初野晴さんの小説「空想オルガン」を読んでみました。 その紹介と感想です。
テレビアニメ「ハルチカ~ハルタとチカは青春する~」の原作となる〈ハルチカ〉シリーズの「退出ゲーム」、「初恋ソムリエ」に続く第3作。
角川文庫サイトには、次のような紹介文が掲載されています。
【吹奏楽の”甲子園”――普門館を目指す穂村チカと上条ハルタ。弱小吹奏楽部で奮闘する彼らに、勝負の夏が訪れた!! 謎解きも盛りだくさんの、青春ミステリ決定版。ハルチカシリーズ第3弾! 】
作品は、序章と4編から構成されています。各編のおおまかなあらすじを紹介します。
序章
大人になったチカが高校時代を振り返った文章、という体裁で、「退出ゲーム」、「初恋ソムリエ」で描かれたチカたちの道のりを簡潔に紹介する導入部。
ジャバウォックの鑑札
ハルタやチカが高校2年生の夏、小編成のB部門で吹奏楽コンクールに挑む清水南高校の地区大会の日がやってきた。ハルタとチカは、会場近くの公園で顧問の草壁先生を取材しようと来ていたフリーライターの渡邉と出会う。そこでハルタはチベタン・マスティフという珍しい犬を見つけるが、飼い主と名乗る人間が2人現れる。ハルタは取材を諦めさせる交換条件として、その謎を解き明かそうとする。
本編は、テレビアニメ「ハルチカ」の第10話「ジャバウォックの鑑札」に当たる部分になっています。
ヴァナキュラー・モダニズム
ハルタが住んでいたアパートの取り壊され、姉の南風がやってきてハルタの引越し先を急いで探すことになる。不動産屋で条件のいい物件を見つけるが、それは奇妙な噂のあるアパートだった。現地に下見に行ったハルタたちは、建築主の孫である家主から事情を聞き、建築主がアパートに隠した謎を解き明かす。
本編は、テレビアニメ「ハルチカ」の第4話「ヴァナキュラー・モダニズム」に当たる部分になっています。
十の秘密
地区大会を突破し、県大会の会場にやってきたチカたちは、一つ前の順番で出場する清新女子高のメンバーと出会う。規律が厳しく、奇妙な点のある清新女子高だが、そこにはある秘密があった。
空想オルガン
チカたちの東海大会の日、オレオレ詐欺の一員の「ガンバ」は、亡くなっている高校時代の友人の母親に電話を掛け、現金の受渡し場所に東海大会の会場である三重県総合文化センターを指定する。彼は高校時代にコンクールに出ていた過去があった。会場でチカたちを応援に来た芹澤と話す彼は、芹澤が補聴器をしているが難聴が回復していることに気付き、高校時代の友人たちとの過去を思い出す。
(ここまで)
文庫版の表紙のイラストは、指揮をする吹奏楽部顧問の草壁信二郎先生でしょうか。
これまでの作品と同様、ノリのいい会話などテンポのいい文体で、ラノベっぽくもある青春ミステリー。「ヴァナキュラー・モダニズム」や「十の秘密」は現実離れした設定で、ミステリーとしての仕上がりは前2作ほどではないように思いますが、コンクールに挑む青春ものとしては面白く読めました。
また続きを読んでみようと思います。