先日に続いて、バッハの作品をもう1つ。
◯J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲(全曲)BWV1046~1051
シギスヴァルト・クイケン(バロック・ヴィオリーノ・ピッコロ、ヴァイオリン、ヴィオラ)
ルシー・ファン・ダール(バロック・ヴァイオリン&ヴィオラ)
アンナー・ビルスマ(バロック・チェロ)
ヴィーラント・クイケン(バロック・チェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ)
アンソニー・ウッドロウ(ヴィオローネ)
クロード・リッパース(バロック・トランペット)
フランス・ブリュッヘン(ブロックフレーテ、フラウト・トラヴェルソ)
パウル・ドンブレヒト(バロック・オーボエ)
アブ・コスター(ナチュラル・ホルン)
ボブ・ヴァン・アスペレン(チェンバロ)、他
グスタフ・レオンハルト(指揮、チェンバロ)
(録音:1976年1月(5番)、7月(3,6番)、12月(1番)、1977年3月(4番)、6月(2番)ハーレム、ルーテル教会)
いうまでもなく、バッハの数ある作品の中で最も有名なものの1つ。
ブランデンブルク協奏曲というと、トランペットの超絶的な高音域のソロもあって華やかな2番が有名なのだろうという印象を持っていますが、フルートの素朴な旋律が美しい4番や弦楽のみでしっとりした3番や6番も魅力的。次のとおり、それぞれの曲ごとに楽器編成が違っていて、全曲を通して聴くと音色の変化の幅が広く感じられます。
第1番ヘ長調
独奏 コルノ・ダ・カッチャ2、オーボエ3、ファゴット、ヴィオリーノ・ピッコロ
合奏 ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、通奏低音(ヴィオローネ、チェンバロ)
第2番ヘ長調
独奏 トランペット、ブロックフローテ、オーボエ、ヴァイオリン
合奏 ヴァイオリン2、ヴィオラ、ヴィオローネ、通奏低音(チェロ、チェンバロ)
第3番ト長調
ヴァイオリン3、ヴィオラ3、チェロ3、通奏低音(ヴィオローネ、チェンバロ)
第4番ト長調
独奏 ヴァイオリン、ブロックフローテ2
合奏 ヴァイオリン 2、ヴィオラ、チェロ、ヴィオローネ、通奏低音(チェンバロ)
第5番ニ長調
独奏 フルート・トラヴェルソ(横笛)、ヴァイオリン、チェンバロ
合奏 ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ヴィオローネ
第6番変ロ長調
ヴィオラ・ダ・ブラッチョ2、ヴィオラ・ダ・ガンバ2、チェロ、通奏低音(ヴィオローネ、チェンバロ)
よく聞いたことのない楽器名がいろいろ出てきますが、
「コルノ・ダ・カッチャ」は直訳すると「狩りのホルン」で、丸く管を巻きベルが後ろを向いた今のホルンの原型、
「ヴィオリーノ・ピッコロ」は今のヴァイオリンより短3度または4度高く調弦される小型の楽器、
「ヴィオローネ」は後述のヴィオラ・ダ・ガンバと同属の最低音域の楽器で、今のコントラバスの原型、
「ブロックフローテ」は縦笛で、今でいうリコーダー、
「フルート・トラヴェルソ」は横笛で、今のフルートの原型、
「ヴィオラ・ダ・ブラッチョ」は直訳すると「腕のヴィオラ」で、今のヴィオラの原型、
「ヴィオラ・ダ・ガンバ」は直訳すると「脚のヴィオラ」で、足で支えて弓で弾いて演奏する弦楽器(発祥の由来は別系統ですが、音域は今のチェロとほぼ同じと思ってよいでしょう)。
本盤は、作曲当時の楽器(またはそれを復元した楽器)、いわゆる古楽器を用いて演奏した録音。トランペットも、現代のようなピストンまたはロータリーのヴァルブの付いた楽器ではなく、ヴァルブがなく、ホルンのように丸く管を巻いた楽器で演奏されているそうで、解説のブックレットにその写真が載っています。
録音は約40年前で、古楽器の演奏ではかなり初期のもの。その後指揮者として18世紀オーケストラを率いるブリュッヘンもフルートの演奏者として参加しています。
聴き比べはほとんどしていないので、他の演奏との比較はできませんが、古楽器による演奏に少なからずある、テンポの速さやスタッカートの鋭さなど、現代の奏法との違いをことさらにデフォルメする奇をてらったようなところはなく、自然体という感じがします。古楽器による演奏に我々がだいぶ馴染んだということかもしれませんが、古楽器の演奏に抵抗を感じがちな人でも自然に聴けるのではないかと思います。
最新の録音と比べると、もしかすると技術的には若干見劣りするところがあるのかもしれませんが、古楽器演奏史の古典というべき名盤と言えますし、今でも廉価版で入手することができます。

J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲(全曲)(期間生産限定盤)
- アーティスト: グスタフ・レオンハルト
- 出版社/メーカー: SMJ
- 発売日: 2015/05/20
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