テレビアニメ「わたしの幸せな結婚」の第2期、先に紹介した第22話までに続いて、3月10日(月)から4月9日(水)にかけて放送された、終盤の第23話から最終話の第26話(第2期の第10話~第13話)までを紹介します。
なお、当初は3月31日(月)に最終話を迎える予定でしたが、3月24日(月)に放送予定だった第25話が「製作上の理由により」との説明で、放送が1週間後の3月31日(月)に延期され、その影響で、3月までの冬クール中に放送できなかった最終話は、それまでと曜日が異なる4月9日(水)と変則的な曜日での放送となりました。
繰り返しになりますが、2019年より富士見L文庫で刊行されている顎木あくみの同名小説を原作に、テレビアニメ化された作品で、第1期は2023年7月から9月までの2023夏クールにTOKYO MXなどで放送されました。2025年1月から3月までの2025冬クールに、その続編となる第2期が同じくTOKYO MXなどで放送されています。主要スタッフは、監督:久保田雄大/小島正幸、シリーズ構成:佐藤亜美、脚本:佐藤亜美/羽柴実里/石井風花/豊田百香、キャラクターデザイン:安田祥子、アニメーション制作:キネマシトラス など。
公式サイトで紹介されている主要登場人物・キャストのうち、第23話から第26話までのエンドクレジットでの名前が登場するのは、次のとおりです。<>内は、それぞれのキャラクターがエンドクレジットで登場(声優が出演)している放送回になります。
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斎森 美世(さいもり みよ)【上田 麗奈】:継母たちに虐げられて愛を知らずに育った不憫な少女。望まない政略結婚で久堂清霞のもとに嫁ぐも、その温かさにふれる中で彼にふさわしい妻になりたいという願いを抱くように。この世にただ一人の「夢見の異能者」であり、力の暴走を防ぐべく鍛錬に努める。<第23~26話>
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久堂 清霞(くどう きよか)【石川 界人】:優秀な異能者を輩出する名家の若き当主にして、対異特殊部隊を率いる隊長。世間では「冷酷無慈悲」と噂されていたが、その実は愛情深く、美世とは何でも話し合える対等な夫婦になりたいと願っている。誰もが見惚れる美貌の持ち主。<第23~26話>
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薄刃 新(うすば あらた)【木村 良平/湯浅 かえで(幼少期)】:薄刃家の再興を担う次期当主で、美世の従兄弟。幼い頃から、一族の厳しい掟のもと「夢見の巫女」である美世を守るという使命を抱いて育った。宮内庁の交渉役という顔も持つ。<第23~26話>
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五道 佳斗(ごどう よしと)【下野 紘】:対異特殊部隊の隊員。お調子者で、上司の清霞をよく怒らせているが、異能者としての実力は確かなもの。<第24~26話>
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尭人(たかいひと)【石田 彰】:帝の子息。未来を予知する「天啓」を持ち、帝都を襲う不穏な気配を憂う。中性的な美しさを持つ天上人だが、旧友の清霞に対してはくだけて接することも。<第26話>
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辰石 一志(たついし かずし)【深町 寿成】:辰石家の長男であり、現・当主。身なりが派手で飄々としているが、解術の専門家としての能力は高い。清霞のもとで軍にも協力している。<第24・25話>
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久堂 葉月(くどう はづき)【日笠 陽子】:清霞の姉。明るく気さくな性格で、美世に淑女のたしなみを教える。かつての夫・大海渡征との間に一人息子がいる。<第23・26話>
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ゆり江(ゆりえ)【桑島 法子】:久堂家の使用人。美世の人柄に信頼を置き、不器用な清霞との仲を取り持つことも。<第23・26話>
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甘水 直(うすい なおし)【内田 夕夜/青木 志貴(幼少期)】:社会の転覆を企てる「異能心教」の祖師。美世を付け狙うが、その出自は……。<第23~25話>※幼少期は第23話のみ
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薄刃(斎森) 澄美(うすば(さいもり) すみ)【日髙 のり子/島袋 美由利(幼少期)】:美世がまだ幼い頃に病で死別した実母。愛娘の幸せを願って、その異能を封印していた。<第23・25話>※幼少期は第23・25話のみ。第23・25話とも結婚後の「斎森」姓で表示されています。
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薄刃 義浪(うすば よしろう)【廣田 行生】:美世の母方の祖父。かつて美世と新をいとこ同士で結婚させようと画策したが、悔い改める。<第23・24話>
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久堂 正清(くどう ただきよ)【置鮎 龍太郎】:久堂家の先代当主で、清霞の父。穏やかな人柄で、美世と清霞の結婚を楽しみにしている。<第24・25話>
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久堂 芙由(くどう ふゆ)【井上 喜久子】:清霞の母。冷たい瞳を湛え、高慢な物言いで周囲を震え上がらせる貴婦人。<第24・26話>
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大海渡 征(おおかいと まさる)【三宅 健太】:軍本部で対異特殊部隊全体の指揮を執っており、清霞の直属の上司でもある。かつて葉月と結婚していたが現在は離縁している。<第26話>
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百足山(むかでやま)【前野 智昭】:対異特殊部隊の隊員で、班長の一人。薄刃の血を引く美世に 疑いの眼差しを向ける。薫子の実力は認めているが・・・<第24・25話>
以上の主要登場人物のほかに、第23話から第26話まででエンドクレジットに出てくる登場人物・キャストは、次のとおりです。<>内は、それぞれのキャラクターがエンドクレジットで登場(声優が出演)している放送回になります。
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清(きよ)【小林 由美子】:清霞が美世を見守らせるために出した式神。<第23・24話>
- 宝上【宮本 誉之】:異能心教の信徒。<第23・24話>
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文部大臣【佐々 健太】:帝国の文部大臣。<第24話>
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桂子(けいこ)【久保田 民絵】:清霞が贔屓にしている呉服屋「すずしま屋」の女主人。<第26話>
そのほか、エンドクレジットに役名なしで名前が出てくるキャストとして、次のような方が雅います。
- 金子 沙希<第23話>
- 佐原 誠/田島 章寛/大西 弘祐/陣谷 遥<第24話>
- 半田 空/山口 令悟<第25話>
各話ごとのあらすじは、次のとおりです。(< >内が公式サイトで紹介されている内容です。)
第二十三話 約束
<血に染まるからだを引きずりながらも美世に「愛している」と伝えた清霞であったが、甘水の計略により軍によってその身柄を拘束されてしまう。自分のせいで清霞を犠牲にしてしまったと思う美世は、誰に頼ることもなく一人で甘水のもとへ向かおうとする美世を引き止めたのは、少年のような姿をした清霞の「式」だった。「式」はある人のもとを尋ねることを提案して……。>
清霞が身柄を拘束された夜、清霞の式神が姿を現し、任せてよ、僕が導くから、と呟く。
ショックで意識を失った美世が目を覚まし、脇についていたゆり江たちに清霞の安否を尋ねると、鷹倉は、陸軍本部にいる可能性が高い、異能心教に軍本部や駐屯地も制圧され指揮系統が奪われた、対異特殊部隊も攻撃の激しさに散り散りになった、堯人が襲撃を免れた海軍を緊急招集して残党を追い出し宮城の警備を固めていると話す。
軍本部では、宝上が新に、その助言がなければ対異特殊部隊の屯所は落とせなかった、と感謝するが、新は、美世をこの世界の頂点に迎えるため、貴方たちと馴れ合うつもりはない、と言う。
自分がもっと夢見の力を操れていたら清霞を守れたのではないか、自分が何とかしなければと責任を感じる美世は、一人で宮城を抜け出し、陸軍本部に向かおうとするが、一人で向かうのは無謀すぎる、と少年の頃の清霞のような姿の清霞の式神が声をかけて引き留め、清霞は無事だと告げる。安心した美世は式神を抱きしめ、式神の勧めで薄刃家を訪ねることにし、堯人の指示を受けた鷹倉の案内で宮人専用の緊急通路を使って宮城の外に出る。
「清くん」と呼ぶことにした式神とともに薄刃家を訪れた美世は、義浪に状況を伝え、清霞を救いたいが力不足、だからもっと多くのことを知らなければならないと語る。義浪は、薄刃家のあり方に問題があったから甘水も新も過ちを犯したと言い、美世の求めに応じて、薄刃家の過去を語り始める。
もともと甘水家は薄刃の遠い分家で地方の農村で暮らしていたが、物取りに両親を殺され、異能者以外に力を使ってはならないという掟を破って異能で物取りに報復した甘水は事態を重く見た本家が預かることになり、当初甘水の異能は封印するはずだったが、世話焼きだった澄美と出会ったことで問題行動も減って、封印は先伸ばしになった。しかし、帝の介入で薄刃が経営する鶴木貿易が傾き、澄美は薄刃を守るため斎森家との縁談を取り付けてくる。それに一番抵抗したのは甘水で、絶望し、姿を消したのだった。
そして、義浪は薄刃家に代々伝わる「夢見の書」を美世に見せる。そこには、覚醒とは、夢見の巫女の全ての力を行使できるようになること、強く確かなる心を持つこと、と書かれていた。義浪は、心はこの力を扱う上でとても大切なもの、不安も恐れも道を切り開くまでの大切な道しるべとなる、と語る。
その夜、美世は、こちらにどうぞ、と清を自分のベッドに誘う。清は顔を真っ赤にして、私をぬいぐるみのように思っているなら大間違いだぞ、後で後悔しても知らないからな、と言いながらも、美世のベッドに入るのだった。
お母様と甘水の間に何があったのか知りたいと思いながら眠りについた美世は、夢の中で母・澄美と再会する。澄美が、あなたに苦しいもの、重いものを全部背負わせてしまった、だから…と言って美世の額に手を触れると、美世に澄美と甘水との過去が流れ込んでくる。
問題行動が収まらなかった甘水に、澄美は正面から向き合い、自分を大切にして、と話し、甘水も次第に心を開くようになる。お友達を作ってはいけないという薄刃家の掟に疑問を持つ澄美は、もし自分が将来夢見の巫女になれたら帝に掟をなくしてもらうようにお願いをして、薄刃のみんながいつかお天道様の元を堂々と歩けるようにしたい、という夢を甘水に明かし、私が夢見の巫女になったら私の鞘になるのよ、と話す。
さらに成長した澄美は、人の考えていることがぼんやり頭に入ってくる「精神感応」の異能持ちであり、精神感応を持つ者は夢見の巫女にはなれないことを甘水に明かし、涙する。それを聞いた甘水は、これからは自分が澄美の守り刀になる、君が望む理想の世界を一緒に探しに行こう、と語り掛ける。
しかし、薄刃の家族全員を守るため、斎森家との縁談を取り付け、新しい薄刃のあり方を探してほしいと願う澄美を、甘水は受け入れることができなかった。澄美が亡くなったことを知って失意の底に沈む甘水だったが、美世という娘がいることを知って、焼香もせずに立ち去ったのだった。
それを知った美世は、私はあの人を止められるでしょうか?と澄美に問いかけると、澄美は無言で階段の上に美世を導く。鳥居の向こうに大きな桜の木があり、その前には清霞が立っていた。美世が鳥居をくぐって清霞の手を取ると、眩しい光が差し込んで桜が花開く。それは美世の覚醒だった。
声を掛けた義浪に美世は、私があの人を止めなければならない、と静かに決意を語り、義浪は、実にお前らしい答えだ、きっと澄美もお前の背を押してくれる、と励ますのだった。
原作小説では、第5巻「わたしの幸せな結婚 五」の「終章」と、第6巻「わたしの幸せな結婚 六」の「序章」と「一章 雪の路」におおむね対応する物語。
第二十四話 決意の出立
<危険を顧みず屯所へ向かった美世。正面には異能心教の扇動で抗議の声をあげる民衆たちが押し寄せ、裏手には激しい戦闘のあとが広がっていた。「動くな!」。敵に囲まれてしまったかと思われたが、その声の主は百足山。幻覚との戦いに疲弊した五道たち対異特殊部隊の隊員は、美世との再会を喜ぶ。彼らに護衛を依頼した美世は、さらにある人のもとを尋ね……。>
地下牢に捕らえられた清霞の前に新が姿を現す。裏切りに敵意をむき出しにする清霞に新は、すべては薄刃と美世のためだ、と言うのだった。
夢見の力が覚醒した美世は、まず、五道に会うため、式神の清を連れて屯所に向かう。危険すぎると清が止めるのも聞かず、私を信じていただけないでしょうか、と進んでいく。
屯所の前には異能心教の扇動で抗議の声をあげる民衆が押し寄せていた。美世は裏口に回って鍵がかかった扉を無理やり押し開け、夢で見たとおりだと清に話す。中に入ると、激しい戦闘のあとが広がっていたが、無事に五道たち隊員と再会する。清は、ここまで見通していたのか、と驚く。五道や百足山と話す美世は、明日に清と清霞を助けに行く、そのために力を貸してほしいとお願いする。それを聞いていた一志は、隊長の役目を任されている五道の代わりに、自分が護衛に付くことを申し出て、美世は、初めから護衛は一志に頼むつもりだった、五道には別のお願いがあると話す。
一方、軍本部では、甘水が、まだ堯人が幅を利かせていることに文句を言う文部大臣を、異能を使って殺害していた。
美世は、清とともに清霞の父・正清を訪ねる。自分に何かあったら頼むと清霞に頼まれて帝都に来ていた正清と芙由に、美世は協力をお願いする。芙由は、今回ばかりは貴方の努力で何とかなる話ではないと諫めるが、美世の固い決意に、久堂家としての清霞と一人の男としての清霞のどちらを想っているのか、と尋ねる。美世が一瞬ハッとした後、両方です、と答えると、芙由は美世の髪を梳き、独特の物言いで美世の背中を押す。
その夜、なかなか寝付けない美世に、清は、何があっても守ってやる、と言い、子守唄を歌う。そして翌朝、義浪は美世たちを心配しながらも温かく送り出す。
一志の護衛で陸軍本部の前にやってきた美世と清。そこに美世の頼みを受けた五道たちが帝奪還のため陸軍本部を襲撃する。その隙に、夢見の力で見通していた、1つだけあった鍵が開いた窓から建物内に潜入した美世たちは、やってきた信徒たちを夢見の力で眠らせ、地下牢へ急ぐ。
一方、宝上から対異特殊部隊の襲撃の報告を受けた甘水は、行くぞ、客人を迎えよう、と席を立つ。それを聞いた新は、手に持った拳銃を見ながら、神妙な表情をする。
地下牢の近くまで来ると、異能を遮断している結界があった。それを一志が解こうとすると、その奥からは異形の鬼犬が現れる。清は自らが囮となってそれを引きつけ、一志には結界の解除に集中するよう指示するが、逃げる途中で転んでしまい、鬼犬に襲われてしまう。清を助け出そうとした美世は、結界で夢見の力が使えず、やむなく逃げるが、鬼犬が容赦なく追いかけてくる。しかし、追いつかれそうになったその時、一志が結界の解除に成功し、檻を脱出した清霞が美世を助ける。
駆け寄った美世を清霞は強く抱きしめ、お前一人に大変な思いをさせた、優しく頭を撫でる。美世は、清霞の愛にうまく応えられなかったことを謝罪し、愛しています、と自分の思いを改めて伝え、清霞も、私もだ、と伝え、2人は固く抱きしめ合う。
一方、主の清霞が戻ったことで、式神の清は、短い間でも美世のそばにいられて嬉しかった、とにっこりと微笑んで、元の姿の紙人形に戻る。
そして、外に出た一志が五道たちと合流し、美世の頼むを受けて正清も加勢する中、美世と清霞は甘水のところに向かう。そこに、甘水と新が姿を現す。
原作小説では、第6巻「わたしの幸せな結婚 六」の「二章 心を知り」と「三章 閉じた夢の先」の前半部分におおむね対応する物語。
第二十五話 夢の先にある想い
<薄刃家が頂点に立つ理想の世界を築くため、愛した人の忘れ形見であり「夢見の力」を持つ美世を手中に収めようとする甘水は、五感さえも支配する恐ろしい幻覚で清霞を蹂躙していく。清霞のもとへ駆け寄ろうとする美世だったが、新に銃口に向けられ阻止されてしまう。>
清霞と美世の前に、ようこそ我が城へ、歓迎するよ、と甘水が新を連れて姿を現す。だが、ここに来たのは貴方の理想を叶えるためではない、と美世がその誘いを拒絶すると、お仕置きが必要だ、と懐から短刀を取り出し、清霞に斬りかかる。甘水と一騎打ちとなる清霞だが、甘水の異能により狂わされた五感によって具現化した傷に苦しめられる。そして美世も、新に拳銃を向けられて動くことができない。
そのころ、五道、一志、正清たちは、異能心教の信徒たちを撃退し、捕縛した信徒の証言から、帝の居場所が今は使われていない旧官舎の最上階であることを掴み、五道はその場を正清たちに任せ、旧官舎に向かう。
清霞は、五能を狂わされながら、必死に反撃を試みるが、甘水に攻撃を簡単に防がれ、幻術により美世が鬼に殺される悪夢を見せられ、心を蝕まれていく。そんな清霞を目の当たりにしながら身動きが取れない美世だったが、一瞬、新と甘水が相打ちになる光景を見る。予知夢だと直感した美世は、もう誰かが傷つく姿は見たくない、自分が未来を変えなければ、と決意すると、神々しい光に包まれて現れた美世が悪夢から清霞を救い出し、その場にいる甘水と新も自分の夢の中に引きずり込む。
一面が青空に囲まれた夢の世界で、美世は、私は斎森澄美の娘として、貴方を止めるためにここに来た、と甘水に対峙するが、君は清霞を救うためにより強い力に頼った、それは僕とどう違う?と問う。美世は、私はこの力を誰かを傷つけるためには決して使わない、貴方とは違う、と反論し、甘水の頬を平手打ちする。そして、今の貴方には母は微笑みかけないだろう、しかし、貴方の幸せを今でも願っているはず、母を愛していたなら、母の想いに応えるべきだと訴える。甘水は自分の間違いを認めようとせず、美世を清霞とともに消し去ろうとする。
しかし、そこに澄美が現れて美世と清霞を助け出し、甘水に、私の家族を貴方は傷つけた。それでも貴方も私の大切な家族、と語りかける。甘水は、家族のためなんて綺麗事は君を救わなかった、君は間違っていた、君の真の望みを叶えてあげると訴えるが、澄美は、貴方を守り刀の役目から解放します、と告げ、行きましょう、私と一緒に、と甘水に手を差し伸べる。甘水は自らの体を短刀で刺して強制的に夢から覚めて、美世を捕らえようとするが、新が甘水に銃を放ち、甘水は倒れながら短剣を新に投げ、2人は美世が予知夢で見たとおり相打ちとなる。
新の銃弾に倒れた甘水は、朦朧とする意識の中、行きましょう、と手を伸ばす澄美を見る。その手を甘水が取ると、2人は幼い頃の姿に戻り、光の向こうへと駆けていく。そして、甘水は息絶える。甘水の短剣が刺さった新は担架で運ばれていく。
甘水を止められなかった美世は、澄美の願いを叶えることができなかったと涙を流すが、清霞は、お前は何も間違っていない、やれることは全てやった、と優しく抱きしめる。帝が救出され、司令部の制圧も完了したところで、五道たちの前に清霞と美世も戻ってくるのだった。
原作小説では、第6巻「わたしの幸せな結婚 六」の「三章 閉じた夢の先」の中盤~後半部分におおむね対応する物語。
第二十六話 春になったら…
<異能心教が引き起こした一連の事件は、甘水の死によって終息を迎えた。新はこれまでの振る舞いの真意を明かし、ひとりよがりな行動で美世と清霞を傷つけたことを詫びる。自身の「夢見の力」を気がかりに思いながらも、やっと取り戻した穏やかな日常に心をほどく美世。だが一方で、清霞は軍に退役を申し出ていた。そこへ、鷹倉が尭人の願いを伝えにやってきて……。>
美世が届けたかった想いは届かぬまま、甘水は新の銃弾によって命を落とした。対異特殊部隊によって、帝は救出され、陸軍本部も制圧されたことで、異能心教による一連の事件は幕引きとなる。
平穏な日常と清霞との穏やかな時間が戻ってきた美世は、幸せを感じる一方で、その胸の内には、夢見の異能についての気がかりが薄く影を落としていた。
一方の清霞は、上官である大海渡征に、隊長の務めは全うできた、と退役届を提出し、後任の隊長に五道を推薦する。大海渡は、お前の気持ちはわかったが、簡単に受理はできない、時間をくれ、と告げる。
美世は、甘水との相打ちで負傷して入院する新を見舞いに訪れる。異能心教に加担した意図を尋ねた美世に、新は真相を話し始める。事の始まりは、天啓を受けた堯人から厄災が来ると言葉を授かったこと、甘水はまさに厄災そのもの、帝を倒して薄刃を頂点にしたいと望んでいた、私に自分自身を重ねていた甘水が私を勧誘した、薄刃に連なる者なら自分の思想に賛同するに違いないと盲信し誘えば付いてくると思ったのだろう、味方になったと見せかけて寝首を掻こうとしていたなんて思ってもいなかっただろう、気付かれたらその時はその時と覚悟していた、と話し、清霞を傷つけてしまったことを謝罪する。それを聞いた美世は、辛かった、もう二度とあんな思いはしたくない、と言い、甘水が生きて罪を償う未来もあったのではないかとどうしても考えてしまう、せっかく夢見の力が覚醒したのに甘水の心を変えることはできなかった、と心の内のわだかまりを語る。
そこに、美世を迎えに清霞がやって来て、2人は新のもとを退去する。2人が屋敷に戻ると、葉月と芙由が結婚式での衣装について言い争いをしていたが、2人の戻りに言い争いを止め、芙由の結婚の際に正清が贈り、葉月も結婚式で着た年季物の白無垢を美世に見せる。そんな大切なものを私に、と美世は涙を流して喜ぶ。
その後、初めてデートした甘味処を訪れた2人。清霞は、思い返せばあの頃から私たちはずいぶん変わった、と話す。そして、公園、図書館、神社と2人でめぐり、夕方に屋敷に帰ってくると、内大臣の鷹倉が訪ねてきていた。鷹倉は、宮内省として、美世を清霞とともに宮城にお迎えしたいと提案する。そして、これまで薄刃家は異能者の抑止力、ひいては皇家の抑止力にもなりうる存在としてこの国で独自に機能していたが、今回の事件で甘水のような人間が現れた際には対応しきれないという事実が明るみになってしまった、そこで二度と同じ轍は踏まぬよう、皇家を頂点として敷かれる異能の管理体制に薄刃も参入させて新たな異能の防御網を築くべきということになった、美世の「夢見の巫女」としての力を堯人の下で使ってほしい、御身をお預かりする以上、何不自由ない生活を約束する、と説明し、ゆっくりお考えください、と言って帰っていく。
五道とともに、先代隊長で五道の父である五道壱斗の墓参りに訪れた清霞は、隊長を辞めるつもりであることを五道に話し、今度はお前が体調の役目を引き継ぐ番だ、自信を持てと励まし、その言葉に、五道もそれを受け入れる。
その夜、清霞は軍を辞めるつもりであることを美世にも明かし、私の望みはお前とともに生きることだ、これからは肩の荷を下ろしてお前との幸せを守りたい、と決意を話す。美世も、清霞がそうしたいと思うのなら、私はそれを応援する、と応え、鷹倉の申出について、ここを離れたくない、と正直な心の内を明かす。
そして、美世は清霞とともに堯人を訪れる。堯人は清霞を外させて、残った美世に提案の返事を聞く。美世は、この異能は自分だけで背負えるものではないが、私はもう異能に振り回されたくない、誰かと戦いたくない、今回の提案は自分には分不相応、それに、やっと見つけた大事なもの、大好きな人たち、清霞と穏やかに暮らす幸せを手放したくないこと、と伝える。すると、堯人は、自分の幸せを見つけたのなら、それに水を差す道理など誰にもない、と微笑んで美世の決断を聞き入れるのだった。
その帰り、清霞は美世に桜のかんざしを贈り、美世は新しい組紐を清霞に贈る。清霞は美世を抱き寄せ、お前は私の命、私と結婚してほしい、と改めてプロポーズする。美世はうれし涙を浮かべながら、はい、喜んで、と受け入れ、愛してます、清霞さん、と初めて名前で呼び、2人は改めて抱き合う。
翌朝、清霞は、自分たちの結婚の記念に、屋敷の庭に桜を植えようと美世に提案し、美世も、すごく素敵だと思う、とそれに賛成し、2人は手を繋ぐのだった。
原作小説では、第6巻「わたしの幸せな結婚 六」の「四章 初めての」におおむね対応する物語。
(ここまで)
第1期では、原作小説の第1巻から第3巻までが描かれていましたが、この第2期では、原作小説の第4巻から第6巻までを描いた形になっています。
最終話のエンディングテーマが流れた後、「新作アニメ制作決定」と続編の制作決定がアナウンスされました。原作小説は第9巻まで刊行されているので、これまでのペースであれば、1クールが十分制作できそうに思いますが、「第3期」とはされていないので、これまでと同様にテレビアニメとして制作されるのか、テレビでは放送されずOVA作品となるのか、あるいは、劇場アニメとなるのか、今のところは全く情報はありません。いずれその辺も明らかにされるでしょうから、続報を楽しみに待ちたいと思います。