鷺の停車場

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初野晴「退出ゲーム」

初野晴さんの小説「退出ゲーム」を読んでみました。 その紹介と感想です。

退出ゲーム (角川文庫)

退出ゲーム (角川文庫)

  • 作者:初野 晴
  • 発売日: 2010/07/24
  • メディア: 文庫
 

テレビアニメ「ハルチカハルタとチカは青春する~」を見ていました。その原作となる〈ハルチカ〉シリーズの第1作ということで、手に取ってみた作品。

角川文庫サイトには、次のような紹介文が掲載されています。

【廃部寸前の弱小吹奏楽部で、吹奏楽の甲子園普門館」を目指す、幼なじみ同士のチカとハルタ。だが、さまざまな謎が持ち上がり……各界の絶賛を浴びた青春ミステリの決定版、”ハルチカ”シリーズ第1弾!】

 

作品は、次の4編から構成されています。ネタバレになりますが、各編のおおまかなあらすじを紹介します。

 

結晶泥棒

清水南高校で、文化祭を目前に、化学部が持っていた劇薬の硫酸銅の結晶が盗まれる。見つからなければ文化祭の中止に追い込まれる危機に、文化祭実行委員でもあるチカ(穂村千夏)は、あるトラブルが原因で家に引きこもっていたハルタ(上条春太)を引きずり出し、ハルタはその謎を解決する。それは、予算が少ない中で部活動に打ち込む文化部の生徒の思いから起きたことだった。

本編は、シリーズの導入に当たる部分ですが、テレビアニメ「ハルチカ」の第1話「メロディアスな暗号」とは全く別の話になっています。

クロスキューブ

オーボエの経験者で中学時代に全国大会にも行っている同じ1年生の成島美代子を吹奏楽部に入れようと、チカとハルタは熱心に勧誘するが、美代子は冷たく拒む。美代子は全国大会の日に病気の弟が急変して亡くなったことで、自分を責め、オーボエを止めていた。ハルタたちは美代子の弟が残した全面が白のルービックキューブの謎に挑む。そこには弟から美代子へのメッセージが込められていた。

本編は、テレビアニメ「ハルチカ」の第2話「クロスキューブ」に当たる部分になっています。

退出ゲーム

ハルタたちは、サックスの経験者の中国系アメリカ人のマレン・セイを入部させようとするが、マレンは既に演劇部に幽霊部員として入部していた。マレンをめぐって、演劇部と吹奏楽部は、特定のメンバーをステージから退出させたら勝ち、という即興劇で対決する。

本編は、テレビアニメ版「ハルチカ」の第3話「退出ゲーム」に当たる部分になっています。

エレファンツ・ブレス

萩本兄弟の発明部が販売した「オモイデマクラ」を回収しようとする生徒会長の日野原秀一を手伝うことになったチカ。その購入者の1人は、春に清水南高校に入学してくるバストロンボーン吹きの後藤朱里で、かつて愛する祖母を見捨ててアメリカに行ったが、当時の記憶を失っている祖父が見たという「エレファンツ・ブレス」を思い出させて謝らせようという。ハルタたちは、祖父の断片的な記憶と、当時の出来事などから真相を推理する。それは、祖父がアメリカで不条理に遭遇した壮絶なものだった。

本編は、テレビアニメ「ハルチカ」の第5話「エレファンツ・ブレス」に当たる部分になっていますが、アニメには前半の「オモイデマクラ」の部分は描かれていません。

 

(ここまで)

文庫版の表紙は、ホルンを吹く高校生なので、ハルタこと上条春太ということですね。

これまで読んだ日常系ミステリーとしては、米澤穂信氷菓」や三上延ビブリア古書堂の事件手帖」シリーズがありました。それらと比べると、吹奏楽部を舞台としていることもあって、青春ものという感じが強く出ています。ノリのいい会話などテンポのいい文体で、謎の設定もやや日常から離れた部分があって、ラノベっぽいと言うと怒られるかもしれませんが、同じく高校1年生が主人公になっている「氷菓」とはかなりテイストが違っています。でも、これはこれで面白いところ。続きも読んでみようと思います。