鷺の停車場

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シベリウス:交響曲第2番

マリス・ヤンソンスが振ったシベリウス交響曲第2番のCDを聴きました。

マリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
(録音:2005年6・8・9月 アムステルダム、コンセルトヘボウ(ライヴ録音)

 


20年以上前にミニチュア・スコアを買っていました。表紙の地の色は真っ白だったはずですが、今となってはすっかり黄ばんでしまっています。当時は国内版のスコアはなく、輸入楽譜を扱う店で3,000円弱でした。

シベリウスは1957年に亡くなっているので、その著作権が切れたからだと思いますが、2010年ごろ以降になると、国内の音楽出版社からもシベリウス作品のスコアが発売されており、今ではもう少しお手頃にミニチュア・スコアを入手することができます(それでも2,000円くらいしますが)。

交響曲第2番は、シベリウス30代後半の1901年から1902年にかけて作曲され、1902年3月8日にヘルシンキで初演された作品。

第1楽章は、Allegertto、6/4拍子、ニ長調ソナタ形式に基づく楽章。
楽譜を追っていくと、Allegretto - Poco allegro - Poco tranquillo (- a tempo) -Tranquillo ma ravivando -Poco largamente - Tempo I - Poco allegro - Tenuto (- a tempo) と、細かくテンポが指定されています。

第2楽章は、Tempo Andante, ma rubato、4/4拍子、ニ短調。物憂い緩徐楽章。
こちらも、楽譜を追っていくと、Tempo Andante, ma rubato - Poco Allegro - Poco largamente - Andante sostenuto - Andante con moto ed energico - Allegro - Poco largamente - Molto largamente - Piu largamente - Andante sostenuto - Andante con moto ed energico と、細かくテンポが揺れ動いています。

第3楽章は、Vivacissimo-Lento e suave、8/6拍子、変ロ長調。激しい主部とのどかなトリオのスケルツォ。アタッカで切れ目なく第4楽章に続いていきます。
こちらは、Vivacissimo - Lento e suave - Tempo I - Lento e suave と、主部とトリオ(中間部)でテンポが変わるだけになっており、Lento e suaveのトリオは変ニ長調・12/4拍子となっています。アタッカで切れ目なく第4楽章に続いていきます。

第4楽章は、Allegro moderato、3/2拍子、ニ長調。一気に視界が開けたかのような輝かしい主題に始まるフィナーレ。
こちらも、Allegro moderato - Moderato assai - Meno moderato e poco a poco ravivando - Tempo I - Largamente e pesamte - Un poco con moto - a tempo ma tranquillo - Poco largamente (- a tempo) - Molto largamente と細かくテンポが動いています。

 

ヤンソンス盤は、2004年から2015年まで首席指揮者を務めたロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と、本拠地のアムステルダム、コンセルトヘボウで行った2005年のライブ録音。
ヤンソンスとしては、1979年から2000年まで首席指揮者を務めたオスロ・フィルとの1992年の録音、2003年から2019年に亡くなるまで首席指揮者を務めたバイエルン放送響との2015年の録音もあるそうで、本盤は、その間、ヤンソンスの62歳の時の録音ということになります。

第1楽章の展開部で、テーマを奏でるコントラバスファゴットに加えてトロンボーンを重ねるなど、独自の解釈・演出もみられますが、ヤンソンスらしい、振り幅が大きく、生き生きとした、開放的な印象を受ける演奏です。演奏後には、熱狂的な拍手も収められています。もう少し陰りがあった方が、と思うところもあり、ベスト盤とは思いませんが、これはこれでなかなかいい演奏です。

 

ほかのCDも聴き比べてみました。録音の新しい順に紹介します。

パーヴォ・ヤルヴィ指揮パリ管弦楽団
(録音:2015年3月17・18日(Op.43)、2015年9月9・10日(Op.82) パリ、フィルハーモニー・ド・パリ(ライヴ録音)

パーヴォ・ヤルヴィが2012年から2016年にかけて、2010年から2016年まで音楽監督を務めたパリ管弦楽団とライブ録音で行ったシベリウス交響曲全集の1枚。
ヤルヴィは、2001年から2011年まで音楽監督を務めたシンシナティ交響楽団と2001年にもこの曲を録音しているそうで、本盤は2度目、ヤルヴィ52歳の時の録音ということになります(なお、他の交響曲は、この交響曲全集が初めての録音)。
フランスのオーケストラによるシベリウスの録音は、ちょっと珍しいのではないかと思います。交響曲全集のブックレットに掲載されているヤルヴィ自身の解説には、この録音が、フランスのオーケストラによる初めてのシベリウス交響曲全集であること、パリ管弦楽団シベリウス作品の演奏伝統がないことが、この全集に取り組む上で利点となったことなどが記されています。

細部には独特な響き、解釈もみられますが、ヤルヴィがパリ管弦楽団の優れた演奏能力も生かして正面から組み合った演奏という印象です。オーケストラの響き、録音も良く、気に入っている演奏のひとつです。

 

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮サンフランシスコ交響楽団
(録音:1991年5月27・28日 サンフランシスコ、デイヴィス・シンフォニー・ホール)

ブロムシュテットが1985年から1995年まで音楽監督を務めたサンフランシスコ交響楽団と、1989年から1993年にかけてセッション録音した交響曲全集からの1枚。ブロムシュテット63歳の時の録音ということになります。

ブロムシュテットらしい誠実で端正な演奏ですが、ドイツものの演奏などと比べると、より演奏の自由度が増している印象を受けます。これは元の作品自体がテンポが細かく変動していることもあるのかもしれません。

 

レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(録音:1986年10月 ウィーン、ムジークフェラインザール(ライヴ録音)

バーンスタインが晩年に多く客演したウィーン・フィルとのライブ録音。バーンスタイン68歳の時の録音ということになります。

この時期のバースタインの録音に多く共通しますが、遅めのテンポでじっくり歌い上げた演奏です。特に第2楽章、第4楽章のテンポの遅さは際立っています。逆に、第3楽章のVivacissimoの主部は、他の演奏と比べてもかなりテンポが速いなど、テンポの緩急の差が大きい演奏ともいえます。迫力を感じる演奏で、良いところもありますが、全体としては腰が重いように感じます。

 

サー・コリン・デイヴィス指揮ボストン交響楽団
(録音:1975年1月4~6日(Op.82,105)、1976年4月3・5・6日(Op.22-2,26,39,43)、11月29日~12月4日(Op.52,63,104,112) ボストン、シンフォニー・ホール)

シベリウス:交響曲全集(1)

シベリウス:交響曲全集(1)

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サー・コリン・デイヴィスが1975・1976年に当時首席客演指揮者を務めていたボストン交響楽団とセッション録音した交響曲全集。デイヴィスは、この後に、1994年、2006年にそれぞれロンドン交響楽団と録音していますが(このほか、ドレスデン・シュターツカペレとの1988年のライブもCD化されているようです)、本盤はその最初、デイヴィス48歳の時の録音ということになります。

派手さはありませんが、誠実で手堅い演奏。ほのかに暗めな響きを感じさせる録音も、シベリウスにはよく合っているように思います。

 

ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団
(録音:1970年5月22日 東京文化会館大ホール(ライヴ録音)

セルが1946年から亡くなる1970年まで常任指揮者を務めたクリーヴランド管との来日公演のライブ録音。セルは帰国直後に亡くなっており、本盤は亡くなる2ヶ月ちょっと前、セル72歳の時の録音となります。

ブックレットでの解説によると、前日の名古屋での公演から東京に戻って、当日のリハーサルなしで行われた演奏会のライブで、この日のプログラムである前3曲、アンコールの最後の1曲と、この日のコンサートの演奏曲がそのまま収められています。
曲目自体はその前の公演でも演奏しているにしても、会場によって響き方などが変わるはずなので、初めての会場であればリハーサルで音響やバランスなどの微調整を行うのが一般的だろうと思われるところ、いわばぶっつけ本番で行われた演奏会ということになります。しかし、そうしたマイナス要素を感じさせない優れた演奏です。上で紹介した4枚と比べると、構築性が高いというのか、音楽の横の流れは少なめな感じがしますが、このころの、クリーヴランド管の合奏体としてのレベルの高さが伺えます。

 

ジョージ・セル指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
(録音:1966年11月28~30日ベートーヴェン、1964年11月30日~12月2日シベリウス アムステルダム、コンセルトヘボウ)

セルが数多く客演したアムステルダム・コンセルトヘボウ管(現:ロイヤル・コンセルトヘボウ管)とセッション録音した1枚。セル67歳の時の録音ということになります。

上記のクリーヴランド管とのライブ録音と比べて、早めのテンポで緊密に構築された演奏という印象。端正・緊密に構築されている一方で、音楽があまり横に流れていかないきらいがありますが、これは他のセルの録音でも時々感じられることがあるもので、セルの演奏の特徴のひとつといえるかもしれません。

 

これらの録音の楽章ごとの演奏時間を比べてみると、次のようになります。

  • ヤルヴィ     Ⅰ09'58"/Ⅱ14'34"/Ⅲ5'57"/Ⅳ14'07"
  • ヤンソンス    Ⅰ09'26"/Ⅱ13'57"/Ⅲ5'56"/Ⅳ14'23"
  • ブロムシュテット Ⅰ09'57"/Ⅱ14'18"/Ⅲ6'08"/Ⅳ14'10"
  • バーンスタイン  Ⅰ10'54"/Ⅱ18'02"/Ⅲ6'23"/Ⅳ15'57"
  • デイヴィス    Ⅰ09'43"/Ⅱ14'34"/Ⅲ5'59"/Ⅳ14'31"
  • セル(1970)   Ⅰ09'20"/Ⅱ12'55"/Ⅲ5'51"/Ⅳ14'26"
  • セル(1964)   Ⅰ09'24"/Ⅱ12'39"/Ⅲ5'45"/Ⅳ13'40"

なお、ヤンソンス盤とセル(1970年)盤は、終演後の拍手も収められているので、第4楽章の実質の演奏時間はもう少し短くなっています(ヤンソンス盤:約13'59”/セル盤:約14'03")。
こうして並べてみても、バーンスタイン盤は、第1楽章で1分ほど、第2楽章で3分半ほど、第4楽章で1分半ほど、他のCDよりも演奏時間が長くなっており、そのテンポの遅さがうかがえます。一方、最も演奏時間が短いのは、1964年録音のセル盤で、トータルで、バースタイン盤と比べて9分弱、比較的テンポの速めなヤンソンス盤と比べても約1分半も演奏時間が短くなっています。