鷺の停車場

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武田綾乃「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」

アニメ映画「リズと青い鳥」の原作である、武田綾乃さんの小説「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」を、今さらですが、読んでみました。

響け!ユーフォニアム」は、テレビアニメ版は第1・第2シリーズともに見ましたが、原作の小説はこれまで読んだことがありませんでした。

テレビアニメ版で描かれたのは、ユーフォニアムを吹く黄前久美子が北宇治高校に入学してコンクールに臨んだ1年生時代ですが、「波乱の第二楽章」では、2年生になった久美子たちが、それぞれ個性ある新入生を迎え、コンクールに向かう姿が描かれています。

リズと青い鳥」(以下リズと略称)で焦点が当てられるみぞれと希美の関係は、コンクールに向かうというメインテーマに織り交ぜられたサブテーマの1つとして後編で描かれますが、一読して、リズはある意味大胆なアレンジを加えていることがよく分かりました。

テレビアニメ版も同じですが、原作ではユーフォニアムを吹く黄前久美子が主人公で、リズで焦点が当てられる1学年上のみぞれと希美の関係も、基本的に久美子からの目で語られます。リズでは、久美子はほとんど単なるモブ(群衆)に後退してセリフは1~2箇所しかなく、みぞれと希美の間で直接セリフが交わされますが、原作では、直接2人が交わす会話もありますが、多くはみぞれや希美が久美子と交わす会話になっています。

リズの山田監督もおっしゃっていたと思いますが、映画では、教室や廊下の壁、机が2人を見守るかのように描かれます。これは、感情の動きは画で表現され必ずしも語り手を必要としないという、小説と映画の違いもあるのでしょうけど、久美子の目で描かれる群像劇であるこの原作から入った方だと、他の要素を削ぎ落として2人の関係に純化したようなリズに違和感を感じた方も少なくないだろうと思いました。

代替りして新入生を迎え、様々なエピソードで描かれる人間模様を通じて部員たちが一つにまとまっていき、コンクールで素晴らしい演奏をし(たけれど、関西大会で金賞にとなるものの、前年果たした全国大会出場は叶わず)、久美子たちが部を引っ張る立場に立つことになる物語は、青春物語として楽しめましたが、こうした作品を読むには歳を取ってしまいました。もっと若い年ごろで読めば、心への迫り方も違ったような気がします。