鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「ロマンスドール」を観る

先日、「ロマンスドール」(1月24日(金)公開)を観に行きました。

タナダユキ監督が2009年に刊行された自身の小説を自らの脚本で映画化した作品だそうで、全国94館での公開。

f:id:Reiherbahnhof:20200130000640j:plain

f:id:Reiherbahnhof:20200130000558j:plain
行ったのはMOVIX柏の葉

f:id:Reiherbahnhof:20200130000702j:plain

f:id:Reiherbahnhof:20200130000717j:plain
上映は232席のシアター8。

入ってみると、お客さんは25人ほど。上映初週の終末としてはちょっと寂しい感じでした。

f:id:Reiherbahnhof:20200130000748j:plain

f:id:Reiherbahnhof:20200130000805j:plain
(チラシの表裏)

 

公式サイトのストーリーによれば、

 

一目惚れをして結婚した園子(蒼井優)と幸せな日常を送りながら、ラブドール職人であることを隠し続けている哲雄(高橋一生)。仕事にのめり込むうちに家庭を顧みなくなった哲雄は、恋焦がれて夫婦になったはずの園子と次第にセックスレスになっていく。いよいよ夫婦の危機が訪れそうになった時、園子は胸の中に抱えていた秘密を打ち明ける……。

 

というあらすじ。

 

映画は、短い導入の後、哲雄が、詳しい事情を知らされず紹介されたラブドール、昔風にいえばダッチワイフを製造する町工場を訪ねる場面に始まり、美大出身だが定職のない哲雄は生活のためそこで造形士として働き始めることになります。これは、確かにこの舞台設定だけでPG12になりそうです。

その後、ネタバレは控えますが、仕事での接点がきっかけで結婚した哲雄と園子の夫婦の関係が描かれていきます。

夫婦のすれ違いとそこからの修復、そして喪失が、作品のテーマ。

感想を、あえて気になった点から挙げると、公式サイトではセックスレスになっていくとの紹介がされていますが、映画では、そういう営みを直接に示す描写は、すれ違う前にはほとんどなく、危機を乗り越えた後になって数多く出てくるので、セックスレスになったのが戻ったというより、園子の身体の状態からはマズいのではと余計な心配するくらい、より頻繁になったように見えました。結婚してすれ違っていく過程がもう少し丁寧に描かれると、その後の関係との対比がより鮮やかになったように思います。

しかし、夫婦のあり方について問を投げかける、切なくも、心に響く映画でした。

結婚、あるいは夫婦のあり方について、言葉にして、相手ときちんと向き合うことは、意外にしていない/できないことだと思います。この2人は、危機に直面して、向き合わざるを得なくなったともいえますが、それを転機に、再び良好な関係を取り戻します。厳しい現実が2人を襲う中で、その関係を愛おしむように過ごしていく後半の展開には引き込まれました。

 

何より、園子役の蒼井優の演技が凄かった。ベッドシーンなどの体を張った演技もありますが、それより、それぞれのシーンの表情の表現がとても真に迫って、変な表現ですが、ゾクっとするような凄味を感じました。

哲雄役の高橋一生も十分好演しています。哲雄の先輩社員役のきたろう、工場の母親的存在の渡辺えりなど、脇役もいい味を出しています。社長役をピエール瀧が務めていますが、昨年3月には逮捕されていましたから、撮影はその前にはクランクアップしていたのでしょう。公開がこの時期になったのには、キャストを変えて撮り直すこともできず、ほとぼりが冷めるのを待ったということかもしれません。

 

結婚してあまり年数が経っていない夫婦や、これから結婚する、結婚を考えている人には、よりリアルに響く映画だと思います。