鷺の停車場

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初野晴「惑星カロン」

初野晴さんの小説「惑星カロン」を読んでみました。 その紹介と感想です。

惑星カロン (角川文庫)

惑星カロン (角川文庫)

  • 作者:初野 晴
  • 発売日: 2017/01/25
  • メディア: 文庫
 

テレビアニメ「ハルチカハルタとチカは青春する~」の原作となる〈ハルチカ〉シリーズの「退出ゲーム」、「初恋ソムリエ」、「空想オルガン」、「千年ジュリエット」に続く第5作。

角川書店サイトには、次のような紹介文が掲載されています。

【喧噪の文化祭が終わり三年生が引退、残った一、二年生の新体制を迎えた清水南高校吹奏楽部。上級生となった元気少女の穂村チカと残念美少年の上条ハルタに、またまた新たな難題が? チカが試奏する“呪いのフルート”の正体、あやしい人物からメールで届く音楽暗号、旧校舎で起きた密室の“鍵全開事件”、そして神秘の楽曲「惑星カロン」と人間消失の謎……。笑い、せつなさ、謎もますます増量の青春ミステリ、第5弾!】

 

作品は、イントロダクションと4編から構成されています。各編のおおまかなあらすじを紹介します。

 

イントロダクション

チカが、清水南高校に入学して吹奏楽部に入部し、部員を増やしてコンクールに出るまでの歩みを語る導入部。

チェリーニの祝宴ー呪いの正体ー

入学時に祖母に買ってもらった入門用のフルートを買い替えようと試奏しに楽器屋を回るチカは、ある楽器店で、彫刻の入った総銀製のフルートを見せられる。チカは、店長が呪われたフルートだと言うその楽器を貸してもらい、ハルタや草壁先生、吹奏楽部のコーチになった山辺真琴たちは、彫刻の意味、そして「呪い」の正体を解き明かす。

ヴァルプルギスの夜ー音楽暗号ー

チカは、公園で藤が咲高校吹奏楽部の部長・岩崎に出会う。岩崎は、山辺コーチに会おうと清水南高校に向かおうとしており、解いてほしい音楽暗号があると言う。日を改めて山辺コーチと芹澤さん、チカと会った岩崎は、藤が咲高校のOBを名乗る人物が、吹奏楽部員たちに賞金をかけて音楽暗号を解かせようとしていると語る。その場でその音楽暗号にチャレンジする山辺コーチたち、後から合流したハルタたちの助けも受け、ア全ての音楽暗号を解き明かす。そこにはある企みが潜んでいた。

理由ありの旧校舎ー学園密室?ー

清水南高校で、文化部で三年生の合同引退式が行われた翌朝、部室棟となっている旧校舎の鍵が全部開けられる事件が起きる。元生徒会長の日野原の依頼でその謎に取り組むハルタとチカは、断片的な情報から、その真相にたどり着く。それはあるハプニングが原因になっていた。

惑星カロンー人物消失ー

週末に服を買いに出掛けたチカは、たまたま出会ったハルタセレクトショップに入るが、そこで中学3年生でフルートを吹く倉沢あゆみに出会う。アンサンブル・コンテストに出場するために、楽譜が絶版となったフルート二重奏曲「惑星カロン」の楽譜を手に入れたい彼女は、連絡をとった作曲者の息子・進藤誠一と名乗る男から意見を聞かせてほしいとメールで送られた、ある店の試着室で起きた消失事件をチカたちに相談する。一方、「ITスキルアップ講習会」を受講し、終了後に講師にデジタルツインについて質問する草壁先生。その両者にはあるつながりがあった。

 

(ここまで)

文庫版の表紙のイラストは、オーボエを持っている女子高生なので、成島美代子なのでしょうね。

前作の、吹奏楽コンクールを背景にした「空想オルガン」、文化祭を舞台にした「千年ジュリエット」とは違って、本作では、背景となる、チカたちが過ごす高校生活では大きなイベントはなく、チカたちが過ごす日常生活の中で遭遇する謎を解いていく形になっています。

各編は、テーマを匂わす短い導入部の後、テーマと一見無関係なチカたちの日常が描写され、テーマとなる謎と遭遇し、その謎を解いていく、というのが基本的なパターンですが、最後の「惑星カロン」では、デジタルツインについて問い質す草壁先生のサブストーリーが挿入され、それが最後にメインストーリーと融合していく、より複雑な構成になっています。

ハルチカ」シリーズは、今のところ、本作が最後となっていますが、チカたちが3年生になってからの物語もちょっと気になります。もし続巻が出るのであれば、読んでみたいと思います。