鷺の停車場

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宮下奈都「羊と鋼の森」

宮下奈都さんの小説「羊と鋼の森」を読みました。そのあらすじと感想です。

羊と鋼の森 (文春文庫)

羊と鋼の森 (文春文庫)

 

別冊文藝春秋2013年11月号から2015年3月号にかけて掲載され、加筆を加えて2015年9月に単行本化された作品。2018年には文庫本も出ています。

一昨年の6月には、山﨑賢人や上白石萌歌・萌音の主演で、本作を原作に映画化した同タイトルの実写映画が公開されており、公開当時に観ていました。原作本を見かけたので、手に取ってみました。

 

全体は章立てや数字による区切りはありませんが、1行、あるいは2行を空けて少しずつ区切られています。1行空きと2行空きに位置付けの違いがあるのかは分かりません。

 

将来の夢を持っていなかった高校生・外村は、先生に頼まれて学校の体育館のグランドピアノの調律に訪れた調律師・板鳥を案内することになり、その調律するさまに魅入られて、調律師を志す。専門学校を出て板鳥が勤める楽器店に就職した外村は、先輩の調律師・柳に付いて現場経験を積んでいく。その中で、外村はピアニストを目指す双子の女子高生・和音と由仁に出会う。才能に悩み、迷いながらも、柳や板鳥など楽器店の人にも支えられ、調律の経験を積み重ね、技術を磨いていく中で、成長していく・・・という物語。

 

以前に実写版の映画を観たときは、大げさというか、クサい台詞や演技が時々あって、実際はこんなことないよなあ、と思ってしまったり、内心の心象を表現するような、外山が故郷の森を彷徨う、和音が水中から水面に向かって必死に泳いで上がっていくといった比喩的な描写がちょっとはまらない感じがあったのですが、原作となる本作を読んでみると、違和感を感じて引っ掛かることは全くなく、最後まで一気に読み進めさせられた感じ。青年が迷い、もがきながら少しずつ成長していく過程を、繊細な描写で描き出していると思いました。