香月美夜の小説「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第二部「神殿の巫女見習いⅢ」を読みました。
テレビアニメ版を見て読み始めたシリーズの第2部の第3巻。前巻の「神殿の巫女見習いⅡ」に続いて読んでみました。
単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。
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騎士団の前で強大な魔力を見せつけたことで、マインは貴族の間で注目を集めていた。だが、我関せずとばかりに、本を作る情熱は高まるばかり。より多くの人々に安価で本を届けられるよう、印刷技術を向上させていく。
その結果、マインの利用価値を狙う者が出現。危険を察知した神官長は、彼女を神殿に匿うことにする。家族と離れた、マインの長い冬籠り生活が始まるのだった。
誰もが本を読める世界へ――その始まりを告げる「金属活字」の完成。厳しい寒さを乗り越え生まれる、マイン一家の新しい「命」。
春の訪れと共に、今後の未来を予見するビブリア・ファンタジー転機の章!書き下ろし番外編×2本収録!
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本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた21節からなり、紹介文にあるとおり、巻末に番外編2編も収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。
プロローグ
神官長・フェルディナンドは騎士団長のカルステッドに、マインを庇護し、貴族側に取り込むため、養女にすることを依頼する。
印刷協会
マインは、本を印刷して売るために、印刷協会を作ることをベンノに提案する。その登録のために向かった商業ギルドで、フリーダに季節の眷属についての絵本をリクエストされる。
ヨハンの課題
商業ギルドを出ようとすると、鍛冶工房の見習いのヨハンに呼び止められる。一人前に認められるために、パトロンとなって、試験となる仕事を発注してもらうようお願いされたマインは、活版印刷のための金属活字をヨハンに注文する。
インク協会と冬の始まり
マインが従来とは違う作り方でインクを作ったと知ったインク協会の会長たちがベンノの店にやってくる。マインは一定の利益を確保した上でインクの製法をインク協会に売ることをベンノに提案し、ベンノの交渉で、インク協会と契約魔術を結ぶ。インク協会が探りを入れていることを警戒したマインは、自分と家族たちの安全のため、早めに神殿に冬籠りすることにする。
冬籠りと冬の手仕事
神殿で冬籠りを始めたマインは、次の絵本の構想を練り、冬の間の計画を立て、リバーシやトランプを作り始める。
三者会談
神殿に籠り始めて3日目、神官長から儀式用の衣装がいつでき上がるのか尋ねる手紙が届く。7日後、でき上がった衣装を持ってきたベンノと、神官長、騎士団長のカルステッドは会談し、インク協会の動きなどについて話す。同席したマインは、自分が危険な立場にあることを知る。
騎士団の処分と今後の話
ベンノが去った後、神官長は、トロンベ討伐時の不手際に対し下された処分についてマインに話し、マインやその家族は危険に巻き込まれる可能性が高いことから、なるべく早く貴族の養女とする必要があると告げる。家族と離れるのが嫌なマインは拒絶するが、家族に甘えることができるのは、貴族院に行かなければならない10歳まで、それ以降はマインの意見は聞かないと宣告される。
冬の日常
処分の一環で、1年間見習いに降格したダームエルが、その間マインを護衛することになったことで、マインは神殿内を行動することが許可され、孤児院や図書室に行けるようになる。晴れ間が出た日、子どもたちはパルゥ取りに森に出かけ、それを使ってパルゥケーキを作る。
奉納式
奉納式が始まり、マインは神官長の立会いの下、小聖杯に魔力を満たす儀式を行う日々を送る。
ロジーナの成人式
ロジーナが成人式を迎えることを知り、お祝いに何を贈るか考えるマインは、ヴィルマの助言で、新しい楽譜を贈ることにし、覚えていたクラシックやアニメソングを歌って神官長に採譜してもらい、ロジーナに贈る。
ルムトプフと靴
トゥーリが、夏に果物をお酒に漬けたままになっていたルムトプフの壺を家から持ってくる。マインはそれを使ってクレープを料理人に作ってもらう。春の祈念式などに備え、ロジーナの助言で、靴を作ることにする。
金属活字の完成
マインは、ベンノに靴職人を連れてきてもらい、3足の靴を注文する。ベンノから、ヨハンが課題の金属活字を完成させたと聞いたマインは、それを評価するため、神官長の許しを得てベンノの店に行く。その仕上がりにマインは、ヨハンにグーテンベルクの称号を捧げます!と大興奮し、そのまま意識を失う。
滞在期間延長
雪も少しずつ解けてきた頃、マインは神官長の呼び出しを受ける。マインが帰宅の許可を請うと、神官長はそれを拒否し、インク協会の会長がおそらく貴族の仕業で突然死んだ、滞在期間の延長が必要だと話す。神官長はマインの両親を呼び出し、マインを春の祈念式まで神殿預かりとすること、10歳になったら貴族の養女とすることを告げる。
祈念式の準備
冬の手仕事は終了し、印刷機の準備を始めるマイン。祈念式を控え、女の側仕えは総出でその準備をする。フランとロジーナ、護衛のダームエル、料理人を連れ、神官長らと一緒に祈念式に出発するマインだったが、突然加わることになった青色神官のジルヴェスターにマインはおもちゃにされる。
祈念式
ダームエルの騎獣に乗って出発したマインたちは、農村の冬の館を回ってそれぞれ祈念式を行い、この日の滞在場所となるブロン男爵の夏の館に到着する。大きな食堂での食事で、ジルヴェスターはマインの料理人が作った料理に興味を持ち、食事後、マインはジルヴェスターに料理人の交換を持ちかけられる。
食後のお招き
ジルヴェスターに招かれ隣の席に座ったマインは、料理人はこれから開く食事処の料理人にするためにお金と人手をかけて教育してきた、料理が気に入ったのなら食事処の客になってほしいと話し、自分が紹介すると約束する。
襲撃
農村を回って祈念式を行う日を続けたマインたちは、直轄地の農村は終わり、貴族の館を回ることになる。ゲルラッハ子爵の館を訪れた後にライゼガング伯爵の館を訪れるが、翌朝、マインを狙った賊がカルステッドの部屋を襲撃し、神官長はゲルラッハ子爵の仕業だと推測する。出発して別の貴族の館に向かう途中、再び襲撃される。マインは馬車で向かうフランたちを守るため、魔力で結界を張り、神官長とジルヴェスターは賊を追撃する。
やりたい放題の青色神官
祈念式を終えて神殿に戻ってきたマインは、さっそく神官長に呼び出される。神官長の部屋に行くと、ジルヴェスターがくつろいでいた。ジルヴェスターは。孤児院や工房、子どもたちが行く森を見たいと言い出す。隣のジルヴェスターの部屋に連れられたマインはジルヴェスターに、神殿長に黙っておいてほしければ森に連れていけ、と脅され、ルッツにジルヴェスターに着せるための古着の調達を頼む。
孤児院と工房見学
2日後、神官長とジルヴェスターが孤児院にやってくる。子どもたちがカルタなどで字を覚えていることを知った神官長は頭を抱える。食堂、工房と回り、ジルヴェスターは来ていたベンノと食事処について話がしたいとベンノを連れていく。神官長は製作途中の印刷機に目を止め、マインが使い方を説明すると、再び頭を抱え、君に言いたいことが山ほどできた、とこぼす。
青色神官の贈り物
ジルヴェスターとの商談から戻ってきたベンノは、すっかり疲労していて、お前のせいだ、とマインに八つ当たりする。その日の午後、神官長からは2日後の午後に説教部屋に呼び出す手紙が、ジルヴェスターからは明日森に連れていけと命ずる手紙が届く。翌日、マインはルッツに案内を頼み、ジルヴェスターを森に連れていってもらう。狩りに出たジルヴェスターは4羽の鳥と小鹿を仕留め、孤児院に持ち帰る。ジルヴェスターはお礼にいざという時のお守りだと、黒い石がはまったネックレスをマインに贈り、肌身離さず身につけておくよう真剣な顔で命ずる。
神官長の話と帰宅
次の日、神官長に呼び出されたマインは、隠し部屋で印刷機について質問を受ける。刷れる本の量やスピード、印刷が普及する影響などを聞いた神官長は、写本で生活費を稼いでいる貴族や神官への影響などを考え、カルステッドの養女となるまで、印刷はしないよう命ずる。そして、ルッツの迎えで、ようやく家に帰ることが許される。
新しい家族
翌朝、母親・エーファの陣痛が始まり、生まれてきた男の子には、カミルという名が付けられる。印刷が禁止されたマインは、カミルのためにカラフルな絵本を作ろうと心に決める。
エピローグ
デリアが水を2階に運んでいると、工房に行っているはずのギルが戻ってくる。マインが体調を崩したに違いないと考えるデリア。ギルから何やら報告を受けたフランは、布を用意し、肉を包んで下町にお祝いの品として届けさせる。何の祝い事か分からないデリアだが、それを神殿長に報告しに行くが、貴族に呼ばれて不在だった。側仕えのイェニーは、その貴族は身食いの子供をお探しだそうよ、と呟くが、デリアは聞き逃す。
ここまでが本編。
最後に番外編が2編。
神殿の昼食時間
1年間見習いに降格する処分を受け、マインの護衛となったダームエルが、神官長から借金を返すために事務仕事の手伝いをしないかと誘われるエピソード。
グーテンベルクの称号
金属活字を完成させて、マインからグーテンベルクの称号を与えられた鍛冶工房のヨハンのエピソード。
(ここまで)
プロローグの部分は、テレビアニメ版の最終話の最後の方にちょっと出てきますが、基本的に、本巻からはテレビアニメ版では描かれていない部分になります。テレビアニメ版も第3クールの製作決定がアナウンスされているので、いずれ本巻で描かれた部分もアニメ化されるのかもしれません。
強大な魔力を持ち、金を稼げる新しい商品を生み出す知識・アイデアを持っているマインは、貴族から目を付けられ、身の危険も感じるようになっていきます。途中から出てきたジルヴェスターは、やりたい放題ですが、神官長とは旧知の仲で、会ったときのベンノの反応などを見ると、相当な地位の人物のようです。次巻以降、重要な役割を果たす人物になっていくのでしょうね。