鷺の停車場

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住野よる「君の膵臓をたべたい」(本)を読んでみる

映画「君の膵臓をたべたい」をアニメ版→実写版と観て、原作と比較してみたくなり、住野よるの原作小説を借りて読んでみました。 

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

 

基本的なストーリーは、当然のことながら、実写版やアニメ版で観たのと同じ。実写版では、12年後の「僕」が回想する形ですが、原作は、アニメ版と同じく桜良の葬儀の時点から始まり、桜良との出会いと別れを回想していきます。

映画をそれぞれ涙して観た後に読んだこともあって、読んで涙する場面もあり心打たれました。名前を呼ばれた時にその人が自分をどう思っているか想像するのが趣味という「僕」を反映して、「僕」を呼ぶセリフが「【秘密を知ってるクラスメイト】くん」「【地味なクラスメイト】くん」「【仲良し】くん」といったように、「僕」が想像する、呼んだ人が自分をどう思っているかのイメージで記載されているのは、小説ならではの面白い表現。桜良の死の直前、入院して以降、桜良が「僕」を呼ぶ部分は「【?????】くん」と、「僕」が桜良が自分のことをどう思っているか想像できなくなっていることが示され、その答えは、桜良の「遺書」(下書き)によって明かされることになります。

ただ、仮定の話をしても仕方ありませんが、最初に原作の方を読んだとしたら、どうだったのかなあ、とも思いました。何というか、「僕」の心理描写とか、語り口にごつごつした感じがあって、すっと入っていかないところもあったので、映画を観ずに原作を読んでいたら、ここまで感じ入ることはなかったかもしれません。

ところで、原作をこうやって読んでみると、アニメ版の方も、いろいろアレンジしていることが分かりました。大きいところでは、ホルモンを食べに行くのはアニメ版では放課後ですが、原作&実写版では休日だったり、雨の日、タカヒロに殴られた後に2人が互いの心情を吐露する場面、アニメ版では路上で雨に打たれながらですが、原作では着替えに再び桜良の家に戻ってからになっています。また、アニメ版ではヤマ場の1つとなっている花火大会は、原作には出てきません。このあたりは、実写版の方がむしろ原作に忠実です。

アニメ版と実写版で異なるシーンやセリフは、アレンジしている部分はもちろんあるものの、多くはどちらも原作に記述があって、それぞれ抽出した部分が異なっているにすぎないということがわかったのも収穫でした。