鷺の停車場

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辻村深月「かがみの孤城」(上)

辻村深月さんの小説「かがみの孤城」を読みました。

本作を原作にした映画を昨年末に観に行って、原作も読んでみることにしました。

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本作は、2017年5月に単行本として刊行され、2018年に本屋大賞を史上最多得票数で受賞した作品。2021年3月に上下巻に分けて文庫本化されています。

文庫本の背表紙には、次のような紹介文が掲載されています。 

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学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような建物。そこにはオオカミの面をつけた少女が待ち受け、こころを含め、似た境遇の7人が集められていた。城に隠された鍵を探すことで願いが叶えられるという。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。本屋大賞受賞作。

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主な登場人物は、

  • こころ(安西 こころ):主人公の中学1年生。おとなしく内気な性格。

  • アキ(井上 晶子):中学3年生。明るく、快活で、背が高い。

  • 喜多嶋先生(喜多嶋 晶子):こころを見守るフリースクール「心の教室」の先生。

  • スバル(長久 昴):中学3年生。背が高く、色白で、優しい男の子。

  • マサムネ(政宗 青澄):中学2年生。生意気で理屈っぽい性格で口が悪い男の子。
  • フウカ(長谷川 風歌):中学2年生。眼鏡をかけていて、ピアノが上手な女の子。

  • リオン(水守 理音):中学1年生。明るく気さくで、穏やかな性格の男の子。

  • ウレシノ(嬉野 遥):中学1年生。小太りで食べることが好きな男の子。

  • オオカミさま:狼の仮面をつけた少女で、城の案内人。人形が着るようなかわいいドレスを着ているが、口調は上から目線。

  • ミオ(水守 実生):リオンの姉で、リオンが6歳の時に亡くなった。

  • こころの母:初めはこころの本心が分からないが、理解しようと努め、こころを支えるようになっていく。

  • 伊田先生:こころの担任教師。

  • 東条 萌:こころと家が近い中学校での唯一の友達。

  • 真田 美織:こころの同級生で、こころをいじめる。

というあたり。

 

本編は学期ごとに括られた3部で構成され、さらに5月から3月までの各月ごと、閉城、エピローグの計13節に分かれていますが、上巻には、5月から8月までを描いた第一部と、9月から12月までを描いた第二部が収載されています。各節の概要・主なあらすじは次のようなもの。

 

第一部 様子見の一学期

五月

雪科第五中学校の1年生のこころ。同じクラスの真田美織を中心とするいじめに遭い、不登校になっていた。母親にフリースクールの「心の教室」に連れていかれ、通うことになるが、初日の朝に腹痛を起こし、行くことができない。
部屋に閉じこもり、閉塞感と焦燥感を募らせていたこころだったが、突然、部屋の大きな姿見が光り、その向こうの城に招かれるが、恐怖のあまり逃げ出してしまう。
しかし、「平凡なお前の願いをなんでも一つ叶えてやる」という狼の面を被った少女の言葉が引っかかったこころは、翌日、再び光った鏡の中に入る。すると、自分のほかに6人の中学生くらいの子どもたちがいた。
そこにやってきた「オオカミさま」と呼ばれる狼の面を被った少女は、城の奥に「願いの部屋」があり、入れるのは一人だけであること、その部屋に入る鍵が3月30日までに見つけなければ、鍵は消滅して城に入れなくなること、城は毎日朝9時から夕方5時まで開いているが、5時までに家に帰らないと狼に食べられてしまうことなど、城のルールなどを説明する。
説明の後、7人は互いに自己紹介し、その日は解散する。

六月

スクールには一度も行けないこころは、真田美織がこの世から消えますように、という叶えたい願いがあった。
誰かが鍵を見つけてしまったのではないかと心配になって久しぶりに城に行ったこころは、リビングのような部屋でテレビゲームをしていたマサムネとスバルと話し、親近感を抱き始める。
翌日も城にいったこころは、アキやフウカ、ウレシノとも顔を合わせる。夕方になって城の中を見て回ったこころは、厨房の暖炉の内側に「×」のマークが描かれているのを見つける。

七月

こころに好意を向ける恋愛至上主義のウレシノのせいで、城の居心地が悪くなっていたこころ。6日ぶりに城に行くと、ウレシノの恋の対象はこころからフウカに変わっていた。
アキに誘われて、女子だけで食堂でお茶をしたこころは、自分が学校に行けなくなるきっかけとなった、真田真織たちの自宅襲撃を打ち明ける。偉い、よく耐えた、とのアキの言葉に、こころの目から涙が流れる。

八月

城に来てアキやフウカと会うのが楽しみになったこころは、フウカが誕生日を迎えたことを知って、勇気を振り絞ってプレゼントを買いに家を出るが、気持ちが悪くなり、コンビニで必死の思いでお菓子を買う。
おばあちゃんの家に行ったらしいアキや、夏期講習に行くことになったフウカたちと会う機会が減る中、リオンと顔を合わせる機会が増える。
久しぶりに7人が揃った場で、ウレシノは、二学期からは学校に行くからここには来ないとキレる。その話の流れで、リオンだけがハワイの寄宿舎付きの学校に入っており、学校に行っていることが判明する。

第二部 気づきの二学期

九月

夏休みが終わり、ウレシノはしばらく城に来なかったが、9月中旬になって、傷だらけで姿を現す。マサムネたちはウレシノを受け入れ、ウレシノはこれまでの経緯をみんなに話す。
そうしたある日、城から家に帰ってきたこころに、スクールの喜多嶋先生が訪ねてくる。こころは、こころが学校に行けないのは絶対こころのせいじゃないと言った真意を尋ねると、こころちゃんは毎日闘っている、と答え、また来てもいいかな、と言って帰っていく。こころは喜多嶋先生に親しみを覚えていた。

十月

10月になってすぐ、全員が揃った場で、アキとマサムネは、自分たちが真剣に鍵を探していることを明かし、協力して鍵探しをしようと提案する。こころを含め、みんなはそれに同意し、リオンの提案で、鍵を見つけても3月いっぱいまで城を使える状態のままにするため、3月まで使わないことを約束する。そこに現れたオオカミさまは、誰かの願いが叶えられた時点で、みんな城での記憶を失うと告げ、7人は戸惑う。
しばらく城に来なかったアキは、11月初め、制服姿で青ざめた表情で城に戻ってくる。その制服から、こころと同じ雪科第五中学校であることが判明する。

十一月

そして、リオン以外の6人はみんな同じ雪科第五中学校であること、リオンも雪科第五中学校に通うはずだったことがわかる。

十二月

12月に入り、リオンの発案で25日にクリスマスパーティーをすることになる。ウレシノやマサムネも喜多嶋先生を知っていることに、こころは新鮮な嬉しさを感じる。
クリスマスが近づいたころ、中学校の担任の伊田先生が、真田とこころがケンカしたんじゃないか、そのことで話があるとやってくることになる。こころはその前日、お母さんに真実を打ち明け、お母さんは、真田の肩を持つ伊田に妥協せずに接し、伊田を追い返す。
お母さんは、転校したいなら調べてみる、通えるところがあるか一緒に探そう、とこことに話す。
城のクリスマスパーティに、リオンはケーキを持って現れ、オオカミさまにも、ケーキと持ってきた小さな包みを渡す。ケーキなどを食べ終わり、城が閉まる直前になって、マサムネは、父親が転校させようとしているのを止めるため、三学期に一日だけでいいから学校に来てくれないか、と相談し、みんなは1月10日に学校に行くことを約束する。

(ここまで)

 

第二部までの部分では、まだ、伏線が張られているという感じで、城や願いの鍵をめぐる真相はまだ秘められたままです。

下巻には、1月以降を描いた「第三部 おわかれの三学期」が収載されています。こちらも引き続き読んでみようと思います。