鷺の停車場

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ニールセン:交響曲第4番「不滅」

マルティノンとシカゴ響の録音をもう1つ。

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1.ニールセン:交響曲第1番[1892]
2.ニールセン:歌劇「サウルとダヴィデ」第2幕への前奏曲[1901]
アンドレ・プレヴィン指揮ロンドン交響楽団
3.ニールセン:交響曲第4番「不滅」[1916]
ジャン・マルティノン指揮シカゴ交響楽団
4.ニールセン:霧が晴れる[1920]
ジェームズ・ゴールウェイ(フルート)、シオネッド・ウィリアムズ(ハープ)
(録音 1・2:1967年2月ロンドン・3:1966年シカゴ・4:1986年)

「不滅」はメジャーレーベルの録音としては最初期のものだろうと思われます。今と比べこの曲の知名度は全然低かったはずで、世に広めようという意欲を感じます。

この曲、一般に「不滅」とされていますが、元のデンマーク語は「消し難きもの」といった意味のようで、最近はそのように表記される場合もあるようです。
楽章はありませんが、大きく4部に分かれます。CDもほとんどは4トラックに分かれているはずですが、1部と2部の間、3部と4部の間にはブリッジ的な部分があって、2・4トラックの開始位置は、CDによってブリッジ部の前だったり後だったりします(したがって、各CDのトラックごとの時間を単純に比較するのはあまり意味がありません)。

1部はAllegro。冒頭から闘争の中に投げ込まれるような厳しい音楽。金管と弦楽器の力強い動きが際立ち、不屈の闘いという印象を受けます。

Poco allegrettoとなって8小節の静かなブリッジ部を挟み、2部は一転して牧歌的に。弦楽器がピチカートで合いの手を入れる程度で、ほとんど木管によるアンサンブル。

3部はPoco adagio quasi andante-Adagio。弦楽器が遅めのテンポで決然とした強い意志を示すかのような曲。

con animaと書かれた10小節の弦楽器の速く激しいブリッジ部を挟んで、4部はAllegro。華やかに始まりますが、闘いを感じさせる激しい動きも随所に。緊張感を高めていく2人のティンパニの激しい掛け合いが見事です(練習番号47以降・59以降)。
ほとんど余談ですが、ティンパニの掛け合いの最後に(練習番号61の直前の2小節)、2台のティンパニが3度間隔でトレモロでクレッシェンドしながらグリッサンドで上昇し(ファ⇒レ♯/ラ⇒ファ♯)カッコよく?決める部分があります。現在主流となっているペダル(足)で音程を変えることができるペダル・ティンパニでなければ演奏できないはずで、100年前にもうあったんですね。ちょっと意外です。

演奏は、先に紹介したフランスものと同様に、若々しいキビキビした雰囲気。テンポは速めで(全体で32分40秒ほど)、他と聴き比べるとあっさりし過ぎと感じる部分もありますが、ストレートな解釈で実直に取り組んだ好演。些細なキズはありますが、アンサンブルも行き届いていて、シカゴ響の実力が遺憾なく発揮されています。金管楽器の活躍が目立つ曲、ハーモニーの塊がバシッと響くあたり、聴いていてなかなかの快感ですし、弦楽器の力感も十分。

このCDでは、2部はブリッジ部の前、4部はブリッジ部の後にトラックが切られています。

なお、マルティノンは同時期に「ヘリオス」序曲も録音しています(2曲をカップリングしたCDも出ていましたが、今は廃盤の模様)。

久しぶりに、私が持っている他の録音と聴き比べてみました。

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1.ニールセン:交響曲第4番「不滅」[1916]
2.シベリウス交響詩「タピオラ」[1925]
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
 (録音 1:1981年2月・2:1984年2月、ベルリン)

カラヤン晩年の録音。とあるHPの宣伝文によると、コンサートで実演したこともないそうなので、これが彼の唯一の「不滅」ということのようです。
カラヤン晩年から亡くなってしばらく(1980~90年代)、カラヤンの録音が出るとかなりの割合でそれが一般にベスト盤と言われた一時代がありました。その頃は、この録音も「不滅」のベスト盤と言われていたはず。
久々に改めて聴いてみると、どっしりと構えてオーケストラを存分に鳴らした演奏。テンポは遅めで、38分40秒程度と、マルティノン盤より6分近く長くなっています。慣れない曲だからか、細部のアンサンブルはどことなくぎこちない感じもして、私の好みには少し合いませんが、さすがはベルリン・フィル、オケの威力は凄いです。
ところで、1部の中ほど、練習番号17(con fuoco)の1小節前、木管のけたたましいトリルの中でホルン、トランペットなどがクレッシェンドしていく最後の1小節でティンパニも加勢するところ、この録音、なぜかそのティンパニがスコアよりも1小節遅れて入っています(トラック1の7:10前後)。意図的に変更するような場所とも思えないので、単純な入り間違いでしょうが、その気になればすぐ修正できたはずで、ちょっと不思議です。
カラヤンといえば、確か最後の来日公演の際、NHK-FMで演奏会のライブ中継(今ではなかなか考えられないことで、当時のカラヤンの人気ぶりがうかがえます)を聴いていて、展覧会の絵の冒頭のトランペットのソロでミスがあったのですが、後日の再放送の際はきれいさっぱり修正されていたという記憶があります。クラシックになじみ始めた頃に、そういうミスはきれいに修正する人というイメージが強く焼き付けられたせいか、なおさら意外なのですが、実は他のCDでも似たような例もあるので、万人が知っているような超メジャーな曲でなければ、そこまで修正しなくても、という判断だったのかもしれません。

このCDでは、2・4部ともにブリッジ部の後にトラックが切られています。

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1.ニールセン:交響曲第4番「不滅」[1916]
2.ニールセン:交響曲第5番[1922]
ヘルベルト・ブロムシュテット指揮サンフランシスコ交響楽団
(録音 1987年11月、サンフランシスコ)

ブロムシュテットにとっては、デンマーク放送響との交響曲全集(1974年)に続く2回目の交響曲全集の最初の1枚。同じ北欧のスウェーデン出身(ニールセンは隣のデンマーク)ということが、こうした熱心な取組の背景にあるのでしょう。

全体で35分30秒ほどで、速さ的には上の2枚の中間で、おそらく全体としては中庸のテンポということなのでしょう。ブロムシュテットらしく端正な作りで、クリアな録音もあって、全体がよく構築された鮮やかな演奏。アメリカのオケらしく、随所で金管の上手さが際立ち、ティンパニの掛け合いもバッチリ決まってます。
上の2枚と比べると、弦楽器の厚みがやや少なめに感じるので、好みによっては、スマート過ぎて違和感を感じる人もいるかもしれませんが、演奏・録音ともレベルは高いので、個人的な好みを差し引いても、初めてこの曲を聴くのには最適ではないかと思います。

このCDでは、2部はブリッジ部の後、4部はブリッジ部の前にトラックが切られています。

なお、マルティノン盤は、先のフランスものでも紹介した、マルティノンのシカゴ響時代の録音をまとめた輸入盤のセットの一部に含まれています。
カラヤン盤は、ニールセンのみを収録したCDが再発売されているようです。
ブロムシュテット盤は、同内容のCDも現在でも入手可能です。

Jean Martinon: Chicago Symphony Orchestra - The Complete Recordings

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ニールセン:交響曲第4番「不滅」

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ニールセン:交響曲第4番「不滅」&第5番

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