鷺の停車場

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劇場アニメ「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章」

平日の夕方、TOHOシネマズ流山おおたかの森に行きました。


平日の17時半ごろ、ロビーのお客さんはまばらでした。


この日のこの後の上映作品。既に上映を終えた上映回を含めると、この日は合計23作品・26種類の上映が行われていました。

観るのは、「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章」(3月22日(金)公開)。全国222館とそこそこ大規模での公開です。


上映は、232+2席のスクリーン2。お客さんは20人くらいでした。


(チラシの表裏)

2014年から2022年にかけて、「ビックコミックススピリッツ」に連載された、浅野にいお作のSFマンガ「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」を原作に、アニメ映画化された作品。前章と後章の2つに分けての公開で、本作はその前編。主要スタッフは、アニメーションディレクター:黒川智之、シリーズ構成・脚本:吉田玲子、キャラクターデザイン・総作画監督:伊東伸高、アニメーション制作:Production +h.など。

なお、上のチラシ裏面のとおり、後章は当初4月19日(金)公開とアナウンスされていましたが、本作の公開と同時期に、「よりお客様のご期待に応えられる作品をお届けするため」として、公開日が5月24日(金)に延期されています。

 

主な登場人物・キャストは、次のような感じです。

  • 小山 門出【幾田 りら】:下蛸井戸高校の3年生。マンガ「イソベやん」が大好き。渡良瀬に恋している。

  • 中川 凰蘭(おんたん)【あの】:門出の親友。オンラインのバトルゲームにハマっている。

  • 栗原 キホ【種崎 敦美】:門出の仲良しグループの1人。小比類巻に恋している。

  • 出元 亜衣【島袋 美由利】:門出の仲良しグループの1人。家は「8.31」で住めなくなり、両親は補助金目当てで避難住宅に暮らしているため、5人の弟とともに親戚の家に身を寄せている。

  • 平間 凛【大木 咲絵子】:門出の仲良しグループの1人。BL好き。

  • 大葉 圭太【入野 自由】:8.31で行方不明になったアイドル「LOVE♡無限大」のメンバー。

  • 小比類巻 健一【内山 昂輝】:門出の同級生で、キホの恋の相手。

  • 渡良瀬【坂 泰斗】:高校の門出の担任教師。

  • 竹本 ふたば【和氣 あず未】:東京の大学に進学するため、石川県から上京する。

  • 田井沼 マコト【白石 涼子】:ふたばの中学の同級生。ふたばが乗る飛行機に偶然同乗する。

  • イソベやん【杉田 智和】:マンガ「イソベやん」の主人公で、遠い未来からやってきたきのこ人。

  • デベ子【TARAKO】:「イソベやん」の主要登場人物で、イソベやんの内緒道具に頼るだらけた女の子。

  • 中川 ひろし【諏訪部 順一】:凰蘭の兄。高校生の頃は成績優秀な美男子だったが、現在は肥満。門出が小学生のときに結婚の約束をしたが、現在の門出からは、デブは無理、と拒否される。

  • 門出の父【津田 健次郎】:門出の父。編集者をしていたが、現在は行方不明。

  • 門出の母【柚木 涼香】:門出の母。編集者をしている。

  • 高畠【佐藤 せつじ】:真奈美と再婚予定の好青年。

  • 鳳蘭の父【伊原 正明】:おんたん、ひろしの父。

  • 須丸 光【大西 沙織】:S.E.S社の広報。

  • 三浦【河西 健吾】:S.E.S社に取材する若手ジャーナリスト。

 

公式サイトなどで紹介されているストーリーは、


東京でハイテンション女子高生ライフを送る、小山門出(こやま・かどで)と“おんたん”こと中川凰蘭(なかがわ・おうらん)
学校や受験勉強に追われつつも毎晩オンラインゲームで盛り上がる2人が暮らす街の上空には、3年前の8月31日、突如宇宙から出現し未曽有の事態を引き起こした巨大な〈母艦〉が浮かんでいた。
非日常が日常に溶け込んでしまったある夜、仲良しクラスメイトに悲劇が起こる。
衝撃と哀しみに打ちのめされる二人。
そんな中、凰蘭は不思議な少年に出会い「君は誰?」と問いかけられる。
その途端、凰蘭の脳裏に、すっかり忘れていた門出との過去が一瞬にして蘇る――!

・・・というもの。

 

独特な世界観の魅力的な作品。冒頭、未確認飛行物体の登場という緊迫感あふれるシーンで始まり、この作品世界にグッと引き込まれ、原作未読だったこともあり、予想外の目まぐるしい展開に、2時間の長さが全く気になりませんでした。次々に張られていく伏線に、続く後章でどうなっていくのか、とても気になりました。

原作コミックは、単行本12巻とけっこうなボリュームな作品のようですが、この前章を観る限りでは、ボリュームある原作の要所を掴んでうまく組み上げている印象を受けました。優れたアニメ作品の脚本を数多く担当している吉田玲子さんの巧みさあってのことでしょう。

主人公2人の声も出色。幾田りら、あの、とプロの声優ではない2人ですが、語り口や声色などが、それぞれのキャラクターにとても合っていて、非声優が演じた時によく批判されるような演技の拙さは全く感じさせず、2人のキャラクターの対比もうまく付いていました。

エンドロールで流れる前章の主題歌「絶絶絶絶対聖域」(ano feat. 幾田りら)も、美しい歌声とシャウトが入り混じり、日常が崩壊する予兆を感じさせる本編エンディングの雰囲気にぴったり合っていて、本編の作品世界をうまく描いた楽曲だと思いました。

なお、普通の女子高生風に描かれている門出が、小学生時代にダークヒーローのようなことをして最後は自殺を図るという後半に出てくるエピソードは、それならこんなほんわかした高校生にならないようなあ、と違和感を禁じ得ませんでしたが、その明らかなギャップは、後章で回収される何かの伏線なのでしょう。後章を楽しみに待ちたいと思います。

 

以下はネタバレになりますが、備忘も兼ねて、より詳しめにあらすじを記してみます。(本編中で描かれた順番を含め、多少の記憶違いはあるだろうと思います。)

 

3年前の8月31日、千葉県沖に突然、未確認の巨大な球のような飛行物体が出現し、巨大な円盤型の飛行物体を生み出す。その円盤型の飛行物体、通称「母艦」は、東京に向かって飛行し、出撃した米軍の爆撃機は新型爆弾「A」を投下したことで、東京は甚大な被害を受け、5,000人を超える被害者が出る。後に「8.31」と呼ばれるようになったこの事態によって、門出が夢中になっていたアイドルグループ「LOVE♡無限大」のメンバー大葉圭太は行方不明となり、雑誌の編集者でその日休日で家にいた門出の父親も、電話が入ると仕事に行くと言って家を出て、それきり戻ってこなかった。

その3年後の現在、「母艦」はゆっくり東京上空を回遊するにとどまり、人々は「母艦」が上空にとどまる中、日常を取り戻していた。

東京の下蛸井戸高校の3年生の小山門出は、担任の渡良瀬に恋し、「おんたん」と呼ぶ親友の中川鳳蘭と、栗原キホ、出元亜衣、平間凛の仲良しグループと過ごし、家では凰蘭がハマっているオンラインバトルゲームに2人で興じる日々を送っていた。

編集者である母親・小山真奈美は、「A線」による健康被害を訴えて、ゴーグルとマスクを着けて過ごし、市民活動に傾倒していた。門出は、経済的状況から大学進学を諦めていたが、真奈美と再婚予定の好青年・高畠は、門出に大学進学を勧める。

栗原キホは同級生の小比類巻と付き合い始め、おんたんはそれに呆れながらも5人の日常は流れていく。

ある日の夜、「母艦」から発進した小型船が世田谷区に落下する。ニュースでは小型船は無人だったと報道されるが、防衛省では、小型船に乗っていた人間を米軍が秘密裏に回収したことを把握していた。

その翌日、門出は渡良瀬に大学に進学することを伝え、本を借りに行くという名目で渡良瀬の家に行くことになる。おんたんは小型船の墜落現場を見に行こうと門出たちを誘うが、結局1人で行くことになる。

渡良瀬の家に押しかけた門出。渡良瀬が付けたテレビに小型船の墜落現場のニュースの現場映像が映ると、リポーターの脇に野次馬のおんたんの姿があった。そのジェスチャーから、メッセージを感じ取った門出は、渡良瀬に自分の恋心を伝えるが、渡良瀬はそれをいなす。一方、凰蘭はその現場近くの茂みに落ちていた宇宙船の一部と思われるパーツを発見し、持ち帰る。

その頃、ロボットの開発などを行う企業・S.E.S社は小型船を自動で迎撃する戦闘兵器「歩仁」を開発し、注目を集める。ジャーナリストの三浦がS.E.S社を取材に訪れ、広報の須丸光が対応するが、2人はかつての同級生だった。三浦は歩仁について何か隠している秘密があるのではないかと探りを入れるが、須丸は広報の私は何も知らないと答える。

年末が近づいた頃、キホは、ネットの情報を信じて東京脱出を執拗に促す小比類巻に別れを告げる。破局を悲しむキホを、おんたんは優しく抱きしめる。

クリスマスイブの日、門出たち仲良しグループは、亜衣が5人の弟と暮らす親戚の家でクリスマスパーティーを開く。その頃、「母艦」からは、巨大な中型船が飛び立ち、「歩仁」による迎撃命令が下り、渋谷に展開した「歩仁」がレーザーを発射し、破壊された中型船はゆっくりと墜落していき、井の頭公園の付近に落下する。

一方、クリスマスパーティーが終わり、それぞれ帰路に就いた門出たちだったが、翌日、門出は、テレビのニュースで中型船の墜落による犠牲者3人のうちの1人がキホだったことを知る。学校で、亜衣、凛と門出は悲しみに暮れるが、1人遅れて登校してきたおんたんは、それを知らないかのように、いつものようにハイテンションに振る舞う。痺れを切らした門出がキホが死んだことを告げようとすると、先を歩くおんたんは、背中を向けたまま、知ってるよ!と叫ぶ。

街では自衛隊によって落下した中型船に搭乗していた「侵略者」の掃討が開始される。隊員は、ハンバーガー店の中に隠れていた2人の「侵略者」を発見し、その1人を射殺するが、もう1人が言語を喋るだけでなく仲間の死に嘆き悲しむのを目にする。

時は流れ、門出たちの卒業式の日がやってくる。門出は渡良瀬の連絡先を手に入れ、キホのことを想いながら学校での日々を思い返す。校舎の屋上で、中型船の墜落現場で拾ったパーツを手に「母艦」に語りかけるおんたんの前に、同じパーツを手にした大葉が現れる。おんたんが、どこから来たのか、と尋ねると、大葉はおんたんに同じ質問を返し、それをきっかけに、おんたんは自身の中の、ある記憶を思い出す。

小学校時代、引っ込み思案だったおんたんは、同じクラスの中でも浮いた存在で、男の子たちからは「デーモン」と呼ばれてからかわれていた門出と、海辺の町で行われた塾の夏合宿で偶然一緒だったのをきっかけに仲良くなる。
合宿の夜、宇宙船を目撃した2人が宿を抜け出し海岸に行くと、宇宙人が子どもたちに襲われているのを見つける。宇宙人を助け出した2人は門出の家へと連れ帰り、かくまうことにする。
高い文明レベルを持つ宇宙人は、イヤホンのように耳に当てる翻訳装置を門出とおんたんに渡すと、自分たちは侵略者でもあり幸福をもたらすものでもあると語り、自分が地球について報告する調査員であることを話す。
それを聞いた門出は、侵略されないよう、宇宙人が乗ってきた宇宙船の故障が終わるまでの間に、できるだけ人助けをして評価を良くしようと考える。門出は、宇宙人から手に入れた空間を捻じ曲げて物体を操作するペンほどの大きさの道具を使って人助けをしようと必死になるが、開かずの踏切で炎天下に待たされる妊婦を早く渡らせてあげようとして線路を歪めたことで、電車の脱線事故を起こし死傷者を出してしまう。ショックを受けた門出は、次は失敗しない、と自身の歪んだ正義心に歯止めが効かなくなり、汚職事件を起こした大臣を入院中の病室に潜入して襲ったり、ネットで悪人の情報を募って次々と襲うなど、その行動はエスカレートしていく。
それに気づいたおんたんは、誰だって少しくらい悪いことはする、と門出を止めようとするが、門出は、全人類を殺害することになったとしてもおんたんだけは特別、と語るが、おんたんは門出を殴り、喧嘩別れする。
その翌日から、門出は学校に現れなくなってしまう。心配したおんたんが門出の家を訪ねると、門出は自身が多くの人を殺したことにショックを受けていた。門出は、マンションの階段を上りながらおんたんとの日々を振り返り、手すりを乗り越えて飛び降りる。おんたんは門出を助けようと必死に駆け寄るが、手は届かない。

蘇った記憶に困惑するおんたんは、気が付くと目の前から大葉が消えていることに驚く。その様子を遠目に見ていた大葉は、シフター、とつぶやく。

高校を卒業して制服の日々が終わった門出たち仲良しグループは、私服を買いに出かけるが、行くことにした門出は、電車の中で小比類巻と出会う。キホの死によってよりネットの陰謀論に傾倒した様子の小比類巻だったが、やることがあるから東京にいる残ることにしたと語る。門出はその以前とは変わった様子に恐怖を覚える。

一方、石川県の高校を卒業した竹本ふたばは、東京の大学への進学が決まり、東京行きの飛行機に乗る。窓際の座席に座ったふたばは、隣に座ったのが女装した田井沼マコトであることに気が付いて驚く。可愛い恰好をしているときが一番生き生きすると語るマコトは、東京なら分かってくれる人がいるのではないか、と上京の動機をふたばに話す。
飛行機が東京に近づいたとき、「母艦」から中型船と大量の小型船が飛び出す。自衛隊は新たに開発されたS.E.S社製の兵器「直仁」による迎撃を決行し、攻撃を受けた中型船からは大量の「侵略者」が落下する。ふたばとマコトは、飛行機の主翼にもぶつかるほど大量の「侵略者」が落下する様子を飛行機の窓から目の当たりにする。

その様子はニュースでも報じられる。小比類巻は武器を手にして街に向かい、門出やおんたんは街頭ビジョンで流れるニュースを眺めるのだった。
人類終了まであと半年―――。

(ここまで)

 

なお、入場者プレゼントをいただきました。


後で調べてみると、公開から4週連続で配布される「『デデデデ』特製ビジュアルカード」の第3弾で、大葉のビジュアルカードでした。