鷺の停車場

映画、本、グルメ、クラシック音楽、日常のできごとなどを気ままに書いています

映画「アナログ」

週末の朝、MOVIX柏の葉に行きました。


9時半ごろ、朝イチの上映回の多くは既に始まっているせいか、ロビーのお客さんは少なめでした。


この日の上映スケジュールの一部。この日は、「月イチ歌舞伎」の2作品を含めて、30作品・33種類の上映が行われていました。かなり上映作品が多いです。

観るのは「アナログ」(10月6日(金)公開)。この日は既に公開3週目に入っていましたが、上映館は全国312館と大規模です。


上映は103+2席のシアター6。お客さんは6~7人ほど。興行収入ランキングではまだトップ10に入っていたので、もっと多くのお客さんが入っているかと思っていたのですが、意外に少なかったです。


(チラシの表裏)


(その前に配布されていた別バージョンのチラシ)

ビートたけしの同名小説を原作に、実写映画化した作品で、主要スタッフは、監督:タカハタ秀太、脚本:港岳彦など。

 

公式サイトのストーリーによれば、

 

手作り模型や手描きのイラストにこだわるデザイナーの悟。
携帯を持たない謎めいた女性、みゆき。
茶店「ピアノ」で偶然出会い、連絡先を交換せずに「毎週木曜日に、同じ場所で会う」と約束する。
二人で積み重ねるかけがえのない時間。悟はみゆきの素性を何も知らぬまま、プロポーズすることを決意。
しかし当日、彼女は現れなかった。その翌週も、翌月も……。
なぜみゆきは突然姿を消したのか。彼女が隠していた過去、そして秘められた想いとは。

ふたりだけの“特別な木曜日”は、再び訪れるのか——。

“大切な人に会える”その喜びを改めて知った今だからこそ。
愛の原点を描いたラブストーリー。

 

・・・というあらすじ。

 

主な登場人物・キャストは、

  • 水島 悟【二宮 和也】:手作り模型や手描きのイラストにこだわるデザイナー。

  • 美春 みゆき【波瑠】:携帯を持たない謎めいた女性。

  • 高木 淳一【桐谷 健太】:悟の小学生以来の友人。

  • 山下 良雄【浜野 謙太】:悟の小学生以来の友人。

  • 島田 紘也【藤原丈一郎 (なにわ男子) 】:悟の大阪支社の後輩。

  • 岩本 修三【鈴木 浩介】:悟の上司の部長。

  • 香津美【板谷 由夏】:みゆきの姉。

  • 水島 玲子【高橋 惠子】:悟の母。入院している。

  • 田宮【リリー・フランキー】:悟とみゆきが出会う喫茶店「ピアノ」のマスター。

  • 浅井 陽子【坂井 真紀】:悟の母・玲子の担当医。

  • 椎名 順子【筒井 真理子】:悟のクライアントのレストラン経営者。

  • 高橋 俊和【宮川 大輔】:島田の上司。

  • 山下 香織【佐津川 愛美】:山下の妻。音楽関係の会社に勤めている。

など。

 

予想どおりの純愛ストーリーで、なかなかいい作品でした。メールやSNSなど、スマホで連絡を取り合うのが当たり前になっている時代に、連絡先を交換せずに毎週木曜日の夕方に喫茶店で会う、というある意味で古風な設定が、逆に新鮮に感じられ、優しく心に響きました。ヒロインを演じた波瑠の清楚さを感じさせる佇まいも、とても魅力的でした。

 

ここから先はネタバレですが、自分の備忘を兼ねて、より詳しいあらすじを記してみます。(細部は多少の記憶違いがあるだろうと思います)

 

デザイン会社に勤める水島悟。会社での会議の最中に電話が入り、友人の高木淳一、山下良雄と飲みに行くことになり、広尾の喫茶店「ピアノ」で待ち合わせすることになる。仕事を終えて「ピアノ」に行った悟は、コーヒーを頼んで空いていた長椅子に座ると、1冊の雑誌が置いてあった。その雑誌には悟がデザインを担当したお店が紹介されていた。すると女性が、その雑誌は自分のものなのだと声をかけてきた。悟は自分が手掛けたお店が載っていたのでつい見てしまったと謝った。マスターの田宮からこの店も悟がデザインしたのだと聞くと、女性は、ト音記号に似た窓の金具や、トイレのトイレットペーパーホルダーのカバーなどがいいと褒める。悟は女性が持っていたハンドバッグを褒めると、それは母親の形見で、母親がヨーロッパに行ったときにオーダーメイドで作ったものだと話す。女性が店を出ていった後、マスターに聞くと、その女性はよくお店にやってくるのだという。高木と山下がやってきて一緒に飲みに行った悟だが、話は上の空でその女性を思い浮かべる。

その女性に会えるのではないかと再び「ピアノ」に向かい、店内を覗くと、その女性が座っていた。悟は近くのコンビニで剃刀を買い、顔を洗ってからお店に入り、声を掛けて、同じテーブルに座る。悟が自分の名前を名乗ると、その女性は、美春みゆきと名乗る。何か食べようという話になり、ポテトを食べに別のお店に行った別れ際、また会えますか、と悟が聞くと、携帯は持っていないが、木曜日の同じくらいの時間ならピアノに来ている、互いに会いたい気持ちがあれば会えますよ、とみゆきは言い、木曜日に「ピアノ」で会うことになる。

仕事が休みの日には、悟は入院している母親を見舞いに訪れていた。母親は、悟の様子がそれまでと違うことに気づき、悟が気になっている女性がいることを明かすと、その女性と結婚しなさい、と勧める。

次に悟が「ピアノ」に行くと、悟とみゆきの様子を見ようと、高木と山下が店に来ていた。悟は帰るよう促すが、その前にみゆきがお店に入ってくる。2人が話している間に、高木と山下はコソコソと店を出て行き、悟は焼き鳥を食べようとみゆきを誘って、立ち食いの焼鳥店に行くと、高木と山下がおり、4人で飲むことになる。みゆきは母親によく落語に連れていってもらったと話す。その帰り、落語以外に何が好きなのか悟が訊ねると、みゆきはクラシック音楽と答え、同じことを聞かれた悟は、野球や海と答える。別れ際、みゆきは今日は楽しかった、と言って悟にハグをして、タクシーに乗り込む。

翌週、悟は新築するホテルの仕事で大阪に出張することになる。木曜の夕方までに帰ろうと仕事に打ち込むが、アクシデントもあり、結局みゆきに会うことができなかった。

その翌週、「ピアノ」でみゆきに会った悟は、会社でチケットをもらったクラシックコンサートに誘う。タクシーに乗って会場に向かい、コンサートが始まるが、曲が進むにつれ、みゆきの目からは涙がこぼれ落ち、ついには、演奏途中で席を立ってホールを出て行く。それを追ってホールを出た悟に、みゆきは頭を下げて謝り、去っていく。

それから2週間、みゆきは「ピアノ」にやってこなかった。

その翌週、再びホテルの仕事で大阪に出張していた悟のもとに、母親が入院している病院から電話が入る。急ぎ東京に戻って母親の病室に向かった悟だが、母親は既に息を引き取っていた。悟は自宅で近親者だけの通夜を営む。その日は木曜日だった。

その翌週、久しぶりに「ピアノ」で会ったみゆきは、海に行こうと悟を誘う。波打ち際で、みゆきは夜の海が好きと話し、悟を優しく抱きしめる。

それからは毎週木曜日に会うことができた。休みの木曜日には、車で海に行く。砂浜に落ちていた凧で遊んだ後、悟は凧糸を使って糸電話を作る。糸電話で、悟はみゆきさんと一緒に生きていきたいと思いを告白すると、みゆきは何かを言うが、波の音で悟には聞こえない。

上司の高橋から呼び出された悟は、ホテルが完成するまで1,2年大阪に常駐するようにという話が上がり、悟はみゆきに結婚を申し込む決意をした。

悟はみゆきに結婚を申し込むことを決心し、高木と山下に付き合ってもらって指輪を買い、迎えた次の木曜日、「ピアノ」で悟がソワソワしながら待っていると、みゆきがやって来るが、姉の帰りが遅くなるので自分が夕食を作らなきゃいけない、それだけを伝えに来たと話す。みゆきを見送る悟が、来週の木曜日に、話があると言うと、みゆきも、私もしておきたい話があると言う。

しかし、その翌週、悟は「ピアノ」でみゆきを待つが、みゆきはやってこなかった。次の週も、その次の週も。そのうち、悟は「ピアノ」に行くのをやめてしまっていた。

1年後、悟は大阪に転勤していた。その頃、山下は、妻が会社から持って帰ってきたCDの中に、みゆきと思われる女性がヴァイオリンを弾く姿がジャケットとなった「ナオミ・チューリング よみがえる幻の名演」というCDがあるのを見つける。

そして、山下は高木と大阪の悟を訪れる。山下は、ナオミ・チューリングは旧姓を古田奈緒美といい、ピアニストのミハエル・チューリングと結婚していたが、体が弱かったミハエルが亡くなった後、日本に帰国し、現在は引退していること、クラシック界ではとても有名なため、美春みゆきと名乗り、小さな輸入商社で働いていること、悟がプロポーズしようと思っていたその日に、おそらく「ピアノ」に向かうタクシーに乗っているところで、高齢者が運転する乗用車に追突されて重傷を負ったことがニュースで報じられていたことなどを説明する。悟は急な話に、それを信じることができない。

悟は、東京に戻り、みゆきの姉の香津美と会う。香津美は、みゆきは脳の障害と下半身の麻痺だと話す。難色を示す香津美に懸命に頭を下げ、悟はリハビリ施設でみゆきに会わせてもらい、声を掛けるが、意識はあるというものの、全く反応を示さないみゆきの姿に涙を流す。

そして、悟が「ピアノ」でコーヒーを飲んでいると、香津美が「ピアノ」にやってくる。香津美は、部屋を整理したら出てきたみゆきの日記を、読んだら忘れる、という約束で悟に見せる。そこには、みゆきも木曜日を心待ちにしていたことや、海に行ったとき、みゆきも悟と一緒に生きていきたいと言っていたことなど、みゆきの悟への思いが綴られていた。香津美は、みゆきが、悟と出会ってから6年ぶりにゆきが再びバイオリンを弾き始めたこと、最近になって携帯を買ったこと、それは木曜日以外にも悟に会いたかったからだろうことを話す。

悟は、香津美に思いを話し、少しだけでいいので毎日みゆきに会わせてほしいとお願いする。

1年後、会社から独立し、海の近くに自分のデザイン事務所を立ち上げていた悟は、前の会社から請け負った仕事の打合せをWeb会議でこなしながら、車椅子に座ったみゆきを散歩に連れていく日々を送っていた。そんなある日、みゆきの車椅子を押して海のそばに連れてきた悟がみゆきに語り掛けると、みゆきは初めて手を動かして、車椅子に沿えていた悟の手に自分の手を重ね、何か口を動かして悟に伝えようとする。それは「今日は木曜日?」という問いかけだった。悟はうなずき、「これから毎日木曜日だよ」と語り掛けるのだった。

(ここまで)

 

主人公が一目惚れする若い女性が携帯を持っていないところなど、最初は奇異な設定だと思う部分もありましたが、上に書いたように、そうなった事情をうかがわせる要素も描かれており、序盤で感じた抱いた違和感が観進めていくうちに消えていくところなども、うまく構成されている作品だと思いました。