚無」に還っていくが、続々と殺到する群衆の前に、クローディアス軍も次第に退却を余儀なくされる。

そんな中、クローディアスの部下のローゼンクランツとギルデンスターンは、クローディアスの命を受けてスカーレットを殺ろうと探していた。先にスカーレットがあった少女が、かつてのスカーレットと髪型が似ていたために捕まってしまい、持っていたデンマークの金貨が見つかったことで、何か知っているはずだと尋問される。それを見かねたスカーレットは止めに入るが、代わりに自分が捕縛されてしまう。しかし、聖がそれを助けようと弓矢を放ち、ローゼンクランツとギルデンスターンが聖に襲い掛かるが、2人は聖に倒され、「虚無」に還っていく。

さらに「見果てぬ場所」を目指し、2人は群衆と一緒に山を登っていくが、その斜面の一角から火山が噴火し、赤く燃えるマグマが群衆を襲う。それをくぐり抜けた群衆はクローディアスの城にたどり着くが、城にはクローディアスの姿はなかった。

一方、山の頂上にたどり着いたスカーレットと聖だったが、そこにはさらに上へと上がる階段はなく、クローディアスの部下であるポローニアスとその息子レアティーズが襲いかかる。応戦するスカーレットだが、ボローニアスに剣で斬られるか、山頂から転げ落ちるか、というところまで追い詰められるが、そこに、スカーレット殺害の任務を失敗したために懲罰を受けたヴォルティマンドとコーネリウスが助けに入り、ボローニアスとレアティーズは山頂から転げ落ちていく。
そして、ヴォルティマンドとコーネリウスは、山頂から「見果てぬ場所」へと続く透明な階段を教え、クローディアスはもう上がっていったことを伝える。スカーレットは、聖たちが見守る中、その透明な階段を上がっていく。

階段を上がると、かつてキャラバンの人々が語っていたように、美しい海が広がる風景があった。スカーレットが海から砂浜に上がり、ジャングルの小径のような道を進んでいき、さらに階段を上がると、天上のような澄み切った空間が広がり、その正面には、丸太と鎖で封鎖された巨大な門があった。そして、その前では、クローディアスが「見果てぬ場所」へと続く門が開かずに苦悶していた。門が開かないのはなぜなのかと考えるクローディアスは、自分の行いが悪かったからかと考え、門の前で跪いて首を垂れる。それを見たスカーレットは、スカーレットは復讐を果たすためにクローディアスに背後から近づき、剣を抜くが、父の最期の言葉「許せ」を思い出し、自分はどうすべきか苦悶する。そして、クローディアスを許そうとし、手に持っていた剣をその場に落とす。

スカーレットは、復讐は止めるが、自分は間違っていたと父に謝ってほしいとクローディアスに告げるが、反省の表情から一変したクローディアスは、スカーレットの顔に唾を吐き、もっと痛めつけてやるべきだったと言い捨てる。激高したスカーレットは、人の願いを平気で踏みにじる貴方がなぜ「見果てぬ場所」に行きたいと願う!と叫んで、クローディアスの顔を眼窩に指を津込もうかという勢いで掴み、クローディアスは倒れてしまう。
スカーレットは、倒れたクローディアスを前に、自分はどうすべきか再び自問自答する。なぜ別の生き方をできないのか、ずっとこうして生きてきたから、復讐のために全てを捧げ、自分を許さずに生きてきた、と考えたその時、スカーレットの目の前に父アムレットの幻影が現れ、復讐に囚われずにのびのびと自分らしく生きてほしい、と語り掛ける。その言葉を聞いて、ようやく「許せ」とは、自分自身を許せ、ということだったことを理解したスカーレットは、アムレットの幻影を抱き締める。
しかし、その背後では、起き上がったクローディアが、スカーレットが落とした剣を手にし、斬りかかろうとし、剣を振り上げるが、そこにドラゴンからの雷が落ちる。クローディアスは、死にたくない、と苦しみながらスカーレットにすがり付くが、「虚無」へと還っていく。

すると、スカーレットの背後に人影が近づいてくる。スカーレットが振り向くと、それは階段を上がってきた聖で、その後ろにはヴォルティマンドたちの姿もあった。そこに現れた謎の老婆は、この中にひとりだけ、生きている人間がいて、残された時間はわずかだと告げる。
スカーレットは、それは聖だと考えるが、聖は、通り魔の男が子どもたちを襲おうとするのを見てとっさに身を挺して盾となり刺されて死んだ記憶を思い出したこと、ローゼンクランツたちとの戦闘で傷を負ってまもなく「虚無」に還ることを伝え、聖との別れを拒もうとするスカーレットに、生きて自分の人生を全うするよう訴える。その言葉に、スカーレットは、争いをなくし、聖の時代が少しでも良い世の中になって、彼が死ぬ未来をなくすように努力すると言い、聖にキスをして空へと上がっていく。

スカーレットが目を覚ますと、元の世界の自分の寝室で横になっていた。スカーレットが蘇生したことを喜ぶ侍女たちは、解毒剤が効いたおかげで一命を取り留めたと話す。そして、クローディアスが、自分が意識を失っている間に、スカーレットを殺すために用意していた毒薬を誤って飲んで、あっけなく命を落としたことを聞かされる。クローディアスの遺体を見るスカーレットを見て、ガートルードはなぜスカーレットが死なずにクローディアスが死んでしまったのかと泣き叫ぶ。

クローディアスの死去により王位を継承したスカーレットは、民衆の前に立つ。クローディアスのような悪政をしないよう求める民衆に、スカーレットは、人々のために奉仕すること、隣国とは対立よりも友好を築くこと、子どもを死なせないこと、争わないで済む道を諦めないで探し続けることを誓うのだった。

 

(ここまで)

 

なお、ネットニュースによれば、公開1週目の週末3日間(11月21日~23日)の興行収入は2億1,000万円にとどまり、公開2週目の週末(11月30日)までの10日間の興行収入は4億2,000万円弱と、最終興行収入66億円を記録した細田守監督の前作「竜とそばかすの姫」の同期間の興行収入の17%にとどまっているそうです。週を重ねるごとに公開規模は縮小していき、今後の伸びは想定しにくいので、最終的な興行収入は6~7億円で止まってしまうのではないかと予想します。緻密で迫力のある映像などから、制作には相当の費用がかかっていると思われ、営業的には大きな赤字となってしまうのでしょうから、細田守監督の次回作は、資金的により厳しい環境となり、今後これだけの規模の作品を制作することは困難になってしまうのかもしれません。