鷺の停車場

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香月美夜「本好きの下克上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部 兵士の娘Ⅰ」

香月美夜の小説「本好きの下克上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第一部の第1巻「兵士の娘Ⅰ」を読みました。

テレビアニメ版の第1部・第2部を見て少し気に入ったので、原作も読んでみようと手にした作品。 

もともとは、小説投稿サイト「小説家になろう」に連載された作品を単行本化したものだそうです。

単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。

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幼い頃から本が大好きな、ある女子大生が事故に巻き込まれ、見知らぬ世界で生まれ変わった。貧しい兵士の家に、病気がちな5歳の女の子、マインとして……。おまけに、その世界では人々の識字率も低く、書物はほとんど存在しない。いくら読みたくても高価で手に入らない。マインは決意する。ないなら、作ってしまえばいいじゃない!目指すは図書館司書。本に囲まれて生きるため、本を作ることから始めよう!

本好きのための、本好きに捧ぐ、ビブリア・ファンタジー開幕!書き下ろし番外編、2本収録!

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本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた24節からなり、巻末には帯の紹介のとおり、番外編2編が収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。

 

プロローグ

本が好きで、一生を本に囲まれて生きていきたい、どうせ死ぬなら本に埋もれて死にたいと思っている本須麗乃(もとす うらの)。家の書庫で本を読んでいると、地震が起き、大きな揺れで、傾いた本棚から麗乃に本が次々を降り注いでくる。

新しい生活

麗乃が目を覚ますと、幼い5歳の少女・マインになっていた。母・エーファ、6歳の姉・トゥーリ、兵士のような職業についている父・ギュンターの4人家族。不衛生な生活環境の違いにショックを受けるマイン。

おうち探索

マインになって3日。家の中を探し回るが、本は1冊も見つからない。

街中探索

母・エーファと初めて街に出たマイン。父が城壁の門番をしていることを知る。市場に向かいながら、本屋を探して辺りを見回すマインだったが、本屋どころか、街の中にも字がないことに気づく。

本、入手不可能

雑貨屋で立派な装丁の本を見つけたマインは、本を見せてもらおうと店主に話しかけるが、本は書き写すもので売り物ではないと言われる。この街に本屋がないことに絶望するマイン。

おおむねこのあたりまでが、テレビアニメ版の第1章「本のない世界」に対応する部分になっています。

生活改善中

本がなければ自分で作ればいいと考えるマインだったが、本を作るためには紙探しから始めなければならない。そんな中、マインは、生活改善のため、転生前の知識をいかして油を使ってシャンプーを作り、部屋の掃除をする。

近所の男の子

トゥーリに連れられ、トゥーリと同い年のラルフとフェイ、自分と同い年のルッツ、近所の3人の男の子と一緒に、父の忘れ物を届けに門に向かう。

紙、入手不可能

門に着いたマインは、森に向かうラルフたちを見送り、トゥーリと門の待合室で休んでいると、父の部下のオットーが羊皮紙を持っていることに気づき、紙を手に入れようと話しかけるが、人々はあまり文字を知らないこと、羊皮紙はとても高価なことを聞かされるが、字の勉強をするための石板をもらえることになる。

エジプト文明、リスペクト中

本を作るためには紙を作る必要があるとわかったマインは、紙の原料になる植物を手に入れようと、トゥーリに森に連れていってもらおうお願いする。マインが病弱で歩けないために断られるが、男の子たちにお願いして植物を取ってきてもらう。

冬支度

家の冬支度の手伝いをするマイン。転生前の知識をいかして、牛脂からオイルなどを作る母に油の質を高める「塩析」を教え、蝋燭に消臭のためにハーブを張り付ける。

石板GET!

肉の燻製を作るために家族で農村に出かけるマインたち。マインは豚の解体を見るはめになり、途中で気を失ってしまう。運ばれた部屋でオットーから石板を渡されたマインは、喜んで字の練習を始めるが、夢中になりすぎて風邪を引いてしまう。

おおむねこのあたりまでが、テレビアニメ版の第2章「生活改善と石板」に対応する部分になっています。

古代エジプト人に敗北

雪に閉ざされ、家の中で過ごすことになるマイン。パピルスもどき作りに失敗し、籠を作ることになったマインは、転生前の経験をいかしてトートバッグを作るが、出来の違いにしょげるトゥーリの機嫌を取ることになる。そして、パピルス作りを諦めたマインは、粘土板に文字を刻むことを考える。

冬の甘味

久しぶりの晴れの日、家族が採ってきた果物・パルゥの果汁を飲んだマインは、鳥の餌だった搾りかすに手を加えて食べられないか試し、ケーキを作ると、ルッツたちに大喜びされる。

オットーさんのお手伝い

母とトゥーリがパルゥを採りに行く間、父の職場の門の宿直室で待つことになったマイン。オットーが会計報告などの事務作業をするのを手伝ったマインは、オットーから文字を教えてもらえることになる。

トゥーリの髪飾り

トゥーリが洗礼式に着る晴れ着ができあがる。どこか物足りないと感じたマインは、父にかぎ針を作ってもらい、レース編みで髪飾りを作る。

おおむねこのあたりまでが、テレビアニメ版の第3章「冬のできごと」に対応する部分になっています。

私を森に連れて行って

森の雪が融け出したころ、森に連れて行ってもらおうとおねだりしたマインは、一人で門まで歩けるようになれば、と言われ、門に行ってオットーの助手と務めることになる。次第に体力がついて門まで一人で歩けるようになったマインは、通い始めて3月ほど経って、ようやく森に行く許可をもらう。

メソポタミア文明、万歳

ようやく森に行くことができたマインは、粘土板を作ろうと、原料になる土をルッツに掘ってもらい、粘土板を作るが、乾かしている間に他の男の子たちに踏まれて壊されてしまう。

粘土板はダメだ

怒りのあまり熱を出して寝込んでしまったマインは、回復後、再び森に行って粘土板を作るが、持ち帰って粘土板を竈で焼いてみると、破片になって砕け散ってしまい、母に怒られ、粘土板作りを禁止されてしまう。

おおむねこのあたりまでが、テレビアニメ版の第4章「初めての森と粘土板」に対応する部分になっています。

トゥーリの洗礼式

トゥーリの洗礼式の日、マインが結ったトゥーリの髪の編み込みが注目を集める。家に帰ると、仕事を始めるトゥーリの代わりに家の手伝いをすることになるマインは、父からナイフをプレゼントされる。

黄河文明、愛してる

家の手伝いを始めたマインは、自分が何もできないことに落ち込むが、森に出て、木簡作りを始める。マインを手伝うルッツは、旅商人の話を聞いてみたいと語る。

インクが欲しい

マインがルッツの話をオットーにすると、旅商人は止めた方がいいと言うオットー。マインはそれをルッツに直接話してもらうようお願いする。インクをおねだりするが、給料3年分と言われてしまったマインは、家の煤を集めて鉛筆の芯を作ろうとする。

お料理奮闘中

料理番が回ってくるようになったマインは、和食が食べられないかと工夫を始める。鳥のお裾分けに預かったマインは、鳥ガラのダシを取った鍋や鳥の酒蒸しを作り、家族から好評を得る。

木簡と不思議な熱

鉛筆が一応完成したマインが木簡を探すと、母が薪として使ってしまっていた。落ち込んだマインは、熱を出して意識を失ってしまう。熱に呑まれそうになるマインだったが、オットーに紹介するというルッツとの約束を果たそうと、自分の中の熱を押し込める。

会合への道

熱から回復してマインが門に行ってオットーに会うと、2日後の休日にルッツに会ってくれることになる。マインはルッツに面接の心得を教える。

おおむねこの部分の前半あたりまでが、テレビアニメ版の第5章「洗礼式と不思議な熱」に対応する部分になっています。

商人との会合

ルッツを連れてオットーに会いに行くと、見知らぬ商人・ベンノが一緒にいた。オットーは旅商人ではなく商人見習いになることをルッツに勧める。商人になって何がしたいかと問うベンノに、マインの考えたものは全部オレが作る、とルッツは宣言し、紙の試作を作って判断してもらうことになる。

エピローグ

ベンノを連れて家に帰ったオットーは、妻のコリンナに、洗礼前の子どもとは思えない機転をきかせるマインの不思議さを語る。それを聞いたベンノは、身食いかもしれない、本当に身食いなら、魔術具がないと近いうちに死んでしまうと語る。

ここまでが本編。おおむねテレビアニメ版の第6章「会合」(の主に前半)までに対応しているようです。

巻末には書き下ろしの番外編が2本。

マインのいない日常

マインが熱を出して寝込んでいる間、トゥーリやラルフたちと森に出かけたルッツのエピソード。

変わらぬ日常

幼馴染の修が、自分の母親の学会出張に麗乃とその母親を連れていった際、「妖怪本スキー」こと麗乃が引き起こしたハプニングに巻き込まれるエピソード。最後の修の「お前なんて、いつか本のない世界に行って、本が読めなくて苦労すればいいんだ!」という心の叫びは、本編につながっているわけですね。

 

テレビアニメ版は、全体の尺の都合もあってか、やや駆け足な感じもする展開でしたが、原作小説では適度なスピード感で展開する感じで、面白く読むことができました。専らマインの内面から描かれ、転生前の回想も多く出てくるので、テレビアニメ版よりも、マインの精神年齢は大人びている印象を受けました。

単行本版は、これまでに刊行されているものだけでも、第一部が3巻、第二部が4巻、第三部が5巻、第四部が9巻、第五部が4巻の計25巻。このほかに、外伝と短編集が1巻ずつ刊行されています。第五部はまだ完結していないようですので、最終的には30巻近くになるのかもしれません。かなりの大作ですが、少しずつ読んでみようと思います。