鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

小説「ヴァイオレット・エヴァーガーデン エバー・アフター」ほかを読む

京都アニメーション制作のアニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」、劇場版の「外伝―永遠と自動手記人形―」で初めて接したのですが、テレビアニメ版を見て、原作小説の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の上・下・外伝と読んでいましたが、先日、最終巻となる「エバー・アフター」が刊行されたので、さっそく手に取ってみました。

f:id:Reiherbahnhof:20200329153922j:plain

全体は、プロローグと5編で構成されています。

ごく簡単に、各編のあらすじ、概要を紹介します。

「薔薇と自動手記人形・プロローグ」

ヴァイオレット・エヴァーガーデンと、まだ名前のない「獣」だった頃の彼女を少年兵として拾い、弟のギルベルトに押し付けたディートフリート・ブーゲンビリア海軍大佐。そして、ヴァイオレットの上官となったギルベルト・ブーゲンビリア陸軍少佐の「愛してる」との言葉に「あいって、なんですか」と吠える獣は、愛を受けて人と成ったのだった。

「薔薇と自動手記人形」

大陸の南西、ダーツー地方のジャカランダ河で船頭をしているヴァレンタインが、自動手記人形として世界を旅し始めたばかりのヴァイオレットと出会う。富豪のロックハートのもとに定期的に出張代筆に向かうヴァイオレットを船に乗せるヴァレンタインは交流を重ね、ひかれていくが、あるとき、喪服を着てやってきたヴァイオレットを見て、もう会えないことを悟る。再びヴァイオレットに会いたいと願うヴァレンタインは、自分を変えようと、ライデンシャフトリヒに出て、自動手記人形として生きていく道を選ぶのだった。

「夜と自動手記人形」

ディートフリート・ブーゲンビリアは、ライデンシャフトリヒの画廊のプレオープンパーティーでヴァイオレットと鉢合わせし困惑するが、そこに強盗が画廊を襲う。ディートフリートは忌々しい思いを抱えながら、ヴァイオレットと共闘し、強盗犯を撃退する。ヴァイオレットを馬車で家に送るディートフリートは、ヴァイオレットと会話を交わしながら、ギルベルトや自分とヴァイオレットとの関係に思いをめぐらせる。

「旅と自動手記人形」

激しい雨嵐により、郵便社の社長ホッジンズ、ポストマンのベネディクト、社長秘書のラックス、仕事帰りの自動手記人形のカトレアとヴァイオレットが郵便社の建物で一晩を過ごすことになる。楽しい宴の翌朝、ヴァイオレットはホッジンズに、その夜に見た夢を話す。それは、事業の成功で変わっていく郵便社に感じた不安から出たものだった。ホッジンズはヴァイオレットを優しく慰める。

「親愛なる貴方と自動手記人形」

この章は、ライデンシャフトリヒから遠く離れた北国の駐屯地にいるギルベルトと、恋人のヴァイオレットや友人であるホッジンズ、妹のユリアとの手紙のやり取りで構成されています。ギルベルトは近々やってくる妹ユリアの結婚式に、親族に婚約者として紹介するためヴァイオレットを連れていこうと考え、ホッジンズやユリアに手紙を書くが、ヴァイオレットからの手紙には彼女の不安や動揺がにじみ出ていた。直接会おうとエヴァーガーデン家を訪れたギルベルトだが、ヴァイオレットは仕事で出張しており入れ違いになってしまう。ギルベルトはヴァイオレットに会いに行くため汽車に乗る。

「夢追い人と自動手記人形」

ヴァイオレットは長期の仕事で大陸の西側にあるアルフィーネに滞在していた。仕事を終えて帰路に就こうとしたところで、所持金をほとんど失ってしまうが、襲われるところを助けたレティシアアスターの部屋に暮らしながら交通費を貯めるために働き出す。レティシアは元は良家の娘だったが、歌手になる夢を追って、この街に出てきたのだった。そこで偶然に劇作家のオスカーと再会したヴァイオレットは、レティシアと引き合わせ、レティシアは劇場のオーディションを受ける機会を得る。そして帰路に就こうとするヴァイオレットは、追いかけてきたギルベルトと再会する。互いの思いを伝え合う2人。ギルベルトは、自分の家庭が欲しいとヴァイオレットに囁き、口づけをする。

最後は、ギルベルトとヴァイオレットがその後結婚することをほのめかすようなエピローグが記され、作品の幕が下ろされます。

 

これまでの上巻・下巻・外伝よりも、文体のクセが強くなっているような印象があって、ちょっと分かりにくいところもありましたが、最後のハッピーエンドにはほっとしました。

f:id:Reiherbahnhof:20200329154047j:plain
特典としてイラストカードが付いていました。

 

f:id:Reiherbahnhof:20200329154102j:plain
ところで、先日購入した「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝―永遠と自動手記人形—」のBlu-rayに、特典として書き下ろし小説が付いていました。

f:id:Reiherbahnhof:20200329154117j:plain

「エイミー・バートレットと春の木漏れ日」

結婚した後のイザベラ・ヨーク=エイミー・バートレットの日記という体裁で記されています。旦那への嫌悪、テイラーへの思いなどが、日々の出来事とともに綴られ、劇場版の「外伝」で描かれたテイラーからの手紙を受け取る場面も描かれます。最後には、思いがけないハッピーエンドが待っています。

 

4月24日に公開予定だった「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて公開延期となってしまいましたが、「エバー・アフター」の各編、特に最後の2編の内容がベースになっているのでしょうか。劇場版との関係も気になるところです。