鷺の停車場

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香月美夜「本好きの下克上~司書になるためには手段を選んでいられません~第三部 領主の養女Ⅴ」

香月美夜の小説「本好きの下克上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第三部「領主の養女Ⅴ」を読みました。

第3部の完結編となる第5巻。前巻「領主の養女Ⅳ」に続いて読んでみました。

単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。

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一年ぶりにリュエルの実を採集することに成功したローゼマインは、神官長と共に薬作りに励む。これで健康な普通の女の子になれる!……はず。その喜びから、活動は今まで以上に精力的なものに。本を読める環境作りのために製紙業や口伝集めに力を入れるばかりか、神殿長としては収穫祭の直轄地を回る。おまけに初めての妹までできて—―。

だが、冬支度の準備が着々と進む中、貴族の派閥争いが加速していく。彼等の陰謀は神殿内に混乱を招くばかりか、ローゼマインの未来をも大きく揺るがすことになる。

驚愕の新展開へ!心高まる第三部クライマックス!第四部への2年間を描く短編集に、書下ろしSS×2本、お馴染み椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録!

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本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた14節からなり、紹介文にあるとおり、巻末に短編集、番外編の書き下ろし短編が2本、イラストを担当している椎名優による巻末おまけの四コマ漫画が収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。

 

プロローグ

孤児院長室の隠し部屋でローゼマインと会い、イルクナーで作った新しい紙やポンプ作り、冬支度に向けた打ち合わせをするベンノ。工房に行くと、フリッツから貴族院に行く10歳頃には隠し部屋に入ることを咎められるようになるだろうと聞かされ、あと約2年間でそれを見据えて準備しなければと焦りを感じる。

新しい孤児とグリム計画

ハッセの町長リヒトに会いに行ったローゼマインは、リヒトの依頼で孤児4人を孤児院に買い取り、ハッセの人々に正しい貴族への対応や書類の書き方を教えるため、灰色神官を連れていくことにする。神殿に戻ったローゼマインはブリギッテに、収穫祭でイルクナーに向かう際に神官長が同行することが決まった、ハッセのようにならないよう、貴族に対する礼儀を領民に教育することを兄のギーベ・イルクナーに伝えるよう話す。ハッセに向かうことになった灰色神官には、貴族に対する手紙の書き方などを教えることと、ハッセの者から物語を聞き取ることを指示する。

ハッセと灰色神官

収穫祭の長旅が始まり、最初にハッセに訪れたローゼマイン。大規模なお祭りを自粛し、屋内で儀式を行うハッセの住民に、ローゼマインは発散する機会を与えようと住民たちに収穫祭恒例のボルフェ大会を許可する。広間での夕食は貴族たちが顔をしかめる宴会となったが、ローゼマインは下町での生活を思い起こし、小神殿に戻って護衛を頼んでいた実の父ギュンターから話を聞き取る。

リュエルに再挑戦

翌日の昼食後、ローゼマインたちは次の冬の館に出発する。祈念式の祝福効果で豊作だった直轄地の人々から熱狂的に歓迎され、祭りの熱気で体調を崩し、薬で立て直すのを繰り返して旅程をこなし、シュツェーリアの夜の前日になって、ようやくフェルディナンドとの待ち合わせ場所であるドールヴァンに到着する。翌日、リュエルの採集に向けてやってきたカルステッドは、ゲオルギーネの来訪以来旧ヴェローニカ派がゲオルギーネ派として復活の兆しを見せていて、ヴィルフリートを旗頭に据えるつもりのようだと話す。夜になり、ローゼマインたちはリュエルの木がある場所に向かう。

ダームエルの成長

フェルディナンドとカルステッド、エックハルト、ブリギッテ、ダームエルは四方八方から出てくる魔獣を倒していく。その戦いぶりを見守るローゼマインは、ダームエルが成長していることを感じる。ユストクスの合図でリュエルの実に手を伸ばして魔力を流し込み、採集を成功させたローゼマインは、ダームエルにもリュエルの実の採集を勧める。ドールヴァンの冬の館に戻り、翌朝、フェルディナンドの部屋に行くと、ダームエルの魔力が不自然に上がっているのはなぜか問い詰められ、自分の魔力の圧縮の仕方を教えたと話すと、魔力不足の解決のため圧縮方法をエーレンフェストの他の貴族にも教えてほしいと求められる。

魔力圧縮の条件

ローゼマインは、教えることを受ける代わりに、対象を貴族院で魔力の圧縮を習った者に限ること、敵対する者に教えないよう自分や領主夫妻たち6人の許可を必要とすること、契約魔術で他者に教えることができないよう縛ること、教える際の料金は位が上がるほど高額に設定することを条件とする。帰るカルステッドを見送り、イルクナーに出発するまで1日休憩となったローゼマインは、フェルディナンドに手渡されたゲオルギーネ派のリストに目を通し、貴族の親族関係の複雑さに頭を抱える。

イルクナーの収穫祭

ブリギッテから、イルクナーに灰色神官と結婚したがっている民がいると聞かされたローゼマインは、灰色神官に結婚は許されていないが、ギーベ・イルクナーがその灰色神官を購入すれば、ギーベの許可で結婚が可能になると話す。イルクナーに到着したローゼマインは、その灰色神官・フォルクに結婚の意思があることを確認する。フェルディナンドはフォルクの売買契約書を用意し、情につられて値引きしないよう釘を差す。ギーベ・イルクナーとの夕食で売買契約の話になるが、大金貨2枚と小金貨2枚という予想以上の値段に、交渉は決裂するが、フォルクを1年間貸し出し、その間にそのお金を稼ぐよう差配する。

初めての妹

エーレンフェストに戻ったローゼマインは、青色神官たちから各地の収穫祭から戻った青色神官たちの報告をまとめ、領主に報告するために城に向かう。ヴィルフリートの妹シャルロッテの挨拶を受け、初めての妹に感動に打ち震えるローゼマインは、洗礼式で自分が祝福を与えることを約束し、領主への報告の後にお茶会を開くことにする。報告を聞いたジルヴェスターは人払いをし、魔力圧縮はまずローゼマインの保護者や家族から始めるよう話す。早く試したがっているジルヴェスターたちに、集めた素材で薬・ユレーヴェを作ってから教えると話すローゼマインに、フェルディナンドは、作るのはいいが、使うと眠ることになるので後にするよう説得される。シャルロッテとお茶会をしている最中、ヴィルフリートが突然入ってくる。アンゲリカに押さえられたヴィルフリートは、おばあ様からローゼマインとフェルディナンドに陥れられたと聞いたと話す。幽閉されているヴェローニカに会っていたことを知って、ローゼマインは側仕えのリヒャルダをジルヴェスターへ報告に向かわせる。

ヴィルフリートの行い

リヒャルダはジルヴェスター、フェルディナンド、カルステッドを連れてくる。ジルヴェスターは、シャルロッテとローゼマインの側仕えを外に出し、ヴィルフリートの側近全員を呼び出し、ヴィルフリートに事情聴取する。収穫祭の時期に城の森で行われる狩猟大会のときにかくれんぼをしている際に、旧ヴェローニカ派の貴族たちから、ローゼマインやフェルディナンドのせいでヴェローニカや前神殿長が捕らえられた、おばあ様の話を聞いてみてはと勧められて、幽閉されている塔の場所を教えられ、行ったのだという。ヴェローニカの言うことを鵜呑みにしてローゼマインとフェルディナンドを糾弾するヴィルフリートに、処分を下したジルヴェスターはテーブルを叩いて怒り、フロレンツィアは、真実はひとつではないと、自分から見た真実を話し、フェルディナンドはローゼマインにその真実を語らせ、ヴィルフリートにそれらを聞いてどう思うか質す。 

ヴィルフリートの処分

ヴィルフリートは、ヴェローニカが間違っていると思うと話し、フェルディナンドに謝罪する。領主の許可なく塔に立ち入るのは逃亡幇助の罪に問われる行為だったが、素直に自分の非を認めるヴィルフリートに成長を感じるローゼマインは、企ての狙いを測りかねるジルヴェスターたちに現状維持を主張し、記憶を覗く魔術具を使うこと、次期領主の内定を取り消す処分を受けることになる。

ユレーヴェ作りと魔力圧縮

危険が迫っている状況に、魔力の圧縮方法を早く教えるよう求めるフェルディナンドは、数日後、執務時間を割いてローゼマインの薬・ユレーヴェ作りを行う。ユレーヴェが完成すると、使うと1月から季節1つ分眠ることになる、長引いても大丈夫なようにやるべきことは片付けておいた方がいいと助言する。翌日、ローゼマインは、フェルディナンド、領主夫妻、カルステッド一家に魔力圧縮の方法を教える。

シャルロッテの洗礼式

冬が訪れ、シャルロッテの洗礼式がやってくる。ローゼマインは約束通り神殿長としてシャルロッテに祝福を与える。昼食を終えて社交の時間になると、ローゼマインはヴィルフリートやシャルロッテを背後に庇って矢面に立ち、貴族たちに挨拶する。大広間を出て離れに向かう途中、窓から入ってきた襲撃者に襲われ、シャルロッテが奪われてしまう。

囚われた姫君

全身が怒りに染まったローゼマインは、騎獣を出し、シャルロッテを奪った襲撃者を追う。同行したアンゲリカがシャルロッテを救出するが、ローゼマインが乗る騎獣は細い光の網に捕らえられ、ローゼマインは毒を飲まされてしまう。

救出

ローゼマインは、カルステッドの父で祖父に当たるボニファティウスに荒っぽく救出されるが、フェルディナンドは毒を飲まされているのに気づき、神殿に連れ戻って解毒し、ユレーヴェを使う準備をする。応急処置で意識が戻ったローゼマインは、フランにその後のことを指示した後、ユレーヴェに漬けられ、眠りに入っていく。

そして、その後

眠りから目覚めたローゼマインは、フェルディナンドから毒を受けて魔力が固まったせいで、完全には魔力が溶けていないと告げられる。周りを見渡すと、ギルたちが作った新しい本が5冊積まれていた。ローゼマインは、自分が約2年間眠っていて、もう10歳の秋を迎えており、冬には貴族院に入ることになると聞かされる。

エピローグ

ローゼマインが目覚めて神官長室に戻ったフェルディナンドは、意識や記憶、姿が2年前から変わっていないローゼマインが、側仕えたちの姿が変わっていることに不安そうだったことを思い出し、心配に思う。

 

ここまでが本編。その後に、「ローゼマインが不在の二年間」と題する5編からなる短編集。

洗礼式の日のおじい様

カルステッドの父でローゼマインの祖父に当たるボニファティウスは、洗礼式でのローゼマインの姿に猛烈に感動するが、襲撃の報を聞いてローゼマインの救出に向かう。そしてその後の対応をボニファティウスの視点から描いた短編。

お姉様の代わり

シャルロッテの視点から、自分のせいで眠りについてしまった姉・ローゼマインの代わりに、冬の子供部屋の統率やハッセの祈念式に挑んでいく姿を描いた短編。

二つの結婚話

ブリギッテの兄でイルクナーの領主であるギーベ・イルクナーの視点から、ブリギッテとダームエルの結婚話を描いた短編。イルクナーに戻ることを心に決めているブリギッテだが、ローゼマインに引き立てられたダームエルはローゼマインの護衛騎士から離れられないと思うギーベ・イルクナーは、それをブリギッテに優しく告げる。星結びの儀式の夜、ダームエルはブリギッテに求婚するが、イルクナー行きを条件にされたダームエルはそれを受けることはできず、恋は実らない。それを見ていたエルヴィーラは、ブリギッテのための良縁を探すとギーベ・イルクナーに話す。

オレ達に休息はない

ルッツの視点から、ローゼマインが眠っている間の、ギルやトゥーリ、グーテンベルクの職人たちの姿を描いた短編。

神殿の二年間

フランの視点から、ローゼマインが眠っている2年の間の神殿の様子を描いた短編。ブリギッテとダームエルの結婚話が破談したころ、神殿では、ローゼマインの専属料理人フーゴとエラが結婚すると報告するが、ローゼマインが起きるまで待たせることになる。そして、前神殿長と懇意にしていたエグモントが、妊娠した灰色巫女を入れ替えたいと突然やってくる。フェルディナンドは、ローゼマインの意も汲んで、希望する灰色巫女だけを入れ替えの候補としてエグモントに提示し、妊娠した灰色巫女・リリーは、ハッセの小神殿で出産する。

 

さらに、番外編の書き下ろし短編が2編。

下級貴族の護衛騎士

ダームエルの視点から、破談したブリギッテとの結婚話を描いた短編。

困った男の調理法

エラの視点から、ローゼマインが目覚めるまで自分との結婚がお預けになったフーゴを描いた短編。

 

さらに、著者によるあとがきの後に、「巻末おまけ」(漫画:しいなゆう)「ゆるっとふわっと日常家族」と題して、「気になる貴方」「会話」「貴方を抱きしめたい」の3本の四コマ漫画が収録されています。

 

前巻で醸し出された不穏な雰囲気のとおり、大きな波乱が起き、ローゼマインは2年間の眠りに就き、目覚めると間もなく貴族院に入ることになります。

ここで第三部は完結です。貴族院に入るローゼマインを描く第四部に続いていくことになるのでしょう。