鷺の停車場

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百瀬しのぶ「おくりびと」を読む

百瀬しのぶさんの小説「おくりびと」を読みました。

おくりびと〔小学館文庫〕

おくりびと〔小学館文庫〕

 

2008年9月13日(土)に公開された映画「おくりびと」のノベライズ版のようです。滝田洋次郎監督、小山薫堂脚本による映画は、確かテレビで放送されたときに観たことがあって、印象に残ったことを憶えています。

おくりびと [DVD]

おくりびと [DVD]

  • 出版社/メーカー: セディックインターナショナル
  • 発売日: 2009/03/18
  • メディア: DVD
 

図書館でたまたまこのノベライズ版を見かけて、手に取ってみました。

映画の本来の原作は、青木新門さんによる以下の著作だったと思います。 

納棺夫日記 増補改訂版 (文春文庫)

納棺夫日記 増補改訂版 (文春文庫)

 

著者の百瀬しのぶさんは初めてですが、映画のノベライズ版をけっこう手掛けている方のようです。

映画のあらすじは、概略、

 

所属していたオーケストラの突然の解散で失業したチェロ奏者の小林大悟本木雅弘)。妻の美香(広末涼子)と2人で実家である山形へと帰り、新たな仕事を探す大悟が偶然出会ったのは、佐々木(山崎努)が経営する納棺師という仕事だった。死者の体を清め、最期のときを送り出す業務の過酷さに、大悟は当惑するが、佐々木と事務員の百合子(余貴美子)の温もりに、大悟は美香に仕事の内容を明かせないまま仕事を続ける。やがて、大悟の仕事を知った美香は、死者を扱う夫の仕事が汚らわしいと納得できず、実家に戻ってしまう。大悟は退職も考えるが、思いとどまり納棺師を続ける。そんなとき、美香が突然戻ってくる。妊娠を告げられ、再び仕事を辞めるよう迫られたその時、幼い頃に通った銭湯を営む同級生の母親・ツヤ子(吉行和子)の納棺の依頼が入る。その心のこもった仕事ぶりに、美香も大悟の思いを理解し、2人の関係は修復する。そんなある日、父の訃報が大悟のもとに届く。自分の幼い頃に家庭を捨てた父に、最初は遺体の受け取りも拒否する大悟だったが、佐々木や百合子の説得も受け、美香と一緒に父のもとに向かう。そして、30年ぶりに対面した父(峰岸徹)の納棺を自ら行う大悟は、父が決して自分のことを忘れていなかったことを知って堪えきれずに涙し、美香はそれをハンカチで拭う。

 

というものでした。

本作は、特に章や見出しで区切られてはおらず、映画の流れに沿って物語が進んでいきます。

改めて映画を観直したわけではないので、細部までは分かりませんが、上記のあらすじの範囲では相違はなく、違和感を感じることもなかったので、基本的には映画の内容に即しているようです。ただ、父の遺体と対面する場面、本作では漁港の集会場ということになっていましたが、映画では違う場所だったような気がします。

映画を観たときの鮮やかな印象を思い起こさせる巧い語り口で、これまでノベライズ版には好印象はなかったのですが、意外と悪くないものだと思いました。