鷺の停車場

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映画「LOVE LIFE」舞台挨拶付上映

休日の午後、キネマ旬報シアターに行きました。


この週の上映作品。


私が観るのは「LOVE LIFE」(9月9日(金)公開)。公開当初から気になっていた作品でしたが、映画情報サイトの口コミ評価などを見て、どうしようか迷っているうちに、公開当初からの上映館ではほとんど上映が終了してしまっていました。


この日、上映後に深田晃司監督の舞台挨拶が行われると知って、ようやく踏ん切りが付いて行くことにしました。


チケットは当日の朝から販売ということなので、オープンの9時15分に合わせて、チケットを買いに行きました。10人ほどが並んでいましたが、普通に朝イチの上映回のチケットを買われる方もいたので、おそらく5番目前後だったのではと思います、希望のエリアの席のチケットを押さえることができました。


上映時間に合わせて、再び映画館ヘ。


この日の上映スケジュール。


上映は136席のスクリーン3。この映画館では、通常時は1席ずつ間隔を開けての販売を継続していますが、舞台挨拶付のこの上映は全席が開放されていました。満席とはいかないまでも、100人以上は入っていたと思います。


本作の主題歌となっている矢野顕子の名曲「LOVE LIFE」にインスパイアされて制作された作品だそうで、監督・脚本・編集は深田晃司

 

公式サイトのストーリーによれば、

 

妙子(木村文乃)が暮らす部屋からは、集合住宅の中央にある広場が⼀望できる。向かいの棟には、再婚した夫・⼆郎(永山絢斗)の両親が住んでいる。小さな問題を抱えつつも、愛する夫と愛する息子・敬太とのかけがえのない幸せな日々。しかし、結婚して1年が経とうとするある日、夫婦を悲しい出来事が襲う。哀しみに打ち沈む妙⼦の前に⼀⼈の男が現れる。失踪した前の夫であり敬太の父親でもあるパク(砂田アトム)だった。再会を機に、ろう者であるパクの身の周りの世話をするようになる妙子。
一方、⼆郎は以前付き合っていた山崎(山崎紘菜)と会っていた。哀しみの先で、妙⼦はどんな「愛」を選択するのか、どんな「人生」を選択するのか……。

 

・・・というあらすじ。

 

公式サイトで紹介されている主な登場人物は、

  • 大沢 妙子【木村 文乃】:一人息子・敬太を連れて二郎と再婚。ホームレス支援を行うNPOで働いている。

  • 大沢 二郎【永山 絢斗】:市役所の福祉課で主任として働いている。そこで出会った妙子と結婚した。

  • 大沢 誠【田口 トモロヲ】:二郎の父。同じ職場(市役所)で部長として働いている。二郎と妙子の結婚を認めていない。

  • 大沢 明恵【神野 三鈴】:二郎の母。妙子や敬太にやさしく接しているが、本心では実の孫を期待している。

  • 敬太【嶋田 鉄太】:妙子とパクの子供。オセロが得意。新しい家族である二郎にもなついている。

  • パク・シンジ【砂田 アトム】:妙子の前夫で、敬太の父親。韓国籍。ろう者のため、妙子とは手話で話す。

  • 山崎 理佐【山崎 紘菜】:二郎と同じ職場で働いている、二郎の元恋人。

という感じ(登場人物の紹介は、一部加筆しました)。

 

多少ネタバレですが、記憶の範囲でもう少し詳しめに紹介すると、

子連れで再婚し、幸せな日々を送ってきた妙子だったが、息子の敬太の快挙を祝う場で、敬太は不慮の事故で命を落としてしまいます。ここから、妙子の心は行き場を失ったかのように彷徨うことになります。敬太の葬式に、かつて妙子たちを捨て姿を消していた敬太の実父でろうあ者の前夫・パクが姿を現します。パクが生活支援を求めて市役所を訪れ、手話ができる妙子がその担当者になることで、物語は三角関係のような様相を呈してきます。実父でない夫とは愛する子どもを失った哀しみを共有できない妙子は、次第にパクと親密になっていき、彼は自分がいないとダメ、と思うようになっていきます。しかし、ある知らせで出身の韓国に戻るパクを、止める夫を振り切って追い、そこで遭遇した出来事を通じて、妙子の中で何かが変化します。自宅に帰ってきた妙子は、夫との関係が今後どうなっていくのかわからないままに、夫の誘いで一緒に散歩に出かけていく・・・というもの。

 

余韻が残る作品でした。全体的に、妙子たち登場人物の心情をクリアに示すのではなく、観客の解釈に委ねるような描写で、もどかしく分かりにくいと受け取る人もいると思いますが、こういう雰囲気の作品は、私は好きです。

冒頭、敬太の死に至るまでの展開が見事で、予測ですないタイミングでの突然の暗転に、思い切り意表を突かれます。ここは監督も強く意識していたポイントのようで、終了後のトークショーでも、観客にも敬太の死を予測させないようにいろんな要素を詰め込んだという趣旨のことを話されていました。

 

上映終了後、10分ほどの休憩を挟んで、深田晃司監督が登壇、トークショーが始まります。前半は映画館スタッフによる質問。東京国際映画祭黒澤明賞」授賞記念と銘打っていることもあり、最初は黒澤明映画とのかかわりから始まり、次いで矢野顕子の「LOVE LIFE」との出会いから映画化までの過程、キャスティングの狙いなどの質問の後、後半は観客からの質問に監督が答える形でした。映画化への道のり、いくつかのシーンに込められた演出上ので意図、終盤の韓国のシーンでの裏話などなど、いろいろ貴重なお話を伺うことができました。


舞台挨拶終了後には、フォトセッションの時間も設けられていました。


フォトセッションが終わって、深田監督が退場されると、舞台挨拶開始からほとんど1時間が経っていました。予定より10分近く伸びた感じです。これだけいろいろなお話をお聞きできたのは、貴重な経験でした。

終了後、すぐそばのロビーで、深田晃司監督によるパンフレットへのサイン会が始まりましたが、私はその後の都合もあり、そのまま失礼しました。

この映画館での上映は、当初2週間の予定でしたが、好評により、ひとまず11月18日(金)まで1週間延長されたそうです。首都圏での公開は、おそらくこれで最後になってしまうと思いますので、関心ある方はぜひ観てほしいと思います。


なお、チケット購入時に入場者特典のノートをいただきました。表紙は台本と同じデザインなのだそうで、中は無地の自由帳でした。