鷺の停車場

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フォーレ:管弦楽曲集

フォーレのCDをもう1枚。 

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フォーレ
1.組曲ペレアスとメリザンド」Op.80[1898]
2.組曲「ドリー」Op.56(ラボー編)[1898/1906]
3.組曲「マスクとベルガマスク」Op.112[1919]
セルジュ・ボド指揮パリ管弦楽団
(録音 1969年2月20,21・6月3,4,12日、パリ)

フォーレ:ペレアスとメリザンド 他

フォーレ:ペレアスとメリザンド 他

 

組曲ペレアスとメリザンド」は、フォーレ管弦楽曲では最も有名だろうと思います。特に、3曲目のシシリエンヌは、多くの人は曲名は知らなくてもどこかで聞いたことがあるであろう曲ですが、私は、とりわけ4曲目のメリザンドの死がお気に入り。

組曲「ドリー」は、フォーレが作曲したピアノ連弾をアンリ・ラボーが管弦楽に編曲したもの。元はフォーレが可愛がっていた子どものために書かれたこともあって、親しみやすい曲。前後の曲と比べて木管楽器が主役の部分が多く、オーケストレーションが若干厚めなように感じますが、さほどの違和感はありません。

組曲「マスクとベルガマスク」は、あまり有名ではありませんが、個人的には好きな曲。1曲目もそうですし、3曲目の決然としたガヴォットもいいです。作曲されたのは、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」やストラヴィンスキーの「春の祭典」が初演されてから5年以上たつ1919年。曲だけ聴くと、ストラヴィンスキーよりもだいぶ昔、19世紀の作曲家との印象を受けがちですが、この時代は、19世紀からの流れが強い曲と、ある意味伝統と隔絶した斬新な曲とが併存していた時代なんだろうと思います。

この録音は、ボドが40代を超えたばかりの若い頃 、パリ音楽院管を発展的に改組しパリ管が発足してまだ2年ほど、初代の首席指揮者を務めたミュンシュが亡くなって間もない時期のもの。

この時期のパリ管は、まだバスーンがパリ音楽院管時代と同じくフレンチ式で、いかにもフランスらしい音色を残しているのが個人的に◎。
ちなみに、パリ管のバスーンがフレンチ式から世界的に主流なジャーマン式に変わったのは、1972年から首席指揮者を務めたショルティ時代と聞いたことがありますが、本当なのかはよく分かりません。もしかすると、その前の、ミュンシュ亡き後音楽顧問を務めたカラヤン時代なのかもしれません。

録音は、各楽器の生の音をとらえるのではなく、ホールに届いた響きをとらえたような感じで、細部の鮮明さにやや欠けるところはありますが、ふくよかな響きはフォーレの曲調との相性は悪くないと思います。

演奏も、先に書いたように、いかにもフランスという音色がまず素晴らしいです。どちらかいえばゆったりとしたテンポで、奇をてらったところもなく、おそらく技術的には難易度が高い曲ではないこともあって、よくまとまった安定した演奏になっています。

解釈の素晴らしさ、技術的な上手さ、録音の見事さといった点を個々に見れば、それぞれより優れた演奏も少なくないのだろうと思いますが、個人的な好みからすると、なかなかこれと並ぶ/上回る演奏はそうそうないだろうなあと思って、なかなか、他のCDを買おうとする積極的なモチベーションが起きません。フランスもの、あるいはフォーレがお好きな方には、ぜひ一度は聴いて欲しいなあと思います。