2025年1月から3月までの2025冬クール、4月から6月までの2025春クールの連続2クールで日本テレビで放送が始まった「薬屋のひとりごと」、先に紹介した前半に続き、2月21日(金)から3月28日(金)にかけて放送された第2期第1クールの後半、第31話から第36話までを紹介します。
繰り返しになりますが、2011年10月から小説投稿サイト「小説家になろう」に掲載され、2014年から主婦の友社の「ヒーロー文庫」で文庫本が刊行されている日向夏さんの同名ライトノベルを原作にアニメ化した作品で、2023年10月から2024年3月までの連続2クールで第1期が放送され、本年1月から第2期の放送が始まっています。主要スタッフは、キャラクター原案:しのとうこ、総監督・シリーズ構成:長沼範裕、監督:筆坂明規、副監督:中川航、脚本:柿原優子/千葉美鈴/小川ひとみ、キャラクターデザイン:中谷友紀子、アニメーション制作:TOHO animation STUDIO×OLMなど。オープニングテーマは幾田りら「百花繚乱」、エンディングテーマが平井大「幸せのレシピ」となっています。
公式サイトで紹介されている主要登場人物・キャストのうち、第31話から第36話までのエンドクレジットで名前が出てくるのは、次のとおりです。< >内が、それぞれのキャラクターがエンドクレジットで登場(声優が出演)する放送回です。
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猫猫【悠木 碧】:毒と薬に異常なまでの執着を持つ、花街育ちの薬師。玉葉妃の娘の命を毒から救ったことで、壬氏にその才を見抜かれ、毒見役となる。一度は後宮を解雇されるも、壬氏付きの侍女として再び宮中に戻り、玉葉妃の妊娠判明後は再び翡翠宮で毒見役として仕えている。好奇心と知識欲、そしてほんの少しの正義感から、事件に巻き込まれることもしばしば。<第31~36話>
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壬氏【大塚 剛央/潘 めぐみ(幼少期)】:後宮を管理している宦官。その美貌は、もし女性だったら傾国と言われるほど。後宮で起きるやっかいごと・問題を猫猫に持ち込んでは解決させている。その立場や出生には謎が多く、壬氏の命を狙った事件では、猫猫の機転で一命をとりとめた。最初は猫猫のことを都合のいい駒と考えていたが…?<第31~33・35・36話>※幼少期は第31・33話のみ
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高順【小西 克幸】:マメで気が利き、仕事への信頼も厚い壬氏の補佐役兼、お目付け役。時折幼い言動を見せる壬氏を諫める一方で、特殊な立場にいる壬氏を心配している。各所からの無茶ぶりに振り回される苦労人。<第31~33・35・36話>
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玉葉妃【種﨑 敦美】:最も皇帝の寵愛を受けていると言われている上級妃・四夫人の一人「貴妃」。娘・鈴麗の命を救ってくれた猫猫のことを強く信頼しており、ふたたび懐妊が分かってからは猫猫を毒見役として呼び戻した。聡明で思慮深いが、年相応の好奇心を見せることも。<第32・34・35話>
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小蘭【久野 美咲】:貧しい農村の出身で、親に売られる形で後宮に入った下女。猫猫の数少ない友人の一人。明るく天真爛漫な性格で、噂好き。甘いものが大好きで、よく猫猫からおやつをもらっている。<第31・32話>
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子翠【瀬戸 麻沙美】:おしゃべりで明るい新入りの下女。<第32・34話>
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李白【赤羽根 健治】:鍛え上げられた肉体を持つ、猫猫曰く出世株の若い武官。気さくでまっすぐな性格。緑青館の三姫である白鈴に惚れこみ、いつか自分の力で身請けをしたいという一途な想いを持っている。<第35・36話>
以上の主要登場人物のほか、第31話から第36話までに登場する個別に名前などが付けられているキャラクターとして、次のような人物がいます。< >内がそれぞれのキャラクターが登場(声優が出演)する放送回です。
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皇帝【遠藤 大智】:現帝。<第31・32話>
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女帝【定岡 小百合】:先帝の母親。<第31話>
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老宦官【安原 義人】:「選択の廟」を管理している老宦官で、手習い所の講師も務める。<第31・35話>
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安氏【能登 麻美子】:先帝の后で現帝の母親。<第32・33・35話>
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紅娘(ホンニャン)【豊口 めぐみ】:玉葉妃の侍女頭。<第32・34話>
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桜花(インファ)【引坂 理絵】:玉葉妃の侍女。<第32・34・35話>
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貴園(グイエン)【田中 貴子】:玉葉妃の侍女。<第32話>
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愛藍(アイラン)【石井 未紗】:玉葉妃の侍女。<第32・34話>
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安氏の侍女【幸田 夏穂】:安氏の侍女。<第32・33話>
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尚服の下女【森 風子/荻野 佳奈】:猫猫が子翠を探し出すために聞き込みをした下女。<第32話>
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水蓮(スイレン)【土井 美加/甲斐田 裕子(若年期)】:壬氏の侍女。<第33・35話>※若年期は第33話のみ
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安氏の異母姉【岡村 明香】:先帝の時代に中級妃として後宮に入った安氏の異母姉。<第33話>
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幼い皇帝【後藤 恵里菜】:安氏が生んで間もない乳児のころの皇帝。<第33話>
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公奴婢【こばたけ まさふみ】:晩年の先帝の身の回りの世話をしていた口がきけない奴隷。<第33話>
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白羽(ハクウ)【佐藤 聡美】:新たに入った玉葉妃の侍女。黒羽・赤羽とは三姉妹。<第34話>
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黒羽(コウウ)【上田 瞳】:新たに入った玉葉妃の侍女。白羽・赤羽とは三姉妹。<第34話>
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赤羽(セキウ)【伊藤 美来】:新たに入った玉葉妃の侍女。白羽・黒羽とは三姉妹。<第34話>
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年嵩の女官【久川 綾】:怪談を主宰した女官。<第34話>
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女官【森 千晃/松本 沙羅】:怪談に参加した女官。<第34話>
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僧侶【後藤 ヒロキ】:子翠が話した怪談に登場した僧侶。<第34話>
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妻【大井 麻利衣】:子翠が話した怪談に登場した妻。<第34話>
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夫【丹羽 正人】:子翠が話した怪談に登場した夫。<第34話>
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馬閃(バセン)【橘 龍丸】:高順の息子の武官で、壬氏とは幼なじみ。<第35・36話>
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男【最上 嗣生/後藤 光祐】:壬氏の暗殺を謀った男たち。<第35話>
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魯袁【こばたけ まさふみ】:狩りに参加していた高官の1人。<第36話>
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男【最上 嗣生】:壬氏の暗殺を謀った男たちの1人。<第36話>
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高官【後藤 光祐/三瓶 雄樹/髙橋 伸也】:宴に参加していた高官。<第36話>
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下官【虎島 貴明/蒔村 拓哉】:狩りに参加していた高官の部下たち。<第36話>
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妓女【山本 悠有希】:宴に参加していた妓女。<第36話>
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ナレーション【島本 須美】<第36話>
各話ごとのあらすじは、次のとおりです。< >内が公式サイトのストーリーで紹介されている内容になります。
第31話 選択の廟
<手習い所に通う小蘭に付き添い、猫猫は講師である老宦官のもとを訪れる。その部屋の窓から見える古い廟に興味を持つと、老宦官は『この地を治める者は、あの廟を通り抜けないといけない。そして正しい道を選んだ者だけがこの地の長となる』と語る。そんな折、いつものように玉葉妃と帝の毒見をしていた猫猫は、突然帝から付いてくるよう命じられる。同じく呼び出された壬氏と合流し、向かった先は猫猫が見た古い廟-“選択の廟”だった。>
壬氏は、幼い頃に老人と老婆を見かけた時の光景を夢に見て目が覚め、嫌な夢だと思う。後になって、その老人は父で、老婆が祖母、そして、父だと思っていた皇帝が兄だと教えられた壬氏は、猫猫も気づいてくれれば楽でいいのだが、と思うのだった。
猫猫は、手習い所で小蘭たち20人ほどの下女が老宦官の建国の講義を聞いている様子を見学する。講義の後、小蘭に付き添って老宦官のもとを訪ねた猫猫は、目に入った変わった造りの建物が気にかかる。老宦官は、この地にもともと住んでいた民が作った廟で、この国を創った王母は息子に、この地を治める者はあの廟を通り抜け、正しい道を選んだ者だけがこの地の長になると伝え、息子は無事に廟を通り抜けて皇帝になった、この地に遷都したのもあの廟があったからだと話す。
翡翠宮に戻った猫猫は、玉葉妃を訪れていた皇帝から呼び止められ、この後行く「選択の廟」に付いてくるよう命ずる。皇帝は、壬氏と猫猫を連れて、老宦官が管理する「選択の廟」を訪れて挑む。しかし、皇帝は3つの色付きの扉がある部屋で選択を重ねて進んでいくが、正解にはたどりつけず、最後の間には「王の子よ、だが、王母の子ではない」と掲げられていた。なぜ正解にたどり着けなかったのか考える猫猫は、正解を選ぶ方法の可能性に気づき、皇帝にいくつか質問をする。その答えで確信を深めた猫猫は、もう一度通ることができないか頼むが、下女であるために断わられてしまう。
それを聞いた皇帝は、ならば妃に召し上げようか?と言い出すと、動揺した壬氏は、ご冗談を、と反発し、壬氏が連れていくという名目で、もう一度「選択の廟」を通らせてもらうことになる。
扉の色に鍵があるはずだと気づいた猫猫は、「赤き扉を通るべからず」と掲げられた部屋で青い扉を、「茶の扉を通るべからず」と掲げられた部屋で水色の扉を選択して進む。そして、最後の部屋には「汝、赤い扉を選べ」と掲げられていたが、赤い扉はなかった。猫猫が緑の扉を選んで進むと、後宮全体を見渡せる廟の屋上だった。
老宦官は、正しい道を選んだことを祝福し、その昔、王母に選ばれた者は次の王になった、その者はここに立って民に宣誓することが決まりだった、誰もこの道を選ぶことができなかったときは正しき道を選ぶ妃を連れて再度この廟にやってきた、と話す。
皇帝に説明を求められた猫猫は、王母の子である証拠は色の識別ができないことだったこと、色の識別が困難な分、夜目が利くという特性があることなどを説明するのだった。
原作小説では、シリーズ第2巻の「薬屋のひとりごと 3」収載の「十二話 選択の廟」におおむね対応する部分になっています。
第32話 皇太后
<「変な女官が笑いながら虫を捕まえている」。そんな噂が後宮内で広まり、猫猫はあらぬ疑いをかけられてしまう。誤解を解くため、噂の元凶である子翠を探しだし、話を聞いていると、偶然にも診療所へと向かう皇太后・安氏を目撃する。訪問の目的が気になりながらも、しぶしぶ翡翠宮へと戻ると、その日の夕刻になんと皇太后が訪ねてきた。そして、皇太后は猫猫に“私は、先の帝に呪いをかけたのかしら?”と、先帝にまつわる調査を依頼する。>
翡翠宮では、紅娘が、今日からここがあなたの部屋よ、と猫猫を物置小屋に連れていくが、紅娘たちの予想に反して、猫猫は自由に使えることを喜ぶ。桜花から、変な女官が笑いながら虫を捕まえていると噂になっていると聞かされた猫猫はそれを否定するが、桜花たちは猫猫だと誤解する。それは子翠だと思い当たった猫猫は、壬氏から以前もらった手拭いをエサに下女たちから聞き込みをし、北の雑木林に行くと、子翠が虫を捕まえに姿を現した子翠に遭遇する。
すると、診療所に向かう皇太后の安氏を見かける。一緒に隠れてその様子を眺める子翠は、診療所は女帝の権力が強かった時代に皇太后が非公式に作ったもの、宦官や奴隷の制度が廃止になったのも皇太后の口添えがあったから、優しい人だと話す。
猫猫が安氏が診療所に出向く目的が気になりながら翡翠宮に戻ると、紅娘が念入りに侍女たちに掃除をさせていた。すると、その夕方、安氏が翡翠宮を訪ねてくる。皇太后は猫猫に、水蓮からしごきがいのある娘が後宮に戻ったと聞いた、水蓮は昔自分の侍女をしていたと話し、察しのいい玉葉妃が娘を寝かしつけると席を外すと、安氏は猫猫に、分かる範囲でいいから調べてほしい、私は先の帝に呪いをかけたのかしら?と調査を依頼するのだった。
その夜、物置小屋に戻った猫猫は、正直いい話は聞いたことがない、愚帝、女帝の傀儡などいろいろ、一番有名なのはロリコン、と先帝について思いを巡らす。先帝は、後宮でごく一部の幼い娘にばかり手を出し、身体が育ちきる前に現帝を産んだ皇太后の腹にはそのときに切った痕が残っており、その出産を手伝うために宦官にさせられたのが猫猫の養父の羅門だったのだ。そして、皇太后はその後もう一度出産しており、それが皇弟だった。その時の皇太后は三十路前、と考えた猫猫に、皇弟は本当に先帝の子なのか、という疑問が浮かぶが、そんなことを口にしたら打ち首にされかねない、と考えるのをやめる。
その数日後、安氏は、後宮の外の内廷で上級妃4人が集めた茶会を催す。侍女たちと準備を進める中、猫猫は紅娘から、今日の毒見は自分がする、皇太后から手伝いに貸してほしいと言われていると伝えられる。猫猫が安氏の侍女のもとに急ぐと、侍女は猫猫を、先帝が晩年に住んでいた部屋に案内する。そして、先帝が亡くなった後、皇太后が私が毎夜のごとく呪ったと言っていたこと、亡くなった先帝の遺体は1年間霊廟で安置された後も腐敗せずに残っていたことを話し、その棟は間もなく取り壊されるのでその前に調べてほしいと頼む。
原作小説では、シリーズ第3巻の「薬屋のひとりごと 3」収載の「十三話 皇太后」と「十四話 先帝」の最初の部分におおむね対応する部分になっています。
第33話 先帝
<皇太后・安氏から依頼された“呪い”の調査の間、猫猫は久しぶりに壬氏の屋敷に滞在することになった。水連の部屋で幼い頃の壬氏について話を聞いている中、猫猫はかつての壬氏のお気に入りの玩具が入っている行李の中から不思議な色の小石を見つける。それは、皇太后が先帝にかけたという“呪い”-先帝の遺体が生前と変わらない姿である謎を解く手がかりだった。猫猫は亡き先帝の秘密、そして呪いの正体を明らかにするため、皇太后や壬氏らと共に先帝の部屋を訪れる。>
安氏の侍女から、安氏の呪い、すなわち、先帝の遺体が1年経っても変わらないままだった理由を調べてほしいと頼まれた猫猫は、先帝が晩年に住んでいた部屋に入らせてもらうことを条件に、それを引き受ける。
その夜、久しぶりに壬氏の屋敷に泊まることになった猫猫は、幼いころの壬氏のお気に入りの玩具が入った行李の中に、不思議な色の小石を見つける。水蓮から壬氏からそれをすぐに取り上げたと聞いた猫猫は、正解です、毒ですから、と言い、なぜこんなものが落ちていたのか不思議だと話すが、心の中にはある仮説が浮かんでいた。
翌日、安氏、壬氏、高順も同行して、先帝の部屋に向かった猫猫。許可を得て先帝の部屋に入ると、穂先が細かく揃えられた筆などが床に落ちていた。先帝は絵を描く趣味があったのかと尋ねると、安氏は一度描いてもらったことがあると話すが、それを脇で聞く壬氏は動揺している仕草を見せる。
猫猫が部屋の壁を確認すると、分厚い紙を何重にも貼ったように柔らかかった。先帝の晩年に仕えていた公奴婢を呼んでもらって、質問すると、何かを隠すかのような素振りを見せる。猫猫が壁紙を慎重に剥がすと、そこには、鮮やかな黄色い衣を着て柔らかい笑顔を見せる女性の描かれた絵があった。その絵を見た猫猫は、先帝は国の頂に立ったために本当の才能を生かすことなく亡くなったのだろう、この絵にはそれだけの力がある、と感じる。そして、安氏たちに、この女性の衣は雄黄という石を砕いて作った絵具だと思う、雄黄は砒毒と同じ毒性があり、砒毒には物を腐りにくくする作用がある、雄黄をもとにした顔料を使ったために、そこに含まれる砒毒が少しずつ体に取り込まれたのだろう、亡くなったころには全身に回っていたはずだと説明する。説明しながら猫猫は、女帝は自分の子が帝にふさわしい器でないことがわかっていたから、権力を自分のもとに集めて子を守ろうとしたのだろうと思う。
説明を聞いた後、その絵をじっと見つめる安氏は、先帝にとって女帝の存在が大きかったのだと確信し、しょせん自分など通り過ぎるだけの存在、お腹の傷跡のおかげで国母としての今があるに過ぎない、と過去を振り返る。
安氏は先帝の性癖のことも知っており、父親はそれを利用しようとし、安氏は中級妃である異母姉の侍女として後宮に入ったが、ある日異母姉のところにやってきた先帝に、異母姉は舞い上がるが、先帝は異母姉を押しのけ、その表情は恐怖で歪む。その先帝に近づいて声をかけた安氏は、その手にかかり、先帝の子を身ごもったのだった。
時が経って、少女の外見を通り過ぎた安氏に、先帝は会いに来ようとはしなかった。しかしある時、幼い娘にしか話しかけられず、自分を素通りすることが許せなくなった安氏は、許しを請って怯える先帝を閨でいたぶったのだった。
回想を終え、壁の絵から離れた安氏は、ずいぶん面白い女官に目をかけているようですね、と壬氏に声を掛け、お気に入りは隠しておかないと誰かに隠されてしまうわよ、と言うのだった。
原作小説では、シリーズ第3巻の「薬屋のひとりごと 3」収載の「十四話 先帝」の中盤以降の部分におおむね対応する部分になっています。
第34話 怪談
<翡翠宮へ3人の新たな侍女がやってきた。仕事を終えるとそそくさといなくなり、嬉々として物置を住処にしている猫猫を見て、困惑を隠せない新たな侍女たち。見かねた桜花は何とか間を取り持とうと、あれこれ画策するが、猫猫はその気遣いをふいにしてしまう。猫猫が反省、謝罪をしていると、そこにはにやりと笑う桜花が。猫猫は強引にとある約束を取り付けられてしまう。その夜約束を果たすため、桜花とともに後宮の古びた棟へと向かう猫猫。妙齢の美しい女官に迎え入れられた棟の中で、集まった女官たちによる怪談話が始まる…。>
猫猫は翡翠宮に新たにやってきた三姉妹の侍女、白羽、黒羽、赤羽を紹介される。長女の白羽は玉葉妃と同い年で、桜花たちとは同郷の顔なじみだが、よく似た3人に猫猫は見分けがつかない。猫猫は、同郷の人間だけで固めるのは暗殺されかかったことのある玉葉妃にはその方が安心、玉葉妃が懐妊してこれまで以上に人手が必要になる翡翠宮には人材の補強はありがたいが、多数の侍女を抱えている楼蘭妃の柘榴宮との釣り合いを取るためでもあるのだろうと思う。間を取り持とうとする桜花だが、仕事が終わると喜々として物置小屋に向かう猫猫に、三姉妹は困惑する。桜花の気配りを感じた猫猫は、桜花の強引な誘いを断れず、その夜、後宮の古びた棟に連れていかれる。
綺麗だが年嵩の女官が出迎え、先帝の時代に使われていた場所だというその棟の一室に案内する。そして、12人の女官たちが集まった締めきった部屋で、怪談話が始まり、女官たちは順番に怪談話をし、終わると手元の蝋燭を吹き消していく。怪談を聴いているうちに、猫猫は次第に眠気を感じるようになる。そして、猫猫の1人前、怪談話に参加していた子翠の番となる。その話を聞いて、話し方が上手いなと思った猫猫は、ふと子翠の横顔を見て、誰かに似ていると感じる。
そして猫猫、桜花も怪談話を終え、最後の年嵩の女官が話し始める。その話を聞きながら、頭がぼうっとして、視界も虚ろになっていく猫猫は、ふと気づき、立ち上がって戸を開けて空気を入れ替え、桜花と子翠に、ぐったりしている女官の手当てを頼む。気づくのが遅すぎたと思う猫猫だったが、背後で、年嵩の女官が、もう少しだったのに、と恨めしそうにつぶやくのが耳に入る。その女官は姿を消し、あの女官はいったい、と思いながら帰る猫猫だった。
翡翠宮に戻ると、紅娘が、去年まで怪談話を主宰していた女官が亡くなって、今年は誰が引き継ぐか心配だった、亡くなった女官は、先帝のお手付きになって後宮を出られなくなって、怪談が楽しみだったらしいと話す。それを聞いた猫猫は、年嵩の女官がした話は、自分の身の上だったのかと思いを巡らせるのだった。
原作小説では、シリーズ第3巻の「薬屋のひとりごと 3」収載の「十五話 怪談」におおむね対応する部分になっています。
第35話 狩り
<楼蘭妃の父・子昌から狩りに誘われた壬氏の付き添いで、後宮をしばらく離れることになった猫猫。壬氏、高順、そしてその息子である馬閃とともに子の一族が治める地・子北州へと向かった。豪華な宴が開かれる中、壬氏は屋敷の窓を閉め切り、さらには覆面と偽名を使って過ごしていた。壬氏たちの対応を不思議に思う猫猫だったが、その裏ではある陰謀が動きはじめていた。>
壬氏は、自身の屋敷で、翌日からの遠征を前に、高順から、遠征に猫猫を同行させるのであれば隠し通すのは難しいと、自身の本当の身分を明らかにするよう進言される。壬氏は、分かっている、今回の遠征中に自分の口から話す、と語る。
翡翠宮にやってきた壬氏は、子昌から狩りの誘いがあった、猫猫を数日返してほしい、と玉葉妃に申し出る。玉葉妃は猫猫を名前で呼ぶことができない壬氏を揶揄いながら、最終的にはそれを認める。
そして翌日、猫猫は、壬氏に同行して、馬閃とともに、子昌の一族が治める子北州へと向かう。馬閃は、壬氏とは別の賓客として招かれている高順の代わりに、壬氏の付き人となっていた。
標高が高いため涼しく、先帝が避暑地として毎年訪れていた子北州は、今の皇帝になってからは皇族は訪れていないが、子昌の一族が管理していた。壬氏は、覆面を被り、「香泉」という偽名で正体を隠して、宴が開かれる中、部屋を閉め切って閉じこもる。料理の毒見をする猫猫は、なぜ壬氏がそれを食べないのか訝しむが、代わりにそれを食べた馬閃は、スッポンなど精のつく料理に鼻血を流して卒倒する。
そのころ、森の中では、怪しげな男たちが、銃(飛発(フェイファ))を取り出し、これであの方には死んでもらう、と不吉な言葉を発していた。
翌日、狩りに出かけた壬氏たち。やることがない猫猫が森を散策していると、犬を連れた李白を見つける。話しかけると、指名で護衛に入ったが、犬の面倒でも見てろと言われたと話す。
そして、宴が開かれるが、正体を隠すため覆面を被る壬氏は、暑さでのぼせて具合が悪くなり、自ら席を立って外に出る。それを追いかけた猫猫は、素顔になって涼しくなれるよう、人気のない川辺まで壬氏を引っ張っていく。すると、壬氏は、お前に話したいことがある、いつかは言わなければいけないと思っていた、と話し出すが、俺は本当は…と言いかけたところで、銃声が聞こえる。壬氏は、自分たちに向けて撃たれる銃弾から逃れるため、猫猫を抱え、大きくジャンプして滝に飛び込む。
壬氏たちを撃った男たちは、この高さならどうせ助からない、と滝壺を探すことはせず、銃を隠す。
しかし壬氏は、滝壺の脇の洞窟に飛び込んで無事だった。壬氏は、溺れて意識を失った猫猫に人工呼吸や心臓マッサージをして意識を取り戻させる。意識が戻った猫猫は、濡れた服を乾かすため薄着になり、塩が足りない壬氏のために手元にあった煮た蕗を食べさせる。
そして、洞窟から脱出しようとする2人は、地上に抜けられる穴があるのを見つけ、猫猫が壬氏の肩の上に乗って、地上に上がろうとするが、猫猫が岩肌に手を掛けたところで、顔にカエルが飛び掛かり、それを振り払おうとしてバランスを崩して落ちてしまう。落ちた猫猫が、痛く…ない、と思うと、壬氏が下敷きになってくれていて、猫猫は壬氏の身体の上に密着していた。慌てて壬氏の上からどこうとすると、壬氏は猫猫の身体をつかんでそれを止めるのだった。
原作小説では、シリーズ第3巻の「薬屋のひとりごと 3」収載の「十六話 避暑地」「十七話 狩り 前編」と「十九話 狩り 後編」の前半部分におおむね対応する部分になっています。
第36話 花瑞月
<飛発を持った刺客の襲撃に遭うも、滝壺の洞窟へと逃げ込んだ猫猫と壬氏。洞窟からの脱出を試みる中で、猫猫は壬氏が隠し続けていたとある秘密に気づいてしまう。意を決して自ら秘密を打ち明けようとする壬氏だったが……。そのころ壬氏たちが姿を消した宴会場では、馬閃のもとに「岩場から主の衣が見つかり、流された可能性がある」と伝令があり、場内は動揺に包まれる。しかしそれは、飛発を持った犯人をあぶり出すための猫猫たちの秘策だった。>
宴会場では、壬氏が姿を消して2時間が経ち、馬閃は気が気でないが、子昌たちはそれれを全く気に留めていないようだった。
バランスを崩して壬氏と密着する形になった猫猫は、つい手を伸ばすと何かが手に触れる。それは壬氏の股間で、猫猫は、宦官にあってはいけない男性の象徴が、去勢されずにあることに気がつく。 壬氏は、ある意味説明する手間が省けたということか、と言って先の話の続きをしようとする。これ以上聞いてはいけないと感じた猫猫は、申し訳ありません、カエルをつぶしてしまったかもしれません、と自分が触れたのはカエルだと言い張り、しらばっくれようとするが、その挑発的な物言いに、壬氏は、猫猫を優しく押し倒し、確認してみるか?と迫る。挑発が過ぎた、と後悔する猫猫だが、壬氏の顔が近づき、キスしようとする。しかし、その直前、犬が上の穴から飛び込んでくる。それは李白が面倒を見ていた犬だった。
李白の助けで、壬氏と猫猫は滝の裏の洞窟から脱出する。銃は暗殺のために隠し持ってきたと考えるのが妥当だとの李白の話を聞いて、猫猫は発砲した者を特定するための作戦を提案する。
宴会場の馬閃のもとには、血の付いた布が届けられ、馬閃は、岩場から主の衣が見つかったと一同に伝えると、捜索が開始される。そして、猫猫たちは李白が面倒を見ていた犬の嗅覚を使って森の中に埋めた銃を発見し、暗殺を狙った男を捕らえることに成功する。
その夜の宴には、とある官の一派が捕らえられて姿を消していた。高順は、疲れた様子の壬氏が心配になりながら、壬氏の代理でこの場にいる自分はそれを気にする立場にないと自らに言い聞かせ、疲れた様子の馬閃を見て、まだまだだなと思う。酔った高官が話しかけるのに嫌気が差した高順は、酔いを覚ますふりをして、外に出て、皆帝の弟が皇位を継ぐにふさわしいか見定めようとしている、壬氏は猫猫に真実を伝えられたのだろうか、今後起こり得る問題に対処するためには知らせる必要がある、それだけ利用価値のある娘だ、と思いを巡らす。
一方、部屋に戻った猫猫は、今回もまた気持ちの悪い幕引き、分かっていないことが多すぎる、と思いを巡らせていた。そこに、壬氏が尋ねてくる。ずいぶんと驚かせてしまって悪かった、と言う壬氏は、お詫びの品として牛の胆石である「牛黄」を渡し、真実を明かそうとするが、受け取った猫猫は貴重な牛黄に目を輝かせて大興奮し、その後の壬氏の話は耳に入らず、壬氏を追い出してしまう。
そのころ、高順は、いつまでもかりそめの姿ではいられない、あなたはこの国の帝の弟君、「華瑞月」なのだから、と心の中で壬氏に語り掛けるのだった。
原作小説では、シリーズ第3巻の「薬屋のひとりごと 3」収載の「十九話 狩り 後編」の後半部分、「十八話 狩り 中編」と「終話」におおむね対応する部分になっています。
(ここまで)
以上のとおり、この第2期の第1クールでちょうど原作小説の第3巻までを描いた形となっています。
連続2クールの放送で、4月以降も続きますので、4月以降の2クール目では、おそらく原作小説の4巻に相当するエピソードが描かれるのだろうと思います。