鷺の停車場

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映画「世界のはしっこ、ちいさな教室」

ヒューマントラストシネマ有楽町に行きました。


映画館はITOCiAの4階にあります。


4階に上がってきました。


この映画館は、2019年の春に「こどもしょくどう」(2019年3月23日(土)公開)を観に来て以来なので、およそ4年ぶりになります。


この日の上映スケジュール。


この日観たのは「世界のはしっこ、ちいさな教室」(7月21日(金)公開)。


ロビーの壁には、大きなタペストリーも飾られていました。


上映は162席のシアター1。お客さんは、40人くらい入っていたと思います。


(チラシの表裏)

未来に明かりを灯そうとする3人の先生と、学びに目覚めた子どもたちを描いたフランスのドキュメンタリー映画で、監督は、エミリー・テロン。


公式サイトのイントロダクション&ストーリーから引用すると、

 

1億2,100万人。これは就学費用がない、近くに学校がない、学校に先生がいないなど、さまざまな理由から学ぶことのできない子どもたちの数だ。日本でも大ヒットした『世界の果ての通学路』(12)の製作チームが、今度は世界の果ての先生に注目した。識字率アップが国家の使命であるブルキナファソの新人教師であり2人の子どもの母でもあるサンドリーヌ。バングラデシュ北部のボートスクールで、子どもや女性の権利を守るために粘り強く闘う若きフェミニストのタスリマ。広大なシベリアに暮らす現役の遊牧民でありエヴェンキ族の伝統の消滅を危惧するスヴェトラーナ。彼女たちが直面する困難も個性も三者三様。子どもたちに広い世界を知ってほしいという情熱だけを胸に、家族と離ればなれになっても、両親から反対されても、「子どもたちには明るい未来がある」と、信じる道を進み続ける。先生たちと子どもたちの笑顔に、いつかの自分を思い出す感動の教室ドキュメンタリー。この瞬間も世界のはしっこでたくさんの夢が育っている!

 

・・・という作品。

 

登場するのは、次の3人の教師たち(説明は公式サイトで紹介されているものです)。

  • スヴェトラーナ・ヴァシレヴァ:トナカイの牧夫である両親を持つスヴェトラーナは6歳で寄宿学校に入学し、両親と一緒にタイガで伝統的な生活を送れなかったことを悔やんできた。エヴェンキ族とユネスコの協力で設立されたエヴェンキ・セカラン協会に所属し、広大なタイガで遊牧生活を送る同胞のために、教材や机などを乗せたトナカイのソリで子どもたちが暮らすキャンプ地を走り回っている。移動式の遊牧民学校は、1ヶ所につき約10日間で授業を行う。ロシア連邦の義務教育に加え、エヴェンキ族の伝統や言語、アイデンティティを伝えるカリキュラム。魚釣りやトナカイの捕まえ方も実地で教える。自身の活動のかたわら、2人の娘は町の寄宿学校で学ぶ矛盾に苦しむ母親の姿も見せる。

  • タスリマ・アクテル:結婚を勧める親を説得して高校を卒業し、人道支援団体のBRACが主催するボートスクールに派遣されて、居住する村の教師になった。今では一家の中で唯一自立した女性に成長し、女性も男性と同じ権利を持つべきとの理念から、家庭では弟や妹、甥や姪の勉強をサポートし、学校では後輩たちが児童婚の犠牲にならないよう啓発している。タスリマが暮らすバングラデシュ北部にあるスナムガンジ地方はモンスーンの影響で1年の半分が水没し、彼女も幼い頃に洪水で家を失った経験を持つ。なお、バングラデシュでは15歳未満の女子の約16%、18歳未満の51%が児童婚している。

  • サンドリーヌ・ゾンゴ:15歳以上の識字率は41.2%。世界最低ランクの識字率を向上させるために、ブルキナファソ政府は近年、教育に力を注いでいる。首都ワガドゥグで夫と2人の娘を育てるサンドリーヌは「自分の国の未来を確かなものにしたい」と願い、国立初等教育学校で2年間、教員になるために学んだ。新人教師は6年間の任期で、ブルキナファソ各地の小学校に送り込まれるのがお約束で、サンドリーヌの初任地はまともなインフラのないティオガガラ村。50人強の児童は公用語のフランス語をほとんど理解できず、教室では5つの言語が飛び交う。学校の寮として与えられたのはプライバシーもセキュリティもゼロの土でできた一軒家。井戸は故障中で川の水を汲んで利用している。夜でも子どもたちが勉強できるように、自腹で約11000円のソーラーパネルを購入した。

 

作品は、この3人の女性教師の姿が、入れ替わりながら描かれます。

 

まず、サンドリーヌの物語。

ブルキナファソで教師となったサンドリーヌ・ゾンゴ。ブルキナファソでは、若手の教師は、6年間へき地の学校に赴任することになっており、サンドリーヌも息子と体の弱い娘と離れて、へき地の村に向かう。インフラはなく、スマホの電波も途切れがちな土地で、新任教師にもかかわらず、藁葺き屋根と土壁でできた半屋外の教室で、いきなり50人以上の1年生を教えることになる。
5つの言語が飛び交い、公用語であるフランス語が分かる生徒は1人のみ。それでも、子どもたちを前にしたら、どんな重圧も困難も忘れる、とサンドリーヌは粘り強く取り組む。
授業に付いて行けず、みんなと離れて1人でお昼を食べるイヴには優しく声を掛け、勉強の重要さを語り聞かせ、子どもたち夜も勉強できるよう街でソーラーパネルを購入して家の玄関前に電灯を設置し、やってきた子どもたちに夜も勉強を教える。
そうした取り組みが功を奏して、初めはみんなに遅れていたイヴは、数字の1から15までをフランス語で言えるようになり、1年の終了時には成績上位で表彰されるまでに成長する。
エンドロールでは、サンドリーヌが教師3年目を迎え、全員を中学校に合格させることを目標に引き続き取り組んでいることが明かされています。

 

次に、タスリマの物語。

モンスーンのため、年に半年間は土地が水没してしまうバングラデシュ北東部で、学校に行けない子どもたちのために船を教室にしたボートスクールで子どもたちを迎えに行き、子どもたちに勉強を教える22歳のタスリマ・アクテル。
かつて水害で家を失い、親に頼み込んで学校に通い、教師となったタスリマは、私の使命は教育だけでなく良き道に導くこと、と語り、女性も男性と同じ権利を持つべきとの考えから、学校では、勉強を教えるだけでなく、子どもたちが児童婚の犠牲にならないよう、児童婚が禁止されており罰則が科されることを教え、家庭では弟や妹、甥や姪の勉強をサポートする。
ボートスクールの生徒の1人、小学5年生のヤスミンは、中学校に行きたいと思っているが、家にはお金がない、女性に学問は要らない、娘には早く結婚をしてほしいという考えの母親は、ヤスミンを姉の結婚相手に会わせるために学校から早退させようしたり、姉の結婚式の準備のために学校を休ませたりする。
タスリマは、学ぶことでお金が稼げることを教え、母親を説得しようと何度も家を訪問し、話し合いを重ねる。ヤスミンが中学校に合格し、タスリマはお祝いに中学校の制服を贈る。ヤスミンは中学校に通い始める。
エンドロールでは、ヤスミンが何とか2年生になったことが明かされています。

 

そして、スヴェトラーナの物語。

2人の娘を寄宿学校に入れ、シベリアの広大な雪原を移動しながら、広大なシベリアに暮らす遊牧民族エヴェンキ族の子どもたちを教えるスヴェトラーナ・ヴァシレヴァ。
ある遊牧民一家のキャンプ地に到着したスヴェトラーナは、まずテントを張って教室の準備をする。
自身もエヴェンキ族で、子供たちが自信を持てるよう導いていきたいと語るスヴェトラーナは、4人の子どもたちに、街の学校に行っても大丈夫なように読み書きを教え、エヴェンキ族のアイデンティティを伝えようと、エヴェンキ族の伝統や言語、トナカイの捕まえ方を実地で教える。
約10日間の授業を終えたスヴェトラーナは、テントなどを片付けてトナカイのソリに乗せ、次のキャンプ地へ向かっていく。
エンドロールでは、教えた4人の子どものうち最年長のマトヴェイが、街の学校に進んだことが明かされています。

 

それぞれ、厳しい環境に置かれながら、子どもたちの将来を思い、学ぶことの重要さを伝えようとする先生たちの姿が心を打つドキュメンタリーでした。2年ちょっと前に観た「ブータン 山の教室」(2021年4月3日(土)公開)を思い出しました。

なお、本編中では、タスリマが人道支援団体のBRACが主催するボートスクールに派遣されていることや、スヴェトラーナがエヴェンキ族とユネスコの協力で設立されたエヴェンキ・セカラン協会に所属していることは紹介されていません。そのため、へき地とはいえ、公的な義務教育の学校らしいサンドリーヌはともかく、通常の義務教育機関ではないと思われる学校で教える他の2人は、どうやって生活の糧を手に入れているのだろう、学校の運営はどうして成り立っているのだろう、と観ている間はちょっと疑問でした。後になって公式サイトで前述のようなそれぞれの紹介を読んで謎が解けましたが、そのあたりの説明も本編中でなされていると、より親切だったと思います。