鷺の停車場

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香月美夜「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第四部 貴族院の自称図書委員Ⅷ」

香月美夜の小説「本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~」の第四部「貴族院の自称図書委員Ⅷ」を読みました。

ローゼマインが貴族院に進んでからを描く第4部の第8巻。第7巻に続いて読んでみました。

 

単行本の表紙裏には、次のような紹介文があります。

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貴族院二年生を終え、ローゼマインは再び領地での生活に戻る。新しい弟との出会いや、下級生の側近探し、お魚解体に、曽祖父の昔話など、一見その日々は穏やかそのもの。
だが、フェルディナンドの様子がおかしい。鍵を握る「アダルジーザの実」とは何か?そして下される急転直下の王命――神官長はローゼマインに明かす。「本来ならば、私は洗礼式前に死んでいるはずだった」
出生の秘密、父との最後の約束、苦渋の決断。エーレンフェストの未来を賭けた、フェルディナンドの選択とは?

本を読むために全力を尽くせ!最終章へ急変するビブリア・ファンタジー最新刊!

10年の歳月が胸に迫る書下ろしSS×2本、椎名優描き下ろし「四コマ漫画」収録!

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本巻は、プロローグ・エピローグと見出しで区切られた20節からなり、紹介文にあるとおり、巻末に番外編が2編、イラストを担当している椎名優による巻末おまけの四コマ漫画が収録されています。各節のおおまかな内容を紹介すると、次のようなあらすじです。

プロローグ

メルヒオールは、貴族院から戻ってきた両親(ローゼマインの養親)のジルヴェスターとフロレンツィアから、領地対抗戦の様子などについて話を聞く。ローゼマイン(主人公。エーレンフェストの領主候補生2年生)の話を聞いたメルヒオールは、神殿に行く許可をもらうため祝詞を覚えることにし、早くローゼマインに会いたいと思う。

帰還後の夕食会

貴族院からエーレンフェスト(順位10位の中領地)に戻ったローゼマインは、留守番をしていた側近たちに新しく側近となったローデリヒ(中級文官見習い2年生)を紹介する。翌日、ローゼマインは、夕食会でジルヴェスターやフェルディナンド(ジルヴェスターの異母弟でローゼマインの後見人。神官長)に言われた通りに、ヴィルフリート(ジルヴェスターの息子・ローゼマインの兄の領主候補生2年生)シャルロッテ(ジルヴェスターの娘・ローゼマインの妹の領主候補生1年生)の文官達も呼んで、貴族院で集めた情報を仕分け、各部署の上層部に情報を売り、そのお金を提供者に分配していく。

子供部屋とユーディットの弟

リヒャルダ(ローゼマインの筆頭側仕えの上級貴族)から下級生からも側近候補を見つけるように言われたローゼマインは、子供部屋に行き、ブリュンヒルデ(側近の上級側仕え見習い4年生)から妹のベルティルデを、ユーディット(側近の中級護衛騎士見習い3年生)から弟のテオドールを紹介される。テオドールは将来ギーベ(地方の領主)にお仕えしたいので領主一族の護衛騎士にはなれないと困った顔をするが、ローゼマインは、自分が貴族院にいる期間だけ護衛騎士になることを提案する。フェルディナンドは難色を示すが、ジルヴェスターとギーベ・キルンベルガの話し合いの結果、来年グーテンベルク(印刷業に関わるローゼマインの専属職人)をキルンベルガに派遣することを条件に了承される。

プランタン商会とのお話し合い

ローゼマインは、ヴィルフリートやシャルロッテの文官達とともに、プランタン商会(ローゼマインが作った本などを取り扱う商店)とギーベ達がハルデンツェルとグレッシェルで作られた本を売る際の委託料について打ち合わせるのに同席し、ベンノ(下町時代のマインが見習いとして仕えていたプランタン商会の旦那)達とはダンケルフェルガー(順位2位の大領地)の本を印刷する権利を得たことなどを話す。午後に行われた城での本の販売会は盛況に終わる。

メルヒオールの洗礼式

メルヒオールの洗礼式を控え、ローゼマインはシャルロッテとヴィルフリートからお茶会に誘われ、メルヒオールを紹介される。お姉様としての快調な滑り出しに、テンションが上がるローゼマインは必死に魔力を抑え込む。迎えた洗礼式の日、優秀者や貴族院でのエーレンフェストの成績が発表され、貴族院を卒業した新成人のお披露目などの後、メルヒオールの洗礼式でローゼマインは神殿長として祝福を与える。

アーレンスバッハのお魚料理

冬の社交界が終わり、ローゼマインはジルヴェスターに頼み、アーレンスバッハ(順位6位の大領地で、貴族としてのローゼマインの兄であるエックハルトの妻・アウレーリアの出身地)のお魚料理を教えてもらうことになる。フーゴとエラ(ともにローゼマインの専属料理人で新婚夫婦)が宮廷料理人から食材の扱い方を教えてもらってお魚料理を作る間、ローゼマインは覚えているレシピを書き出して魚料理に思いを馳せる。夕食にそのお魚料理を食べ、久しぶりのお魚に感激するローゼマインは、魚料理を研究するため食材の一部を神殿に持ち帰らせる。

神殿への帰還とグーテンベルクとの会合

食材を積んで神殿に帰還したローゼマインは、書き出した魚料理のレシピをニコラ(料理助手担当の側仕え)に渡し、フラン(神殿での筆頭側仕え)やヴィルマ(孤児院担当の側仕え)たち側仕えから留守中の孤児院の様子の報告を受ける。グーテンベルクとの会合が開かれ、ベンノや職人たちから報告を受けると、同席した神官長は下町に魔石を扱う店があるか尋ね、ローゼマインはエーレンフェストに置いていかれ、プランタン商会の見習いとなったクラッセンブルク(順位1位の大領地)のカーリンの様子を尋ねる。

お魚解体

冬の終わりの平民の成人式が終わった後、ローゼマインは神官長に協力してもらい神殿に持ち帰ったお魚を魔力も使って解体し、お魚料理を作る。ローゼマインは、魚がとれるアーレンスバッハが欲しくなったと思わずつぶやく。料理に満足したフェルディナンドは、ライゼガングでの祈念式ではヴィルフリートを立てるよう指示する。

祈念式とライゼガングへの出発

春の洗礼式を終えたローゼマインは、直轄地の祈念式に向かって出発する。ハッセでの祈念式の後、護衛に同行していたギュンター(門の士長でローゼマインの本当の父)たち兵士から下町の様子を聞く。直轄地のでの祈念式を終えたローゼマインは、祈念式の対応をシャルロッテと交代し、ライゼガングへの出発準備を進める。出発の日、ローゼマインは、グーテンベルク達を連れ、ヴィルフリートやシャルロッテ、カルステッド(貴族としてのローゼマインの父でエーレンフェストの騎士団長)、エルヴィーラ(カルステッドの第一夫人で貴族としてのローゼマインの母。エーレンフェストの印刷業の責任者を務める)たちと一緒にライゼガングに向かう。

ギーベ・ライゼガング

ライゼガングに着いたローゼマインは、神殿長として小聖杯の受け渡しを行い、ブリュンヒルデを同行させ、レオノーレ(ローゼマインの側近の上級護衛騎士見習い5年生)の護衛でグーテンベルク達が過ごす平民の町を視察する。ローゼマインが館に戻ると、ギーベ・ライゼガングがエルヴィーラたちと印刷業に関する最終確認を行い、プランタン商会と契約を結んでいく。貴族だけが残ったところで、ギーベ・ライゼガングはローゼマインに、なぜ領主を目指さないのかを尋ね、領主に相応しいのはローゼマインであるはずなのに、次期領主と目されるのが一度は次期領主から外れたヴィルフリートなのは、血族である自分には歯痒くてならなと語る。ローゼマインはヴィルフリートの方が領主に相応しいと話し、一応の理解を得るが、そのためには曾祖父の強硬な姿勢を動かさなければならないと聞かされる。

曾祖父様のお見舞い

ローゼマインはヴィルフリートやシャルロッテと一緒に、前ギーベ・ライゼガングの曾祖父の見舞いに向かう。ローゼマインは単刀直入に次期領主にはならない、なりたくないと話すと、曾祖父は興奮して気を失ってしまう。しかし、意識が戻った曾祖父に話を続け、ヴィルフリートはローゼマインを第一夫人にし、ライゼガングの苦悩を終わらせると約束する、と宣言し、理解を得る。

領主会議のお留守番

祈念式が終わり、ローゼマインは領主会議に向けた打ち合わせをこなし、ジルヴェスターとは、ダンケルフェルガーとの交渉に向け、エーレンフェストに受け入れる他領の商人をどうするか相談する。領主会議に向け、まず側仕え達が出発し、ハルトムート(ローゼマインの側近で貴族院を卒業したばかりの上級文官)もエルヴィーラの補佐として向かう。お留守番となるローゼマインは、貴族院の3年生の予習をすることになり、フェルディナンドの指導で、魔力の分離と合成、エントヴィッケルン(街を作り変える魔術)などを練習するが、領主会議からフェルディナンドに緊急の呼び出しが入る。戻ってきて厳しい顔をしているフェルディナンドに、ボニファティウス(先代アウブ・エーレンフェストの兄で、カルステッドの父親)が何の用件だったのかを問い質すと、フェルディナンドはアーレンスバッハからディートリンデ(アーレンスバッハの領主候補生5年生)の婿に来るよう要請があったが断った、と話すが、今度は王からの呼び出しが入り、再び貴族院に向かう。2日経ってもフェルディナンドは戻ってこないため、ローゼマインたちはボニファティウスの執務を手伝うことにする。

領主会議の報告会(二年)

領主会議が終わり、ジルヴェスターやフロレンツィア、フェルディナンドたちが帰還する。翌日の報告会、エーレンフェストは貴族院で2位順位を上げて8位になったこと、中央とクラッセンブルク、ダンケルフェルガーの商人を受け入れることになったこと、シャルロッテに結婚の申込みが殺到したこと、ヒルデブラント王子(中央の第三王子)のお披露目が行われたこと、アナスタージウス王子(中央の第二王子)とエグランティー(クラッセンブルクの領主一族)との星結びの儀式(結婚式)が行われたこと、ディートリンデの卒業後すぐにフェルディナンドがアーレンスバッハに移り結婚することになったことが報告される。フェルディナンドは神官長から外れることになり、その後任にハルトムートが立候補し、ジルヴェスターから任命される。

私的な報告会(二年)

報告会の終了後、フェルディナンドとローゼマインはジルヴェスターに呼ばれる。ジルヴェスターが王から何を言われたかを問い質す。フェルディナンドは、王命でも関係なく文句を付けそうだったから事後承諾の形をとった、王からの要請を受け入れて敵対するつもりがないことを周知することも必要、と結婚を受け入れた理由を説明し、確定情報ではないが、アウブ(領主)・アーレンスバッハはもう長くないと話す。納得できないローゼマインは、エーレンフェストのためではなく、自身が結婚を望んでいるのかを問い質すが、フェルディナンドは、アーレンスバッハの情報と掌握は望んでいるが、結婚は望んでいない、だが、目的を達成するために必要だから行く、と語る。

選択

神殿に戻ったローゼマインは、フェルディナンドを訪ね、ディートリンデが次期領主になれるのか尋ねると、フェルディナンドは、ドレヴァンヒェル(順位3位の大領地)から領主の養女になったレティーツィアにヒルデブラント王子を婿入りさせてアーレンスバッハを救うことになっているが、成人前に領主が死んだ場合には、自分がレティーツィアと養子縁組し、ヒルデブラント王子が婿入りするまでの中継ぎと教育を行うことになると話す。そして、中央騎士団団長が以前に言っていた「アダルジーザの実」について尋ねると、アダルジーザとは数代に一度献上されてくるランツェナーヴェの姫が入る離宮、私は比較的多く王族の血を引いている、本来なら洗礼式前に死んでいるはずだった、グルトリスハイトを持たぬ今の王にとって、王族の血が濃く、聖女を通じてグルトリスハイトを探させているように見える私は危険な存在だ、今回の件は私の忠誠心を試したのだ、ジルヴェスターを領主にし、その補佐としてエーレンフェストに尽くすとの父親との最後の約束を破る気はない、と語る。ローゼマインは、辛いときには助けを求めると約束してほしい、全力で助けに行く、助けるためならグルトリスハイトを手に入れて王になってもいい、とフェルディナンドを脅迫して約束させる。

引き継ぎ

神殿では、フェルディナンドからハルトムートへの引き継ぎの業務が進む。ローゼマインは、ジルヴェスターはローゼマインの成人後はメルヒオールを神殿長にするつもりだと聞かされる。婚約していたエックハルト(カルステッドの長男でフェルディナンドに名を捧げた護衛騎士)がフェルディナンドに同行することになったアンゲリカ(ローゼマインの側近の中級護衛騎士)は、婚約を解消してローゼマインの護衛騎士を続けることを選ぶ。昼食後、ローゼマインはハルトムートが神官長となるための誓いの儀式を行い、就任式を終える。

話し合いと回復薬の作り方

ローゼマインは下町の商人達を呼んで、領主会議の結果を伝え、フェルディナンドはアーレンスバッハに婿入りすることになり、今後交流が増えるだろうと伝え、情報収集を依頼する。話し合いが終わった後、ローゼマインはフェルディナンドから回復薬の作り方を教わり、ユレーヴェに使う素材を用意していく。

ユレーヴェとハルトムートの成人式

ユレーヴェを作ったローゼマインは、フェルディナンドの指示で、体内の魔力の塊を溶かすため、ユレーヴェに浸かる。4日後に目覚めたローゼマインは、フェルディナンドの指導で貴族院の予習を進める。神殿での成人式の後、祝福を求めるハルトムートに、ローゼマインは祝福を与え、ハルトムートは祝福を独占できたことに喜ぶ。

来訪者と対策

夏の洗礼式を終えたローゼマインは、星結びの儀式から秋になるまでの間にゲオルギーネ(ジルヴェスターの姉でアーレンスバッハの第一夫人。ディートリンデの母)とディートリンデがエーレンフェストにやってくると聞かされ、フェルディナンドとその対策について話し合う。星結びの儀式を間近に控え、エックハルトとアンゲリカの婚約解消について家族会議が開かれる。星結びの儀式を終え、ローゼマインたちは、求婚のやり取りに全く興味を示さないフェルディナンドに、ディートリンデが悪い印象を持たないよう全力でフォローしようと準備を進める。

歓迎の宴

夏の盛りを過ぎたころ、ゲオルギーネとディートリンデの一行がエーレンフェストにやってくる。歓迎の宴で、ディートリンデとフェルディナンドは求婚のやり取りを行い、フェルディナンドの表情と言葉に、ディートリンデだけでなく女性達はうっとりとなり、本音を知っているローゼマインは驚く。翌日、フェルディナンドから呼び出されたローゼマインは、ディートリンデからねだられた髪飾りを注文するためにギルベルタ商会を呼び出し、ディートリンデを自分の館に招く際に側仕えを貸すことになる。

フェルディナンドの館

フェルディナンドがディートリンデを自分の館に招く日、ローゼマインはヴィルフリートやシャルロッテとともにフェルディナンドの館に向かう。ディートリンデはやってきたギルベルタ商会と髪飾りの打ち合わせを行い、フェルディナンドはライムント(アーレンスバッハの中級文官見習い3年生で、貴族院でのエーレンフェストの寮監のヒルシュールの弟子)たちと図書室で研究について話し、ローゼマインはライムントが作った本を移動させることができる魔法陣を買い取る。その後、ローゼマインが図書室で本に夢中になっているうちに、お茶会は終わってしまっていた。ゲオルギーネとディートリンデは、アーレンスバッハからの知らせで、滞在予定を切り上げてアーレンスバッハに帰っていく。

エピローグ

ゲオルギーネとディートリンデは、アウブ・アーレンスバッハが倒れたとの知らせを受け、アーレンスバッハに向かう馬車に乗っていた。ディートリンデは、襲撃の犯人と疑った中央騎士団の来訪が原因だと主張するが、ゲオルギーネは疑いが晴れて中央との繋がりが強化でき、協力した甲斐があったと話す。ディートリンデは、恋仲になっていた中央から来た若い騎士と別れざるを得なくなったことに溜息をつくが、髪飾りが手に入ることをができることを思い出しご機嫌になる。田舎の宿に泊まった翌日、ディートリンデは体調を崩し、ゲオルギーネの側仕えのゼルティエは実家のグラオザムと連絡を取り、ゲオルギーネとディートリンデを連れていく。グラオザムの様子に、ディートリンデはまるでゲオルギーネを主と仰いでいるようだと感じる。

 

ここまでが本編。その後に、番外編の書き下ろしが2編。

十年前の無念を晴らせ

ダンケルフェルガーの騎士ハイスヒッツェ貴族院時代にフェルディナンドと競い合った自称ディッター仲間)は、ディートリンデの婿にフェルディナンドを迎えたいとのアウブ・エーレンフェストの言葉を聞いて高揚感を抱き、アーレンスバッハに婿入りすることで神殿に押し込められていたフェルディナンドを救えるのではと考え、動き出すエピソード。

十年間の変化

エックハルトは、フェルディナンドがアーレンスバッハに行くという話を聞いて、旧ヴェローニカ(アーレンスバッハ出身のジルヴェスターの母。現在は幽閉中)派を喜ばせる義理はないと思うが、婿入りが決まって、苛立ちを感じる。ユクトクス(フェルディナンドの側仕え兼文官でリヒャルダの息子)とともにフェルディナンドの館に呼び出されたエックハルトは、フェルディナンドから共に来るよう命ぜられ、それを望んでいたエックハルトは受け入れる。婚約していたアンゲリカとの会話で、エックハルトは10年間の変化を実感する。

 

さらに、著者によるあとがきの後に、「毎度おなじみ 巻末おまけ」(漫画:しいなゆう)「ゆるっとふわっと日常家族」と題して、「インド伝統スポーツ」「褒め殺し」「優先最下位」の3本の四コマ漫画が収録されています。

 

中央や上位領地の様々な思惑が働いて、フェルディナンドはアーレンスバッハに婿入りすることになります。自身の後見人・庇護者であり、精神的支柱でもあったフェルディナンドを失って、ローゼマインが今後どうなっていくのか、この先の展開も気になるところです。